「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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17章 龍球王国 前編

322、内密の相談

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 朝食を済ませた後、ナガヨシの計らいで自室へと通された。

 お膳の片付けの邪魔にならぬようにという建前だったが、モミジがナガヨシに直接話したいという要望に応えるために人払いも兼ねての自室だった。

「まぁ足を崩せ。楽な体勢の方が話がしやすかろう」

 レッドがナガヨシの思いやりある言葉に絆され、正座している足を組み替えようとした時、モミジは「このままで」と言って断った。それにレッドも触発されてピッと正座のまま固まった。

「……そうか? お前たちが良いなら無理強いはせんが……それで? 俺に話とはいったいなんだ?」
「実はナガヨシ様にお願いがあって参りました」
「お願い?」
「はい。あたしたちは今、キジン派閥が仕組んでいる国崩しの計画を破綻させるべく動いております」
「国崩し……だと?」
「はい。全容は未だ掴んでいないものの、トウダ家、テンクウ家、タイイン家に動きがあり、特にテンクウ家の隠密機動部隊である『走狗』の動きは顕著です。後手に回らざるを得ない状況に終止符を打たねば足元を掬われかねません。目立つことを極力避けたい事情から、師匠……リクゴウ家当主アキマサなどの天征十一将に数えられる大大名が動くことは出来ませんが、ほぼ無名とも言えるあたしたちならこの状況を打破出来るのではと思い至りました。しかしその結果、あたしたち2人には後ろ盾が存在せず、自在に領地を行き来出来ても肝心な部分に手が届かないことがあると気付いたのです。そこでナガヨシ様にご尽力いただきたく参上した次第にございます」

 ナガヨシは腕を袖に隠し、もぞもぞと襟の辺りから右腕を出して顎を撫でる。モミジとレッドを見ながら口をへの字に曲げた。

「ふむ、尽力か……」
「あ、もちろんこの件はあたしたちの独断専行ではなく、アキマサとあたしの姉、タイジョウ家当主シオンも承知でございます。それから、アキマサがナガヨシ様宛に書いた書状もここに……」

 モミジは思い出したように書状を手渡した。ナガヨシは慣れた手つきで書状を開くと内容を確認し、じろっと目だけでモミジを見た。

「もう目星はついているのか?」
「いえ、まだ……しかしキキョウお姉さまがシオンに臭わせを……」
「ん。推測の域を出んか。それは陰謀論に他ならない。巷でまことしやかに語られる噂と大差ない。その段階でキジン家に喧嘩を吹っ掛けるのは無謀と言うもの……」

 ナガヨシは部屋の片隅に置いていた煙草盆を提げて近くに置き、アキマサからの書状を灰落としの上にかざした。

「なにを……っ!?」

 モミジが前に重心を預けたその時、煙草入れの中から梵字の入ったライターのような器具で書状を燃やした。徐々に燃え行く様を確認しながらナガヨシは口を開く。

「話は分かった。この書状の内容で俺に対し、並々ならぬ信頼が伺えるのも理解した。しかし不用心だな。これは証拠となり得る。狡猾なヨリマロ殿とやり合うなら、細かいところにも気を配らねばならん」

 ポソッとじりじり焼ける書状の紙片を落としてモミジに目を向ける。

「俺は大大名ではないが、それでもこのツキグマ家の当主だ。大義が無ければ逆賊となってこの名に傷が付く。ひいてはヒビキ様のお顔に泥を塗ることになりかねん。俺個人であれば何でもないことでも、当主として動けば必ず何かしらの綻びが生まれよう。俺を頼ってくれたというに、こういうことを言うのは申し訳ないが……このナガヨシ=ツキグマ、辞退させていただく」

 ナガヨシの真剣な表情に突き崩せぬ壁を見たモミジは肯定の会釈を送る。

「……お話を聞いていただき感謝いたします。出来ますれば他言無用でお願い申し上げます」
「無論だ」

 返答と共に畳に手を突いて頭を下げる。お暇するために立ち上がろうとした時、ナガヨシは口を開く。

「時にレッド。お前は何故この件に首を突っ込む?」
「え?」
「お前はこの国とは無関係の人間だ。キジン派閥と対立することになんの益もないはずだが?」
「そんなことはないですよ。俺はこの国のことはあまり知らないですけど、ご飯は美味しいし、皆さん良い人たちばかりです。こんな良い国を大切にせず、壊そうと考えているなんてありえません。そりゃ俺には俺のやるべきことがありますけど、俺もこの国の助力になれればと考えています」
「ふっ……嬉しいことを言ってくれる。立ち入ったことを聞くが、そのやるべきこととはなんだ?」
「世界平和です」
「なっ……!?」

 レッドの印象とはかけ離れた答えだった。もっと個人的でささやかな目標を思い描いていたが、規模の違う話がその口から放たれる。普段あまり驚くことのないナガヨシも面食らった。

「それは……デカい目標だな……」

 レッドの一点の曇りもない瞳は、嘘偽りを言ってるようにはまったく感じられない。
 ナガヨシはサッと立ち上がって障子を開け放つと「おいっ! 誰かおらぬかっ!」と大声で家臣を呼びつける。急いでやってきた家臣に何やら命令し、家臣が急いで走り去ると同時に振り返った。

「帰りに土産を持って出るが良い」
「えぇっ!? そ、そんな申し訳ないですっ!」
「えぇいっそう言うなっ。今後役に立つものなのだから持って出ろっ」

 ナガヨシに言われるがまま玄関に行ったモミジとレッドは多少待たされた末に用意された土産を持たされ、屋敷から出された。風呂敷に包まれた大荷物にレッドの片手は塞がれる。

「なんだろうこれ?」
「分からない……けどナガヨシ様が持たせてくれたものだから何か意図があるとは思うけど……」

 モミジとレッドはとりあえず屋敷から離れるように歩く。

「それで……次はどこに行くとか決めてる?」
「いや、実はどこに行けば良いか分からなくて……完全にナガヨシ様頼りだったから、一緒に来てくださった折に相談しようと考えてて……」

 2人は早速途方に暮れる。

「ん。それでは『葛籠守つづらもり』に行こうではないか」

 背後から聞こえてきた声にハッとして振り返る。そこにはかなり年季の入った袴に身を包んだナガヨシが立っていた。武家の当主とは思えぬその見た目はまるで浪人のように見える。

「え、は? ナ、ナガヨシ様?」
「ん? はっはっはっ! 違う違うっ! 俺の名は……」

 ナガヨシはその辺りの木々を見てニヤリと笑う。

「『香木こうのき』。用心棒のコウノキだ」
「コウノキ?」
「コウノキ……様?」

 その瞬間にレッドとモミジの頭の中にナガヨシの言葉がフラッシュバックする。

『俺個人であれば何でもないこと……』

 つまりキジン家の陰謀を暴くまでは名前を封印して別人になれば良い。2人で顔を見合わせ、ナガヨシ──もといコウノキを見た。

「ふっ……お前たちだけでは不安でな。俺も混ぜろ」

 襟から手を出して顎を触るコウノキを見て2人の表情はパァッと明るくなった。

「はいっ!」
「是非っ! お願いいたしますっ!」

 こうしてレッド、モミジ、コウノキの3人は次なる場所『葛籠守つづらもり』を目指して歩を進める。
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