「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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7章

62、サフィー洞穴

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「気をつけろオリー!こいつの手に触れられたら溶けるぞ!!」
「分かった!」

 レッドはオリーに注意喚起しながら敵の背後に回り込む。

「ぬぅっ!!貴様ぁぁっ!!」

 一つ目の魔族はレッドを目で追うが、その速さは魔族の動体視力を完全に上回っていた。その上、オリーが正面から走りこんでくるのが目の端で見えたためにオリーにも気を取られる。

(いやっ!正面の女はこの際無視するんだ!レッド=カーマインの方が強い!!)

 手を振り回しながら背後に居るレッドを牽制する。対角線上にいる仲間の存在が邪魔して飛び道具が飛んでこないことを察した魔族は、近寄られることだけを避けてとにかくレッドを遠ざけようとしていた。

 ズンッ

「ぐおっ!?」

 レッドを注視して安心していた魔族の背後に痛烈な一撃が刺さる。オリーが放った掌底は魔力を孕み、当てたと同時に内部に浸透して破壊する防御無視の攻撃。盛り上がった外骨格が意味をなさない攻撃に驚愕と痛みと恐れが一挙に訪れる。レッドだけではない。オリー=ハルコンもまた、魔族を死に追いやれるだけの力を有している。
 オリーは外骨格を掴みながら上空に飛び、魔族の視界に躍り出た。痛みと共に飛び出したオリーの姿に一瞬目を取られ、魔族の視線が上向いたのをレッドは見逃さない。魔族の懐に飛び込み、剣を振り上げた。円を描く剣の軌道は容赦無く魔族の両腕を斬り飛ばす。斬られた腕が左右に飛んでいくのを絶望の眼差しで追いながらレッドを見る。何かしなければならないと考えている魔族を尻目に、レッドは振り上げた剣をそのまま振り下ろした。

「烈刃っ!!」

 ボンッ

 およそ剣を振り下ろしたとは考えられない爆音を鳴らしながら玉座に吹き飛ぶ魔族。玉座に叩きつけられた時には頭と胸半分だけになっていた。

「ぐあぁっ!!バカなぁぁっ!?このウェイストがっ!子爵バイカウントたる我がぁぁっ!!」

 ボロボロと崩れさる皇魔貴族、ダート=子爵バイカウント=ウェイスト。サフィー洞穴と呼ばれるダンジョンを支配する魔族だ。
 ダンジョン最奥にてレッドとオリーの2人と交戦し、すべての力を出し切る間もなく敗北。ウェイストはちりとなった。

「……ふぅっ、怪我はないか?オリー」
「ああ、大丈夫だレッド」
「触れたら溶ける手か……恐ろしい相手だった」
『アシッドクロウ!って言ってましたね』

 レッドは剣の刃先が溶かされていないかを確認し、特に問題なかったので納刀する。オリーも手のひらを確認しながら鼻を鳴らした。

「見たところ溶けるのはあいつが手で触れた時のみ、体にはその効果はなかったようだな。レッド」
「うん。なんというか……自分の武器に自信があるのは良いんだけど、それだけしかなかったというか……色んなとこが雑に感じたよ。……身につまされる思いだ」

 剣だけしかまともに振ったことのないレッドと、何でも溶かす手で触れることに固執していたウェイストはどこか似ている気がした。ウェイストの残骸に目を向けながら頭を小さく左右に振る。

「どうだミルレース。欠片は見つかりそうか?」

 ミルレースはレッドの言葉にニヤリと笑って見せた。

『もちろんです。欠片が一度に6つも手に入れたので力が戻ってきましたよ。なんというか、勘を取り戻しているって感じです』
「それでどこにあるんだ?」
『まぁお待ちください。……これはこれは、見つからないように巧妙に隠したものですね。グルガンさんから欠片をもらえなけれべば途方に暮れていたことでしょう』
「そんなに?」
『ええ、まず見つかりっこないですね』

 ミルレースはフヨフヨと壁際に向かって飛ぶ。壁を手で撫でるような這わせ方をしつつゆっくりと移動する。実態がないので触っているふりだが、その手は確信を持ってピタリと止まった。

『ここです!ここ!ここ!』

 ミルレースが指し示したのは左奥の角、天井付近。サフィー洞穴の最奥にある玉座の間の天井は、床から15mは上にある。
 ウェイストは自分が倒されても良いよう、分かりにくいところに欠片を隠していた。というよりはなから見つけさせる気はなかったと見える。ここの欠片を見逃せば、全部集めるまでに5年以上の歳月を必要としたことだろう。

「私が取ろう。ここまで面倒な隠し方をする奴だ。罠がないとは言い切れないからな」

 オリーはレッドの了解を得る前に魔法を唱え始める。ボソボソと詠唱しているのをレッドは懐かしい気持ちで見ていた。

(そういえばプリシラもこんな感じで詠唱していたなぁ。聞かれて恥ずかしい感じなんだろうか?それともこっちの方が魔法が安定するとかなんだろうか?まぁ実際はどんな魔法を使っているのか分からなくするためなんだろうけど……そういえばニールが詠唱しているのを見たことないなぁ。いわゆる詠唱破棄って奴なんだろうか?とすればしっかり詠唱したらどんだけ強かったんだろう?……魔法ってロマンがあるなぁ)

 自己完結しながらも、詠唱しているオリーに興味が尽きないレッド。

空中散歩エアロウォーク

 オリーは風をまとったようにフワッと浮き、まるで歩くようにフヨフヨとミルレースの元まで飛んでいく。欠片が埋まっているだろう壁際で静止すると、じっと見つめて観察している。魔力の流れなどで魔法による罠がないかを探っている。特に問題がなかったのか、右腕を振り上げて拳を叩き込んだ。

 ビシッ……バゴァッ

 オリーの突っ込んだ腕を中心にヒビが入り、遅れてクレーターが出来るように壁がめくれ上がった。パリパリと青い稲妻が壁を走り、オリーの体にも這い回っている。

「うわぁ……凄ぇ……」
『わわっ!?そ、そんな思いっきり殴んなくったって……!』

 凄まじい威力の右ストレートを叩き込んだオリー。おもむろに引き抜いた手に輝く欠片が収められていた。すぐ側で見ていたミルレースに見せるようにかざす。

「罠があった。少し強引に行ったのはどんな魔法でも発動前に破壊すれば封殺出来ると思ってな。少し漏れ出たが、私の前には意味がなかった」
『細かく砕けてたりしてないでしょうね』
「どうかな?この欠片は私より硬い。この程度で壊れはしないだろうが、心配なら確認してくれ」
『もう!無茶しないでくださいよ!こんなので復活に支障をきたしたらどうするんですか!?』

 ミルレースはオリーがぶち抜いた壁の穴を確認する。一通り瓦礫を確認して欠片がないことを悟るとオリーと共にフヨフヨと戻ってきた。

「見つかった?」
「ああ、見つかったぞ。これを……」
「よしよし。それじゃ早速」

 レッドは大きくなってきた欠片を取り出してまた1つくっつけた。欠片同士が融合し、また少し大きくなった。

「……思ったよりも歪だよな。もっとこう……まんまるになるとか、成形したクリスタルのように形がはっきりしてるもんだと思ったけど……これじゃ原石だ」
『は?何か悪いことでも?』
「そ、そんなんじゃないよ。ただ思ってた形じゃなかったってだけで……えっとその……怒ってる?」
『……いえ、別に』
「レッドのイメージだ。十人十色、イメージなんてそれこそ多種多様じゃないか。そこまで怒ることはないだろう?そんなことよりも、今回1つ手に入れて何か変わりはないか?」
『そんなこと、じゃないですよ。まったく私のことをなんだと思っているんですか?あなただってレッドに顔の造形がブサイクなんて言われたら嫌でしょう?』
「それは傷つくな。そうかそういう感じなのか……すまないレッド、これは謝るしかない」
「ご、ごめんミルレース!俺そんな失礼なことを言ってたなんて思ってなくてその、軽率なことを……!」
『ふぅ……もういいですよ。次からは気をつけてくださいね』

 ミルレースはやれやれといった顔を見せながらレッドの謝罪を受け入れる。レッドは安堵の顔でオリーを見て、オリーもニコリと笑って見せた。

「ふっ……欠片の気配が感じられるようになったなのら、案外すぐに揃えられそうだなミルレース」
『ええ!その通りです!これで一気に見つけましょう!』
「えぇ……だ、だからダンジョンはそんな簡単なものじゃ……まぁでも、そういうポジティブなのも必要なのかな?」
『その意気ですよ!レッド!』

 この階層ではもう敵に襲われることもないので談笑しながら、脱出のために上層階を目指す。ダンジョンの主を撃破したと同時にデーモンたちの気配も消え、玉座の間は静寂に包まれた。女神の欠片もしっかり入手し、ダンジョン”サフィー洞穴”完全攻略である。
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