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16章 聖王国 後編
243、天地開闢
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魔神はその名の通り神に等しい力を持つ最強の存在。
故に存在しているだけで世界すら崩壊させてしまう。
つまり彼らは自身の住まう世界を崩壊させぬよう、常に手加減をすることにより他者と共存を許されている。
ここに相対する2柱の魔神とて同じこと。
ドラグロスは国を持ち、部下を増やし、守るものを得ることで力を押さえ込んだ。
モロクは強者が生まれる世界で永遠に戦い続けるため、いずれ来る全力の戦いを夢見て手加減を覚えた。
強すぎるが故の孤独。
誰も到達し得ないということは誰にも理解され得ないということ。
だからこそ頂点となる──。
*
「……いつか聞いたことがある。九つの首を持つ凶悪な竜。全てを破壊する規格外の巨体とその力は世界を最も簡単に破壊すると……」
「あ? なんだ突然?」
ドラグロスはメリメリと全身に力を入れつつモロクの出方を伺う。モロクはドラグロスに構うことなく続ける。
「それがうぬの支配していた世界『ロストファンタズマ』に居ること、そして竜の頂点である『竜神帝』が関係していることを知ったのはデザイア様の傘下に入ったあの日。うぬを初めて目にしたあの日から戦いたくてうずうずしていた」
「マジかよ。ってことはここでの奇行はまさか……?」
「その通りだ。うぬが憤怒の魔神とデザイア様から二つ名を頂いたことを知り、もしうぬの本気とやるのなら正気を失うほどに怒りを覚えさせるしかないと悟った。デザイア様の目を盗み、いずれどこかのタイミングで戦おうと決めていたのだ。だがいくら小突いたところでうぬは悪態を吐くばかり……。殺す殺すと妄言を吐き散らすばかりで一向に攻撃すらしてこない。夢にまで見た竜神帝との殺し合いを半ば諦めていたが……」
モロクは気を高め、全身の筋肉を膨張させる。目をカッと見開いた。
「ここに吾の願いは成就された。さぁ、思う存分殺し合おう」
──ドフッ
地面を軽く蹴り、空気の膜を纏いながらフワリとドラグロスに接近する。
(野郎……誘ってやがる)
ドラグロスが攻撃しやすいように体を開き、最初に仕掛けさせようとしているのはすぐに分かった。覚醒ドラグロスの攻撃を受け流せなかったことを払拭しようとしているのか、はたまた防御性能が上がった金属の如き肌で全てを受け止めようとしているのか、または完全回避してからのカウンター狙いか。
いずれにしても全能力を解放したことによるモロクの自信がドラグロスにも伝わってきた。
(調子こきやがってっ! そんなに自信があんなら俺の一撃を捌いてみせろやっ!!)
空気を切り裂くドラグロスの拳がモロクの顔面に放たれる。
──ミリッ……メゴッ
狙った箇所に寸分違わずめり込んでいく拳。だが、同時にドラグロスの顔面にも拳がめり込んだ。
──ドゴンッ
防ぐでもなく捌くでもない。攻撃が当たることも厭わないクロスカウンター。骨が軋む音が体内から漏れ出る。フラッと互いが背後に揺れる。しかし2人とも軸足で踏ん張り、さらに拳を振るう。
──ザキィッ
殴り殴られ、蹴り蹴られ。足を止め、一歩も引かない力の応酬。
「ガフッ……! はっ!! 上等だボケがっ!! 根性なら誰にも負けねぇぞっ!!」
「ブフッ……いや、もう良い。もう分かった。吾とうぬの実力は拮抗している。こうでなければ面白くないっ」
モロクはニヤリと不敵に笑う。その顔が気に食わなかったドラグロスは腹に前蹴りを放つ。魔神以外なら問答無用で貫通するほどの前蹴りをモロクは紙一重で交わして脇に抱え込む。そのまま引っこ抜くように背後に投げ飛ばした。
(チッ! クソがっ! してやられたぜっ!)
ドラグロスは空中で体を捻って体勢を立て直すが、モロクは次の技に移行していた。
「塵一片も残さず消えよ──戦鬼・荒覇吐っ!!」
全身から捻り出すように放った気弾は、ドラグロスとの戦闘中に放った『鬼哭』と呼ばれる気弾の10倍を超える大きさだった。その威力は大陸すらも消し去る威力であり、当たればドラグロスでさえ無事には済まない。
「しゃらくせぇっ!! 毒を持って毒を制すっ!! 乱れ撃ちだコラァっ!!」
ドラグロスは気弾に対して毒液で作った様々な武器を黄金のオーラを纏わせ、のたうつ大蛇のように無数に出現させる。
1つ1つの威力は巨大な気弾の前に為す術もなく消滅するが、それが絶えず千、二千と衝突してくれば話は別だ。超巨大な肉塊を竜の群れが食い荒らすように気弾は消滅。ドラグロスの毒液も同時に霧散する。
それを見越してドラグロスの懐に踏み込んだモロクは、一瞬の隙をついてドラグロスの腹部に掌底をお見舞いする。
「──鬼界・天魔波旬っ!!」
──パァンッ
体内に気を送り込み、破裂、粉砕させる攻撃であり、敵を崩壊させた後に魂を抜き取りモロクの糧とする無情の技。この力で何人もの闘士を粉々にし、魂を喰らうことで更なる力を得てきた。
だがドラグロスの体を粉砕することは出来ない。今まで戦ってきた敵とは比べ物にならない強者であることは言うまでもない。
実際モロクもドラグロスが破裂するなど期待すらしていないが、体内に気を送り込むことで鱗や筋肉を含む防御能力を完全に無視した内部破壊は可能だ。この攻撃によりドラグロスに大きな隙が生まれることは火を見るより明らか。
しかし完璧に決まって吹き飛ぶドラグロスの目は痛みすら感じていないようにギラリと光り、モロクを睨み付けていた。
「へっ! こんなもんかよっ!」
さらに憎まれ口も叩ける元気な様子。流石のモロクも苛立ちが先行する。
「まだだっ──致死竜っ!!」
体を大きく捻って腕を振るう。その腕に気がまとわりつき、両腕を同時に突き出すことにより収束した気が巨大な竜となって現れた。うねる竜は旋回してモロクの背後に回ると、一気にドラグロスに向かって突進する。
その竜の頭にモロクは飛び乗り、腰を落として右手を振り上げ、左手を突き出し、見得を切るような大袈裟な格好を見せた。
「色即是空、空即是色──凶気乱武っ!!」
モロクの体から絶えず漏れ出ている真っ白な気が物質のように形を変化させ、武者鎧のような姿へと変貌していく。その手には刃渡が長く、刃幅の太い斬馬刀が握り込まれ、モロクの周りにも同じような武器が浮いてついてくる。
「はっ! お前もそういうの持ってんだなぁっ! 腕力はどうした腕力はぁっ!!」
ドラグロスも負けじと能力を解放する。汗腺から汗が噴き出すように全身から毒を放出し、黄金のオーラと混ぜて手前に巨大な毒の玉を出現させる。
「食らいやがれっ!!──悪染九頭っ!!」
巨大な毒玉が爆発したかのような勢いで九つの首を伸ばし、凶悪な竜の頭が出現する。九種類の状態異常を起こす毒を持つ蛇竜を使役するドラグロスの十八番。
この使役する蛇竜はドラグロスの意のままに動かせ、ドラグロスの竜鱗と同じ硬度を持ち、自動的に主であるドラグロスを守ろうとする今まさに打ってつけの力である。
ドラグロスはその上で毒の武器を生成し、モロクに倣って竜の頭に乗る。
巨大な気の竜と九つの首を持つ竜との怪獣対決。さらにそれを操る魔神たちの直接対決。
ドラゴンライダーと化したモロクとドラグロスはドラゴン同士が接触したと同時に気の刃と毒の刃をかち合わせた。
武器を持つモロクは舞うように剣を振るい、ドラグロスは本能のままに叩き込む。
気の武器は思ったよりも脆く、纏った鎧もドラグロスの本気の攻撃の前にバリバリと剥がれていく。
「オラオラァッ!! こいつで終いだぁっ!!」
息もつかせぬ斬撃の中、一瞬の隙を突いてドラグロスの2倍はある巨大な戦斧を出現させ、頭から真っ二つにしようと振り下ろす。先ほどまでは拳で破壊出来た戦斧だが、ドラグオスが覚醒した今同じことをすれば確実に腕を失う。
絶対に勝てると踏んで前のめりになるドラグロスにモロクはニヤリと笑った。
「このまま押し切れると思っているとは……学習せん奴だっ」
その声が届いたかは定かではないが、モロクの不敵な笑みにドラグロスの思考は一瞬乱される。
「──爆脱っ!!」
──ボンッ
その瞬間、モロクが纏っていた鎧も武器も爆発した。その凄まじい威力はドラグロスの生成した戦斧を巻き込んで粉砕するほどのものだった。ドラグロスには傷こそ付かないが斥力が働いたように強制的に体を開かされた。
「チッ!? またかよ……っ!!」
ほんのわずかな硬直。しかしこれが最大の隙。
モロクは気を放射したと同時にドラグロスの腰よりも低く潜り込む。気の膜を掻き分けて連撃を放たれるかと内心身構えていたのだが、姿勢が低すぎてモロクの姿を見失う。
それを見越していたモロクはドラグロスの困惑を突いて思いっきり蹴り上げた。衝撃波が吹き荒れ、ドラグロスは上空へと吹き飛ぶ。それを追ってモロクも跳躍した。
(うぬは強い。竜神帝を侮るべきでないことも、底力も知った。しかし──)
ドラグロスを追って空気を蹴りながら加速する。
拳を握り込み、全エネルギーを一点に集中させるモロク最強の技をドラグロスに放とうとしている。その拳は神すらも打ち砕くとされる。
未だ求道の道半ばにおいて、モロクが唯一到達したと確信する究極の奥義。
(この夢の戦いに終止符を打つ。この技を以ってうぬを滅ぼそうぞっ!)
モロクは万感の思いを込めて最後の一撃を放とうとするが、着弾地点にドラグロスの姿はない。正確にはもっと高く飛んでいた。
「ああっ! クソがっ!! 空中に蹴り上げんのが最近のトレンドなのかよっ!? おいっ!!」
ドラグロスは空中で体勢を立て直し、空気を蹴って更に上昇していた。ドラグロスの対応の早さに驚愕したが、モロクは即座に修正する。
「……よかろう。どの道やることは変わらん。──我が拳、一切悉くを滅する也っ!!」
歪みが出来るほど空間を蹴り込み、惑星を飛び出すのではないかと思わせる加速でドラグロスに迫る。ドラグロスも負けじと本気で宙空を蹴り、隕石の如き速度でモロクに接敵する。
「死ねっ!! オラァッ!!」
叫ぶドラグロスを間合いに捉えたモロクは拳を突き上げた。
「──鬼神・業魔乃利拳っ!!!」
──カッ
衝突の瞬間、光が瞬く。
白く。白く──。
故に存在しているだけで世界すら崩壊させてしまう。
つまり彼らは自身の住まう世界を崩壊させぬよう、常に手加減をすることにより他者と共存を許されている。
ここに相対する2柱の魔神とて同じこと。
ドラグロスは国を持ち、部下を増やし、守るものを得ることで力を押さえ込んだ。
モロクは強者が生まれる世界で永遠に戦い続けるため、いずれ来る全力の戦いを夢見て手加減を覚えた。
強すぎるが故の孤独。
誰も到達し得ないということは誰にも理解され得ないということ。
だからこそ頂点となる──。
*
「……いつか聞いたことがある。九つの首を持つ凶悪な竜。全てを破壊する規格外の巨体とその力は世界を最も簡単に破壊すると……」
「あ? なんだ突然?」
ドラグロスはメリメリと全身に力を入れつつモロクの出方を伺う。モロクはドラグロスに構うことなく続ける。
「それがうぬの支配していた世界『ロストファンタズマ』に居ること、そして竜の頂点である『竜神帝』が関係していることを知ったのはデザイア様の傘下に入ったあの日。うぬを初めて目にしたあの日から戦いたくてうずうずしていた」
「マジかよ。ってことはここでの奇行はまさか……?」
「その通りだ。うぬが憤怒の魔神とデザイア様から二つ名を頂いたことを知り、もしうぬの本気とやるのなら正気を失うほどに怒りを覚えさせるしかないと悟った。デザイア様の目を盗み、いずれどこかのタイミングで戦おうと決めていたのだ。だがいくら小突いたところでうぬは悪態を吐くばかり……。殺す殺すと妄言を吐き散らすばかりで一向に攻撃すらしてこない。夢にまで見た竜神帝との殺し合いを半ば諦めていたが……」
モロクは気を高め、全身の筋肉を膨張させる。目をカッと見開いた。
「ここに吾の願いは成就された。さぁ、思う存分殺し合おう」
──ドフッ
地面を軽く蹴り、空気の膜を纏いながらフワリとドラグロスに接近する。
(野郎……誘ってやがる)
ドラグロスが攻撃しやすいように体を開き、最初に仕掛けさせようとしているのはすぐに分かった。覚醒ドラグロスの攻撃を受け流せなかったことを払拭しようとしているのか、はたまた防御性能が上がった金属の如き肌で全てを受け止めようとしているのか、または完全回避してからのカウンター狙いか。
いずれにしても全能力を解放したことによるモロクの自信がドラグロスにも伝わってきた。
(調子こきやがってっ! そんなに自信があんなら俺の一撃を捌いてみせろやっ!!)
空気を切り裂くドラグロスの拳がモロクの顔面に放たれる。
──ミリッ……メゴッ
狙った箇所に寸分違わずめり込んでいく拳。だが、同時にドラグロスの顔面にも拳がめり込んだ。
──ドゴンッ
防ぐでもなく捌くでもない。攻撃が当たることも厭わないクロスカウンター。骨が軋む音が体内から漏れ出る。フラッと互いが背後に揺れる。しかし2人とも軸足で踏ん張り、さらに拳を振るう。
──ザキィッ
殴り殴られ、蹴り蹴られ。足を止め、一歩も引かない力の応酬。
「ガフッ……! はっ!! 上等だボケがっ!! 根性なら誰にも負けねぇぞっ!!」
「ブフッ……いや、もう良い。もう分かった。吾とうぬの実力は拮抗している。こうでなければ面白くないっ」
モロクはニヤリと不敵に笑う。その顔が気に食わなかったドラグロスは腹に前蹴りを放つ。魔神以外なら問答無用で貫通するほどの前蹴りをモロクは紙一重で交わして脇に抱え込む。そのまま引っこ抜くように背後に投げ飛ばした。
(チッ! クソがっ! してやられたぜっ!)
ドラグロスは空中で体を捻って体勢を立て直すが、モロクは次の技に移行していた。
「塵一片も残さず消えよ──戦鬼・荒覇吐っ!!」
全身から捻り出すように放った気弾は、ドラグロスとの戦闘中に放った『鬼哭』と呼ばれる気弾の10倍を超える大きさだった。その威力は大陸すらも消し去る威力であり、当たればドラグロスでさえ無事には済まない。
「しゃらくせぇっ!! 毒を持って毒を制すっ!! 乱れ撃ちだコラァっ!!」
ドラグロスは気弾に対して毒液で作った様々な武器を黄金のオーラを纏わせ、のたうつ大蛇のように無数に出現させる。
1つ1つの威力は巨大な気弾の前に為す術もなく消滅するが、それが絶えず千、二千と衝突してくれば話は別だ。超巨大な肉塊を竜の群れが食い荒らすように気弾は消滅。ドラグロスの毒液も同時に霧散する。
それを見越してドラグロスの懐に踏み込んだモロクは、一瞬の隙をついてドラグロスの腹部に掌底をお見舞いする。
「──鬼界・天魔波旬っ!!」
──パァンッ
体内に気を送り込み、破裂、粉砕させる攻撃であり、敵を崩壊させた後に魂を抜き取りモロクの糧とする無情の技。この力で何人もの闘士を粉々にし、魂を喰らうことで更なる力を得てきた。
だがドラグロスの体を粉砕することは出来ない。今まで戦ってきた敵とは比べ物にならない強者であることは言うまでもない。
実際モロクもドラグロスが破裂するなど期待すらしていないが、体内に気を送り込むことで鱗や筋肉を含む防御能力を完全に無視した内部破壊は可能だ。この攻撃によりドラグロスに大きな隙が生まれることは火を見るより明らか。
しかし完璧に決まって吹き飛ぶドラグロスの目は痛みすら感じていないようにギラリと光り、モロクを睨み付けていた。
「へっ! こんなもんかよっ!」
さらに憎まれ口も叩ける元気な様子。流石のモロクも苛立ちが先行する。
「まだだっ──致死竜っ!!」
体を大きく捻って腕を振るう。その腕に気がまとわりつき、両腕を同時に突き出すことにより収束した気が巨大な竜となって現れた。うねる竜は旋回してモロクの背後に回ると、一気にドラグロスに向かって突進する。
その竜の頭にモロクは飛び乗り、腰を落として右手を振り上げ、左手を突き出し、見得を切るような大袈裟な格好を見せた。
「色即是空、空即是色──凶気乱武っ!!」
モロクの体から絶えず漏れ出ている真っ白な気が物質のように形を変化させ、武者鎧のような姿へと変貌していく。その手には刃渡が長く、刃幅の太い斬馬刀が握り込まれ、モロクの周りにも同じような武器が浮いてついてくる。
「はっ! お前もそういうの持ってんだなぁっ! 腕力はどうした腕力はぁっ!!」
ドラグロスも負けじと能力を解放する。汗腺から汗が噴き出すように全身から毒を放出し、黄金のオーラと混ぜて手前に巨大な毒の玉を出現させる。
「食らいやがれっ!!──悪染九頭っ!!」
巨大な毒玉が爆発したかのような勢いで九つの首を伸ばし、凶悪な竜の頭が出現する。九種類の状態異常を起こす毒を持つ蛇竜を使役するドラグロスの十八番。
この使役する蛇竜はドラグロスの意のままに動かせ、ドラグロスの竜鱗と同じ硬度を持ち、自動的に主であるドラグロスを守ろうとする今まさに打ってつけの力である。
ドラグロスはその上で毒の武器を生成し、モロクに倣って竜の頭に乗る。
巨大な気の竜と九つの首を持つ竜との怪獣対決。さらにそれを操る魔神たちの直接対決。
ドラゴンライダーと化したモロクとドラグロスはドラゴン同士が接触したと同時に気の刃と毒の刃をかち合わせた。
武器を持つモロクは舞うように剣を振るい、ドラグロスは本能のままに叩き込む。
気の武器は思ったよりも脆く、纏った鎧もドラグロスの本気の攻撃の前にバリバリと剥がれていく。
「オラオラァッ!! こいつで終いだぁっ!!」
息もつかせぬ斬撃の中、一瞬の隙を突いてドラグロスの2倍はある巨大な戦斧を出現させ、頭から真っ二つにしようと振り下ろす。先ほどまでは拳で破壊出来た戦斧だが、ドラグオスが覚醒した今同じことをすれば確実に腕を失う。
絶対に勝てると踏んで前のめりになるドラグロスにモロクはニヤリと笑った。
「このまま押し切れると思っているとは……学習せん奴だっ」
その声が届いたかは定かではないが、モロクの不敵な笑みにドラグロスの思考は一瞬乱される。
「──爆脱っ!!」
──ボンッ
その瞬間、モロクが纏っていた鎧も武器も爆発した。その凄まじい威力はドラグロスの生成した戦斧を巻き込んで粉砕するほどのものだった。ドラグロスには傷こそ付かないが斥力が働いたように強制的に体を開かされた。
「チッ!? またかよ……っ!!」
ほんのわずかな硬直。しかしこれが最大の隙。
モロクは気を放射したと同時にドラグロスの腰よりも低く潜り込む。気の膜を掻き分けて連撃を放たれるかと内心身構えていたのだが、姿勢が低すぎてモロクの姿を見失う。
それを見越していたモロクはドラグロスの困惑を突いて思いっきり蹴り上げた。衝撃波が吹き荒れ、ドラグロスは上空へと吹き飛ぶ。それを追ってモロクも跳躍した。
(うぬは強い。竜神帝を侮るべきでないことも、底力も知った。しかし──)
ドラグロスを追って空気を蹴りながら加速する。
拳を握り込み、全エネルギーを一点に集中させるモロク最強の技をドラグロスに放とうとしている。その拳は神すらも打ち砕くとされる。
未だ求道の道半ばにおいて、モロクが唯一到達したと確信する究極の奥義。
(この夢の戦いに終止符を打つ。この技を以ってうぬを滅ぼそうぞっ!)
モロクは万感の思いを込めて最後の一撃を放とうとするが、着弾地点にドラグロスの姿はない。正確にはもっと高く飛んでいた。
「ああっ! クソがっ!! 空中に蹴り上げんのが最近のトレンドなのかよっ!? おいっ!!」
ドラグロスは空中で体勢を立て直し、空気を蹴って更に上昇していた。ドラグロスの対応の早さに驚愕したが、モロクは即座に修正する。
「……よかろう。どの道やることは変わらん。──我が拳、一切悉くを滅する也っ!!」
歪みが出来るほど空間を蹴り込み、惑星を飛び出すのではないかと思わせる加速でドラグロスに迫る。ドラグロスも負けじと本気で宙空を蹴り、隕石の如き速度でモロクに接敵する。
「死ねっ!! オラァッ!!」
叫ぶドラグロスを間合いに捉えたモロクは拳を突き上げた。
「──鬼神・業魔乃利拳っ!!!」
──カッ
衝突の瞬間、光が瞬く。
白く。白く──。
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