「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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17章 龍球王国 前編

332、晩餐会

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「いやぁっ、お疲れさんっ! どうだった? そっちの調子はっ?」

 アキマサはレッドとモミジが帰ってくるなり走り寄って出迎えた。モミジはすぐに今日あった出来事を伝える。
 アキマサの読み通りナガヨシを頼って正解だったこと、ナガヨシからタダウチを引き当て、トガノジョウ=トウダにまで手が伸びたことなど、思い返してみればおよそ1日で行える範疇を超えている。
 アキマサも仲間集めが限度だろうと考えていたために、急に背後に立たれたレベルで驚愕した。

「マジかっ! 思った以上の成果だな……凄いじゃないか2人ともっ!」
「え、えへへっ。ま、まぁそれほどでも……?」

 モミジは照れ隠しにプイッとそっぽを向く。
 モミジの初々しい反応に顔を綻ばせながらレッドはアキマサに視線を移した。

「アキマサさんたちはどうだったんですか?」
「あぁ。残念ながらそっちほどじゃないよ。クロバの件は壁伝いにこっちまで届いてるけど、大きいことが起こると真の黒幕って連中は姿を隠しちまう。まるで凪のように静かなもんさ」

 アキマサは残念そうに肩を竦める。
 あっちが立つとこっちが立たず。トガノジョウやシンクロウの話で盛り上がるも、肝心のヨリマロたちは鳴りを潜める。

「だけどいい情報だぜっ。トガノジョウの奴は本当に後先を考えない奴だな。シンクロウも思ったよりも尻尾を出したし、トウダ家を追い落とすのも時間の問題だぜこりゃ」
「……らしくないなアキマサ」

 背後からグルガンが声をかける。

「2人の前だからリップサービスか?」
「え? どういうことですグルガンさん」
「うむ。魔導戦艦が襲われたことは知っているだろう? その際、ヴォジャノーイとドラグロスが見られていたようだ。壁の外で待機してもらっているからバレることはないと考えていたのだが、少し考えが浅かったようだな」

 およそ人間とはかけ離れた2人。そんな奴らと旅をしている連中が国内に入っていると喧伝されたら面倒なことになる。

「ふぅ……2度と魔導戦艦を襲わせないために何人か逃したと聞いた時は少々頭を抱えたが、既に敵方に船の情報が行き渡っていることを踏まえて行動することが寛容だな」
「ま、良いじゃないの。そこは天征十一将の俺っちがなんとか言いくるめるってばっ」
「それはよろしく頼む。それよりも今日はよく頑張ってくれた。疲れを癒してくれ」

 グルガンに促され、部屋に入ると宴会場のようにワイワイと喋りながら食事をするみんなの姿があった。

「おっ! レッドが帰ってきたぜっ!」
「おかえり~っ」
「お疲れ~っ」
「食事をどうぞ。美味しいですよ」

 各自それぞれの労いの挨拶が飛んでくる。「どうもどうも、ただいま~」とペコペコ頭を下げながらモミジと一緒に並べられた食膳の前に座る。

「いやぁ、このご飯っ! 待ってましたっ!」

 蓋を取ってほかほかのご飯にありつくレッド。幸せそうに食べるレッドを見ながらモミジもおかずを食べる。

「レッド。おひたしをのっけて食べるともっと美味しいよ」
「これおひたしって言うの? 良いねっ!」

 レッドはモミジに言われるがままおひたしをご飯の上に乗せて掻き込む。醤油とゴマの風味がふわっと鼻に香って粒立ったご飯が口の中で甘味を引き出す。

「ほんとだウマ~っ」

 とろけるような顔をしながら食べるレッドにモミジはクスッと笑ったが、周りは信じられないといった顔でレッドを見ている。

「レッド? あんた今……」
「ん? なんです?」
「だって……ねぇ? シルニカさん」
「へ? ティオさんまで……俺なんか変なことしましたか?」
「なんでその子にはタメ口なのよっ!」

 シルニカは体からバチバチと電気を走らせる。レッドは驚いて目を丸くした。

「はっ?! えっ?! あ、いや、これはモミジさんからの提案でして……」
「それじゃ何よっ! 言われたらタメ口にするって言うのっ?!」
「それはその……許してもらえるんでしたら……」
「許すも何もないじゃないですかレッドさん。リーダーなんですからもっと大きい顔したらどうですか?」

 ティオとシルニカに挟まれて文句を言われる。

「そういえばそうよね~。レッドってみんなに腰が低いから忘れがちだけど一応リーダーじゃん。ティオちゃんの大きい顔ってのは嫌だけど、普通にタメ口とか聞いたらいいのに」

 ライトの隣に陣取った吟遊詩人バードのエイナがさくらんぼと思しき果物のへたを摘んで指先で弄びながら声をかける。ライトを囲むコニ、ハル、フィーナも「そうそうっ」と頷き合っている。

「好きなようにすりゃ良いんじゃねぇの?」

 タメ口にしなければならないのかとあわあわしているレッドを見かねてか、ディロンが口を挟む。

「そう言うのって周りが決めることじゃねぇだろ。話しやすいようにしねぇと逆にストレスだぜ?」
「ふっ……ディロンの言う通りだな。レッドが今のままが良いと言うなら俺は無理強いはしないな」

 ライトが同調するのに合わせて4人もライトに迎合する。シルニカとティオは不満そうにしているが、話が終わった空気を感じてホッと胸を撫で下ろす。ようやくご飯にありつける。

「そんなことよりも。レッドとモミジさんは順調だったのか?」

 そう思った矢先、ブルックが話しかけてきた。

「えっと……まぁ、ボチボチ……」
「そのボチボチってのは困ると出るの? ちゃんと伝えないとダメじゃない?」
「うっ……」

 モミジに諭され、レッドは痛いところを触られたと思いつつ話始める。長年連れ添った幼馴染の空気を醸し出すモミジに戦々恐々としつつ、ティオがモミジにコソコソ話しかけた。

「えっと……モミジさんは今日レッドさんと初めて一緒に行動していましたよね?」
「え? はい。2人きりは初めてですけど?」
「……距離感近くないです?」
「ああ。全然深い意味はなくてですね。余計なことを考えなくても良いようにタメ口にしようって最初に話し合ったんですよ。つーかーの仲と呼べるくらいを目指せば情報共有も楽になりますし」
「あ、なるほど。作戦なんですねっ」
「そうなんですよ。……レッド。タダウチさんを端折はしょってる。そのせいで話がとっ散らかったんだよ?」
「あ、やべっ。そうだった。でも事細かに話しすぎると面倒だし……」
「じゃ私が話すから」

 そういってレッドの代わりにモミジがブルックたちに説明する。その一連の流れにシルニカとティオの心に焦燥感が生まれる。モミジが完璧にレッドをコントロールしているように見えたからだ。

「大丈夫ですわティオ」
「クラウディアさん?」
「あまり近くなり過ぎるのもダメですの。かえって恋愛感情を薄くしてしまいます。一定の距離感で、かつ自分が好きだということをアピールするのが恋愛成就のコツですわ」
「そ、そうなんですかっ?!」
「と、わたくしの蔵書『恋愛指南書』に書かれてありましたわ」

 クラウディアはニコニコと笑ってティオにアドバイスする。クレイやランドルフは(自分の経験則からではなかったのか……)と内心思ったが、口に出すことはなく心に留める。

「自分の経験則からではないのか? そんなもの当てになるのか?」

 そんな2人の気遣いなど知らん顔のアドニスはずけずけと質問する。

「ふぅ、まったく……わたくしはまだそういった殿方に出会ってませんので、仕方なく参考書を引用したまでですわ。修行の虫のあなたが横入りする隙間なんてありませんのよ?」
「人の心が参考書通りいくわけがないだろう? まず試して、ちゃんと効果があってからアドバイスすべきだ」
「なっ!? 恋愛の仕方なんて人それぞれなのだから参考書を使用するのも間違いではないでしょうにっ!」
「人それぞれであるなら、尚更ティオの思うようにやるべきだ。横から口を挟んで間違った知識を吹き込んだらノイズになる」
「ムキィーッ!!」

 クラウディアはアドニスに口で勝てなかった。

「なぁにやってんだか。モミジちゃんの話を真面目に聞いてるこっちを見習ったらどうだい?」

 レナールは呆れながら酒を呷る。ブルックとアレンとデュランは真面目に聞いているが、レナールとセオドアは練り物のスライスを肴に酒を飲んでいるではないか。ブリジットは席を立ってそもそも居ないが、真面目と不真面目がこうもハッキリ分かれているのを見ると『お前が言うな』という気持ちになった。

「おいおい、なんだよ旨そうなもん飲んでんじゃねぇかっ」

 2人が飲んでいる酒を覗き込むオディウム。

「あんたもイケる口かい? じゃ、も1個茶碗を出さないとねぇ……」
「いただきまーす」

 そう言うとオディウムはかめの酒を傾けて飲み始めた。

「お前この野郎っ!!」
「何してんだいっ!?」

 ガタタッとお膳をひっくり返しながら走り回る3人。オディウムは小さい体のくせに重いかめを持ち上げ、走り回りながらも飲み干す勢いで独り占めしている。

「やめろっ! 危ないだろっ!」

 ブルックに制止されながらもギャースカ叫んで止まることを知らない。

『やかましい連中じゃ』
『同意』
『いいじゃないか。平和で……』

 精霊王も呆れる縁もたけなわの食事風景。

 これからこの国に何が起こるのか。
 未だ定かではないものの、今だけはひとときの平穏を楽しむ一行であった。
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