「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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10章 過去編

118、女神という名の災厄

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 ──ドンッ

 何故それがどこからもなく姿を現し、大地を破壊しているのか理解に苦しんだ。視認したものの、誰も答えられず誰にも説明出来ない。
 それはブロンドのウェーブ掛かった髪は腰を覆うほど長く、日に焼けたことがないだろう肌はシルクのように滑らかで白い。
 ヒラヒラのドレスは繋ぎ目が一つもなく、サイズも身体に沿って張り付くようにピッタリだ。
 まつげが長く、大きい目にサファイア色の瞳。かと思えば片方はルビーのように真っ赤なオッドアイ。
 装飾は簡素なもので、頭を飾るサークレット。耳を飾る小粒のピアスに首元に光る何かのシンボルを模ったネックレス。
 人とは思えぬ圧倒的存在感は神を名乗るに足る存在。

 女神ミルレース降臨。

「くそぉっ!!怯むなっ!!行けデーモンどもぉっ!!」

 大声を発しながら女神ミルレースにデーモンを特攻させるのは熊の体躯に鬼の頭を乗せたような皇魔貴族ホゥル=伯爵アール=ヒンザック。全ての攻撃を弾き返しそうなゴツい身体にガチガチに鎧で固め、傷の一つも付けたくないとアピールしているかのようだ。体に対して頭脳はそこそこで、攻撃全振りの突撃戦車である。
 彼のような脳筋が皇魔貴族に名を連ねたのは一重にオルベリウス公とアレクサンドロスのお陰である。

「あはははっ!無駄無駄っ!雑魚がいくら群れても無駄なのですよぉっ!」

 ミルレースは高慢を絵に描いたように高笑いしながら特異能力”アルカナ”を発動させ、ヒンザックの差し向けたデーモンを蹴散らす。その凄まじい強さに背筋が凍り、ヒンザックは内心ビクついていた。

「ヒンザック様っ!我々では手の打ちようがございませんっ!あなた様だけでもお逃げくださいっ!!」

 デーモンの言葉にヒンザックの心は一瞬揺らぐ。逃げれば命は助かる。やり直しも効く。だがヒンザックはせっかく進言してくれたデーモンの首根っこを掴み、力の限り握り潰した。その首を睨みつけながら叫び散らす。

「バカかてめぇっ!!逃げられるわけねぇだろうがぁっ!!」

 ヒンザックはオルベリウス公にその力を認められた存在であり、逃げるということはすなわちオルベリウス公の顔に泥を塗るに等しい行為。ミルレースに向かっていくのも怖いが、オルベリウス公に敗戦を知られることも怖い。彼の思うこの戦いの勝利条件はミルレースを完膚なきまでに叩き潰すか、それともミルレースが何らかの形で撤退するまで待ち、領地を守りきったと高らかに宣言するかのどちらかだ。
 ただデーモンとて自分の命が惜しい。ヒンザックが逃げてくれるなら自分たちも折を見て撤退出来るのに、当の主人が退かないと喚く。ミルレースには敵わない。さりとて主人を置いて逃げたとあっては今後どのような目に遭っても文句は言えない。
 ヒンザックも部下のデーモンたちも板挟みとなって動けなくなっていた。

「何やってんだコラァッ!!てめぇらは奴をぶっ殺しゃいいんだよっ!!何をもたもたしてやがんだっ!!」

 苛立ったヒンザックの語気はどんどん荒くなってく。ミルレースに対しデーモンではもう戦いになっていないというのに、爵位を持ち、強いはずのヒンザックがデーモンをけしかけようと躍起になっている。
 虐殺を楽しんでいたミルレースは次の獲物が来なくなったことで興味を失い、この戦いを終わらせることにした。

「ここはもういいでしょう。なんか強そうなあれは前に出ませんし、もう終わりにしてあげます。ザ・スター

 ヒンザックたちが勝手に動けなくなっている真上に隕石を出現させる。それを見たヒンザックたちにはいったい何が起こったのか理解出来なかった。

 ──ゴバァアッ

 圧倒的物量でヒンザックの領土を消し済みに変えた。



 女神の力は想像を超え、全種族に激震が走った。しかし女神が積極的に襲うのは魔族。これを機に人間は女神を仲間に引き入れ、魔族討滅を図ろうと目論んだ。
 アレクサンドロスに脅され尽くしたエデン正教の信徒は、魔族への支配から脱却するためにエデン教を背教し、女神教を立ち上げてまでミルレースに近付いた。
 だがミルレースは人間の想像を遥かに超えるわがままいっぱいのおよそ女神とは思えない性格をしており、その様子から一切の願いを聞き入れない力だけの災害と認識されるに至る。
 人々は通り過ぎるのを震えて待つだけとなったが、魔族たちはそうはいかない。積極的に魔族を襲ってくるので、倒し切る以外に生きる道は存在し得なかった。

「ヒンザック、ホード、ロドリア、ネルス、デュルマ。以上5名が犠牲となりました。聞くところによるとフィニアス陣営は既に8名が犠牲となったとか……」

 アレクサンドロスの報告を受けながらデザイアは考え事をしていた。女神の凄まじい力。類を見ない最強の能力に心臓が高鳴るのを感じる。アレクサンドロスの知性、行動力、そして実行力に感服し、同系統の部下を引き入れることも思案していたが、これほどの力を見せつけられればそれが全て些事だったように感じてしまう。やはり暴力。力こそ全てを統括するにふさわしい。
 正直アレクサンドロスという右腕であり腹心であり親友を差し置いて他に同じような部下などいらない。他は全て強ければ問題ないという考えに至ったのだ。
 報告中におもむろに椅子から立ち上がるデザイア。その様子にアレクサンドロスは報告をやめて跪いた。

「……素晴らしい」
「……は?と、申しますと?」
「あの女神の力だ。まさに私が追い求めていた力を顕現させたかのような素晴らしい力だ」
「理不尽にも程がある力です。奴は自ら能力名をアルカナと名乗り、その力を存分に振るっております。止めない限り我々に未来は訪れないでしょう」
「うむ。して、奴を止める方法に心当たりはあるのか?」
「あります。我々の全勢力とフィニアスの全勢力。これを合算させた魔族史上最大規模の勢力を女神ミルレースという個にぶつけるのです」
「なるほど、多勢に無勢というわけか。しかしこの報告書によれば奴はまだ本気を出していないようにも思える。隠された力があるのであれば、数を揃え大規模にしたところで勝算はないぞ?」
「……ならば封印しかありません」
「封印だと?」
「はい。奴を何らかの形で封印し、二度と復活出来ぬようにしてやりましょう」
「そのような術式がお前に使えるというのか?」
「いいえ。ですが他のものが使えるやもしれません。多勢に無勢。力や手数だけでなく知恵もその分多くなるのがこの作戦の肝でございます」

 倒せないことも視野に入れた封印作戦。
 アレクサンドロスの策は単純にして明解。前に過去のいざこざや対立を一旦忘れて共通の敵を倒しましょうというもの。
 封印可能な魔族を選定し、最も永く且つ簡単に復活出来ない封印術を持った魔族に術式を教えてもらい、封印術に長けた魔族たちを募って術式を覚えさせ、大儀式による最強の封印術を持って女神ミルレースを完全に封印してしまおうという魂胆だ。
 もちろん封印術を使用前の陽動作戦などでミルレースが倒れてくれるならそれでも構わない。そのために陽動班も全力で攻撃を仕掛けることになる。死なば諸共の覚悟が必要である。
 早速この話をフィニアスの元へと届けるためにアレクサンドロスは走った。
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