「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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18章 龍球王国 後編

354、保釈

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「……今のは何でおじゃるか?」

 ヨリマロ=キジン。『キジン家』という由緒正しき家系の現当主。
 北東方面を統治する貴族階級で『コウカク家』の分家筋の血を引く華麗な一族。
 たまたま外に出る機会があり、空を覆い尽くす魔王の影をたまたま目にしたヨリマロは供回りに疑問を投げ掛ける。しかし当然ながらヨリマロ同様、雲以外で空を覆うものを見たことのない部下たちは互いに目で確認し合った後に慌てて返答する。

「大変申し訳ございませんヨリマロ様っ。我々には皆目検討の付かない現象でございますっ。歴史の文献を当たってお調べ致しますので、後日お答えさせていただくということでお許しいただきたいのですが……」
はよしてたもれ。麻呂が聞きたいのはこの兆しが吉兆なのか凶兆なのかということでおじゃる。今日という日を今か今かと待ちわびてきたのじゃ。何かあってからでは遅い」
「ははぁっ!」

 ヨリマロの命令を受け、この場に残るものと調査員で二手に分かれることになった。
 3人は乗れそうな豪華な駕籠の中で手を窓枠に置きトントンと指でリズミカルに叩いているヨリマロは、イライラした様子で深いため息をつきながら外で待機する部下を呼びつける。

「それで? 麻呂はいつまでこうして居れば良いでおじゃるか?」
「もうすぐでございます。今しばらくお待ちを……」
「ん? これはおかしい。半刻前にもそのように聞かされたような……麻呂の勘違いでおじゃろうか?」
「いや、それは……」

 主人のパワハラ発言に困っていると、見かねたもう一人の方の部下が対処するために前に出た。

「……申し訳ございません。亀鎧の書類処理能力に難がありまして、審議に時間が掛かっております。書類に誤りはありませんので、恐らく嫌がらせの類でしょう。私がこれから急がせますので……」
「もう良いっ! ふんっ……麻呂が直々に行く。開けるでおじゃる」

 部下は駕籠の屋根と扉を開け、手を広げて外へと誘導する。ヨリマロは感謝の一つもなく立ち上がると太々しい顔で部下を見渡し、吐き捨てるように「この役立たずどもっ」と一言呟いて亀鎧西側支部に入って行った。



 ヨリマロが直談判して早々にトガノジョウの保釈が決定した。
 牢屋から出されたトガノジョウは手錠が外された手首を撫でながら刑務官に連れられて拘置場の出口に案内される。

「トガノジョウ様っ!」

 鉄格子がガチャンッと音を立てて揺れる。うつろな目で鉄格子を見ると、そこにはサコンの姿があった。

「保釈されたんですねっ! 俺もすぐに出してくださいっ!」

 トガノジョウは答えることなくジッと眺めるばかり。サコンはヘラヘラしながらトガノジョウを見ていたが、段々と余裕がなくなってニヤケ面が消える。

「……どうしたんですか? トガノジョウ様? 出してくれますよね?」
「……すまん」
「な、何で謝るんです?……トガノジョウ様?」

 トガノジョウはサコンの牢屋から目を離して歩き始めた。

「いやいやいやいや……嘘でしょ嘘でしょっ! トガノジョウ様っ!?……おいっ!! トガノジョウっ!! ふざけんじゃねぇよっ!! 恩を仇で返すつもりかっ?!!」

 一瞬ピタッと足を止めたが、返答することなくすぐに歩き出す。

「……トガノジョウっ!! テメーだけは絶対ぜってぇ許さねぇっ!! 覚悟してろよこの野郎っ!!」

 拘置所には負け犬の遠吠えだけが木霊していた。

 とぼとぼと表に出てきたトガノジョウをヨリマロとその部下たちが迎え入れる。

「おおっ! 待っておったぞトガノジョウっ! さぁもっとちこう、近う寄れっ!」
「……ヨリマロ様」
「どうしたトガノジョウ? いつもの威勢がないではないか。もしや奴らの取り調べが相当キツかったのか?」
「いえ……あの程度、私には全く問題ございません」
「ではどうした?……いやいや、良い良い。こんなところで聞くなど無粋であった。さぁ帰るぞ」

 ヨリマロが手を引き、施設から出されたトガノジョウはヨリマロと並んで質問をする。

「あ、あの……サコンは……」
「ん? マシラ家の当主か? 何を気にする。奴はそなたを利用するだけ利用して捨てようとした極悪人じゃぞ?」
「いえ、あの……」
「奴め、麻呂をたぶらかそうとしただけでなくそなたまでたらし込もうとしていたとは不敬で不快な男じゃ」
「しかし……」
「トガノジョウよ」

 ぽつぽつと口を挟もうとするトガノジョウの両肩を掴んでヨリマロはキッと目を釣り上がらせた。

「……サコンは信用出来ん男でおじゃる。何故なら主人を裏切っておるからじゃ。裏切り者はどこに行っても必ず裏切る。そんな奴は閉じ込めておくに限る」
「……」
「ほほほっ。何も咎めることはない。亀鎧の取り調べにも耐え、麻呂の側についてキジン家の天下を願う主人思いのそなたと、裏切り者のあ奴。どちらが如何に重要で、どちらがより価値ある者か明白ではないか」
「この私に……価値が……?」
「当然でおじゃる。麻呂のため、いつか語ったそなたの夢のため、共に力を合わせて難局を乗り切るのじゃ」

 ヨリマロの言葉に呆けていたトガノジョウの目に火が入る。

「はぁぁ……ヨリマロ様、心洗われましたっ。この命尽きるまで、お側を離れませんっ」
「うむ。その意気じゃトガノジョウっ。さぁ乗れ。共に帰るぞ」

 3人は乗れる大きな駕籠に乗ってきたのはトガノジョウを乗せるためだった。
 2人を乗せた駕籠は部下たちに守られながらゆっくりと進み、西側支部を後にした。
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