「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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16章 聖王国 後編

250、今そこにある危機

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 神選五党のアジトのすぐ近くに迷彩テントを設置し、自然に紛れながらひっそりとその時を待つ者たちがいた。
 グルガンは闇夜からヌゥッと現れる。無色の水晶を握りしめたその顔は怒りに満ちていた。

「ご苦労でしたねぇグルガンさん。あちらも滞りなく終了したようで何より……」

 真っ先に出迎えたのは諸教派の問題児フィアゼス=デュパインオード。他にも『原初魔導騎士ルーンナイト』のアリーシャ=クラウ=セントルーゼ。八剣聖の内、駆けつけた6人といつものメンツであるライトとディロンとウルラドリス。
 前回の戦いですっかり自信をなくした精霊王たちも何か役に立てないかと準備していたのだが、異世界の魔王たちが周りを固めているのを見て不貞腐れながらも後方支援に回ることになった。
 ここにさらに七元徳イノセントも加わる予定だ。1人1人が一騎当千の力を持つ国の代表的な存在。

 グルガンはまばらに待機しているみんなに集まるように指示する。全員がグルガンを中心に集まると剣聖のセオドアが吹き出した。

「クカカッ! 改めて凄ぇメンツだなぁ。まさか魔族と肩を並べて戦うことになろうとはよぉ。人生何があるかわからねぇもんだぁ」
「あんたが死なずにここにいることもね」

 同じ剣聖のレナールは腰にいつも下げているスキットルの酒を呷りながら軽口を叩く。ブルックはレナールに「程々にしろよ」と注意しつつアレンとブリジットに前に出るように促した。
 それを冷ややかな目で見るフィアゼスは呆れたように鼻を鳴らす。

「剣聖随一の実力者ブルック=フォン=マキシマ。剣聖とはずいぶん前に戦ったことがありますが、私が戦った相手はもう少し歳を食ってたはずですがねぇ。何ですかこの方々は? これではまるで幼児学園の遠足のようですねぇ。本当に戦えるのですか?」
「おいおい、失礼な野郎だなぁ。フィアゼスっつったっけ? 俺たちを前に調子こいたことを後悔させてやろうか?」

 ギラギラとした目でセオドアはフィアゼスを睨みつける。子供扱いされたブリジットも凍りそうなほど冷たい目で睨んでいたが、フィアゼスは態度を変えることなく見下し続ける。
 手を組んで戦おうというのにフィアゼスは失礼な態度ばかりでまるで協調性がない。これにはあまり関わりたくないアリーシャも堪らず声をかけた。

「──申し訳ございません皆様。これは彼なりのコミュニケーションなのです。多少なりとも多めに見ていただければ幸いです」
「いや、あなたが謝る必要はない。しかしその謝罪はありがたく頂戴する。これから大きな戦いになるというのに仲違いしていては始まらないからな。そうだろう? セオドア、ブリジット」

 アリーシャとブルックが間に入ることで一旦は抑える。いつ始まってもおかしくないピリピリとした状況は戦いの前の緊張感だとグルガンは受け取った。

「ヴァイザーとやり合うならここしかない。タイミングは最悪だが、奇しくもフィアゼスの言った通りレッドに頼ることなく戦うことになる。気を引き締めろ」
「ハァ……もう、レッドレッドレッド。あの男の何があなた方にそんなに刺さっているのか皆目見当もつきませんねぇ。ただの剣士程度に頼らずとも、私とアリーシャさんが主力であなた方全員が支援に回れば確実な勝利を約束しましょう」

 鼻高々と言った印象だが、どうにも自信を持ち過ぎているように見える。黙っていたライトが口を挟む。

「無知は罪とはよく言ったものだ」
「おや? 喋れたのですか? ずっと黙っていたので人形かと思っていましたが、違ったようですねぇ」
「貴様がレッド不要論を唱えたことは聞いている。ピラミッドとかいうわけ分からないダンジョンに向かわせ、あるか無いかも分からない『巨万の富と比類なき力』とやらを取りに行かせたこともな」
「急にベラベラうるさいですねぇ。それが何だというのです? ん? 居ない人をいつまでも擦らないでいただけませんか? あなたも私の力を知らないくせに。ほざいた分は取り消せませんよ?」

 レッドのことになると噛み付いてしまうライト。フィアゼスは面倒臭そうに手を振る。ブルックとアリーシャがせっかく止めてくれた一触即発の流れをライトが蒸し返した。ディロンは楽しそうに「お? 喧嘩か?」と右肩を大きく回した。グルガンは2人を手を振って制して我慢させる。

「……フィアゼス。貴公の活躍には期待している。聖王国内でも屈指の実力と耳にしたからな」
「もうそんな情報を? しかし不十分ですねぇ。アリーシャさんも含めていただかなければ……」

 どうしてもニコイチにしたがるフィアゼス。グルガンはアリーシャに視線を移した。

「こう言っているが、貴公はどう見る? 我も貴公らの実力をこの目で見ていないのでな。協力出来るようなら同じ班になってもらうが……」
「──わかりました。ベストを尽くしましょう」

 その言葉に待ってましたとフィアゼスは小さくガッツポーズをする。グルガンとしても協調性のない奴を引き受けてくれるなら願ったり叶ったりなので、アリーシャには悪いが少しホッとする。絶対に勝たなければならない戦いの中で急に仲違いが始まるなどあってはならない。

「すまない。……それでは作戦会議に移る」

 グルガンはいつから持っていたのか、無色の水晶を握っていたはずの手に大きな羊皮紙を握りしめていた。バサッと開き、魔法で空中に固定する。
 それはここら一体の地図であった。希少な宝の地図でもかなり大雑把に描かれているものがあるというのに、この地図はかなり緻密に描かれてある。

「こんなものをどこから?」
「ヴァイザーの気配をここで探知した時からちょくちょく描かせていた。つい先日完成して確認を行ったが、ほぼ狂いなく描かれている。見事なものだ」
「これを……2日そこらで描かせたってのか?! 連中のアジトに眠っていたとかではなく?! だ、誰に描かせたんだ?!」
「我が魔剣『翠緑の牙ゾディアック』に眠る守護者ガーディアン牡羊座アリエス天秤座リブラの2人で製作してもらったものだ。土を操るアリエスが地形を確認して下書きを描き、リブラが清書する。難しいと嘆いていたが、間に合って良かった」

 ホッとするグルガンだが、聞いている周りの人間にとってはチンプンカンプンな話だ。魔剣から召喚された者たちが戦いとは正反対の製造に特化しているなど誰が予想出来ようか。魔剣をどの国の人間よりも知っているはずの剣聖たちも驚きを隠せない珍妙な魔剣である。
 目を丸くするブルックたちにライトが呟く。

「あまり気にするな。こいつは割と何でもありなんだ」

 ライトは悟った顔をしていた。ディロンも特に気にしていないことから、これが普通なのだと認識するしかなかった。
 グルガンだけが一瞬きょとんとしていたが咳ばらいで自分のペースに戻し、顔に力を込めキリッとした表情を見せた。

「地図から有利な配置を決め、奴らの退路を断つ。……一気に攻め込むぞ」



 ヴァイザーは自分の仕事ぶりに不満を抱いていた。
 プレハブを建設し、自分だけの研究室を作ってみたはいいものの、あまり良い結果は得られていない。
 こんなはずではなかったという気持ちと共に、わくわくしたのは最初だけだったという落胆も大きかった。

「ふーむ……デザイアはこんなものではなかった。儂がこの分野でも後塵を拝すとはあの化け物にはどれほどの才能があるというのか……いや、焦ることはない。儂には儂のやり方というものがある」

 ヴァイザーは自分の力の限界を薄々感じていた。際限なく成長し続けている力は年を経るごとに微々たるものになり、最後には止まるどころかマイナスの可能性も考えられる。
 そのような可能性を想定したくもないが、明確な力の差を見せられれば落ち込みもする。

 ヴァイザーは負の面を払拭する思いで目の前にある肉の塊に手をかざす。

「この男の記憶にある女神と呼ばれるものの存在。魔鉱石を超える神聖な鉱物『女神の欠片』。世界を染め上げる白い空……天位という不確かなものがあるという噂だけは耳にしていたが、このような場所でただの人間の頭から垣間見るとは……何があるか分からぬものよ」

 出来れば永遠に力を高め続けたいし、デザイアを超えていきたい思いだが、今のままでは追いつくことも皆無に等しい。天位とつながりの深い『女神の欠片』というのが本物であるなら、もしかしたら次のステップへの足掛かりかもしれない。思いを馳せるだけでも期待は膨らむ。

「……まずは機界大国の技術開発局とやらにコンタクトを取る必要があろう。何やら面白いことになって来たのぅ」

 想像を超える力の開放を夢見てくつくつ笑うヴァイザーだったが、突如強烈な敵意を感じ取った。

「ぬっ!?」

 ヴァイザーは研究室から飛び出る。この敵意の出所を探るために知覚能力を魔力で大幅に増大させ、アジト全域を包むほどの領域に展開する。

(……囲まれている?)

 研究にかかりきりだったために気付くのが遅れてしまったようだ。敵は既に周囲を固め、ヴァイザーを倒そうとにじり寄ってきている。

「ふっ、愚かな。しかし丁度良い。せっかく作った実験体の性能を測るに絶好の機会といったところ。誰かは分からんが返り討ちにしてくれるっ」

 すぐさま伝達魔法で部下たちに現状を知らせる。部下たちは臨戦体制に移行し、敵の出現を待つ。
 ヴァイザーの部下として使われている彼らもまた異世界では名の知れた魔王であり、この世界のレベルで例えれば上澄みも上澄み。エデン正教が10数年の間排除したかった神選五党をたった一夜にして崩壊させた強者。本来であれば戦うという選択肢など存在しない。

 しかし今迫っている敵も精鋭中の精鋭。
 どちらも侮って勝てるほど簡単ではない。
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