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16章 聖王国 後編
267、能力バトル
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ヴァイザーはグルガンを侮っていた。
この世界の生物に振れ、この世界の魔法技術を知り、ある程度は手中に収めたと思い込んでいたからだ。
この程度なら髙が知れている。
自分を脅かせる生命体などこの世界に居るはずがないという自負心から無意識の内に手加減してしまっていた。
間違っていた。
目の前の獅子頭の魔族は魔神であるヴァイザーを追いつめる存在。
手を抜いていてはいつまでも決着がつかない面倒な相手だ。
相手の実力を1から計算する必要がある。
「くっくっくっ……グルガン。この儂を前にしてよくもほざいたな? 久方ぶりじゃて、このような気分は……」
グルガンの魔剣を押しのけるように弾くと転移を用いてグルガンとの距離を5mほど開ける。グルガンもすぐには追撃せずに相手の出方を伺う。
「随分と悠長なことじゃのぅ。儂を仕留めたいのであれば休ませることなく連撃を放つのが得策じゃが?」
「……貴公にしては余裕だな。急にどうした?」
「ふんっ、今しがた追いついたところじゃて。この戦い。儂も本気で臨ませてもらうぞっ!」
ヴァイザーは円を描くように大きく両手を回すとゴボッと水中から大きな空気玉が抜ける音と共に空中に6つの宝玉を召喚した。さらにいつ装着したのか、ヴァイザーの両手にガントレットが嵌っていた。右手が黒く、左手が白い左右非対称のガントレット。そこから感じられる禍々しいオーラは気分が悪くなる程だった。
「儂がこれを発動させるということは、おぬしの死を意味する。己が無力を知り、無知を嘆き、儂に勝負を挑んだ無謀を呪えぃっ」
──ズゥッ
空気が変わる。グルガンの周りに確かにあった何かが失われるような感覚。
それが何なのかを知る前に事態は動いた。
──パリパリパリッ
薄氷を粉々に砕いていくような不思議な音が聞こえて来たかと思うと、倒れ伏していたグルガンの分身体が消えていく。吹き飛ばされ難なく着地した分身体も皮を剥がされていくように原形を保てなくなる。
分身の中に居た蟹座と射手座も何が起こっているのかと驚いていた。
『あららっ。魔法が解けちゃいましたわ』
真っ二つになって倒れ伏していた乙女座は消滅し、代わりに無傷のヴィルゴが空間から姿を現す。
その様をじっと観察していたグルガンは急にわなわなと体を震わせ、怯えたような表情を見せた。
「……こ、これはどういうことだっ? 我の幻が消えてしまっただとっ!? 貴公何をしたっ!?」
「ふっふっふっ、さっきとまるで立場が逆じゃのぅ。儂が睨んだ通りの展開じゃ。……しかし解せんのぅ。おぬしが幻を操るなど考えてもみなんだわ。見かけで判断するのは間違っておるということじゃのぅ」
グルガンは狼狽しながらヴァイザーのガントレットを指さした。
「それかっ! それが何かをしでかしたのだなっ!」
「ほほぅ? 流石の観察眼じゃのぅ。その通りじゃ。これは『悪魔の右手と神の左手』。儂が編み出した儂だけの能力」
「分かったぞっ! 魔力を吸い取っているんだな?! それが能力かっ!?」
「おしいのぅ。冥途の土産に教えてやろう。これは空気中の魔素を吸収し、使用することが出来る取って置きじゃ。儂の魔力の枯渇を狙ったおぬしの切り札である幻なんぞ、儂の前ではこのように機能すらしなくなってしまうのじゃよ」
刺々しく禍々しい黒いガントレットと滑らかな曲線を描く清く白いガントレットを見せ付けるようにかざしてくる。自慢しているような素振りさえ見せるが、グルガンの関心は宝玉に向いていた。
「と、ということはその宙に浮いている球体は何も関係がないのか……?」
「これか? 森羅宝珠。これもまた相応の力を持った宝珠よ。しかしお主では見破れまいて」
「ぐっ……くそっ! どうせ死ぬというのにその力が分からないなんて……! 魔法によって生み出されたことしか我には分からんぞっ!」
「悔しいか? それで良い。これ以上説明するのは面白くないわい。おぬしは思考の迷宮に囚われ、儂に逆らったことを後悔しながら憤死するのじゃ」
ヴァイザーはニヤニヤと勝ち誇り、グルガンを蔑み見下す。グルガンは間抜けに開けていた口を閉じ、顎に右手を添えて思考する。わずか一拍の後、声を張り上げた。
「ヴィルゴ、サジタリアス」
『はぁい』
『な~に~?』
「配置転換だ。ヴィルゴは山羊座と、サジタリアスは牡牛座と交代せよ」
『えぇっ!? そんなわたくしはまだやれますわっ!』
『そうだよっ! 私だってやれるもんっ!』
わがままを言い始める2人に天秤座は『これこれ、主人殿を困らせるでない』と注意する。しかし2人は納得出来ないとぶー垂れる。
「貴公らでは分が悪い。今すぐに交代せよ」
グルガンの命令に悔しい表情を見せる2人だったが、足元から光が放たれ、パッと牛頭の男と巻角を生やした女性にそれぞれ代わった。
『あるじっ!! 何故今のタイミングで配置転換をっ?! もう少しで私の筋肉が敵を葬るところだったのにっ!!』
『わぁ。ゴライアス様と仕事だなんていつ以来かしらぁ』
グルガンは交代が無事に行われたことを確認し、また声を張る。
「キャンサーっ!! タウロスっ!! 前衛は任せたぞっ!!」
『御意っ』
キャンサーは言うが早いか疾風のように駆ける。
『全くしょうがないあるじ様だ。まぁ良いでしょう。私の筋肉でこのおじいさんを分からせてあげましょうっ!!』
タウロスも遅れて走り出した。
それを見たヴァイザーはピクピクとこめかみに青筋を立てていた。
「……この儂を謀りおったな? 蜂の巣にしてくれるわっ!! 峻厳っ!!」
ヴァイザーは白いガントレットを突き出して何かを叫ぶ。すると周りをフヨフヨと漂っていた森羅宝珠は弾丸の如き速度でグルガンに近づきつつ魔法を放ちはじめた。
その動きはグルガンが立っている場所を囲むように動き、バラバラのタイミングだったり、同時に魔法を放ったりしながら存在ごと消滅させようと攻撃を続ける。
ただ一発目の魔法が避けられ、土煙が上がったところでグルガンを見失っているので、これだけやれば死んでいるだろうと言う気持ちを込めて攻撃をさせていた。
宝珠が必死になって攻撃を仕掛けている間、土煙からキャンサーとタウロスが飛び出す。接近戦での攻撃を仕掛ける2人に対し、ヴァイザーは黒いガントレットをかざす。タウロスの拳とキャンサーの刃が当たる直前に能力を発動する。
「拒絶っ!!」
空気が振動するような不思議な情景が見えたと同時に2人の攻撃は弾かれる。タウロスは勢いが良すぎたのか後方にコロコロと転がっていく。キャンサーはすぐに体制を立て直したが、ヴァイザーはそれを見越してそのままキャンサーに黒いガントレットで能力を発動させる。
「愚鈍」
突如ぐわんっと視界が揺れる。頭を殴られたような前後不覚の状態になったキャンサーは手を地面について動けなくなってしまった。
『お2人とも大丈夫ですかっ?!』
カプリコルヌスはキャンサーとタウロスを心配しながら植物の種を撒く。カプリコルヌスは種に魔力を与え、急成長させた。刺のビッシリ生えた巨大食虫植物がヴァイザーに向かって大口を開ける。
「基礎」
白いガントレットをかざしたヴァイザーは土を無数の針に変化させ、巨大食虫植物を串刺しにしてしまう。ボタボタと体液を出して枯れていく食虫植物に火を放った。
『あぁっ!? ダイアちゃんがっ!!』
「ふはははっ!! 無駄じゃ無駄じゃ!! 儂は無敵なのじゃからなっ!!」
高笑いするヴァイザーだったが、土煙が晴れた瞬間にその顔は苛立ちの様相を見せた。
視線の先にはグルガンが立っている。宝珠の弾幕をいつの間に避けていたのか、かなり後方に陣取っていた。
いつにも増して冷静な澄まし顔はヴァイザーの精神を逆撫でする。
「……今度こそその顔を歪ませてくれるわ。演技などではなくのぅ……」
この世界の生物に振れ、この世界の魔法技術を知り、ある程度は手中に収めたと思い込んでいたからだ。
この程度なら髙が知れている。
自分を脅かせる生命体などこの世界に居るはずがないという自負心から無意識の内に手加減してしまっていた。
間違っていた。
目の前の獅子頭の魔族は魔神であるヴァイザーを追いつめる存在。
手を抜いていてはいつまでも決着がつかない面倒な相手だ。
相手の実力を1から計算する必要がある。
「くっくっくっ……グルガン。この儂を前にしてよくもほざいたな? 久方ぶりじゃて、このような気分は……」
グルガンの魔剣を押しのけるように弾くと転移を用いてグルガンとの距離を5mほど開ける。グルガンもすぐには追撃せずに相手の出方を伺う。
「随分と悠長なことじゃのぅ。儂を仕留めたいのであれば休ませることなく連撃を放つのが得策じゃが?」
「……貴公にしては余裕だな。急にどうした?」
「ふんっ、今しがた追いついたところじゃて。この戦い。儂も本気で臨ませてもらうぞっ!」
ヴァイザーは円を描くように大きく両手を回すとゴボッと水中から大きな空気玉が抜ける音と共に空中に6つの宝玉を召喚した。さらにいつ装着したのか、ヴァイザーの両手にガントレットが嵌っていた。右手が黒く、左手が白い左右非対称のガントレット。そこから感じられる禍々しいオーラは気分が悪くなる程だった。
「儂がこれを発動させるということは、おぬしの死を意味する。己が無力を知り、無知を嘆き、儂に勝負を挑んだ無謀を呪えぃっ」
──ズゥッ
空気が変わる。グルガンの周りに確かにあった何かが失われるような感覚。
それが何なのかを知る前に事態は動いた。
──パリパリパリッ
薄氷を粉々に砕いていくような不思議な音が聞こえて来たかと思うと、倒れ伏していたグルガンの分身体が消えていく。吹き飛ばされ難なく着地した分身体も皮を剥がされていくように原形を保てなくなる。
分身の中に居た蟹座と射手座も何が起こっているのかと驚いていた。
『あららっ。魔法が解けちゃいましたわ』
真っ二つになって倒れ伏していた乙女座は消滅し、代わりに無傷のヴィルゴが空間から姿を現す。
その様をじっと観察していたグルガンは急にわなわなと体を震わせ、怯えたような表情を見せた。
「……こ、これはどういうことだっ? 我の幻が消えてしまっただとっ!? 貴公何をしたっ!?」
「ふっふっふっ、さっきとまるで立場が逆じゃのぅ。儂が睨んだ通りの展開じゃ。……しかし解せんのぅ。おぬしが幻を操るなど考えてもみなんだわ。見かけで判断するのは間違っておるということじゃのぅ」
グルガンは狼狽しながらヴァイザーのガントレットを指さした。
「それかっ! それが何かをしでかしたのだなっ!」
「ほほぅ? 流石の観察眼じゃのぅ。その通りじゃ。これは『悪魔の右手と神の左手』。儂が編み出した儂だけの能力」
「分かったぞっ! 魔力を吸い取っているんだな?! それが能力かっ!?」
「おしいのぅ。冥途の土産に教えてやろう。これは空気中の魔素を吸収し、使用することが出来る取って置きじゃ。儂の魔力の枯渇を狙ったおぬしの切り札である幻なんぞ、儂の前ではこのように機能すらしなくなってしまうのじゃよ」
刺々しく禍々しい黒いガントレットと滑らかな曲線を描く清く白いガントレットを見せ付けるようにかざしてくる。自慢しているような素振りさえ見せるが、グルガンの関心は宝玉に向いていた。
「と、ということはその宙に浮いている球体は何も関係がないのか……?」
「これか? 森羅宝珠。これもまた相応の力を持った宝珠よ。しかしお主では見破れまいて」
「ぐっ……くそっ! どうせ死ぬというのにその力が分からないなんて……! 魔法によって生み出されたことしか我には分からんぞっ!」
「悔しいか? それで良い。これ以上説明するのは面白くないわい。おぬしは思考の迷宮に囚われ、儂に逆らったことを後悔しながら憤死するのじゃ」
ヴァイザーはニヤニヤと勝ち誇り、グルガンを蔑み見下す。グルガンは間抜けに開けていた口を閉じ、顎に右手を添えて思考する。わずか一拍の後、声を張り上げた。
「ヴィルゴ、サジタリアス」
『はぁい』
『な~に~?』
「配置転換だ。ヴィルゴは山羊座と、サジタリアスは牡牛座と交代せよ」
『えぇっ!? そんなわたくしはまだやれますわっ!』
『そうだよっ! 私だってやれるもんっ!』
わがままを言い始める2人に天秤座は『これこれ、主人殿を困らせるでない』と注意する。しかし2人は納得出来ないとぶー垂れる。
「貴公らでは分が悪い。今すぐに交代せよ」
グルガンの命令に悔しい表情を見せる2人だったが、足元から光が放たれ、パッと牛頭の男と巻角を生やした女性にそれぞれ代わった。
『あるじっ!! 何故今のタイミングで配置転換をっ?! もう少しで私の筋肉が敵を葬るところだったのにっ!!』
『わぁ。ゴライアス様と仕事だなんていつ以来かしらぁ』
グルガンは交代が無事に行われたことを確認し、また声を張る。
「キャンサーっ!! タウロスっ!! 前衛は任せたぞっ!!」
『御意っ』
キャンサーは言うが早いか疾風のように駆ける。
『全くしょうがないあるじ様だ。まぁ良いでしょう。私の筋肉でこのおじいさんを分からせてあげましょうっ!!』
タウロスも遅れて走り出した。
それを見たヴァイザーはピクピクとこめかみに青筋を立てていた。
「……この儂を謀りおったな? 蜂の巣にしてくれるわっ!! 峻厳っ!!」
ヴァイザーは白いガントレットを突き出して何かを叫ぶ。すると周りをフヨフヨと漂っていた森羅宝珠は弾丸の如き速度でグルガンに近づきつつ魔法を放ちはじめた。
その動きはグルガンが立っている場所を囲むように動き、バラバラのタイミングだったり、同時に魔法を放ったりしながら存在ごと消滅させようと攻撃を続ける。
ただ一発目の魔法が避けられ、土煙が上がったところでグルガンを見失っているので、これだけやれば死んでいるだろうと言う気持ちを込めて攻撃をさせていた。
宝珠が必死になって攻撃を仕掛けている間、土煙からキャンサーとタウロスが飛び出す。接近戦での攻撃を仕掛ける2人に対し、ヴァイザーは黒いガントレットをかざす。タウロスの拳とキャンサーの刃が当たる直前に能力を発動する。
「拒絶っ!!」
空気が振動するような不思議な情景が見えたと同時に2人の攻撃は弾かれる。タウロスは勢いが良すぎたのか後方にコロコロと転がっていく。キャンサーはすぐに体制を立て直したが、ヴァイザーはそれを見越してそのままキャンサーに黒いガントレットで能力を発動させる。
「愚鈍」
突如ぐわんっと視界が揺れる。頭を殴られたような前後不覚の状態になったキャンサーは手を地面について動けなくなってしまった。
『お2人とも大丈夫ですかっ?!』
カプリコルヌスはキャンサーとタウロスを心配しながら植物の種を撒く。カプリコルヌスは種に魔力を与え、急成長させた。刺のビッシリ生えた巨大食虫植物がヴァイザーに向かって大口を開ける。
「基礎」
白いガントレットをかざしたヴァイザーは土を無数の針に変化させ、巨大食虫植物を串刺しにしてしまう。ボタボタと体液を出して枯れていく食虫植物に火を放った。
『あぁっ!? ダイアちゃんがっ!!』
「ふはははっ!! 無駄じゃ無駄じゃ!! 儂は無敵なのじゃからなっ!!」
高笑いするヴァイザーだったが、土煙が晴れた瞬間にその顔は苛立ちの様相を見せた。
視線の先にはグルガンが立っている。宝珠の弾幕をいつの間に避けていたのか、かなり後方に陣取っていた。
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