「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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8章

84、アルマゲドン

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 バキャッ

 戦車ザ・チャリオットは何が起こったのか、上半身が弾け飛んだ後、徐々に下半身が崩れる。

「ぬっ!?」

 グルガンは塔と悪魔も月をも消滅する様を見た。ライトとオリーも今目の前で戦っていた悪魔が滅んだのにレッドが絡んでいることを瞬時に感じ取った。

「レッドが……やったのか!?」
「そうだ。レッドがミルレースを倒したんだ!」

 ライトとオリーの顔に笑顔が浮かんだ。だがグルガンの顔には未だ緊張感があった。

(いや、これで終わりのはずがない。いくらレッドが強いからと、この程度で終わるなら封印で終わらせるはずもない。まだ何かある)



 グルガンの考えは当たっていた。決着かと思われたその時、体内に吸収された運命の輪ホイール・オブ・フォーチュンが発動し、左右に別れた体を元の状態にまで再生させる。

(……こうまで簡単に殺されますか……運命の輪ホイール・オブ・フォーチュンを使用していなかったら危なかった。レッドの技……分かっていたはずなのにどうしようもない。どうも見た目で騙されますねぇ……)

 情けないのに強いレッドに感覚がおかしくなる。こちらが優勢に攻めているかと思いきや、次の瞬間には覆される。緊張感の欠片もない顔が常識をぶっ壊されるのだ。

「何っ?!あ、あれで死なないのか?!」
「死にましたとも。完全に仲間を解消されてしまいましたねぇ。レッドに見限られるのがここまで堪えるとは思いも寄りませんでしたが……しかしながら私の力で死を回避しました。運命の輪ホイール・オブ・フォーチュン

 またしてもミルレースは死なないように予防線を張る。レッドは焦りから腰を落として剣を正眼に構える。不死の敵を相手に攻撃を躊躇しているとミルレースは怒りの表情を見せた。

「チッ……戦車ザ・チャリオットたちも消えましたか。レッドにやられたのが面倒なことになっていますね」

 徐々にアルカナを追加して蹂躙しようと画策していたが、雑魚の相手をしていた3つのアルカナも消えてしまった。
 とはいえ、女神の力を以ってすればもう一度出すことは容易。女教皇ザ・ハイプリエステス法王ザ・ハイエロファントザ・ムーンを難なく出せたところからも分かるように、アルカナは一遍に出現させることが可能だ。

「しかしこの調子ではちまちま出しても意味がありませんねぇ。戦いにならないならば、いっそ全てを消滅させましょう。……ワンド」

 ミルレースは剣を消失させ、杖を出現させた。

「おぇ?鍔迫り合いはもう終わりか?」
「ええ、終わりです。死んでください。レッド=カーマイン」
「……いや、死なないよ?」
「いいえ、ここで終わりなのですよ。……世界ザ・ワールド

 ミルレースが杖を振り、レッドに向けてかざすと立っていた地面が消失する。レッドは急に開いた穴に為す術もなく消えるように穴に落ちていく。急な急降下に声を出すのも忘れて体を強張らせるが、穴より20mほど落ちたところでふわりと浮遊感を得た。

「えっ?あ……えっ?」

 レッドは混乱しながら開いた穴を凝視する。しかし次の瞬間には落ちてきた穴はシュッと窄んで消えてしまった。閉じ込められたことが分かり、急激な寂しさと恐怖が湧き上がる。

「こ、ここ……これどうすんだ?」

 姿勢制御もままならない滲んだ光が支配する空間で、レッドはくるくると回転しながら無い知恵を絞ろうとする。何も思いつかないまま漂っていると、正面にシュッと穴が開いた。そこにミルレースが覗いていた。

「ミ、ミルレース!何だここは!?俺に何をした!!」
「何かするのはここからですよ。……太陽ザ・サン

 降った杖の先から現れたのは先に現れたザ・ムーンよりも巨大な光球。太陽のごとく眩い光は、全てを焼き尽くすほどの熱を持っていた。

「熱っ!!あっつっ!!」
「さぁ、丸焼きの時間です。消滅なさいレッド」

 ミルレースの言葉が引き金となったのか、出現した太陽ザ・サンは息を大きく吸ったかのように急激に膨張し、吐き出すように小さくなったと同時に燃え盛る熱波を撒き散らす。超超高熱の太陽フレアは撒き散らされた範囲に多大な影響を及ぼす。水は瞬時に干上がり、生き物は灰となり、砂はガラス化する。それほどの熱波の脅威に曝されるのはただ1人。

「うあああぁぁぁあっ……!!!」

 凄まじい光に包まれたレッドが悲惨な叫びを上げたのを確認後、ミルレースはそっと穴を閉じた。

「これでレッドも終わりですね。さぁ、次に参りましょうか?」

 視線の先にいたのはグルガンとライトとオリー。彼らのずっと後ろにいる他皇魔貴族の面々も含めて思ったよりも生存者が多いことに気付いた。

「うふふっ……レッドにかまけていて気付きませんでしたが、存外生き残れるものなのですねぇ。あの時の皇魔貴族よりも弱そうに見えましたが、見かけ通りとは行きませんか」
「……貴様……レッドをどこにやった?!」
「もう死んでるでしょう。あなた方もすぐにあの世で再会出来ると思いますよ?」
「レッドが死ぬわけないだろう!!」

 オリーの咆哮にミルレースは若干引く。しかし、オリーのレッドに対する信頼以上に、レッドのしぶとさは折り紙付き。確実に死んだものと思いたいミルレースは腕を組んでふんぞり返った。

「ふんっ!まぁ吠えてればいいですよ。どの道この世界にはいませんから」
「ぬぅ……レッドは異次元に幽閉されたようだ。助ける方法はただ1つ。フィニアスしか居ない」
「あいつか……今どこにいる?」
「フィニアスの居城だろうが、戦いが始まる前に子爵バイカウントを1体向かわせた。フィニアスがこちらに到着するのも時間の問題。それまでは……」
「俺たちでどうにかなる相手とも思えないがな……やるしかないということか……」

 ライトが剣を構える。続けてオリーも半身で構えた。グルガンは特に構えることはなかったが隙はない。ミルレースはニヤリとしたり顔でライトたちを見下した。

「話し合いは終わりましたか?ふふっ……残念ですが、あなた方と乳繰り合うような真似はしません。だって私と戦うに値しないのですもの。……吊られた人ザ・ハングドマン

 ミルレースが杖を振る。またも濃霧が発生し、その奥から何かが姿を現した。処刑される罪人のように麻袋を頭に被せられ、後ろ手に縛られた逆さ吊りの5mの巨人。異様なのは貴族のようにオーダーメイドのスーツだということだ。麻袋で吊し上げられていなければ何かの祝賀会に参加出来そうな見た目だった。
 巨人が現れたその瞬間にグルガンは魔剣を中空に仕舞い、ライトとオリーの服を掴むと背後に跳躍した。ミルレースはまだ何も起こっていないはずの状態で飛び去るグルガンに苦々しい顔を見せた。

「グルガン!何をっ……!?」
「あの見た目を見ればある程度の能力が分かる。見ろ」

 先ほどまで立っていた地面に現れたのは蛇のように蠢く縄。

「あんなものいつの間に……!?」

 背後ではグルガンが助けられなかった皇魔貴族が縄で巨人同様に縄で逆さ吊りにされている。巨人と違うのは、体全身に縄が巻きついて全く動けなくされたことだ。「ぐあぁっ!?」「た、助けてくれぇっ!!」と騒ぎ立てるだけのミノムシとなっている。ほとんどの皇魔貴族が捕縛されている光景にライトはゾッとした。

 ビュンッ

 尚も捕縛するために縄はライトたちに伸びる。しかしタネが分かればそれほど脅威ではない。剣や魔法で縄を防ぐ。

「なんで避けられるんですかっ?!もうっ!……レッドといいグルガンといい……私の思い通りにならない奴はみんな消えてしまえば良いのです!!」

 頭から湯気が出そうなほど沸騰する苛立ちはついに臨界を突破する。

ザ・スター!!」

 上空に暗雲が立ち込める。ザ・ムーンのような出現方法ではあったが、まるで違うのは月はすぐにのっそり出てきたのに対し、曇天がマグマのように赤黒く滲み輝き、不吉な雰囲気を醸し出しながらも未だその姿を現さない。またもじっくりとその身を現すのかと思われたその時、暗雲を吹き飛ばす赤黒い巨岩が凄まじい速度で降ってきた。さながら隕石のように。
 当然だが、世界終焉アルマゲドン級の隕石をどうにか出来る生物などこの世に存在し得ない。天才のライトも、最強のゴーレムも、皇魔貴族でさえも。

「なるほど。これは封印するな……」

 そんな中にあってグルガンだけは冷静に燃え盛る巨岩を眺めていた。
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