「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

文字の大きさ
54 / 354
6章

54、気遣い

しおりを挟む
 レッドたちは最初の居酒屋に戻ることにしたが、ディロンは宿に戻ると言って別れた。オリーは何か言いたそうにしていたが、レッドがオリーを止めたために口を挟むことはなかった。

『よろしかったのですか?地竜の件が分からないままなんですけど……』
「え~……だって話したくなさそうだったし……無理に聞いたら余計に話してくれなくなるかもしれないからさ」
「そうか。レッドはディロンの感情を読み解いていたのだな?私にはそういうのはよく分からないが……」
「え?でもいろんなことに気が付くし、俺は助かっている事ばかりだけどなぁ」
「レッドのことなら分かる」
「マジ?俺って実はメチャクチャ読みやすい顔をしているんだな」
『というかレッドは魔法契約で主従関係を結んでいるじゃないですか。何をしていなくても筒抜けなのでは?』
「あ……そ、そういうものなの?」

 レッドは途端に恥ずかしくなったが、そもそも感情を読み取る効果があったことを今まで知らなかったので、仕方がないと開き直ることにした。

「そ、そんなことよりもまぜそばを食べたいなぁ~。もう俺お腹空いちゃってさ」
「それは大変だ。レッドが飢えてしまってはかわいそうだからな。居酒屋まで走ろう」

 美味しいご飯が食べられるだろうと急いで戻ってみたが、居酒屋の店主も店員もドラゴン騒動で避難していた。こうなっては食事は諦めるほか仕方がなく、宿を探すことにしたが、街のほとんどの住人が避難していたために宿も取れない。
 街の住人が避難所から戻ってくる間は何も出来ず、人がいることのありがたみを噛み締めながら1時間弱、居酒屋のテーブル席で暇を持て余した。



 ディロンはどこに寄ることもなくまっすぐ宿に戻った。部屋に入ると鎧を脱ぎ、ベッドに体を投げ出した。ミシミシと悲鳴を上げるベッドを気にせずに目を閉じる。
 瞼の裏に浮かんでくるのはディロンの力を大きく凌ぐ強者たち。ブラッド=伯爵アール=ハウザー、地竜王ウルラドリス、そしてレッド=カーマイン。
 ハウザーに軽くあしらわれ、ウルラドリスには危うく殺されかけた。ウルラドリスの攻撃が迫るその時、レッドがディロンを剣1本で守った。それも市販のロングソードで。ディロンの見知った世界がその瞬間に終わりを告げた。

「すげぇ……」

 ディロンの進む道は孤独だった。生まれながらに常人より大きく、そして強い。自分以外の人間が弱すぎる世界は退屈そのものであり、壊さないように人と距離を保つのがせめてもの優しさであり気遣いだった。
 冒険者を始めた頃はそれなりに屈強な連中を見かけた。冒険者ギルドに入った当初は人並みにドキドキしたものだった。
 しかし結局は見掛け倒し。当時、一緒に戦っていたチームで失望することになった。初級冒険者であるはずのディロンにベテラン勢がおんぶにだっこという異常事態が起こった。そんな冒険者たちを見限り、背中を預けられそうな強者を探したが、眼鏡にかなう冒険者を見つけることは出来なかった。
 仲間など要らない。それがディロンの答えだった。
 天井を見る目は少し潤んでいた。



 地竜王ウルラドリスは同胞たちと巣に戻り、お気に入りの絨毯の上にあぐらをかいていた。そして地竜たちが見守る中、おもむろに自分の頬をつねった。

「……いひゃいいひゃいいひゃいっ!!」

 周りが心配するほどつねりあげたウルラドリスはあまりの痛みから指を離す。夢かうつつかを確かめるにしては力を入れすぎだが、それぐらい信じられない現象を目の当たりにした。立て続けに起こった驚いたことを頭の中で1つずつ整理しながら飲み込んでいく。
 地竜を単独で撃破する人間の出現、おまけに頂点捕食者であるドラゴンを食す愚行。放っては置けないと面子を揃えて仇討ちに出る。目当ての人物にはすぐ遭遇したが、ウルラドリスの敵ではなかった。
 だが、その人間を殺そうとした直後、レッド=カーマインが横入りしてきた。その身を盾にして守ろうとするなら共に爆砕するつもりだった。現に今までもそうして来たのだが、レッドは今までの連中とは大きく異なり、真正面から受け止めた。山すら穿つ突進を一歩たりとも後退することもなくだ。これが夢でなくて何なのか。

「レッド=カーマイン……か。それから、なんでウルレイシアがあんなところに……いや、ウルレイシアじゃなくてオリー=ハルコンって言ってたかな?……偽名?人間と行動を共にするための擬態?なんで?」

 サミュエルの仇討ちを優先出来なかった理由の1つ、火竜王ウルレイシアによく似た人物の登場。ウルラドリス同様、巣に引きこもっていたはずだが、どうして出てきたのかまったく分からなかった。

「……も~っ!分かんないもん!!みんなごめん!しばらく寝させて!!」

 ウルラドリスは途中までちゃんと整理出来ていた思考を投げ捨てて急に幼児になった。すぐさまコテンと大の字に寝転がる。だがそれを邪魔するようにウルラドリスに声を掛ける者がいた。

『ウルラドリスよ』
「ん?なんだ?誰だ!」
『私だ。地帝ヴォルケンだ』

 地帝ヴォルケン。土の精霊であり、炎帝ノヴァと肩を並べる精霊の王である。土の中からスゥーッと半透明の男が現れる。キリッと目鼻立ちのはっきりした顔に整えられた髭を備え、鍛え上げられた体を薄い衣に身を包んだ褐色の偉丈夫。おかしな点があるとすれば腕が4つあることだ。

「おぉ~ヴォルケンかぁ、久し振りだなぁ。爺は息災か?」
『ああ、相変わらず引き籠もっている。そなたも元気そうで何よりだな』
「んーん。そうでもない。最近同胞を人間に食い殺されて落ち込んでいるところだ」
『食い……地竜をわざわざ食うのか?それはまた変わった人間がいたものよ。それで聞きたいことを思い出したのだが、先ほど火竜王ウルレイシアの話をしていなかったか?』
「おお!耳が良いな!その通りだ。今日ウルレイシアに会ったんだ。で、それがどうかしたのか?」
『驚くべきことだ。ウルレイシアは長い間、炎帝ノヴァに封印されていたのだからな』

 ウルラドリスは目を剥いて驚いた。

「ええ!?なんで封印なんて……!」
『理由は知らん。そんなことよりもノヴァが倒されたことの方が重要でな。誰が倒したのかを知りたいのだ』
「そうか!またウルレイシアに会えればその両方を聞けるというわけだな?」
『ああ、まぁそういうことだな。おびき出してくれるか?』
「良いよ!良いけど明日でいい?」
『もちろんだとも。しっかり寝て、英気を養ってくれ』
「ありがとうヴォルケン!おやすみー」

 ウルラドリスは再度転がった。もう誰にも邪魔されないことを確信して安心したのか、寝転んだと同時にスヤスヤと寝息を立てた。ヴォルケンはその様子を鼻で笑い、また地面へと消えて行く。地竜たちもウルラドリスを起こさないようにそっと定位置に戻る。ウルラドリスの寝息だけが静かな空間に木霊していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

魔法使いが無双する異世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです

忠行
ファンタジー
魔法使いが無双するファンタジー世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか忍術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです。むしろ前の世界よりもイケてる感じ?

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

ダンジョン冒険者にラブコメはいらない(多分)~正体を隠して普通の生活を送る男子高生、実は最近注目の高ランク冒険者だった~

エース皇命
ファンタジー
 学校では正体を隠し、普通の男子高校生を演じている黒瀬才斗。実は仕事でダンジョンに潜っている、最近話題のAランク冒険者だった。  そんな黒瀬の通う高校に突如転校してきた白桃楓香。初対面なのにも関わらず、なぜかいきなり黒瀬に抱きつくという奇行に出る。 「才斗くん、これからよろしくお願いしますねっ」  なんと白桃は黒瀬の直属の部下として派遣された冒険者であり、以後、同じ家で生活を共にし、ダンジョンでの仕事も一緒にすることになるという。  これは、上級冒険者の黒瀬と、美少女転校生の純愛ラブコメディ――ではなく、ちゃんとしたダンジョン・ファンタジー(多分)。 ※小説家になろう、カクヨムでも連載しています。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

風魔法を誤解していませんか? 〜混ぜるな危険!見向きもされない風魔法は、無限の可能性を秘めていました〜

大沢ピヨ氏
ファンタジー
地味で不遇な風魔法──でも、使い方しだいで!? どこにでもいる男子高校生が、意識高い系お嬢様に巻き込まれ、毎日ダンジョン通いで魔法検証&お小遣い稼ぎ! 目指せ収入UP。 検証と実験で、風と火が火花を散らす!? 青春と魔法と通帳残高、ぜんぶ大事。 風魔法、実は“混ぜるな危険…

処理中です...