「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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16章 聖王国 後編

261、合流

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 ティオたちはそっと陰から様子を伺う。そこにもミノタウロスがのっしのっしと我が物顔で広間を歩いていた。

「キリが無いね……。もう20体は倒したけど、まだ巡回してる奴がいるよ……」
「チッ……こっちの体力にも限界があるっていうのに……よし、ここは私が一発デカいのをぶちかましてやるわ……」

 シルニカは杖の先の宝玉に手を伸ばす。

『無駄なことはおやめください。あなたの魔法では挑発程度にしかなりません』
「何ですって!?」

 聖装アイアンメイデンに煽られたシルニカは脊髄反射で声が出た。ティオとリディアは慌ててシルニカの口を手で覆うが時すでに遅し、ミノタウロスは耳をぴくぴくさせながら音の発生源を探している。

「……気付かれたかな?」
「……ごめん」

 シルニカは申し訳なさそうに謝るが、リディアもアイアンメイデンの口の悪さをシルニカに謝罪する。

「……シルニカさんが謝ることは……元々はこの子が悪いですから……」
『そんなっ。私はただ……』
「しーっ」

 リディアは口元に人差し指を立ててアイアンメイデンの言葉を遮る。

「……あ、不味いっ」
「え……気付かれた?」
「……多分。ほら見て、あの牛頭がどんどん集まって来てる」

 チラッと見ればミノタウロスがたくさん集まっていた。正確な数までは分からないが、10体くらいが密集しているように見えた。

「まだあんなに居たのか……あれがこのフロアにいる全部ならまだ救いはありそうだけど、さらにいるなら流石にヤバいかも……」
「背後にミノタウロスはいません。後方の広間に戻ることは可能です」

 逃げ道を確保し、下がろうとしたその時だった。

 ──ドドドドドドドドドッ

 ミノタウロスたちはティオたちとは違う方向に向けて一斉に走り出した。
 急な動きにティオたちは呆気にとられる。

「え? ど、どうしたの急に……」
「わ、分かりません。分かりませんが、今なら通れます。先に進みましょう」

 ティオたちは通路の角から移動を開始して広間に出た。もぬけの殻となった広間はさっきまでのミノタウロスの獣臭が充満していた。鼻をつまみたい衝動にかられたが、それよりもミノタウロスたちが走り去った通路を確認する。
 一見何の変哲もない通路。角があるために先の広間は見えないが、この先に何かがある。

「もしかして次の階層の入り口じゃないでしょうね?」
「だとしたら最悪あの数を相手にしなきゃいけませんが……確認しに行きます?」

 50階層以降はランダムで階層が変更されるので順当に下りていくことは出来ないし、帰り道も塞がれているので元来た場所に戻ることも困難。たまたま運よく最下層への道を見つけるか、彷徨った挙句51階層に辿り着いて50階層に戻るかのどちらかでしかこのランダム変更の地獄から抜け出すことは出来ない。
 唯一の利点はミノタウロスは次の階層まで追ってこないことだろうか。レッドを探すために3度階層を跨いだが追ってこられた試しはない。というより、ランダムでどこか違う階層に飛ばされているだけなのかもしれないが、とにかくどれだけ数が居ようとも階層を跨げば追ってこない。
 だからこそ侵入者を逃がさないため、入り口を塞ぐ選択をした可能性がある。

「全部を相手にする必要はないよ。最終手段はあいつらの攻撃を掻い潜って次の階層に飛び込むこと。でももっと重要なのはタイミングを合わせる必要があるってとこなんだけど……」

 身体能力に差がある以上仕方がないことだが、シルニカはティオとリディアについて行くことが出来ない。シルニカを守りながらミノタウロスの攻撃を掻い潜るのは至難の業。
 かといって全滅させるのは体力的にも魔力的にもリスクが高すぎる。
 ティオの言いたいことに気付いたシルニカは足手まといであることを痛感して俯いた。

「……1つだけ方法があります。シルニカさん。アイアンメイデンの中に入ってください」
「えっ?!」
「嫌なのは分かります。ですがこれしかないんです」

 リディアの提案はこれ以上ない案だ。それが分かっていてもなお棺には入りたくない。

「それじゃこうしましょう。ミノタウロスが走っていった広間を確認して、もし入り口があったらアイアンメイデンに入る。なかったらこの話は終わりって事で」

 ティオの提案に渋々乗るシルニカ。しかしこれが続けば、結局いつかは棺に入らなければいけない気がしている。レッドとの合流を急ぎたいところだ。
 3人はミノタウロスに勘付かれないように慎重に移動し、通路の角からそっと覗き込んだ。

 ──ドチャッ

 広間から飛んできた質量のある塊は、水袋がぶつかったような音を鳴らして通路の壁に張り付く。
 壁の塊をよく見れば真っ赤な肉であることが分かる。広間の方から赤い液体が流れ、真っ赤に染まる通路。
 壁に張り付いた肉は重さに耐えかね、ズルズルゆっくりと真っ赤な床に落ちていった。

「……何?……あれ」

 ゴクリと固唾を飲む3人。シルニカとリディアは足が震えて動けなかったが、ティオは弾かれたように動き出す。

「ティオっ!!」

 リディアの呼びかけに応えることなく剣を構えて広間の手前で立ち止まった。
 中の光景を見たティオは目を疑う。惚けて立ちすくむティオの元にリディアとシルニカが追いつき、どうしたのかと問うが、中の様子を見れば全てが氷解する。
 広場一面に広がる肉肉肉。ミノタウロスの首がいくつか転がっていたことで、これ全てがミノタウロスの遺体なのだと分かった。
 いったい何体殺せばこんな風に肉が敷き詰められるのか。

 うずだかく積み上がった肉の山の上。そこに疲れたように項垂れるレッドの姿があった。

「レッドっ!!」

 シルニカの呼びかけにレッドの顔は跳ね上がる。3人を視認したレッドは安心したような顔で山から降りてきた。

「わぁっ! よかったぁ! もう会えないかと心配したんだよっ!?」

 レッドはシルニカとティオとリディアの手を順繰りに持って2、3回振る。レッドに握られるがまま惚けているティオとリディア。

「……ひ、ひとりでこれを?」
「え? うん。途中で思ったんだよね。もしや動かずにいた方が見つけてもらえるんじゃないかってさ。ここにいた時に四方からいっぺんにこのモンスターの群れが顔を出したから八つ当たりしてたらふと浮かんできて……」
「何体倒したんですか?」
「あ~……多分50を超えたあたりから数えてない。ただいっぱい居るなって思ったくらいで……」
「そ、それだけですか? だって……」
「数は多いよね。過去これだけ戦ったのはブラックサラマンダーの時くらいかな? でもあんまり強くなかったよ。前にベルク遺跡ってところで戦ったトレントの方が強いくらいさ」

 混乱するティオの肩をシルニカがぽんっと優しく叩いた。

「分かる。私も最初は混乱したもん。大丈夫だよ。普通の反応だから」

 シルニカの玄人目線に全員の目が集中する。レッドも要領を得ていない。

「そ、そのトレントっていうのは木のモンスターのことですよね? 私たちも戦ったことありますけど、そんな強いモンスターではなかったような……」
「伝説に歌われた世界樹ユグドラシル級のトレントとでも戦ったんじゃない? 知らないけど」
「どんなダンジョンですかそれっ!?」

 わちゃわちゃしているティオとリディア、それを軽く流すシルニカを見ながら合流したことを深く実感するレッド。
 油断すると涙がこぼれそうだったので、我慢するために壁際を見た。するとそこに松明の明かりをビカビカ反射する黄金の扉が現れた瞬間を目にした。

「え? なんだあれ?」

 レッドの視線の先を追い、全員が目にした黄金の扉。
 ゆっくりと両開きの扉が開き、中の様子が目に飛び込んできた。

 そこにはミノタウロスのような牛頭が賢そうな顔付きで立っていた。

「ようこそ旅の御方。ここまでいらしたことに敬意を評します」

 牛頭の男は4人を歓迎した。
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