「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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9章

107、新人いびり

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 ──大聖堂──

 エデン正教に無理繰り入れられたニール=ロンブルス。
 その実力が買われ、聖騎士パラディンとなったが実態はローディウス卿の私兵である。呼び出しがあればニールだけは応じなければならない。ビフレストはまたも暗礁に乗り上げた形になった。

(限界かもなぁ……)

 ジンは冒険者としてこのままビフレストに居ることが良いことなのかどうなのかを思い返している。
 アルマと違って発狂こそしていないものの、振り回されている対象がニールかレッドかの違いなだけで自由を感じられない。
 ようやく登ったと思ったいただきでたくさんの称賛を得る自分に酔っていたかったが、今のままではそれは叶いそうもない。
 考えれば考えるほどに、ないないくしである。
 そんなことをぼんやりと頭で巡らせながらニールたちの背後についていく。ヘクターたち聖騎士パラディン枢機卿カーディナルの指示でビフレストを案内した先は稽古場。だだっ広いこの場所は稽古以外の用途に使う予定でもあるのか、祭壇やエデン教のシンボルなどが壁に飾られていたりする。もちろん刃引きされた様々な武器も飾りのように壁にかけられている。
 ここに連れてこられた理由。聞かなくても分かるが、黙って成り行きを見守る。

「よぉ新人。強ぇんだって?」

 そしてすぐに聖騎士パラディンレイン=トルーマンがニールに声をかけた。

「俺らも結構使えるんだよ。やんねぇか?試合」
「うわぁ、レインってばもう新人いびり?やだやだ、戦闘狂ってのは節操がなくて」
「は?こいつらここに連れてきたのは当然実力を測るためだろうがよ。手っ取り早く俺が相手になってやろうってんじゃねぇか」
けいには荷が重いな。ここは一つ、推薦でニール=ロンブルスと戦う者を決めようではないか?」
「じゃ、ブルックで」
「僕も」
「身共も」
「は?なんでだよ!?俺を選べよ!!……くっそ!お前ら無視すんなっ!!」

 レインが騒がしくする中、選ばれたブルックは1人壁際に歩く。刃引きされた剣を2本取り、ニールの元へと渡しに行く。

「受け取れニール=ロンブルス」
「……なぜ僕らが戦う必要がある?」
「貴様の戦績は風の噂で聞いている。本当の実力は知らない。それだけだ」
「……後悔するぞ?」
「ほぅ?ずいぶん長い鼻っ柱だな。だが自信のない奴を相手にしても面白くない」

 2人の間で闘志がぶつかり合う。ニールが思ったよりも好戦的なことに驚くローランド。

「ちょ、ちょっと待ってください。実力など追い追い見せて行けば良いではないですか。やる気があるのは結構なことですが、一方が負けて自信を失くすようなことになれば本末転倒。今後のことも考えてですね……」
「黙れローランド=ヒールダー。私に意見するな」
「うっ……」
「いや、それで良いローランド。立場を利用して仲間を萎縮させては自浄作用は無くなってしまう。外に出ずにこんなところで引きこもっていてはそういうことも分からないだろうな」
「貴様……!?」
「くくく……流石ニールだね~。聖騎士パラディン最強のブルックにも比肩する男。僕の目に狂いはないね~」

 ヘクターは嬉しそうに笑った。その笑いに苛立ちを覚えたブルックはニールに刃引きした剣を投げ渡す。ニールは何でもなく軽く受け取るとブルックを睨む。

「……中央で」

 クイッと親指で少し先の部屋の中心部分を指し示し、ブルックはさっさと位置に着いた。

「ふっ……良いだろう」

 腰に挿した魔剣レガリアをサッと抜き取るとローランドに渡す。ローランドは渋々受け取り、ニールの背中を見送った。ローランドの肩をプリシラが叩く。

「大丈夫よ。ニールが負けるわけないもん」
「あ、ああ。そう信じたいが……」
「おいおい。ローランドはニールが負けるって思ってんのか?」
「あのブルックってのも相当なものネ。でもそれ以上にニールは強いヨ」

 揃ってニールの応援とローランドの慰めに徹する。リックはジッとニールを見ていた。

(魔剣を手放した状態で勝てるのかよ?ヘクターさんの話じゃ聖騎士パラディン最強だろうが……)

 みんなの楽観的な言い分を否定するかのような思考をしつつ腕を組んだ。
 リックはビフレスト最弱。みんなの心の安寧を得るためだけに入れられただけの道化ピエロであり慰み者。つい最近この事実に気付いてからというもの仲間全員に懐疑的になり、反発心が芽生えていた。あまりのことに脱退も考えたが、わずか1年で1から出直すのは惜しいと思い、どうせなら我慢して経験キャリアを積むことに終始する考えだ。最近のニールの暴走で内部分裂してくれるならあやかりたいと密かに考えている。

(負けてプライドがズタズタになれば面白いけど、そう簡単じゃないよな……)

 リックとしてはブルックが勝ってくれた方が良い。とはいえ、ニールが負ける未来を想像することは難しい。今持っている魔剣がなくとも元々かなりの実力だったことは1年でたっぷり見てきた。せめてブルックの実力が本物であることを願うばかりだ。

「ぷぷぷ……見なよあれ。おめでたい連中よね。ブルックにマジで勝てる気でいるよ」
「信頼出来る実力者ということは放つオーラから感じられる。強者とは見た目からも分かるもの。その点ニール=ロンブルスは合格だ」
「……ライオットは流されやすいよね」
「お前もな」
「は?どういう意味よレイン」
「始まるぞ」

 剣を構え、闘志満々の2人。言いたいことは多々あるが、みんなの期待は2人の試合に注がれた。ジリジリと徐々に間合いが詰まる。今にも鍔迫り合いが始まりそうなまさにその時。

 ──ズオォォッ

 稽古場の出入り口から漆黒の穴が現れる。音と気配が周りで観覧していたヘクターたちの危険信号を灯す。バッと振り返ると同時に全員が戦闘態勢に入った。急なことだったが全員が一流ということもあり、同じタイミングで武器を抜く様は芸術的ですらあったが、黒い穴から現れた存在には関係なかった。

「……お邪魔だったかな?」

 その姿は獅子の頭を持つ巨躯の魔族。ゴライアス=公爵デューク=グルガン。
 ニールたちが今まで見た魔族の中で一番強そうだと思わせた。
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