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16章 聖王国 後編
240、魔神 対 魔神
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──ブォンッ
空を切り裂く鉄拳がドラグロスの左頬を掠める。直後に放った唸るボディーブローがモロクの腹部を殴打する。
──ガィンッ
硬い。ドラグロスと違い鱗で覆われていない素肌の癖に、筋肉が金属音を放つ。
しかし硬いだけではなく柔軟性も備えているので、ドラグロスのとてつもない一撃が入ろうとも防ぐだけではなく威力を分散させる。
見た目だけで言えば可動域が制限されるほどに肥大化した筋肉だと思えるが、目にも止まらぬ速さで動き、腕の振りも体の反り具合も驚くほどに広く大きい。
戦いだけに備えられた完璧な肉体は攻防共に優れた戦闘体系へと進化しているのだ。
対するドラグロスも負けてはいない。天性の戦闘スキルを磨き上げ、同種では到達し得ないほどに鍛え上げられた肉体。魔力も高濃度且つ、総量を見れば魔神随一を誇る逸材。
肉体と魔力の成長と共に研ぎ澄まされた竜鱗はまさに竜の頂点を飾るにふさわしい。
甲乙つけ難い究極生物の頂上決戦。
しかしそんな二者の間でも、わずかだが確実な差が存在していた。
──ズンッ
「がはぁっ!!」
ズザザッと踏ん張る脚が後方に地面を抉る。竜鱗と腹筋に守られた腹部。その防御性能を貫通するほどの威力。同じボディーブローでもモロクの方が威力は上。
当然ドラグロスの攻撃もモロクへのダメージになっている。だがモロクの防御力に加え、果てしない戦いの末に鍛え上げられた肉体には打たれ強さがあった。
歴史を紐解けば強者を下した戦績はドラグロスの方が上回っているが、戦いの頻度と密度でモロクが大きく上回っている。
「どうした? うぬの実力はその程度かっ!」
──ビュンッ
モロクの振り下ろされた拳を紙一重で回避し、崩れるような体勢で蹴りを放つ。
バランスが崩れているとは思えぬほど鋭い蹴り。モロクは攻撃に即座に反応し、防御と同時にドラグロスを突き飛ばした。
本来なら尻もちをつくところだが、尻尾を巧みに操り、体を捻って足から着地する。それを待っていたかのようにモロクは天を衝くアッパーカットを繰り出した。
顎を粉砕する一撃。それをほんの少し首を横に傾けて回避する。
突風が吹き荒れ、獣人たちは遠くで観戦していたにもかかわらず、立っていた場所から3mは吹き飛ばされる。同時に雲が晴れ、雲間に隠れた太陽が顔を出した。
「ケッ……下品な攻撃だぜ。そんな殺意丸見えの攻撃がこの俺に当たるとでも思ってんのかよ?」
「負け惜しみはよせ。吾を失望させるな」
目と鼻の先で突き上げられた巨腕を間に挟みながら煽り合う。
モロクは腕を捻り、ドラグロスの首を巻き込みながらヘッドロックを決めようと動き出す。挟まれたら身動きが取れないと悟ったドラグロスはモロクの胸を突き飛ばしながら自身も後方に下がった。
そしてすぐさま地面を蹴り出し、距離を開けたと見せかけて一気に踏み込みながら直突きを放つ。
──ガンッ
モロクは後方に吹き飛ぶ。脚を組み替えながら着地し、ジロッとドラグロスを見る。顔面に放たれた直突きは寸でのところで滑り込ませた掌に防がれていた。
「チッ……面倒な野郎だな。こいつでパタっと倒れてくれりゃ楽なんだがよぉ……」
「ヌルい。うぬの拳など軽いわ」
「おいおい。この俺が本気でやってると思ってんのか? 舐められたもんだな。まだまだ全然イケるぜ?」
「ならば見せてみよ。うぬの本気を真っ向から叩き潰してくれる」
股をぐっと開き半身で腰を沈め、右拳を腰に握り込んで左手を前に突き出した。踏み込めば巨大な正拳突きが飛んできそうだ。
「……も止めようぜ。デザイアの目的は支配だ。魔神同士が争い合うなんざ意味ねぇぜ……」
「日和ったか? 竜神帝の名が泣くわ」
「はぁ……挑発かよ。付き合ってらんねぇなぁ……」
「負け犬が。そのねじ曲がった根性を矯正してくれよう」
ギョロギョロと周りを見渡し、震え上がっている獣人族をその瞳に映した。
「ちょっ……おいコラっ! どこ見てやがるんだテメーっ!!」
ドラグロスはモロクに闇雲に突っ込む。しかしモロクはドラグロスの拳を避けた後、ドラグロスの視界から消える。
モロクの足跡を追って視線を走らせると遠くで覗き見ていた獣人の首を片手で絞め上げながらドラグロスにかざす。先ほど国の名前を『獣王国ドラグロスだ』と触れ回っていた獣人だ。
「軟弱さの元凶はこれか?」
「野郎……人質のつもりかよ?」
「阿呆っ」
──パァンッ
モロクが少々力を入れると獣人の頭が爆散した。なんの取り引きも煽りもなくあっさりと殺す。
「てんめぇぇえっ!!」
──ドォンッ
一瞬にして間合いを詰めるドラグロスの凄まじい突きを分厚い胸板で受ける。先ほどまでの肉の感触は無くなり、時が止まったものを殴ったように拳が弾かれる。
「──怒りが足りんかっ?」
モロクはドラグロスの腕を取り、上空に投げ飛ばす。無防備となったドラグロスへの追撃のためか、モロクは腰をグッと落として両拳を腰にためる。
(来るっ!!)
ドラグロスはサッと防御姿勢を取るが、モロクはドラグロスに見向きもせずに気弾を周りに放った。逃げることも出来ず遠巻きで見ていた獣人たちはその一撃で消滅していく。
「っ!?……やめろコラァっ!!!」
体を捻って宙を蹴り、モロクに接敵する。
「邪魔だっ!!」
モロクとドラグロスの拳がかち合い、衝撃波が発生した。ドラグロスはそのままがむしゃらに拳や脚、尾を駆使して連撃を放つ。
速度、威力共に完璧な力だが、モロクはその攻撃に合わせた威力を放ち、すべて相殺する。
このままでは埒が明かないと感じたドラグロスはもう一歩踏み込んで拳を繰り出す。しかし、完璧なタイミングで拳を往なして手首を掴み、踏ん張ったドラグロスの足を払いつつ地面へと叩きつけた。
岩盤をぶち抜く勢いで地面へと埋まるドラグロス。地面に叩きつけられた程度では痛くも痒くもないが、次に来た拳はドラグロスの意識を刈り取るのに十分な一撃だった。
──ゴッ……バァアンッ
モロクの頂点から振り下ろした拳はドラグロスの顔面を殴り潰しながら大陸を半分にぶち割った。あまりの衝撃に地割れが蜘蛛の巣のように広がり、獣人の一部は逃げる間もなく落ちていく。
ほんの一瞬意識が飛んでいたドラグロスは地割れに飲まれそうになるが、無意識にモロクの手首を掴み難を逃れる。
掴んだと同時に意識を取り戻し、キョロキョロと目だけを動かして惨状を確認すると鋭い牙を剥き出しに怒りの表情を見せる。
「気は済んだかよテメェッ……!!」
「……違う。こんなものは序の口だ。この地を破壊し、獣人族を滅ぼす」
「いや、本格的に何がしてぇんだよっ!!」
「何がしたいかではなく何を為すかだ」
「はっ?!」
意味が分からな過ぎて思考が停止しかけたが、ドラグロスはその言葉に突っ込むよりも早く体を捻り、モロクの太い首目掛けて蹴りを浴びせる。
態勢を崩させるために掴んだ右手首を引っ張りながら放った右足の蹴りだが、モロクは蹴りの軌道を見切って左腕を滑り込ませる。
──ザキィッ
あまりに簡単に防がれた一撃だったが、これがドラグロスの策略。
足の甲をモロクの左腕に引っかけ、同時に手首から手を離し、蹴りの力と遠心力を利用してドラグロスはモロクの頭上へと飛び上がる。巨体の癖にトリッキーな動きを見せつけられ驚いたが、すぐさま対応しようと身を翻した。
──スパァンッ
ドラグロスはさらに空中で回転し、モロクが振り返った瞬間に顔面に尻尾を振り抜いた。完璧なタイミングに鞭のようにしなる尻尾の恐ろしい威力。
流石のモロクもたたらを踏んで後退する。そして鼻からブバッと血液が流れ落ち、防御が間に合わなかったことを視覚的に教えてくれた。
「しゃあっ!! どうだコラァっ!!」
「……うぅむ。良い攻撃だ。しかし鼻の内部が少し切れた程度で大喜びされても困る。想定される中で最も大したことがない一撃と言っておこう」
「チッ……負け惜しみかよ! だがそうでなくちゃなぁっ!!」
ドラグロスの広げた手に黒や紫が混じった毒々しい色の液体が流れ落ち、意志を持っているかのように蠢いて硬質化する。硬質化した形状は巨大な二振りの斧のようだった。
「俺の国を破壊しやがったんだ。原形を保てねぇぐらいぐっちゃぐちゃにしてやるよっ!!」
「おぉっ!! それだっ! 怒りっ! 闘気っ! 殺意っ! まさしく憤怒の魔神に相応しいっ!!」
モロクは両手を広げてドラグロスの戦闘意欲を迎え入れる。大喜びのモロクに訝しむドラグロス。
「……何なんだお前……?」
「ハッキリ言おう。吾は嫉妬している。うぬに土を付けた何者かが憎くてたまらぬ。先を越されてしまった状況に腸が煮えくり返り、今もまだうぬの背後に何者かの影がチラついているせいで憎悪の炎が燻ぶり続けている」
「はぁ?」
「しかしそのようなことはどうでも良い。いや、むしろ感謝している。デザイア様の部下になったことで叶わなくなった竜神帝との一騎打ち。念願叶ってうぬと殺し合うことが出来るのは、うぬを下した何者かに他ならぬのだから」
グッと腰を下ろして右拳を腰にため、左手を前に突き出す。戦闘態勢に入ったモロクは丹田に力を籠め、全身から溢れ出る闘気を纏う。
モロクの固有能力『戦闘気』。
修道僧や仙人が用いる『気』とは異なるものであり、幾千幾万の殺し合いの果てに死の山を築き、なおも力を求める修羅だけが纏える力。
モロクが自らに課した力の制御をこじ開けることで全身から目に見える闘気を発する。この気を纏う時、モロクの身体能力は今以上に向上し『闘神』となる。
「──求道の魔神モロク。推して参る」
空を切り裂く鉄拳がドラグロスの左頬を掠める。直後に放った唸るボディーブローがモロクの腹部を殴打する。
──ガィンッ
硬い。ドラグロスと違い鱗で覆われていない素肌の癖に、筋肉が金属音を放つ。
しかし硬いだけではなく柔軟性も備えているので、ドラグロスのとてつもない一撃が入ろうとも防ぐだけではなく威力を分散させる。
見た目だけで言えば可動域が制限されるほどに肥大化した筋肉だと思えるが、目にも止まらぬ速さで動き、腕の振りも体の反り具合も驚くほどに広く大きい。
戦いだけに備えられた完璧な肉体は攻防共に優れた戦闘体系へと進化しているのだ。
対するドラグロスも負けてはいない。天性の戦闘スキルを磨き上げ、同種では到達し得ないほどに鍛え上げられた肉体。魔力も高濃度且つ、総量を見れば魔神随一を誇る逸材。
肉体と魔力の成長と共に研ぎ澄まされた竜鱗はまさに竜の頂点を飾るにふさわしい。
甲乙つけ難い究極生物の頂上決戦。
しかしそんな二者の間でも、わずかだが確実な差が存在していた。
──ズンッ
「がはぁっ!!」
ズザザッと踏ん張る脚が後方に地面を抉る。竜鱗と腹筋に守られた腹部。その防御性能を貫通するほどの威力。同じボディーブローでもモロクの方が威力は上。
当然ドラグロスの攻撃もモロクへのダメージになっている。だがモロクの防御力に加え、果てしない戦いの末に鍛え上げられた肉体には打たれ強さがあった。
歴史を紐解けば強者を下した戦績はドラグロスの方が上回っているが、戦いの頻度と密度でモロクが大きく上回っている。
「どうした? うぬの実力はその程度かっ!」
──ビュンッ
モロクの振り下ろされた拳を紙一重で回避し、崩れるような体勢で蹴りを放つ。
バランスが崩れているとは思えぬほど鋭い蹴り。モロクは攻撃に即座に反応し、防御と同時にドラグロスを突き飛ばした。
本来なら尻もちをつくところだが、尻尾を巧みに操り、体を捻って足から着地する。それを待っていたかのようにモロクは天を衝くアッパーカットを繰り出した。
顎を粉砕する一撃。それをほんの少し首を横に傾けて回避する。
突風が吹き荒れ、獣人たちは遠くで観戦していたにもかかわらず、立っていた場所から3mは吹き飛ばされる。同時に雲が晴れ、雲間に隠れた太陽が顔を出した。
「ケッ……下品な攻撃だぜ。そんな殺意丸見えの攻撃がこの俺に当たるとでも思ってんのかよ?」
「負け惜しみはよせ。吾を失望させるな」
目と鼻の先で突き上げられた巨腕を間に挟みながら煽り合う。
モロクは腕を捻り、ドラグロスの首を巻き込みながらヘッドロックを決めようと動き出す。挟まれたら身動きが取れないと悟ったドラグロスはモロクの胸を突き飛ばしながら自身も後方に下がった。
そしてすぐさま地面を蹴り出し、距離を開けたと見せかけて一気に踏み込みながら直突きを放つ。
──ガンッ
モロクは後方に吹き飛ぶ。脚を組み替えながら着地し、ジロッとドラグロスを見る。顔面に放たれた直突きは寸でのところで滑り込ませた掌に防がれていた。
「チッ……面倒な野郎だな。こいつでパタっと倒れてくれりゃ楽なんだがよぉ……」
「ヌルい。うぬの拳など軽いわ」
「おいおい。この俺が本気でやってると思ってんのか? 舐められたもんだな。まだまだ全然イケるぜ?」
「ならば見せてみよ。うぬの本気を真っ向から叩き潰してくれる」
股をぐっと開き半身で腰を沈め、右拳を腰に握り込んで左手を前に突き出した。踏み込めば巨大な正拳突きが飛んできそうだ。
「……も止めようぜ。デザイアの目的は支配だ。魔神同士が争い合うなんざ意味ねぇぜ……」
「日和ったか? 竜神帝の名が泣くわ」
「はぁ……挑発かよ。付き合ってらんねぇなぁ……」
「負け犬が。そのねじ曲がった根性を矯正してくれよう」
ギョロギョロと周りを見渡し、震え上がっている獣人族をその瞳に映した。
「ちょっ……おいコラっ! どこ見てやがるんだテメーっ!!」
ドラグロスはモロクに闇雲に突っ込む。しかしモロクはドラグロスの拳を避けた後、ドラグロスの視界から消える。
モロクの足跡を追って視線を走らせると遠くで覗き見ていた獣人の首を片手で絞め上げながらドラグロスにかざす。先ほど国の名前を『獣王国ドラグロスだ』と触れ回っていた獣人だ。
「軟弱さの元凶はこれか?」
「野郎……人質のつもりかよ?」
「阿呆っ」
──パァンッ
モロクが少々力を入れると獣人の頭が爆散した。なんの取り引きも煽りもなくあっさりと殺す。
「てんめぇぇえっ!!」
──ドォンッ
一瞬にして間合いを詰めるドラグロスの凄まじい突きを分厚い胸板で受ける。先ほどまでの肉の感触は無くなり、時が止まったものを殴ったように拳が弾かれる。
「──怒りが足りんかっ?」
モロクはドラグロスの腕を取り、上空に投げ飛ばす。無防備となったドラグロスへの追撃のためか、モロクは腰をグッと落として両拳を腰にためる。
(来るっ!!)
ドラグロスはサッと防御姿勢を取るが、モロクはドラグロスに見向きもせずに気弾を周りに放った。逃げることも出来ず遠巻きで見ていた獣人たちはその一撃で消滅していく。
「っ!?……やめろコラァっ!!!」
体を捻って宙を蹴り、モロクに接敵する。
「邪魔だっ!!」
モロクとドラグロスの拳がかち合い、衝撃波が発生した。ドラグロスはそのままがむしゃらに拳や脚、尾を駆使して連撃を放つ。
速度、威力共に完璧な力だが、モロクはその攻撃に合わせた威力を放ち、すべて相殺する。
このままでは埒が明かないと感じたドラグロスはもう一歩踏み込んで拳を繰り出す。しかし、完璧なタイミングで拳を往なして手首を掴み、踏ん張ったドラグロスの足を払いつつ地面へと叩きつけた。
岩盤をぶち抜く勢いで地面へと埋まるドラグロス。地面に叩きつけられた程度では痛くも痒くもないが、次に来た拳はドラグロスの意識を刈り取るのに十分な一撃だった。
──ゴッ……バァアンッ
モロクの頂点から振り下ろした拳はドラグロスの顔面を殴り潰しながら大陸を半分にぶち割った。あまりの衝撃に地割れが蜘蛛の巣のように広がり、獣人の一部は逃げる間もなく落ちていく。
ほんの一瞬意識が飛んでいたドラグロスは地割れに飲まれそうになるが、無意識にモロクの手首を掴み難を逃れる。
掴んだと同時に意識を取り戻し、キョロキョロと目だけを動かして惨状を確認すると鋭い牙を剥き出しに怒りの表情を見せる。
「気は済んだかよテメェッ……!!」
「……違う。こんなものは序の口だ。この地を破壊し、獣人族を滅ぼす」
「いや、本格的に何がしてぇんだよっ!!」
「何がしたいかではなく何を為すかだ」
「はっ?!」
意味が分からな過ぎて思考が停止しかけたが、ドラグロスはその言葉に突っ込むよりも早く体を捻り、モロクの太い首目掛けて蹴りを浴びせる。
態勢を崩させるために掴んだ右手首を引っ張りながら放った右足の蹴りだが、モロクは蹴りの軌道を見切って左腕を滑り込ませる。
──ザキィッ
あまりに簡単に防がれた一撃だったが、これがドラグロスの策略。
足の甲をモロクの左腕に引っかけ、同時に手首から手を離し、蹴りの力と遠心力を利用してドラグロスはモロクの頭上へと飛び上がる。巨体の癖にトリッキーな動きを見せつけられ驚いたが、すぐさま対応しようと身を翻した。
──スパァンッ
ドラグロスはさらに空中で回転し、モロクが振り返った瞬間に顔面に尻尾を振り抜いた。完璧なタイミングに鞭のようにしなる尻尾の恐ろしい威力。
流石のモロクもたたらを踏んで後退する。そして鼻からブバッと血液が流れ落ち、防御が間に合わなかったことを視覚的に教えてくれた。
「しゃあっ!! どうだコラァっ!!」
「……うぅむ。良い攻撃だ。しかし鼻の内部が少し切れた程度で大喜びされても困る。想定される中で最も大したことがない一撃と言っておこう」
「チッ……負け惜しみかよ! だがそうでなくちゃなぁっ!!」
ドラグロスの広げた手に黒や紫が混じった毒々しい色の液体が流れ落ち、意志を持っているかのように蠢いて硬質化する。硬質化した形状は巨大な二振りの斧のようだった。
「俺の国を破壊しやがったんだ。原形を保てねぇぐらいぐっちゃぐちゃにしてやるよっ!!」
「おぉっ!! それだっ! 怒りっ! 闘気っ! 殺意っ! まさしく憤怒の魔神に相応しいっ!!」
モロクは両手を広げてドラグロスの戦闘意欲を迎え入れる。大喜びのモロクに訝しむドラグロス。
「……何なんだお前……?」
「ハッキリ言おう。吾は嫉妬している。うぬに土を付けた何者かが憎くてたまらぬ。先を越されてしまった状況に腸が煮えくり返り、今もまだうぬの背後に何者かの影がチラついているせいで憎悪の炎が燻ぶり続けている」
「はぁ?」
「しかしそのようなことはどうでも良い。いや、むしろ感謝している。デザイア様の部下になったことで叶わなくなった竜神帝との一騎打ち。念願叶ってうぬと殺し合うことが出来るのは、うぬを下した何者かに他ならぬのだから」
グッと腰を下ろして右拳を腰にため、左手を前に突き出す。戦闘態勢に入ったモロクは丹田に力を籠め、全身から溢れ出る闘気を纏う。
モロクの固有能力『戦闘気』。
修道僧や仙人が用いる『気』とは異なるものであり、幾千幾万の殺し合いの果てに死の山を築き、なおも力を求める修羅だけが纏える力。
モロクが自らに課した力の制御をこじ開けることで全身から目に見える闘気を発する。この気を纏う時、モロクの身体能力は今以上に向上し『闘神』となる。
「──求道の魔神モロク。推して参る」
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