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17章 龍球王国 前編
315、妙な説得力
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レッドの挙手で場が静まりかえったが、グルガンは鷹揚に頷いた。
「良い案だ。これ以上ないほどに良い」
グルガンの真剣な眼差しに「そこまで?」という視線が向けられ、その視線に対しても頷いた。
「……シオン殿にお聞きしたい。この男、レッド=カーマインをひと目見て何を感じられる? 常人か? それとも傑物か?」
「え……それは……」
シオンはレッドを見る目を泳がせる。
「答える必要はない。いや、その答えは既に顔に出ている。それは先の女性、キキョウ殿とて同じこと。2人を見比べて我に警戒心を抱いていた反面、レッドにはほとんど感情が動いていなかった。真っ先に警戒すべき我の情報を得るために声をかけて来たことからもその差は歴然」
確かにグルガンとレッドを見比べ、レッドに脅威を感じる者はまず居ない。もし初見でレッドを警戒する者が居たら、隠された力を盗み見る能力を持っているか、トラウマなどの精神疾患を疑うべきである。
アキマサはグルガンの発言から言いたいことを汲み取る。
「なるほどね。つまり見た目と能力が釣り合わないレッドは警戒されることなく自由に動けるってことか」
「そうだ。先の話にも合った通り、モミジ殿はキキョウ殿に軽んじられている。優先順位を考えた時、モミジ殿とレッドなら表立って動いていても捨て置かれることはまず間違いない。探りを入れるのにこの人選は理に適っている」
グルガンとしてはモミジを探りに出すことには反対だった。アキマサから感じ取れるモミジへの信頼感から、この任務をこなせる実力はあるのだろうと推察したが、やはり1人で行かせることには抵抗があった。
とはいえ、誰を連れて行かせるかの答えなどすぐには出せない。この件は一度持ち帰ってメンバーに相談する必要があると考えた矢先、まさに目から鱗の衝撃がここにはあった。
「……ったく、さっきから黙って聞いてりゃ何をほざいてやがる? どうかしてるぜグルガンっ。こいつに期待するものが違っているだろうがっ」
気付かれないように小さく縮こまってレッドのクロークの中に隠れていたオディウムは、そろそろ我慢出来なくなって顔を覗かせた。急に出て来た妖精のような牛のマスコットにシオンは目を丸くする。いつも掛けている眼鏡を外して目を擦り、もう一度付け直して確認してもそこにマスコットはいた。見間違えでも幻でもない。
「戦いはお手の物でも策謀に関しちゃ素人もいいとこだ。そんな奴にこの仕事は荷が重いっつーのっ」
「……出来るって」
「いーや、出来ないねっ」
レッドはオディウムの指摘に唇を尖らせて不貞腐れる。
「そうだな。レッドはどちらかというと魔物専門の冒険者。人間同士のいざこざには対処しきれない部分があるのもまた事実。だからこそ貴公がいるのではないか? オディウム」
「……やべ……っ!」
出るタイミングを間違えたと思ってクロークの中にまた隠れようとするが、レッドが素早く掴んで目の前に引き出した。
「そうだそうだ。オディウムがいてくれたんだ」
「あの……その生き物は?」
「『比類なき力』さっ」
シオンの質問にレッドは自慢するようにオディウムを掲げる。シオンにはちんぷんかんぷんだが、アキマサはきょとんとした顔を見せた。
「それって……もしかして砂漠の王国ジャガラームの『巨万の富と比類なき力』のことか? って、それがそうなのかっ!?」
「あ、はい。そうです。正確には『比類なき力』の方で、『巨万の富』はその名の通り金銀財宝のことですけど、それで間違いないです」
「ぶったまげたぜっ! 魔物の巣食う建造物の99階層を下り切った場所にあると言われてる伝説のお宝じゃねぇかっ!」
アキマサの大袈裟な反応にシオンは「有名なの?」と質問する。
「おうよっ! その筋ではかなり有名だぜっ! 噂でしか聞いたことねぇけど国が2、3個建国出来るんじゃねぇかって言われてるジャガラームの隠し財産で、攻略不可能と言われた三角錐の建造物のことだが……そんな場所を踏破したってのかよっ!?」
「まぁ、踏破って言っていいのか、途中で歓迎されたというか……けど俺を含めた4人で攻略したのは事実です」
「こいつは良いっ! 験担ぎにもピッタリじゃねえかっ!」
興奮冷めやらぬ様子で騒ぐアキマサ。その嘘偽りない顔で腹が決まったシオンは、レッドを見据える。
「我々国民の問題ではありますが、私たちだけでは解決出来ない難しい話。まさに猫の手も借りたい状況。そんな時に現れたあなた方に頼むのも酷なことではございますが、どうかよろしくお願いします。我々も支援致しますし、何なら裏から同時進行で彼らの企みを暴く『挟み撃ち作戦』でこの事態を解決に導きましょうっ」
「それは我も考えていた。レッド。モミジ殿。我からも重ねてお願いする」
こうしてキジン派閥の企みを阻止するために動くことになった2人と1匹。国崩しの全貌を詳かにし、龍球王国を救うために奔走する。
「はいっ! じゃあ明日から頑張りますっ!」
すっかり暗くなった外雄の様子をチラッと確認して力強く返答した。モミジも一旦帰って気持ちの整理を付けたいと考えていたところだ。
「申し訳ございません。駕籠を出しますので、そちらに乗って帰っていただければ……」
「その必要はない。我が一瞬でアキマサの屋敷まで転移の魔法で移動する。心配ない」
「へっ? てんいっ?」
分からないこと尽くしで首を傾げるシオンだったが、その後、帰る様をその目で間近で見た時、初めて転移の存在を知って妙に心の中で全て納得出来たような不思議な感覚を覚える。
「……あ、この人たちなら大丈夫かもしれない……」
ポツリと呟いた言葉に全てが詰まっていた。
「良い案だ。これ以上ないほどに良い」
グルガンの真剣な眼差しに「そこまで?」という視線が向けられ、その視線に対しても頷いた。
「……シオン殿にお聞きしたい。この男、レッド=カーマインをひと目見て何を感じられる? 常人か? それとも傑物か?」
「え……それは……」
シオンはレッドを見る目を泳がせる。
「答える必要はない。いや、その答えは既に顔に出ている。それは先の女性、キキョウ殿とて同じこと。2人を見比べて我に警戒心を抱いていた反面、レッドにはほとんど感情が動いていなかった。真っ先に警戒すべき我の情報を得るために声をかけて来たことからもその差は歴然」
確かにグルガンとレッドを見比べ、レッドに脅威を感じる者はまず居ない。もし初見でレッドを警戒する者が居たら、隠された力を盗み見る能力を持っているか、トラウマなどの精神疾患を疑うべきである。
アキマサはグルガンの発言から言いたいことを汲み取る。
「なるほどね。つまり見た目と能力が釣り合わないレッドは警戒されることなく自由に動けるってことか」
「そうだ。先の話にも合った通り、モミジ殿はキキョウ殿に軽んじられている。優先順位を考えた時、モミジ殿とレッドなら表立って動いていても捨て置かれることはまず間違いない。探りを入れるのにこの人選は理に適っている」
グルガンとしてはモミジを探りに出すことには反対だった。アキマサから感じ取れるモミジへの信頼感から、この任務をこなせる実力はあるのだろうと推察したが、やはり1人で行かせることには抵抗があった。
とはいえ、誰を連れて行かせるかの答えなどすぐには出せない。この件は一度持ち帰ってメンバーに相談する必要があると考えた矢先、まさに目から鱗の衝撃がここにはあった。
「……ったく、さっきから黙って聞いてりゃ何をほざいてやがる? どうかしてるぜグルガンっ。こいつに期待するものが違っているだろうがっ」
気付かれないように小さく縮こまってレッドのクロークの中に隠れていたオディウムは、そろそろ我慢出来なくなって顔を覗かせた。急に出て来た妖精のような牛のマスコットにシオンは目を丸くする。いつも掛けている眼鏡を外して目を擦り、もう一度付け直して確認してもそこにマスコットはいた。見間違えでも幻でもない。
「戦いはお手の物でも策謀に関しちゃ素人もいいとこだ。そんな奴にこの仕事は荷が重いっつーのっ」
「……出来るって」
「いーや、出来ないねっ」
レッドはオディウムの指摘に唇を尖らせて不貞腐れる。
「そうだな。レッドはどちらかというと魔物専門の冒険者。人間同士のいざこざには対処しきれない部分があるのもまた事実。だからこそ貴公がいるのではないか? オディウム」
「……やべ……っ!」
出るタイミングを間違えたと思ってクロークの中にまた隠れようとするが、レッドが素早く掴んで目の前に引き出した。
「そうだそうだ。オディウムがいてくれたんだ」
「あの……その生き物は?」
「『比類なき力』さっ」
シオンの質問にレッドは自慢するようにオディウムを掲げる。シオンにはちんぷんかんぷんだが、アキマサはきょとんとした顔を見せた。
「それって……もしかして砂漠の王国ジャガラームの『巨万の富と比類なき力』のことか? って、それがそうなのかっ!?」
「あ、はい。そうです。正確には『比類なき力』の方で、『巨万の富』はその名の通り金銀財宝のことですけど、それで間違いないです」
「ぶったまげたぜっ! 魔物の巣食う建造物の99階層を下り切った場所にあると言われてる伝説のお宝じゃねぇかっ!」
アキマサの大袈裟な反応にシオンは「有名なの?」と質問する。
「おうよっ! その筋ではかなり有名だぜっ! 噂でしか聞いたことねぇけど国が2、3個建国出来るんじゃねぇかって言われてるジャガラームの隠し財産で、攻略不可能と言われた三角錐の建造物のことだが……そんな場所を踏破したってのかよっ!?」
「まぁ、踏破って言っていいのか、途中で歓迎されたというか……けど俺を含めた4人で攻略したのは事実です」
「こいつは良いっ! 験担ぎにもピッタリじゃねえかっ!」
興奮冷めやらぬ様子で騒ぐアキマサ。その嘘偽りない顔で腹が決まったシオンは、レッドを見据える。
「我々国民の問題ではありますが、私たちだけでは解決出来ない難しい話。まさに猫の手も借りたい状況。そんな時に現れたあなた方に頼むのも酷なことではございますが、どうかよろしくお願いします。我々も支援致しますし、何なら裏から同時進行で彼らの企みを暴く『挟み撃ち作戦』でこの事態を解決に導きましょうっ」
「それは我も考えていた。レッド。モミジ殿。我からも重ねてお願いする」
こうしてキジン派閥の企みを阻止するために動くことになった2人と1匹。国崩しの全貌を詳かにし、龍球王国を救うために奔走する。
「はいっ! じゃあ明日から頑張りますっ!」
すっかり暗くなった外雄の様子をチラッと確認して力強く返答した。モミジも一旦帰って気持ちの整理を付けたいと考えていたところだ。
「申し訳ございません。駕籠を出しますので、そちらに乗って帰っていただければ……」
「その必要はない。我が一瞬でアキマサの屋敷まで転移の魔法で移動する。心配ない」
「へっ? てんいっ?」
分からないこと尽くしで首を傾げるシオンだったが、その後、帰る様をその目で間近で見た時、初めて転移の存在を知って妙に心の中で全て納得出来たような不思議な感覚を覚える。
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ポツリと呟いた言葉に全てが詰まっていた。
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