「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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5章

41、一入

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「ふぃ~……焦ったぁ。急なんだもんなぁ……」

 レッドは魔導局に向かう道中、後ろを振り返った。

「あの集団はなんだったのだ?レッドが道を開けるなんて考えられない」
「あれはラッキーセブンっていう凄腕冒険者チームさ。俺なんかよりずっと有名で戦果だって数段上なんだぞ」

 レッドは嬉しそうに語る。ミルレースはその自慢するような態度に辟易する。実力なら誰にも負けないだろうレッドの喜々とした語り口調は、弱い生き物に対する皮肉とも取れるからだ。だがオリーの見解は違う。

「そうか。レッドは彼らに憧れているのだな」
「え?!わ、分かっちゃう?」
「ああ。すごく楽しそうだからな」
「えへへ」

 オリーの見解の方がレッドの気持ちに寄り添っていた。そのことに気づいたミルレースは唇を尖らせながら鼻を鳴らす。

『ふ~ん。でもラッキーセブンの戦果くらい2人でなら余裕で越えられますよ?1人でも十分でしたけどね』

 ミルレースの負け惜しみの言葉にレッドは手を振りながら答える。

「違う違う。そうじゃねぇんだよなぁ。有名人に会えた喜びに浸ってるだけなのさ、俺はね。今更彼らに実力で近付こうとか追いつけるとか思ってもいないけど、サインの1つくらいは欲しいよねってことなんだ。まぁこればっかりは底辺冒険者の気持ちに立たないと分かんないか。ごめんミルレース。忘れてくれ」

 レッドの相変わらずの饒舌っぷりにミルレースは「あ、はい」と頷いた。そんな他愛ない会話をしていると、いつの間にか魔導局の前まで来ていた。レッドは懐にあるオリハルコンをチラリと確認する。

「よしよし。前回はテスさんに証拠を出せない頭のおかしい奴認定されたが今日は大丈夫だ。もしこいつを失くしたらと思うと……おお、怖っ。ルーさんにまで嫌われたくないしな」
「レッドが嫌われたくない人間。会ってみたいな。どのような人物なのか」
『そんなに良い人ではありませんよ?特にレッドが会ったテスとルーに関しては人を小馬鹿にするような性格の悪い方々でしたし』
「そうなのか?ううむ……」
「だから、それは俺が悪かったんだって。誤解さえ解ければ評価も変わるさ……とにかく入ろう」

 早速魔導局に入り、受付を通してルイベリアを呼び出した。



 この日、皇魔貴族は荒れていた。

「ガアァッ!!何なのだ奴は!!」

 グルガンは机を強く叩く。ビキビキと拳を中心にヒビが机全体に行き渡った。

「閣下!今すぐにベルギルツ候の処分を願います!我らナイツオブランスとの作戦を放棄する背任行為!犠牲となった我らのリーダーであるジークに代わり、お願い申し上げます!何卒!何卒ぉ!!」

 たった2人となった騎士ナイトたちはフィニアスに跪き、ベルギルツの処分を懇願する。ロータスはそれに対して否定的だ。

「……確かにベルギルツは何もしなかった。何もしなかったが……あれはどうしようもないだろう……」
「どうしようもないだと!?我らを愚弄するおつもりか?!」

 騎士ナイトの1人は立ち上がってロータスに詰め寄る。ロータスは肩を竦めて頭を横に振った。

「そういう訳では無いが……一番槍を欲したお前らが死んでいった奴らの誉れを蔑ろにするのはどうなのだ?」
「単なる無駄死にではないか!!」

 ガンッと机を叩く。かなり興奮してしまっているようだ。

「口を慎めゴンドール。相手が誰だか分かっているのだろうな?」

 騎士ナイトゴンドールは子爵バイカウントをチラリと見た後、ロータスに目を移す。
 ベラトリス=伯爵アール=ロータス。騎士ごときが反抗して良いレベルではない。

「ぐっ……も、申し訳ございません」

 ロータスに頭を下げるゴンドール。デーモンならこうなる前に死んでいるが、ロータスは彼の謝罪を受け入れた。

「奴らの犠牲は無駄ではない……あの男の強さをまた知れたのだからな……ところでフィニアス。このままでは女神復活を阻止することは出来んが……どうするつもりか?」

 黙って聞いていたフィニアスだったが、ロータスの質問に手をかざした。すると突如として手のひらの空間がぐにゃりとネジ曲がる。すぐに元に戻ったが、手のひらの上には鍵が出現していた。

「っ!?……ま、まさかそれは……!?」

 会場がどよめく。その鍵の意味する理由を皆が知っていた。

「正気か!?あれを解き放てば我らとて無事に済まんぞ!」
「……自爆覚悟とは少し脅しが過ぎたか?」
「閣下おめください!あれを解放するくらいならレッドに突撃した方が幾分マシです!」

 死んだほうがマシとも思われている最悪の存在。それを封印する鍵が今ここに。

「使わざるを得ない。レッド=カーマインは強すぎたのだ。わたくしにこれの使用を考えさせるほどに……」

 フィニアスは鍵を摘んで光に反射させる。何らかの紋章が彫り込まれた持ち手に、複雑に凹凸が彫られた鍵の先。宝石が散りばめられた豪華な鍵。形状的には扉に使われそうな鍵である。

「……アルルート=女王クイーン=フィニアスの名を以って命ず。”乾きの獣”を解放する」

 その言葉に反応するように鍵が光を放ち、先ほどとは打って変わった複雑な形状へと変化する。その変化を見た瞬間、グルガンたちは生気が抜けたような顔になった。

「素晴らしい判断でございます。フィニアス様」

 パチパチと拍手をしながらベルギルツが出てきた。

「お前……今までいったいどこに……」
「ずっと居ましたとも。そんなことよりもレッド=カーマインを相手にするならあの獣こそが最適解でしょう。これ以上命の危機を感じるのはゴメンですからねぇ」
「あれの能力を知って言っているのだろうな?我らも危険が伴う。ともすればレッド以上だぞ?」
「ふむ……フィニアス様に鍵が移譲された時、このような噂を聞きました。万が一にも扉が開かれる事態に陥ったなら、心臓を破壊せよと……つまりはハウザーと同様に命の核となる何かをフィニアス様が握っておられるということに他なりません」
「なにっ!?……事実か?フィニアス」

 最終兵器と呼べる存在はここにいる最強の魔族たちを屠る力を持っている。ベルギルツの言う噂が本当であるなら、もう怯えることはなくなる。フィニアスはただ黙ってコクリと頷いた。それを聞き、安堵のため息が漏れる。

「ならば話は違う。あの獣を解き放ち、レッド=カーマインを亡き者にするのだ」



 魔導局の待合室でソファーに座ってくつろいでいたレッドたちの元にペタリペタリとサンダルの音が近づく。その音に気づいて振り返ると、そこにはダボダボの白衣を着た女ドワーフが手を振っていた。

「やーやーレッドじゃないか。まだ旅立ってなかったのかい?それとも忘れ物でもして引き返してきたのかな?」
「ルーさん!お待ちしていました!」
「ゴメンゴメン。ちょっと外せない仕事があってさぁ……って、ん?その子は……始めて見る顔だね。誰かな?」
「この子は俺の仲間です。オリー、自己紹介を」
「初めまして。オリー=ハルコンと言うモノだ。どうぞよろしく」

 オリーは背筋を伸ばして頭を下げる。美しすぎる所作にルイベリアは感嘆の息を漏らす。

「美しい……これほどの美しさは見たことがない……こんな子がこの国に居たのかい?」
「いえ、オリーはこの国の人間ではありません。そんなことより、ルーさんの言ってた高山に行ってきましたよ」
「あ、じゃあ引き返してきたのかい?まぁ仕方ないか、最高難易度のダンジョンだと言われてるし」
「ああ、確かに凄まじいダンジョンでした。ドラゴンが闊歩している様は地獄としか言いようがなかったですね。中はマグマ溜まりがそこら中にあったせいか、あまりの暑さで汗だくになったので帰る途中水浴びしちゃいましたよ」

 冗談交じりに笑うレッド。それに呼応するようにオリーも微笑んだ。

「あはは……楽しそうで何よりだよ。ところで彼女の名前だけどさ、オリー=ハルコン。オリー=ハルコンって言ったよね?」
「え?あ、はい」
「もしかしてだけど、僕の言ってたオリハルコンをさ、まさかジョークで返すために戻ってきたとかそういうのかなぁ?だとしたら普段温厚な僕でも怒っちゃうかもだけど……」
「いや、そんなわけ……」

 背の低いドワーフのルイベリアは、座っている丁度目線の高さくらいに居るレッドにズイッと顔を寄せた。ビクつくレッドに不敵な笑みを浮かべた。

「図星じゃないかな~?」
「持ってきましたぁ!」

 レッドは堪らず懐から何個か石を取り出し、ルイベリアの眼前にかざした。

「んぉっ……ニセモノじゃないよね?」

 ルイベリアは受け取った石をささっと確認する。そして目を丸くして驚いた。

「いや!えっ!?ほ、本物ぉ?!」

 レッドはほっと胸を撫で下ろす。もらった資料でオリハルコンはこの石だと確信していたし、ウルレイシアのお墨付きもある。しかし、ここでルイベリアがもしこれじゃないと突き返してきたらどうしようかと不安を抱えていたのだ。万に一つは消え去り、後は結果だけが残る。
 しかしそれは同時にルイベリアのレッドを見る目が変わる瞬間でもあった。

「と、取り敢えず僕のラボに行こう!!」
「え?でも仕事は……?」
「はぁ!?仕事ぉ?!そんなの二の次二の次!」

 ルイベリアはサンダルに付いているエンブレムをいじる。カチンカチンとギアが嵌まる音が小さく鳴り、サンダルが光を放つ。次の瞬間、ルイベリアの体がフワッと浮き上がった。浮遊魔法が付与されたサンダルのようだ。

「ラボの場所は分かるでしょ?!先に行ってるからラボに来て!」

 子供の体型ゆえに歩幅に差が出るルイベリアは、素早い移動を可能にする魔道具を常に履いている。このサンダルは職場用にあつらえたものだったが、興奮しているルイベリアにはせっかくのこだわりも煩わしいだけだ。

「ほらっどいてどいて!!」

 ルイベリアは妖精のように自在に空を飛び、魔導局の出入り口に向かう。その間「ロビーで魔法を使うな!」とか「何を考えているんだ!」などの叱責が怒号となって建物内に響き渡る。

「自由な人だなぁ……」
『ふふっ……そうでしょうか?石をもらった時の彼女、オリーを手に入れた時のあなたと同じ顔をしてましたよ?喜びも一入ひとしおというところでしょうかね』
「え?俺もそうだったのか?なんか恥ずかしいな……」
「私はそんなレッドが好きだぞ」
「……あ、ありがとオリー……え、えっと……ルーさんを待たせるわけにはいかないな。行くか」

 レッドは顔を赤く染めながら立ち上がる。オリーはレッドの三歩後ろにつき、ミルレースはニヤニヤしながらついていく。ルイベリアを追ってみんなでラボへと向かった。
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