「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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1章

1、追放

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 異世界「エデンズガーデン」。
 広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。

 ダンジョンに潜って魔物を狩り、高価な素材を収集することがステータスとなるこの世界で、冒険者たちが各々の得意ごとを活かして民衆の生活をより良いものに変えていった。
 彼らを取りまとめる冒険者ギルドは活躍する冒険者たちをまるでアイドルのように広報し、支援金や任務報酬で冒険者を支えている。

 冒険者たちは任務報酬はもちろんのこと、自分の名や活躍を世界に轟かせることを目的として、日夜ダンジョンで活動を続けていた。

 ──人間の国「アヴァンティア」──
 様々な人種が住み着く国の首都にある高級料亭”柊”。国の要人も使用する完全個室制の店に中堅冒険者チームが足を踏み入れる。広めの個室に通された7人は、思い思いの席に座る。
 一般人なら半年に一回くらいのペースでしか来られない高級料亭とあって、出される料理は美味いものばかり。本来なら笑顔でメニュー表を開くところだが、1人を除く全員が神妙な顔つきで俯いている。
 チームみんなの沈黙に困惑を隠せない男。憧れの高級料亭で心躍る自分と、まるで今から強大な敵と戦いに行くかのようなみんなの放つ負の気とも言うべき空気の違いに疎外感を感じていた。

 キョロキョロと不安そうに目だけを動かし様子をうかがうこの男。
 名前はレッド=カーマイン。人種=ヒューマン。職業=剣士セイバー。ロングソードを用いて敵を倒す正統派冒険者。
 髪と瞳の色が赤く、顔半分から下がすっぽり隠れる黒のクロークを身につけ、黒のシャツと手首に黒いリストバンドを付けた闇に溶け込めそうな衣装だ。ズボンだけが申し訳程度に濃い茶色といったところ。頭上半分以外は地味すぎて記憶に残らない男だ。

 本日は仲間と共にレベルに見合った任務に参加し、街の近くのダンジョンに潜っていた。当然のように無傷で戻った腕っぷしの強い冒険者たちは成功報酬を分け合いながらも何故か重々しい空気となる。

 レッドは不思議に思っていた。全員が何か言いたげにチラチラと自分を見ている。
 この空気の元凶はもしかして自分なのではないかと思い始めた頃、チームのリーダーである魔法剣士マジックセイバーニール=ロンブルスが意を決して口を開く。

「レッド、これから話すことを冷静に聞いてほしいんだ……」
「な、なんだよ……突然改まってさ。え?なんか俺忘れてるっけ?」

 レッドは目をパチクリさせながら不思議な気持ちでニールの顔を見る。

「このチームから脱退してほしい」

 その言葉が頭に浸透するまでに実に5秒掛かった。レッドは顔を引きらせながら全員を見渡す。さっきまで俯いていたみんなと目があった時、自分の置かれた状況をようやく理解した。

「……え?ちょっ……え?」

 レッドはこの日、一方的にチームを追放された。



『お前と居るとつまんねぇ』

 当時の仲間にこの言葉を投げかけられてから1年の時が経過しようとしていた。小高い丘で小腹が空いた時用に取っておいたパンをかじる。

 レッドは今も1人だ。仲間を作れば同じ言葉を言われそうで、心を閉ざし塞ぎ込んでしまっていた。
 故郷からも見知った街からも離れ、「プリナード」と呼ばれる生まれて初めての街に移住してまで黙々と任務をこなしている。
 1人日銭を稼いで食いつなぐ日々。昔貯めたお金は何だか手がつけられずに銀行に預けっぱなし。またあの頃に戻りたいと心の奥底では思っているのかもしれない。

 しかし、昔の友は彼が離れてから新しく別のメンバーを1人追加し、「ビフレスト」とチーム名を変え、今や世界的なスターダムにのし上がった。
 その後、たった半年で他の冒険者チームを押しのけ、世界一のチームという名声と地位を確立した。
 追い出された時も、それ以降も自分史上最強のチームだったと鼻が高い。が、だからこそ何故そこに自分が居ないのかと落胆が大きい。

「俺は結局あいつらの足を引っ張ってたのか……」

 ビフレストの活躍を耳にする度それを実感する。
 悲しいが揺るがない事実。
 レッドは今日何度吐いたか分からないため息を思いっ切り吐き出した。

 チラッと荷物を開き、本日受けた任務の成果を確認する。骨で作られた剣の尖端、これが魔獣討伐の成果である。
 最近街の安全を脅かすソードタイガーなる魔獣が出没し、犠牲も出ているとの報告が入った。現地調査と魔獣の生態調査をして、可能ならばこれを撃破すること。

 刃の様な牙を持つこの魔獣は、か弱い子供を積極的に狙う獰猛且つ狡賢ずるがしこい魔獣で、チームでの撃破を推奨とされている。1人で狩ることは危険なのだが彼は無理して戦いに挑み、これに勝利した。

 鋭い牙で袋を破らないようにそっと布に包む。今日受けた任務はこれだけ。
 休憩を終えたら街に戻って換金し、ギルドの館で掲示板を見ながら次の任務を探す。
 若くして隠居しても食いっぱぐれないほど稼いだチームとの絆というべき報奨金を銀行に眠らせたまま、日々をこうして無意味に食いつないでいる。

「……チームかぁ……」

 そろそろ昔のチームを忘れるべき時だろう。革袋の水を呷り、喉を潤しながら決意を固める。

 だが、懸念すべきことが一つある。それは自分を受け入れてくれるチームがあるのかどうか。懸念の要因はジョブが在り来りすぎることだ。

 魔法使いマジックキャスターのようなレアジョブなら重宝されるだろう。盗賊シーフ野伏レンジャーも年中募集されている。
 であるなら剣士セイバーはどうか。攻撃力もある近接攻撃型。仲間が攻撃をなるべく受けないように敵意ヘイトを稼ぐことが仕事だ。
 チーム戦において敵意ヘイト管理は必須。戦士ウォリアー系統が居ないチームは生き残りが難しいとされる。これだけを聞けばレッドを入れない理由がない。
 しかしいつの時代もチームのリーダーは戦士ウォリアー系。既にその枠は埋まっているも同然。
 中、遠距離攻撃型の弓使いアーチャー魔法使いマジックキャスターのみで構成されたチームなら受け手はあるだろうが、そんなチーム稀も稀。

 結局やる気になったところで受け入れ先などあろうはずもない。レッドは休憩を終えて街へと帰還した。
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