「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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18章 龍球王国 後編

342、候補

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 屋根の上に立っている人影はレッドたちがシバ家から追い出された様子を伺っていた。
 割と大胆に立っているので見つかりそうなものだが、巫術による目眩しで自然に溶け込んでいるために周りからは視認されることがないので羽織った上着を風に棚引かせても誰も気づかない。

「──かしら

 その背後に黒頭巾を被った人影が降り立つ。瓦屋根の上に音も無く現れたのは凄まじい練度の忍び。しかしそれ以上の練度を持つのはかしらと呼ばれたこの男。その名はハンゾウ。
 背後に立つ黒ずくめの忍者と違い、編笠を被り上着に袴の装いで刀を腰に差した侍の出立ち。笠から覗く顔は彫りが深く鼻が高いしょうゆ顔の男前。常に片目だけ開けて生活していて、もう片方の目は暗闇や閃光による目潰しから視界を奪われないように徹底して瞑っている。
 気分によって瞑る目を変えているので日毎に開けている目が左右で違い、本日は左目を開けているようで左側に顔を動かし肩越しから部下を確認する。

「報告です。虎噤とらつぐみが張り込んでいます。こちらは既に4人取られました」
「……30送れ」
「っ!……いやしかし、数が足りません。今出せるのは14が限度。それ以上になりますと練度が……」

 ハンゾウは鋭い目つきで部下を睨みつける。その目に部下は萎縮し、すぐにこうべを垂れると屋根から屋根へと飛び移りつつ離れていった。

「……コジュウロウめ」

 ハンゾウはボソッと小言を呟き、視線を落とす。眉間にシワを寄せつつチョロチョロと動き回っているナガヨシたちの動向を探る。



 最後の一言が余計だったと悟り、反省するナガヨシは後頭部をポリポリと掻きながら次の候補者の元へと足を伸ばす。

「でもそもそもの話、ヒラミツさんには結構丁寧に接してましたよね? いつもならもっとグイグイ行く感じなのに……」

 レッドの言葉にモミジもハッとする。

「あ、確かに。聞こえは悪いかもだけど、今思えばかなり下手に出てた感じだったかも?」
「ん。まぁな。前にヒラミツの奴に上から目線が気に食わんと言われたことがあってな。こちらが誘う以上は下手に出るべきだろうと心得たのだが……上手くはいかんものだ」
「ナガヨシさんに丁寧に接っすることを要望したのに、片やヒラミツさんは滅茶苦茶大柄って最悪ですよ。仲良くなれそうにないです」

 ヒラミツは無限によいしょされることを望むわがまま放題の男だった。手加減するなと言いながら接待を求めるタイプの上役。シバ家のブランドに全力で乗っかる典型的な七光りである。

「ん。確かにそうだな。言ってやるなと言いたいところだが、あれは擁護出来ん。いずれ人生のどこかで気付いて若気の至りだったと反省すればもう少し友好的になるやもしれんが、俺の生きている内には治らないだろうな……」

 南から西側へと移動し、歓楽街を横目に先へ先へと進み、鬱蒼と茂る竹林や小高い山々が見えてきだした頃、大きな屋敷が目の端に見えた。その屋敷こそが今目指している候補者の住居である。

「モリシゲ=エダギ。エダギ家の当主で十蛇流とだりゅうの使い手。剣術は免状に至っている。実力は申し分ないが、会話をあまりしたことが無い奴でな。何を考えているのかいまいち掴めていない。ただコウカク家への奉公を欠かさぬ男だ。誰より愛国心溢れる人材だと言える。国の危機を伝えればきっと手を貸してくれるだろう」

 坂を上った先にある屋敷の前に到着し、レッドは早速家紋を確認する。描かれていたのは横を向いた牡鹿だ。エダギ家の家紋をまじまじ観察しながらナガヨシの戸を叩く音を聞く。

 いつもなら奥に通されて話し合いが始まるところだがモリシゲまさかの不在。
 約束を取り付けていないので仕方がないが、黙々と歩いて肩透かしを食らうのは精神的ダメージが大きい。

「仕方がない。まずはサコンに話を付けるとしよう」
「げっ……」

 ナガヨシの言葉にモミジが反応する。その顔から嫌な想像がつくが、レッドは恐る恐るナガヨシに尋ねる。

「あの~……サコンさんっていったいどんな方でしょうか?」
「姓はマシラ、名はサコン。無鎧流むがいりゅうの使い手で、確かまだ免状には至っていない。実力はまず……中の下。こいつも例に漏れず御家の当主だが、一度は四臣創王にまで任命された彼のマシラ家から出たとは思えんほどのへそ曲がりだ」

 それを聞いた瞬間にモミジの反応に納得がいった。レッドには会ったこともないサコンがヒラミツと重なって見えたのだ。それを察したナガヨシは小さく首を横に振る。

「いやいや、ヒラミツと比べればそれほどでもない。ヒラミツの面倒臭さは天性のものだが、サコンのは劣等感からくる反抗心。だが、上に上がってやろうとする気概は見受けられる。上手く転がしてやればそれなりに働くのではないかと思っている」

 楽観視するナガヨシに対してモミジは警戒心をあらわにする。レッドはモミジの嫌悪感が気になり、ずんずん先に進んでいくナガヨシから少し距離を取って会話を試みる。

「……サコンって人はそんなにヤバいの?」
「……単純にあたしが嫌いなの。あの人イヤらしい顔でお姉ちゃんを見てたし……」
「……ああ、なるほど」

 サコンは女好きでもあるようだ。それが露骨すぎてモミジの不快感を刺激したのが原因らしい。

 エダギ家の領地『常滑とこなめ』からマシラ家の領地『昌葉しょうよう』までは目と鼻の先であり、移動にそれほど苦労はなかったが、モミジの嫌悪感が移ったのかサコンに会うのが億劫になっていた。

「もうすぐだぞ。……ん? なんだぁ2人とも? そんな面して……。大丈夫だ。一時的に手を組むだけだ。ずっとじゃない」
「そんなの分かってますよ。……す、すいません……」
「ん。いや、無理もない。なんだったら2人とも屋敷の外で待っていてくれ、俺が話をつけてくる」
「あっ、その、少し感情的になってたかもです。……私も行きますっ」

 気合を入れ直すモミジ。レッドも密かに深呼吸をしながら心を入れ替えていると、遠目に見えていた屋敷が見えてきた。

「……ん? あれは何でしょう?」

 レッドが指を差す方向に目をやると、何かの人だかりが出来ていた。屋敷の近くで何かをやっているようで、避けては通れない雰囲気を感じた。
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