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16章 聖王国 後編
284、約束
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レッドは廊下を黙々と歩きながら思い悩んでいた。
先ほどの話し合いにあった『世界の危機』と『気に食わなくても』と『これまで以上の戦力が必要』という文言がレッドの頭の中をぐるぐる駆け巡っていた。
天使という即戦力を跳ねのけてしまったことが正解か否かが分からない。
スロウを攫おうとした事だけに焦点を当てれば極悪非道の悪者である。
が、スロウを攫える力を持つのは控えめに言ってもかなり強いのではないだろうか。レッドも一度だけ体験してみたが、スロウの能力には手も足も出なかったことを思い出す。
油断していたとはいえ、スロウを守護する極戒双縄の警戒網を掻い潜った点においてもその実力は推して然るべし。
「……オディウム。天使っていうのはどのくらい強いんだろうか?」
「おまっ……今更かよ。もう手は組めねぇと思うぞ」
「い、いや、ちょっと気になっただけだって……」
「本当かよ?……ま、いいや。天使ってのはある意味無敵の存在だ。まず状態異常は一切効かねぇんだと。腕力も伝説級の魔物なんかよりも強くて、魔法にも耐性があるらしい。全部が受け売りで体験したことはねぇが、聞くだけで喧嘩したくはねぇ相手だわな」
「ラッパを使ってきたんだけど、あれは何の効果があるの?」
「ラッパなぁ……俺様は良く知らねぇが、楽器の音色で能力が変わるってのは聞いたぜ。とにかく面倒な相手だってことは確かだ」
レッドは考え込む。
確かにラッパの音色を聞いた時、何かが干渉してこようとした感触はあった。けど特に何かがあったわけではなかった。スロウを取り返すことに必死で勝手に抵抗が働いたのかもしれない。
だとするなら意志の力で天使の攻撃を防ぐことは可能ではないだろうか。
「じ、実はさ、天使を追い返した後で思ったんだけど、俺もスロウに天位のこと聞いてなかったなって思ったんだよね。もし行きたいって思ってたら俺余計なことしちゃったんじゃないかって考えちゃってさ……」
「そういやスロウってのに会ってないな。丁度いい。この際確かめてみたらどうだ?」
「だよねぇ……」
レッドはそのつもりだったようで、スロウの部屋の前で立ち止まった。恐る恐るノックするとスロウが「は~い。どうぞ~」と入室を許可する。中に入ると相変わらず寝転んだスロウがむにゃむにゃしながら枕を抱きかかえていた。
「あ~っ。レッドおかえり~。何かあったの~?」
「う、うん。ただいま」
レッドは照れくさそうに後頭部を触る。
「こいつがスロウって奴か?」
オディウムはジロジロと遠慮なく眺める。それに気付いた極戒双縄が鎌首をもたげ、オディウムを睨み付けた。
「おいレッドっ! 何だそいつはっ!」
「初めて見る顔だ。ペットを飼うにしてももう少し品のある奴を飼えよ。何で牛頭なんだ?」
敵意丸出しの蛇頭にオディウムは苛立つ。
「なんだこの蛇は? 俺様に喧嘩を売るとはいい度胸だ。表へ出な。俺様が叩きのめしてやるぜ」
「それは無理だよ。極戒双縄も仲間なんだから」
「なっ!? あんな魔道具風情も仲間認定かよっ?! ふざけんじゃねぇよっ!!」
オディウムは焦り散らかす。物質であればどんなものでも仲間にしているように感じる。レッドの器量は底なしではないだろうか。いや、天使を蹴っているので何でもかんでも仲間にするわけではないと思い直した。
「上等だぜ牛頭っ! どっちが強いか教えてやるよっ!」
「あ、ごめん。今のなし。俺様喧嘩嫌い」
「は? 何だこいつ……」
オディウムの変わり身に困惑を隠せない。
レッドは椅子を用意してスロウの前に座った。
「話があるんだけど今いいかな?」
「いいよ~。聞かせて聞かせて~」
スロウは眠い目をこすりながらレッドの顔を見た。言いづらそうにしているのを見てスロウは口を開く。
「ゆっくりでいいからね~」
スロウの心遣いに気持ちの整理が整う。レッドは先ほど起こったことを話す。
前回スロウを攫おうとした天使の登場。天使から聞かされた天位の存在。そこに連れていきたいとする意志。それが叶うなら仲間として共に戦ってくれることまで全部を話した。
スロウはレッドのつたない話を横入りすることなく聞き、レッドの目を真っすぐに見ながら微笑んだ。
「私はその天位ってとこに行きたくないな~」
「ど、どうして?」
「だって行ったら帰ってこれなそうだもん。私はレッドの居るこの世界で一緒にのんびりしてたいからさ~」
「スロウ……」
レッドは自分の選択に誤りが無かったことを確認した。スロウが行きたくないのなら、やはり天使はレッドにとって敵となる存在だ。
スロウの言葉に絆されたレッドは彼女の笑顔に微笑み返す。
「俺もスロウと離れたくないよ。もしまたスロウにちょっかいを掛けるようなら俺が何とかする。約束だ」
スロウはレッドの差し出した小指に自分の小指を絡める。
「これって~約束のおまじない?」
「そう。絶対に守るっていう誓いでもあるよ」
「そうなんだ~。ふふっ……そうなんだねぇ~」
スロウとのんびりした時間を過ごし、レッドは心が癒された。
仲間と共に旅をするのがレッドの夢で、それはもう果たされた。
次なる夢はこの仲間たちと一緒に仲良く暮らしていくこと。
この世界を支配しようとする邪悪なる存在デザイアと、仲間を連れ去ろうとする天使たち。
レッドの敵は強大なれど、レッドが引くことは絶対にあり得ない。
仲間と一緒に仲良く暮らしていくために──。
先ほどの話し合いにあった『世界の危機』と『気に食わなくても』と『これまで以上の戦力が必要』という文言がレッドの頭の中をぐるぐる駆け巡っていた。
天使という即戦力を跳ねのけてしまったことが正解か否かが分からない。
スロウを攫おうとした事だけに焦点を当てれば極悪非道の悪者である。
が、スロウを攫える力を持つのは控えめに言ってもかなり強いのではないだろうか。レッドも一度だけ体験してみたが、スロウの能力には手も足も出なかったことを思い出す。
油断していたとはいえ、スロウを守護する極戒双縄の警戒網を掻い潜った点においてもその実力は推して然るべし。
「……オディウム。天使っていうのはどのくらい強いんだろうか?」
「おまっ……今更かよ。もう手は組めねぇと思うぞ」
「い、いや、ちょっと気になっただけだって……」
「本当かよ?……ま、いいや。天使ってのはある意味無敵の存在だ。まず状態異常は一切効かねぇんだと。腕力も伝説級の魔物なんかよりも強くて、魔法にも耐性があるらしい。全部が受け売りで体験したことはねぇが、聞くだけで喧嘩したくはねぇ相手だわな」
「ラッパを使ってきたんだけど、あれは何の効果があるの?」
「ラッパなぁ……俺様は良く知らねぇが、楽器の音色で能力が変わるってのは聞いたぜ。とにかく面倒な相手だってことは確かだ」
レッドは考え込む。
確かにラッパの音色を聞いた時、何かが干渉してこようとした感触はあった。けど特に何かがあったわけではなかった。スロウを取り返すことに必死で勝手に抵抗が働いたのかもしれない。
だとするなら意志の力で天使の攻撃を防ぐことは可能ではないだろうか。
「じ、実はさ、天使を追い返した後で思ったんだけど、俺もスロウに天位のこと聞いてなかったなって思ったんだよね。もし行きたいって思ってたら俺余計なことしちゃったんじゃないかって考えちゃってさ……」
「そういやスロウってのに会ってないな。丁度いい。この際確かめてみたらどうだ?」
「だよねぇ……」
レッドはそのつもりだったようで、スロウの部屋の前で立ち止まった。恐る恐るノックするとスロウが「は~い。どうぞ~」と入室を許可する。中に入ると相変わらず寝転んだスロウがむにゃむにゃしながら枕を抱きかかえていた。
「あ~っ。レッドおかえり~。何かあったの~?」
「う、うん。ただいま」
レッドは照れくさそうに後頭部を触る。
「こいつがスロウって奴か?」
オディウムはジロジロと遠慮なく眺める。それに気付いた極戒双縄が鎌首をもたげ、オディウムを睨み付けた。
「おいレッドっ! 何だそいつはっ!」
「初めて見る顔だ。ペットを飼うにしてももう少し品のある奴を飼えよ。何で牛頭なんだ?」
敵意丸出しの蛇頭にオディウムは苛立つ。
「なんだこの蛇は? 俺様に喧嘩を売るとはいい度胸だ。表へ出な。俺様が叩きのめしてやるぜ」
「それは無理だよ。極戒双縄も仲間なんだから」
「なっ!? あんな魔道具風情も仲間認定かよっ?! ふざけんじゃねぇよっ!!」
オディウムは焦り散らかす。物質であればどんなものでも仲間にしているように感じる。レッドの器量は底なしではないだろうか。いや、天使を蹴っているので何でもかんでも仲間にするわけではないと思い直した。
「上等だぜ牛頭っ! どっちが強いか教えてやるよっ!」
「あ、ごめん。今のなし。俺様喧嘩嫌い」
「は? 何だこいつ……」
オディウムの変わり身に困惑を隠せない。
レッドは椅子を用意してスロウの前に座った。
「話があるんだけど今いいかな?」
「いいよ~。聞かせて聞かせて~」
スロウは眠い目をこすりながらレッドの顔を見た。言いづらそうにしているのを見てスロウは口を開く。
「ゆっくりでいいからね~」
スロウの心遣いに気持ちの整理が整う。レッドは先ほど起こったことを話す。
前回スロウを攫おうとした天使の登場。天使から聞かされた天位の存在。そこに連れていきたいとする意志。それが叶うなら仲間として共に戦ってくれることまで全部を話した。
スロウはレッドのつたない話を横入りすることなく聞き、レッドの目を真っすぐに見ながら微笑んだ。
「私はその天位ってとこに行きたくないな~」
「ど、どうして?」
「だって行ったら帰ってこれなそうだもん。私はレッドの居るこの世界で一緒にのんびりしてたいからさ~」
「スロウ……」
レッドは自分の選択に誤りが無かったことを確認した。スロウが行きたくないのなら、やはり天使はレッドにとって敵となる存在だ。
スロウの言葉に絆されたレッドは彼女の笑顔に微笑み返す。
「俺もスロウと離れたくないよ。もしまたスロウにちょっかいを掛けるようなら俺が何とかする。約束だ」
スロウはレッドの差し出した小指に自分の小指を絡める。
「これって~約束のおまじない?」
「そう。絶対に守るっていう誓いでもあるよ」
「そうなんだ~。ふふっ……そうなんだねぇ~」
スロウとのんびりした時間を過ごし、レッドは心が癒された。
仲間と共に旅をするのがレッドの夢で、それはもう果たされた。
次なる夢はこの仲間たちと一緒に仲良く暮らしていくこと。
この世界を支配しようとする邪悪なる存在デザイアと、仲間を連れ去ろうとする天使たち。
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仲間と一緒に仲良く暮らしていくために──。
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