「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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16章 聖王国 後編

281、余韻

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 ──……ゴゴゴゴ

 魔導戦艦ルイベーが着陸した。

 魔神ヴァイザーを倒したと伝えられたルイベリアは、転移もまともに使えなくなったグルガンのためにここまで移動することとなった。
 身の危険は無いと思われるが、ルイベリアは念の為にと異世界の魔王ヴォジャノーイ=アルタベルジュを護衛に神選五党のアジトだった地に降り立つ。

「勘弁してたもれルイベリア殿~。戦いは終わったのでおじゃるから外はもう安全でおじゃる。朕は中で待っているでおじゃ……」
「残党が居たらどうするの? 僕は非戦闘員だよ?」
「だからって朕を引っ張り出すのは……」
「レッドもグルガンもおまけにドラちゃんも居ないんだよ? つまり今この戦艦最強はオジャくんなんだから自信持って」
「ヴォジャノーイでおじゃる。あとそのドラちゃんっていうのはいい加減にやめるでおじゃる。ドラグロス様に聞かれたらどうするでおじゃるか?」

 ヴォジャノーイはキョロキョロと辺りを見渡す。しかし時すでに遅し。ヴォジャノーイの肩にポンッと手が置かれた。

「誰がドラちゃんだぁ?」
「ふひょぉっ!?」

 ヴォジャノーイは全身を跳ねさせて驚く。

「あ~っドラちゃん。いつ背後に回り込んだの?」
「ドラちゃん言うなっつってんだろ? お前は馴れ馴れしいんだよ。ったく……そんなことよりもこんなとこでコソコソ生きてやがったとは驚いたぜオジャノーイ。俺が回復中にも一切顔を見せやがらなかったくせによぉ。この裏切りもんがっ」
「う、うう……ヴォジャノーイでおじゃる……か、かく言うドラグロス様も裏切ったのではないですか……?」
「ああっ?! なんか言ったかオジャノーイっ!! 何言ってっか全然聞こえねぇけどっ?!」

 ドラグロスの睨みにヴォジャノーイは委縮する。

「ひぃぃっ!! も、もも、申し訳ございませんドラグロス様っ! 死にたくない一心でつい……」
「『つい』じゃねぇだろ。裏切りもんの末路なんざ碌なことにならねぇが、俺の舎弟になるってんなら考えてやるぜ?」
「は、はいっ! もちろんでございますっ!! 誠心誠意尽くさせていただく所存にございますっ!!」
「嘘くせぇ……だがその言葉は忘れねぇぞ。俺を裏切りやがったら殺す」

 舎弟の角を持って頭をガクガクさせるドラグロス。「ひぃぃぃっ!!」と一層悲鳴を上げて恐怖するヴォジャノーイ。

『ドラグロス殿。その辺にしてください。彼もまた我々の仲間。彼が居なければそもそもこの大陸に渡るのに数年は要していたかもしれませぬ故』

 その言葉に顔を上げると守護者たちがズラリと勢ぞろいしていた。その中で中心に居た天秤座リブラはヴォジャノーイを擁護する。ヴォジャノーイは「その説明は余計でおじゃるっ!」と焦り散らした。
 案の定ドラグロスはヴォジャノーイの顔を覗き込むように睨みながらニヤニヤと笑う。

「へぇ、なるほどなぁ。それじゃ今後ともその調子でな。オジャノーイ」
「か、畏まりましたっ! ドラグロス様っ!!」

 返事を聞いたドラグロスは鼻を鳴らして船から遠ざかる。何とか許してもらえたヴォジャノーイは腰砕けでへたり込む。

『災難であったなヴォジャノーイ殿』
「い、いやいや、助かったでおじゃるよ。間に入ってくれなかったらどんな要求をされたことか……」
『そんなに悪い方ではないと思うがのぅ。あ、そんなことよりも』

 リブラの言葉に守護者は道を開け、グルガンを抱え込んだ牡牛座タウロスが現れる。

「グルガン殿っ!?」
「あちゃぁっ……今回の敵は強かった?」

 ルイベリアの質問にリブラは大きく頷く。

『肉体に傷はないが、力をほとんど使い果たしておる。2、3日安静にする必要があろう。儂らもそろそろ休まねばならんので主人あるじ殿を託したい。お願い出来ますかな?』
「わ、分かったでおじゃる」

 タウロスからグルガンを預かると、守護者たちは安堵の表情で光の粒となって消えていく。その粒はすべてグルガンの体へと入っていった。

「……すまないな……ヴォジャノーイ」
「なに、お互いさまでおじゃるよ」

 ヴォジャノーイが船内に連れて行こうとするとルイベリアがグルガンに尋ねた。

「ところでレッドたちはどこに居るの?」



 アジトの中心部。

 レッドは一人立ち尽くし、他のみんなは手合わせで疲れ切っていた。
 1人、2人では相手にならなかったために、レッドと手合わせしたい全員が掛かっていき、魔導戦艦到着まで誰が最初にレッドから一本取るかのゲームへと発展した。

 結果はレッドの逃げ切りで終了。

 体に触れることは終ぞ叶わなかったが、ヒラヒラとはためくクロークの裾くらいなら切れたので、レッドのクロークはボロボロになってしまった。
 息を整えているみんなを見ながらレッドはしょぼんと肩を落とす。

「……みんな俺のことが嫌いなのかな……」

 剣聖全員の背中に一度ずつ剣の峰を置いて行ったところまでは良かったのだが、剣聖全員がムキになって仕掛けて来たところから狂い始める。
 七元徳イノセントまでも横入りして大乱闘に発展し、長いこと付き合っていくはずだったクロークは引き裂かれてしまった。
 それは確かにショックだったが、少し前にダンジョンで共に戦ったティオやリディアまでも参戦し、挙句ティオはクロークの切れ端を握り締めて喜んでいたのでとてもショックが大きかった。

 それよりなにより、寄ってたかって攻撃を仕掛けられているのにライトもディロンもシルニカも止めに入らない。アリーシャとフィアゼスも見ているだけといった感じで、参加しなかった5人も味方してくれなかったのは一番心に来た。
 そんなレッドを傍から見ていたオディウムはニヤリと笑ってレッドの腕を掴む。

「そうさレッド。みんなお前のことが嫌いなのさ。だが、俺様はお前の唯一の味方だ。どんなことがあろうと俺様だけは裏切ったりしないから安心しろ」
「……オディウム」

 レッドは一瞬ほだされたが、レッドが剣を仕舞ったことでみんなが集まって来た。

「凄い凄いっ!! 凄いよレッド!! 魔物の軍勢を倒してるのを見た時から強すぎって思ってたけど、ここまでだなんて思ってもみなかったよっ!」

 ティオは興奮気味に褒め称える。思ってもみなかった反応にレッドも驚いた。

「どうやってその力を得たんだよっ!」
「え……その……」
「凄すぎますわね。わたくしの羽が一枚も当たらないなんて……」
「まさに神の如き身体能力。私も見習いたいものです」
「レッド強すぎでしょ。本当にあんた人間?」
「……これで1人も傷付いていないのが奇跡……」
「うむ。世界は広いというが、ここまでとは……」

 口々に褒められるのは悪い気はしないが、ただ避けていただけなのにここまで称賛されるのはむず痒いものがある。ここにブルックが満を持して声をかける。

「君の力を信用せずに済まなかった。傲慢だったのは私のようだ」

 スッと手を出して握手を求めてくる。レッドは困惑しながらも握手に応えた。セオドアも肩を竦めて苦笑する。

「負けたぜレッド=カーマイン。お前が居りゃ魔神もイチコロだ」
「セオドアさんが素直に認めるなんて珍しい」
「あ? おいアレン。そいつはどういう意味だ?」
「そのままの意味ですよ。俺もレッドさんの強さには脱帽ですから。特にっ! 帝国だけでなく龍球王国でも見たことない動きに感動しましたっ! 今後ともご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いしますっ!!」

 アレンのキラキラした目にレッドは気圧される。とりあえず感謝を述べて取り繕った。

「アレンの言う通りだ。魔神クラスを想定したスパーリングにうってつけの存在となる。私たちの技術の向上に是非また手合わせしてくれないか?」
「えっ? あ……えっと……俺で良ければ……」
「あんた意外に誰が居んのよ」

 レナールのツッコミにドッと笑いが起こる。レッドは恥ずかしそうに頭を掻いた。
 それを見ていたオディウムはチッと舌打ちする。

「へっ……残念だったなぁオディウム」

 そんなオディウムの頭をドラグロスがポンッと叩いた。オディウムの全身から冷や汗がドッと出る。

「レッドは単純だが、お前に操られるほど馬鹿じゃねぇ。まぁお前の目的は操るんじゃなくて鎖から解き放たれてぇだけなんだろうがよ」
「え……いや……その……」
「隠すな隠すな。その鎖があるからレッドの言うことを聞かなきゃならねぇペットしてんだろ? 俺が外すのを手伝ってやろうか? その代わりお前は俺のもんだがなぁ」
「ひぃぃっ! けけ、結構です! 間に合ってます!!」
「あぁっ? そうか? そうかよ。じゃ友達ダチの物は取れねぇし、しばらく泳がせるか……」

 ドラグロスはのそっと立ち上がって魔導戦艦の方に歩いて行った。オディウムは後ろ姿を見送りながらしばらくこのままでいようと心に誓う。
 そのままボケーっと見ているとドラグロスとすれ違うようにルイベリアがやって来た。

「お、いたいた……って、大所帯じゃんか。みんなーっ! 迎えに来たから魔導戦艦に乗りなーっ!!」

 ヴァイザーとの戦いが終わり、親睦を深めたレッドたちは次なる魔神戦に向けて魔導戦艦へと乗り込む。
 今はこの勝利を噛みしめながらゆっくりと休むのが彼らの仕事である。

 だが、ようやく安心出来る空間に入ったと思えたのも束の間、別の脅威が既に戦艦内に身を潜めて待っていた。
 諸教派の街『ソルブライト』への道すがらそれはレッドの前に姿を現した。
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