「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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17章 龍球王国 前編

314、何気ない提案

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「お姉ちゃんっ!」

 モミジは元気いっぱいに手を振り、迎え入れてくれたシオンに飛びついた。

「あらあら、モミジったらはしたないわ。元気にしてたようで安心だけど」
「えへへっ」

 姉にべったりのモミジ。外で見せる顔とは全く違う素の部分が姉の前でだけ露わとなる。

「よぉっ! シオンっ!」
「あ、アキマサ。あなたも息災のようで……」

 アキマサはシオンが言い切る前に目と鼻の先まで接近し、モミジを挟んでサングラスをちょっとズラす。右目を閉じていて左目だけでシオンの瞳を覗き込む。

「もちろん。お前に会うために健康管理に気を使っているのさ」

 ニヤリと格好つけて笑うアキマサだったが、シオンは「はいはい」と受け流す。

「冗談はこのくらいにして、今日は初めてのお客様がいらっしゃいますね。どうぞこちらへ」

 シオンに通された客間に人数分の座布団が敷かれていた。アキマサがシオンの対面に座り、モミジはわざわざシオンの隣に座布団を移動して座る。大好きな姉の隣に座りたいというのもあるだろうが、タイジョウ家当主の妹としての立場も加味しているのは間違いない。
 レッドとグルガンは敷かれた座布団にそのまま腰掛けた。皆が座ったのを確認してゆっくりとレッドとグルガンを見る。

「異国の方でお間違いなさそうですね。座布団よりも椅子の方がよろしかったでしょうか?」
「お構いなく。時刻も遅くなってきているので手短に済ませよう」

 アキマサに進行を任せようかと思ったが、シオンに対する他と明らかに違う態度からここはグルガンが務めることにした。
 自己紹介から始まった話は浮遊要塞の話へと移り、アキマサの助力でコウカク派閥への挨拶を経てここまで来たことを淡々と語る。

「あの浮島の頭目はデザイアという御仁で、それを倒すための戦力集めに奔走していると……」
「うむ。相違ない」
「申し訳ございませんが、我が国にも事情というものがあります。お恥ずかしい話ながら、我ら天征十一将は一枚岩ではなく、2つの派閥に分かれて国を取り合っているのが現状です。こんな状態では世界平和のために一丸となって戦うあなた方に迷惑となることは確実。もし、挨拶に訪れた先で既に了承された武将がいらっしゃるようでしたら、加勢のお話は無かったことにしていただきたくお願い申し上げます」

 シオンは畳に手を突いて丁寧に謝罪し始める。グルガンはすぐさま右手をかざして制止する。

「いや、そこまでされることはない。我らとしても世界平和を出汁にタダで頼もうなどとは思っていないからな。この国のことはあらかたアキマサから聞いている。我らが手助けし、この国の問題を解決に導く。さすれば後顧の憂いなく世界平和に乗り出せるというものだろう?」

 グルガンは真っ直ぐシオンを見据えて大口を叩く。その目に一点の曇りもなく、騙そうという風でもない。まるで当然解決出来るとでも言いたげな恐ろしいほど自信に満ちた瞳だった。
 不安げにアキマサの顔を見ると、アキマサはいつになく真面目な顔で一つ頷いた。幼なじみのこれ以上ない後押しとグルガンの言葉に肯定しそうになったが、グッと言葉を飲み込んで首を横に振る。

「……大変魅力的な提案ですが、お断りさせてください」
「お姉ちゃんっ!? 何で……っ!?」
「分かって、モミジ」
「いや、だって……っ!」

 モミジはシオンの袖を引っ張りながら駄々をこねる。グルガンはかなりのキレ者でレッドは計り知れない戦闘能力を保有している。他にも剣聖や七元徳イノセントの力も借りれるとあっては、これに乗っからない手はない。グルガンも頑ななシオンの態度が気になって質問する。

「シオン殿……この際腹を割って話そう。何が心配なのだ? 我らの実力か? それとも我らよりも先に合っていたキキョウという女性に脅されているのか?」

 グルガンの指摘にモミジは「あっ!」と声を上げる。キキョウの存在をすっかり忘れていた。そうなのかと問い掛けるように眼差しを送るが、それにも首を横に振った。

「いいえ、違います。……フゥ……これ以上恥部を晒したくはありませんが、仕方ありません。私たちは実のところ何も掴んでいないのです。キジン派閥が何かを企んでいるというところまでで手詰まり。しかし隙を見せればすぐにも何かを始めるつもりであることは明白。何もさせないように見張っておくことで間接的にこの国の平和を守っている状態なのです」

 シオンの言葉を聞いてグルガンはアキマサに視線を送る。アキマサはひょうきんな顔で軽く2、3度頷いてシオンに同調した。

「……ふむ、なるほど。企みの阻止よりも企みそのものを暴かなければ対処の仕様がないということか……」
「ところでお姉ちゃん。キキョウ姉様は何故ここに来たの? あの人は分家そのものを毛嫌いしていたように思うけど? あたしもさっき無視されたし……」
「そうなの? 昔はモミジを可愛がってたのにね。……来た理由は勧誘よ。キジン派閥に乗り換えるように促されたわ。お姉さまは私が心配だとしきりに仰ってたけど……」

 シオンは次に来る言葉をためらっている。キキョウのことを語っているその暗い顔を見れば何を言いたいのかは察しがついた。

「……そんな風には見えなかったか?」

 アキマサの指摘にシオンは一瞬アキマサを見た後、黙って俯いた。

「なるほどねぇ。シオンにも姐さんの心の機微が読めるようになって来たか。これもまつりごとに浸かってしまった運命さだめって奴だな。なまじ頭が良いから言葉の裏を読んじまうんだろ?」
「否定はしません。それとお姉さまの裏をかいたというよりも、投票の過半数が取れなくなってしまうことに注視した結果と言えるわ。シズクさんたちやニシキ様を裏切れないもの……。あと気になったことで、お姉さまから何故だか挑発めいた空気を感じたの。止められるものなら止めてみろという風な。勘違いかもしれませんが……」
「へぇ……つまり間接的に挑戦状を受け取ったわけだ。キジン派閥が考える企みを暴けるものなら暴いて見せろという挑戦状をな……これは面白くなって来やがったぜ」
「……遊びじゃないのよ?」

 嗜めるシオンにニカッと白い歯を見せて笑う。肩を竦めるシオンの隣に目を移してモミジを見た。

「よぉモミジ。タイジョウ家当主でありお前の姉のシオンが挑発されたんだ。黙っておく手はねぇよな?」
「もちろんっ。だけど具体的には何をしたらいいの?」
「さぐりを入れろ。タイイン家が抱える闇や、キジン派閥の国崩しを止めるためにな。姐さんの……いや、キキョウの鼻を明かしてやろうぜ」
「へ? あたしがっ?!」
「おうよ。こう言っちゃなんだが、キキョウはモミジのことなんて眼中にない。あの人は憎きタイジョウ家の当主であるシオンにしか興味がないからな。監視対象でないお前なら動き回っても目立った邪魔は入らないぜ。まさに今一番うってつけの人材ってこった」

 その推察にモミジの心は揺れる。キキョウにとっては居ても居なくても変わらない存在であるモミジがシオンを構っている間に急所を射抜く。これほど魅力的な話はないが不安しかない。

「む、無理だよ……あたし1人じゃ……」

 モミジも相応の手練れであり、1対1ならある程度の実力者を下せる自信はある。ギリギリ2対1なら凌ぐことは可能だろう。しかし大人数を相手にすれば流石のモミジもどうにもならない。キジン派閥が抱える選りすぐりの強者と鉢合わせたりしたら終わってしまう。

「あ、じゃあ俺が一緒に動きますよ?」

 そこでレッドが挙手した。今まで黙っていたレッドが急に自我を出し始める。
 しかし、レッドの何気ない提案が国の未来を左右してようとは、この時はまだ誰も想像していなかった。
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