「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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6章

56、地竜再来

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 カンカンカンカンカンッ

「ドラゴンだぁ!!ドラゴンが攻めてきたぞぉ!!」

 地竜は間を置かずに攻めて来た。衛兵が高台から目視し、拡声器と鐘で危険を街中に知らせる。街の人間は急ぎ避難を始めるかと思ったが、ワラワラとのんびり避難し始める。この心境の変化はディロン=ディザスターの功績が大きい。
 たった1人で地竜侵攻を退けた怪物。市民にとっては守護神とも言える存在が居るのだから、慌てることなどない。ただし何があるか分からないので一応避難しているのが現状である。

「お!見ろ!ディロン様だ!!」

 トルメルンの住人たちは大きな街道の真ん中をのっしのっしと歩くディロンに黄色い声援を送る。ディロンは新品の斧を撫でながら、市民の声を意に介さず街の玄関口を目指して歩いて行った。

「すげぇなぁ……街の住人の期待を一身に背負える豪胆さ。まさに英雄に相応しいぜ」
「俺もあんな風に生まれたかったなぁ……」
「ヒューマンなのに俺たち獣人族より強いなんて反則だよな」
「しかしなぁ……今度こそぶっ殺してもらわんとこんな生活は続けられんぞい……」
「やってくれるさ。ディロン様なら……」

 ディロンが去った後も尽きない話題にディロンの偉大さを感じさせる。レッドはそんな街の声を聞きながら目を輝かせた。

「やっぱ竜殺しドラゴンスレイヤーは伊達じゃないな。見ろよオリー。あれが尊敬の眼差しだ」
「今のレッドも同じ目をしているぞ」
「マジ?照れるなぁ……」
『まったくおめでたい方々ですね。レッドが戦わなければ街は救われていないというのに……』
「俺が何だって?」
『……いいですかレッド。あなたがやったことをしっかりと世に知らしめていかないと、今後もレッドのイメージが変わることはありません。だからもっと主張していきましょう』
「ああ、ディロンさんがまさにそれだよな。あの人からは学ばなくちゃいけないことがたくさんありそうだ」
「それじゃ行こう。ディロン=ディザスターの側に行けば色々学べるだろうからな」
「良いね!」

 レッドはオリーとミルレースを連れて走り出した。
 昨晩と同じく冒険者たちがずらっと並んで防衛線を張っている。冒険者たちは武器を砥石でみがいたり、魔道具や消耗品アイテムの確認をしているようだ。
 しかし思ったほどの緊張感はない。冒険者の間でもディロンがいれば安泰だとの見方があるのだろう。今度は自分たちもディロンのドラゴン退治に横槍を入れられないかと画策しているのだ。『ドラゴンを倒すのに尽力した』『ドラゴンを倒す一助になった』そもそも『ドラゴンと戦った』という売り文句を手に入れたい乞食根性丸出しの冒険者もいるくらいだ。
 レッドはそんな剥き出しのハングリー精神に気圧されて最後尾で待機することにした。

『何をしているのですかレッド。これじゃ何も出来ませんよ?』
「いや……その……」
「なんだこの冒険者たちは?昨日の弱々しい態度とは一変したように見えるが……」
「そりゃまぁディロンさんが前に立つんだから当然だよ。勇気が湧いてくるもんだよな」
「なるほど。旗頭にカリスマがあれば強くなったと錯覚出来るわけか」
『ディロンって人は一応この方たちよりは強いみたいですし?』
「……なんでそんな上から目線なんだよ。単独でドラゴンを撃破した実績があるのに……」

 レッドが苦言を呈した時、側に居たフルプレートに見を包んだ冒険者が近寄ってきた。

「よぉよぉ。好き勝手言うじゃねぇか?錯覚だと?はっ!舐めんじゃねぇよ。美人だからって容赦しねぇぞ」

 両手持ちの剣を軽々と片手で振り回しながらピタッと切っ先を止めてオリーに突き付ける。微動だにしない切っ先を見れば、腕力に自身のあるタイプのベテラン冒険者だと分かった。

魔法使いマジックキャスター格闘士ファイターか……ふふっこの俺様の剣技に付いて来られないところから魔法使いマジックキャスターの方か。傷を付けられない内に謝っとけよ。そしたら、お前の体を一晩楽しむってことで勘弁してやるぜ?」

 戦士ウォリアーが下卑た笑みを浮かべながら謝罪を要求してきた。それを聞いたレッドは遮るようにオリーの前に出た。

「俺の仲間には指一本触れさせないぞ」
「はぁ?お呼びじゃねぇんだよつまようじ。ドラゴンの前にお前を叩き斬って……」

 そこまで言ったところで戦士ウォリアーの頭がむんずと掴まれた。成人した男性の頭を覆うほど巨大な手に包まれた戦士ウォリアーは、母猫に咥えられた子猫のように大人しく、その足は生まれたばかりの子鹿のように震えていた。こんな風に掴んできた人間が誰なのか、一瞬の内に理解出来たのだ。冷や汗をかきながら目が泳ぐ。

「……退け、つまようじ」
「は、はひぃ……!!」

 ディロンの言葉に動けなかった足はシャカシャカと動き、掌が頭頂部から離れた瞬間にすぐに他の冒険者たちに紛れた。

「……あ、ありがとうございます。助かりました」
「……チッ……ふざけんな」
「え?」
「……とっとと行くぞ」

 ディロンは斧を担ぎながらレッドに顎で指示する。レッドが疑問符を浮かべていると、ディロンはずんずんと先に行ってしまう。

『レッドレッド!置いていかれますよ!』
「あ、うん」

 レッドはディロンに遅れないように小走りで後ろについていく。ついてきていることを肩越しに確認したディロンは、防衛線の先頭まで出ると足を止めて振り返る。3歩後ろにいたレッドたちを見て1つ頷くと大声を張り上げた。

「オメーらはここまでだっ!!こっから先は俺とこいつらが行く!ここが最終ラインだ!しっかりやれや!!」

 ディロンの一方的な言葉に冒険者たちがざわめく。

「そりゃねぇぜディロン!!俺たちにも噛ませろよ!!」
「なんでそいつを連れて行くんですか!!」
「おい待てよディロンさん!そいつはレッド=カーマインだぜ!!」
「マジかよ!あのレッドか?!」
「そんなの連れてったら死ぬぞ!!」

 冒険者たちはわーわーっと騒がしく抵抗する。名誉、名声を欲する冒険者たちがこんな機会を見逃すはずがない。

「黙れっ!!」

 ディロンは歯茎を剥き出しにして怒号をぶつける。ビリビリと心胆を震わせる声で怒鳴られれば誰もが息を飲んで静かになる。しーんっと静まり返ったところでボソッと「……殺すぞ」と呟き、そのまま森に入って行く。あまりの剣幕にレッドも押し黙り、冒険者たちと一緒に神妙にしている。

「……何してんだレッド。早く来い」
「え?あ、あの……はい……」

 ディロンがわざわざ立ち止まってレッドを待っている。レッドは後ろ髪を引かれる思いでオリーと一緒にディロンの元に走った。
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