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16章 聖王国 後編
247、ダンジョンに浸る
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ピラミッドの深部に向かってひた走るレッドたちは思った以上に早く10階層に辿り着いた。
それもそのはず、とにかく下へ降りるために不必要な探索は控え、モンスターとの戦いも出来るだけ避けていれば短縮も可能だ。
そしてここまで下りてきて大体ダンジョンの仕組みが分かって来た。
まず1フロアごとの広さは思ったよりも狭い。通路がやたら長く、時折開けた場所があり、モンスターもそれなりに居るが大した実力はないので、一掃したら休憩スペースとして使えそうだ。
但し、各フロア罠だらけなので油断は禁物。罠にかかって死んでいったのであろう死体もゴロゴロあり気が抜けない。モンスターよりも罠の方が多いのではないかと錯覚するほど今まで入って来たダンジョンの数倍は設置してある。
3、4か所ある広間のどこかに下に降りる階段や坂があり、探すのに一苦労かかる。たまに行き止まりの広間があるので引き返す必要があり、もしモンスターに追われ、息も絶え絶えにこの袋小路に辿り着いた場合は死を覚悟しなければならない。分かりやすく連想出来るものがあるとすればアリの巣に近い。
モンスターはアンデッドだけに留まらず、人間大の昆虫や巨大アルマジロ、モグラのような鋭い爪を持つ二足歩行の齧歯類や巨大なナメクジが通路を塞ぐことがある。
アンデッド以外に共通するのは一様に視覚が退化していることだ。太陽光が入らないダンジョンで生活しているモンスターたちは他の感覚器官に頼っているので、隠れていても見つかる可能性がある。
でも目が見えないということは明かりを灯しても視認されないので、先に視認出来れば先制攻撃が可能。反面アンデッドは光に反応して襲ってくるので光を出し過ぎるのは要注意となる。
とはいえ、レッドが猛威を振るい続ける限りモンスターの脅威など無いも同じである。
11階層への道を見つけ、広間の一角に荷下ろしして休憩に入る。ティオは水筒の水を一口飲んで一息つきつつレッドをじっと凝視する。その目に気付いたシルニカが唇を尖らせた。
「何見てんのよ?」
「あ、いや、レッドさんが気になってつい……」
「えっ?! ど、どういう意味?」
「どうって……ちょっとレッドさん強すぎない? 全く疲れていないように見えるんだけど……」
レッドも水筒の水を飲んだが、休むことなくすぐに見張りに立っていた。リディアも気になるのかレッドから目が離せない。
「あ、当たり前のように荷物を持って戦ってましたよ? しかもどのモンスターも微塵切り。それも一息で倒しちゃうから私たちの出番がないっていうか……」
「だよねだよね! あの腕前なら七元徳全員掛かりでも怪しいかも……?」
ティオはリディアに乗り出すように答える。シルニカはふんっと鼻を鳴らす。
「何言ってんのよ。リディアは私を守ってくれたし、ティオと私は光の魔法でずっと照らしながらフロアごとのマッピングをしてたじゃない。あいつが一人で来たなら一瞬で迷ってたわよ。最初から案内役として一緒に来たんでしょ?」
「それはそうなんだけど……あの立ち姿。とてもじゃ無いけど迷子になりそうも無いんだけど?」
「ああ、あれ? 見た目だけ見た目だけ。街から街までの一本道を迷うような間抜けよ? あいつマジで強いだけが取り柄なんだから」
シルニカは通路の前で仁王立ちするレッドを見る。ダンジョンに入ってからのレッドは頼り甲斐のある男の風貌に変わっている。ティオもリディアも信じられないといった顔で目をぱちくりさせている。
その視線に気付いたようにレッドが振り向いた。
「今日はここで野営をしましょう。見張りは2人交代で良いですか?」
「そうね。そうしましょう。ティオ、リディア、先に寝ときなさい。私があいつと起きとく」
シルニカは先輩風を吹かせるが、リディアがジャラッと鎖を持ち上げた。
「それなら1人ずつゆっくりしっかり寝る方法がありますよ?」
『どうやら私の出番のようですかな?』
ふっふっふっと不敵な笑い声が棺から聞こえてくる。
「アイアンメイデンの中なら完璧に守られます。私が開けない限り侵入されることもないですから安全ですよ?」
「棺の中はちょっと……」
『おやおや、物差別ですか? ベッド以上の寝心地の良さをお約束しますが?』
「いや、棺はちょっと……」
シルニカのわがままによりアイアンメイデンが魔障壁を張ることで休息を得ることにした。
(ああ。なんか楽しいなぁ……)
レッドは見張りをしながら浸っていた。勝手知ったるメンバーと過ごす野営も悪く無いが、初めてのメンバーで挑むダンジョンも乙なものである。
最近はオリーと離れて寂しいこともあったが、知り合いが増えるのは嬉しい。
風花の翡翠のリーダー、ルーシー=エイプリルからもらったネックレスを返してもらうため時間はあまり無いし、グルガンはちゃんとライトたちに会えたかどうかなど気になるところは多い。
だが、今だけは冒険者としてこの瞬間を楽しみたい。
──ザッザッザッザッ……
通路の奥から足音が聞こえる。整列して歩いている規則正しい音は相手がアンデッドの軍隊であることを教えてくれる。
(……そういえば罠に掛かって亡くなってた冒険者たちの亡骸が散乱していたな……あれが復活したらこんな感じの音を立てそうだよなぁ)
光に群がる蛾のごとくアンデッドは着実に近づいてくる。レッドは剣を構えて暗がりを睨みつけた。
「先輩方の霊魂……俺の剣じゃ浄化させられないけど、少しだけ動けなくなってもらう。みんなが安心して眠れるように──爪刃っ」
──ビュビュンッ
レッドの放った飛ぶ斬撃は廊下の天井も床も壁も関係なくアンデッドごと引き裂いた。怯んだと感じたレッドは廊下へと突っ込み、夜目ですら見通すことの出来ない暗がりで一体たりとて逃すことなく滅多斬りにし、モンスターの類が広間に出てくることはなかった。
それもそのはず、とにかく下へ降りるために不必要な探索は控え、モンスターとの戦いも出来るだけ避けていれば短縮も可能だ。
そしてここまで下りてきて大体ダンジョンの仕組みが分かって来た。
まず1フロアごとの広さは思ったよりも狭い。通路がやたら長く、時折開けた場所があり、モンスターもそれなりに居るが大した実力はないので、一掃したら休憩スペースとして使えそうだ。
但し、各フロア罠だらけなので油断は禁物。罠にかかって死んでいったのであろう死体もゴロゴロあり気が抜けない。モンスターよりも罠の方が多いのではないかと錯覚するほど今まで入って来たダンジョンの数倍は設置してある。
3、4か所ある広間のどこかに下に降りる階段や坂があり、探すのに一苦労かかる。たまに行き止まりの広間があるので引き返す必要があり、もしモンスターに追われ、息も絶え絶えにこの袋小路に辿り着いた場合は死を覚悟しなければならない。分かりやすく連想出来るものがあるとすればアリの巣に近い。
モンスターはアンデッドだけに留まらず、人間大の昆虫や巨大アルマジロ、モグラのような鋭い爪を持つ二足歩行の齧歯類や巨大なナメクジが通路を塞ぐことがある。
アンデッド以外に共通するのは一様に視覚が退化していることだ。太陽光が入らないダンジョンで生活しているモンスターたちは他の感覚器官に頼っているので、隠れていても見つかる可能性がある。
でも目が見えないということは明かりを灯しても視認されないので、先に視認出来れば先制攻撃が可能。反面アンデッドは光に反応して襲ってくるので光を出し過ぎるのは要注意となる。
とはいえ、レッドが猛威を振るい続ける限りモンスターの脅威など無いも同じである。
11階層への道を見つけ、広間の一角に荷下ろしして休憩に入る。ティオは水筒の水を一口飲んで一息つきつつレッドをじっと凝視する。その目に気付いたシルニカが唇を尖らせた。
「何見てんのよ?」
「あ、いや、レッドさんが気になってつい……」
「えっ?! ど、どういう意味?」
「どうって……ちょっとレッドさん強すぎない? 全く疲れていないように見えるんだけど……」
レッドも水筒の水を飲んだが、休むことなくすぐに見張りに立っていた。リディアも気になるのかレッドから目が離せない。
「あ、当たり前のように荷物を持って戦ってましたよ? しかもどのモンスターも微塵切り。それも一息で倒しちゃうから私たちの出番がないっていうか……」
「だよねだよね! あの腕前なら七元徳全員掛かりでも怪しいかも……?」
ティオはリディアに乗り出すように答える。シルニカはふんっと鼻を鳴らす。
「何言ってんのよ。リディアは私を守ってくれたし、ティオと私は光の魔法でずっと照らしながらフロアごとのマッピングをしてたじゃない。あいつが一人で来たなら一瞬で迷ってたわよ。最初から案内役として一緒に来たんでしょ?」
「それはそうなんだけど……あの立ち姿。とてもじゃ無いけど迷子になりそうも無いんだけど?」
「ああ、あれ? 見た目だけ見た目だけ。街から街までの一本道を迷うような間抜けよ? あいつマジで強いだけが取り柄なんだから」
シルニカは通路の前で仁王立ちするレッドを見る。ダンジョンに入ってからのレッドは頼り甲斐のある男の風貌に変わっている。ティオもリディアも信じられないといった顔で目をぱちくりさせている。
その視線に気付いたようにレッドが振り向いた。
「今日はここで野営をしましょう。見張りは2人交代で良いですか?」
「そうね。そうしましょう。ティオ、リディア、先に寝ときなさい。私があいつと起きとく」
シルニカは先輩風を吹かせるが、リディアがジャラッと鎖を持ち上げた。
「それなら1人ずつゆっくりしっかり寝る方法がありますよ?」
『どうやら私の出番のようですかな?』
ふっふっふっと不敵な笑い声が棺から聞こえてくる。
「アイアンメイデンの中なら完璧に守られます。私が開けない限り侵入されることもないですから安全ですよ?」
「棺の中はちょっと……」
『おやおや、物差別ですか? ベッド以上の寝心地の良さをお約束しますが?』
「いや、棺はちょっと……」
シルニカのわがままによりアイアンメイデンが魔障壁を張ることで休息を得ることにした。
(ああ。なんか楽しいなぁ……)
レッドは見張りをしながら浸っていた。勝手知ったるメンバーと過ごす野営も悪く無いが、初めてのメンバーで挑むダンジョンも乙なものである。
最近はオリーと離れて寂しいこともあったが、知り合いが増えるのは嬉しい。
風花の翡翠のリーダー、ルーシー=エイプリルからもらったネックレスを返してもらうため時間はあまり無いし、グルガンはちゃんとライトたちに会えたかどうかなど気になるところは多い。
だが、今だけは冒険者としてこの瞬間を楽しみたい。
──ザッザッザッザッ……
通路の奥から足音が聞こえる。整列して歩いている規則正しい音は相手がアンデッドの軍隊であることを教えてくれる。
(……そういえば罠に掛かって亡くなってた冒険者たちの亡骸が散乱していたな……あれが復活したらこんな感じの音を立てそうだよなぁ)
光に群がる蛾のごとくアンデッドは着実に近づいてくる。レッドは剣を構えて暗がりを睨みつけた。
「先輩方の霊魂……俺の剣じゃ浄化させられないけど、少しだけ動けなくなってもらう。みんなが安心して眠れるように──爪刃っ」
──ビュビュンッ
レッドの放った飛ぶ斬撃は廊下の天井も床も壁も関係なくアンデッドごと引き裂いた。怯んだと感じたレッドは廊下へと突っ込み、夜目ですら見通すことの出来ない暗がりで一体たりとて逃すことなく滅多斬りにし、モンスターの類が広間に出てくることはなかった。
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