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最終話 最強賢者と最強メイド
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あれから、しばらくは平和の時間が流れていた。
しかし、そんな時間は長く続かないのがこの世界のお約束である。
今日も、国王陛下からのお呼び出しが入っている。
「アリア、そろそろ行こうか」
「かしこまりました」
何度歩いたか数えきれないほどの、王宮までの道のりを二人は歩く。
この世界の生活もすっかり馴染んでしまった自分が居る。
「お疲れさん」
王宮の警備兵に軽く挨拶をすると王宮の中に入る。
「樹さま、アリアさま、お待ちしておりました。こちらにお願いします」
王宮の従者により、応接間に通される。
待つこと数分、いつものように陛下が入ってきた。
「待たせたな」
「いえ、構いません」
今日は公爵も一緒だった。
国の上級貴族二人を前にしても、物怖じしないのは流石、最強賢者と言うべきか。
陛下と公爵は樹たちの対面のソファーに腰を下ろした。
「それで、今日はどういったご用件ですか?」
どうせ面倒な事だろうが、面倒なら面倒でいいから早めに片付けてしまいたい。
「オリエンス王国と友好同盟を結んだのは知っているな?」
「はい、存じておりますが」
ウェールズ王国は数ヶ月前に、オリエンス王国と友好同盟を締結させた。
その証として、ミアの魔術学院への留学が決まったともいわれていた。
「そこで、オリエンス王国にうちの国の大使館を置くことになったのです」
今度は公爵が言った。
「はぁ、それが何か問題でも?」
樹としては、イマイチ話が見えてこなかった。
「はぁ、やっぱりちゃんと言わないと気付かんか。お前さんは」
陛下がため息交じりに行った。
「二人には、ウェールズ王国の大使としてオリエンス王国に行ってもらいたい」
陛下が単刀直入に言った。
「「はい!?」」
驚き過ぎてハモッた。
「二人って、俺とアリアですか!?」
「他に誰がいるんだね?」
陛下はニヤリとした笑みを浮かべた。
本当に食えない男である。
まあ、それでこそ一国の王と言えるといえばそれまでだが。
「マジすか?」
「マジだ」
陛下は真剣な面持ちだった。
「お前さんは転移魔法を使えるんだから、うちとオリエンスの王都に簡単に行き来できるからいいじゃないか」
「なるほど、そういう事ですか」
おそらく、これが樹を大使に選んだ大半の理由だろう。
転移魔法を使える大使なんて、国としては都合がいい。
「拒否権は?」
「ない!!」
陛下は笑顔で言い切った。
「ですよね」
樹は苦笑いを浮かべた。
「アリアは、ついて来てくれるか?」
隣に座っているアリアに尋ねた。
「もちろんでございます。どこまでもお供致します」
「ありがとう。では、お引き受けいたします」
樹は、オリエンス王都に大使として行くことを了承した。
「ありがとう。お前さんならそう言ってくれると思っていたよ」
嘘つけ。
ほとんど、というか強制だったじゃないか。
「来月の頭には行ってもらうから準備しておいてくれ。大使館はもうあるから心配するな」
「承知しました」
そこから、陛下たちの世間話に付き合わされ、王宮を後にするのであった。
「学院長の次は大使か……」
樹は大きなため息をついた。
「お疲れですね」
「ああ、どんどん責任が重くなっていく気がするよ」
樹たちの異世界世直しはまだまだ先が長そうであった。
――完――
【あとがき】
最終話をお読みいただきありがとうございます。
最終話に驚かれたかもしれませんが、この物語はここで一区切りとさせて頂きます。
正直、まだまだ書けますが、他の連載や原稿に集中したいということもあり、完結させる運びとなりました。
後日談など、時間に余裕が出来ましたら書いていくつもりです。
その時は、またよろしくお願いいたします。
他の作品も読んで頂けると大変嬉しいです。
最後までお付き合いありがとうございました。
では、またお会いしましょう。
あとがき失礼しました。
津ヶ谷
しかし、そんな時間は長く続かないのがこの世界のお約束である。
今日も、国王陛下からのお呼び出しが入っている。
「アリア、そろそろ行こうか」
「かしこまりました」
何度歩いたか数えきれないほどの、王宮までの道のりを二人は歩く。
この世界の生活もすっかり馴染んでしまった自分が居る。
「お疲れさん」
王宮の警備兵に軽く挨拶をすると王宮の中に入る。
「樹さま、アリアさま、お待ちしておりました。こちらにお願いします」
王宮の従者により、応接間に通される。
待つこと数分、いつものように陛下が入ってきた。
「待たせたな」
「いえ、構いません」
今日は公爵も一緒だった。
国の上級貴族二人を前にしても、物怖じしないのは流石、最強賢者と言うべきか。
陛下と公爵は樹たちの対面のソファーに腰を下ろした。
「それで、今日はどういったご用件ですか?」
どうせ面倒な事だろうが、面倒なら面倒でいいから早めに片付けてしまいたい。
「オリエンス王国と友好同盟を結んだのは知っているな?」
「はい、存じておりますが」
ウェールズ王国は数ヶ月前に、オリエンス王国と友好同盟を締結させた。
その証として、ミアの魔術学院への留学が決まったともいわれていた。
「そこで、オリエンス王国にうちの国の大使館を置くことになったのです」
今度は公爵が言った。
「はぁ、それが何か問題でも?」
樹としては、イマイチ話が見えてこなかった。
「はぁ、やっぱりちゃんと言わないと気付かんか。お前さんは」
陛下がため息交じりに行った。
「二人には、ウェールズ王国の大使としてオリエンス王国に行ってもらいたい」
陛下が単刀直入に言った。
「「はい!?」」
驚き過ぎてハモッた。
「二人って、俺とアリアですか!?」
「他に誰がいるんだね?」
陛下はニヤリとした笑みを浮かべた。
本当に食えない男である。
まあ、それでこそ一国の王と言えるといえばそれまでだが。
「マジすか?」
「マジだ」
陛下は真剣な面持ちだった。
「お前さんは転移魔法を使えるんだから、うちとオリエンスの王都に簡単に行き来できるからいいじゃないか」
「なるほど、そういう事ですか」
おそらく、これが樹を大使に選んだ大半の理由だろう。
転移魔法を使える大使なんて、国としては都合がいい。
「拒否権は?」
「ない!!」
陛下は笑顔で言い切った。
「ですよね」
樹は苦笑いを浮かべた。
「アリアは、ついて来てくれるか?」
隣に座っているアリアに尋ねた。
「もちろんでございます。どこまでもお供致します」
「ありがとう。では、お引き受けいたします」
樹は、オリエンス王都に大使として行くことを了承した。
「ありがとう。お前さんならそう言ってくれると思っていたよ」
嘘つけ。
ほとんど、というか強制だったじゃないか。
「来月の頭には行ってもらうから準備しておいてくれ。大使館はもうあるから心配するな」
「承知しました」
そこから、陛下たちの世間話に付き合わされ、王宮を後にするのであった。
「学院長の次は大使か……」
樹は大きなため息をついた。
「お疲れですね」
「ああ、どんどん責任が重くなっていく気がするよ」
樹たちの異世界世直しはまだまだ先が長そうであった。
――完――
【あとがき】
最終話をお読みいただきありがとうございます。
最終話に驚かれたかもしれませんが、この物語はここで一区切りとさせて頂きます。
正直、まだまだ書けますが、他の連載や原稿に集中したいということもあり、完結させる運びとなりました。
後日談など、時間に余裕が出来ましたら書いていくつもりです。
その時は、またよろしくお願いいたします。
他の作品も読んで頂けると大変嬉しいです。
最後までお付き合いありがとうございました。
では、またお会いしましょう。
あとがき失礼しました。
津ヶ谷
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