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11章 新たなる敵
144、雷電の蜘蛛
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「立場を知れっ!──迅雷烈風ッ!!」
アナンシが手をかざすとグルガンを囲むように四方八方が光だす。次の瞬間、グルガンを中心に無数の稲妻が一部の隙間も無くひとところに集まり、巨大なエネルギーの玉となって何もかも消滅させようとしている。
避けようが無く、受け流しようも無い、大雑把だが的確な攻撃方法。これならばグルガンという面倒ごとも簡単に始末出来る。
「まだですよぉっ!!あなたがいた痕跡もろとも消滅するまでは流し続けますっ!逃げられない死の放電に苦しみなさいっ!!」
「それは先程我に雷を巻き付けた時と何が違うのだ?」
頭上から聞こえる声。アナンシは焦る。
(バカなっ!? 掻い潜れる隙間などなかったはず……!?)
アナンシの動体視力を超えて動けたとしても、隙間なく放たれたはずの雷撃から逃げられるはずもなく。また、無数の雷撃が合わさるほんの一瞬に間に合ったとしても、受け流そうと接触すれば雷撃に込めた爆発の効果が発動し、結局中心へと戻されて消滅まで放電される。
グルガンは本来逃げることの叶わないアナンシの範囲攻撃に対して接触することなく逃げ延びたことになる。それはつまり瞬間移動に他ならない。この答えにたどり着いたアナンシはあり得ないといった様子で顔をあげた。
「……て、転移魔法?」
「正解だ」
──ザンッ
振り上げた魔剣を振り下ろし、アナンシの腕を切り裂く。脚の方も2本ぶった斬られ、先っぽがクルクルと宙を舞う。
先程顔面を殴られた時に流石に油断しすぎたと魔力を薄衣のように纏っていたのだが、グルガンの魔剣の前には無駄だったようだ。
アナンシは堪らず逃げるように距離を取り、攻撃魔法も解除して自身の治癒に魔力を注ぐ。
(そんなはずはない……転移の魔法は最上位魔法。詠唱破棄で使えるような技であるはずが……いや、この世界の常識ではそうなのでしょうか? むしろ転移の魔法がそれほど難しいものではないのかも知れませんね……となると厄介ですが、転移魔法と分かったなら対策は打てます)
アナンシはこっそり転移阻害の魔法を使用する。これでグルガンが図にのってポンポン使っている魔法を阻害出来るはずである。
「ふふふっ……なかなかやりますね。まさかここまで傷つけられるとは思いもよりませんでしたよ。私もまだまだと言ったところでしょうか?」
「案外殊勝なことを言う。そんな貴公に問おう。この侵攻は上からの命令で行われているだろうことは察するに余りある。それを面倒だと説くあたり、不満もいくつか持っていることだろう。我はこの世界の住人ゆえに貴公の仕事を邪魔するが、もし今の生活に不満があるのならばいまここで我が聞こう。そしてもし、今の生活を変えたいというのなら……共に戦おう」
「……は?」
「面倒な上司をこの世界で迎え討とうと言っているのだ。その間の地位と生活は我が用意しよう。勝利した暁には何かしらの褒賞もつけてな。貴公はこの先の自由と勝利、そして栄光と財宝を獲得する。存外悪い話では無いと思うが?」
「最悪な提案ですねぇ……そんな提案、誰が受けるというのですか? 大体、あなたは事の重大さが何も分かっていない。それよりもあなたをここで終わらせ、この世界に恐怖を振りまく方が遥かに現実的ですしね」
「つまり貴公の上にいるのは我らが参戦しても勝ち目は無いと?」
グルガンの問いかけに答えることなくじっと睨むアナンシ。その行動から的を射ていると推察出来る。
「……なるほど、手を取り合えぬか……貴公を倒す以外に道はないようだ。残念でならない」
「ふふふっ……最初からそうですよ。強いものが支配し、弱いものは傅く。逆らうものは淘汰され、従順なものだけが生き残る。私とあなたとの関係は正に生存を賭けた戦いなのです。……さぁ話は終わりです。始めましょうか? この世界を賭けた戦いを……」
アナンシはギラギラと目を輝かせてグルガンに殺意を向ける。
「ほぅ?……貴公から野心を感じる。その気配、怠惰を気取るほどに億劫ではない。それが本来の貴公の姿なのだろう。惜しいが敵となるならばもう容赦はしない」
「……おやおや、そういう見透かした言い方は気に入りませんね。それに戦いに手を抜いていたかのような言い草。そういう態度が癪に障るのですよっ!」
バッと手をかざすアナンシ。何度も避けられた攻撃魔法だが、今ならば当たる。グルガンが余裕でいられたのもすべては絶対に攻撃を避けられる自信があったからだ。今はその余裕が命取りとなる。転移を阻害した今ならば。
「焼き切れろっ!!──ライトニング……!!」
「いや、もういい」
──チュドッ
光がアナンシの手に収束すると同時に弾け飛んだ。
「うっ!? これはさっきの……!!」
グルガンは真紅の牙の能力を利用して空間を爆破し、アナンシの攻撃を発動前に阻止する。
「この程度で……!!」
固有結界内では自分の手に直接魔力を貯めなくても魔法を展開出来る。アナンシは周りの暗雲から雷を呼び寄せ、グルガンに向けて周りから一斉掃射しようと企んだ。
多脚を用いて雷を操るも、体勢を立て直したと同時にグルガンを見失っていた。ほんの瞬きの間である。
──ゴガンッ
視界が揺れる。
グルガンは瞬時にアナンシの背後に回り込んで延髄蹴りを放ったのだ。後頭部に食らった一撃がメキメキと首の筋肉を痛めつける。
転移魔法を使えなくしたというのに視界から消える動きを見せたグルガンにアナンシは驚愕を隠せない。
それ以上に自分ばかりが傷つけられる事態に苛立ちを覚える。アナンシは反撃するために振り返ろうとするが、その隙を狙ったグルガンの大木のような足がアナンシの左側頭部に追い打ちをかける。
ゴンッ
凄まじい威力で蹴り飛ばされ、アナンシはフラつきながら宙に惑う。
グルガンは2本目の剣を取り出し、回転しながらアナンシに斬り掛かった。
シュバッ
アナンシの両肩を切り離し、両腕が吹き飛ぶ。
「はっ……がっ……!?」
──ビシッ
グルガンの猛攻の末、アナンシの固有結界にヒビが入った。
アナンシが手をかざすとグルガンを囲むように四方八方が光だす。次の瞬間、グルガンを中心に無数の稲妻が一部の隙間も無くひとところに集まり、巨大なエネルギーの玉となって何もかも消滅させようとしている。
避けようが無く、受け流しようも無い、大雑把だが的確な攻撃方法。これならばグルガンという面倒ごとも簡単に始末出来る。
「まだですよぉっ!!あなたがいた痕跡もろとも消滅するまでは流し続けますっ!逃げられない死の放電に苦しみなさいっ!!」
「それは先程我に雷を巻き付けた時と何が違うのだ?」
頭上から聞こえる声。アナンシは焦る。
(バカなっ!? 掻い潜れる隙間などなかったはず……!?)
アナンシの動体視力を超えて動けたとしても、隙間なく放たれたはずの雷撃から逃げられるはずもなく。また、無数の雷撃が合わさるほんの一瞬に間に合ったとしても、受け流そうと接触すれば雷撃に込めた爆発の効果が発動し、結局中心へと戻されて消滅まで放電される。
グルガンは本来逃げることの叶わないアナンシの範囲攻撃に対して接触することなく逃げ延びたことになる。それはつまり瞬間移動に他ならない。この答えにたどり着いたアナンシはあり得ないといった様子で顔をあげた。
「……て、転移魔法?」
「正解だ」
──ザンッ
振り上げた魔剣を振り下ろし、アナンシの腕を切り裂く。脚の方も2本ぶった斬られ、先っぽがクルクルと宙を舞う。
先程顔面を殴られた時に流石に油断しすぎたと魔力を薄衣のように纏っていたのだが、グルガンの魔剣の前には無駄だったようだ。
アナンシは堪らず逃げるように距離を取り、攻撃魔法も解除して自身の治癒に魔力を注ぐ。
(そんなはずはない……転移の魔法は最上位魔法。詠唱破棄で使えるような技であるはずが……いや、この世界の常識ではそうなのでしょうか? むしろ転移の魔法がそれほど難しいものではないのかも知れませんね……となると厄介ですが、転移魔法と分かったなら対策は打てます)
アナンシはこっそり転移阻害の魔法を使用する。これでグルガンが図にのってポンポン使っている魔法を阻害出来るはずである。
「ふふふっ……なかなかやりますね。まさかここまで傷つけられるとは思いもよりませんでしたよ。私もまだまだと言ったところでしょうか?」
「案外殊勝なことを言う。そんな貴公に問おう。この侵攻は上からの命令で行われているだろうことは察するに余りある。それを面倒だと説くあたり、不満もいくつか持っていることだろう。我はこの世界の住人ゆえに貴公の仕事を邪魔するが、もし今の生活に不満があるのならばいまここで我が聞こう。そしてもし、今の生活を変えたいというのなら……共に戦おう」
「……は?」
「面倒な上司をこの世界で迎え討とうと言っているのだ。その間の地位と生活は我が用意しよう。勝利した暁には何かしらの褒賞もつけてな。貴公はこの先の自由と勝利、そして栄光と財宝を獲得する。存外悪い話では無いと思うが?」
「最悪な提案ですねぇ……そんな提案、誰が受けるというのですか? 大体、あなたは事の重大さが何も分かっていない。それよりもあなたをここで終わらせ、この世界に恐怖を振りまく方が遥かに現実的ですしね」
「つまり貴公の上にいるのは我らが参戦しても勝ち目は無いと?」
グルガンの問いかけに答えることなくじっと睨むアナンシ。その行動から的を射ていると推察出来る。
「……なるほど、手を取り合えぬか……貴公を倒す以外に道はないようだ。残念でならない」
「ふふふっ……最初からそうですよ。強いものが支配し、弱いものは傅く。逆らうものは淘汰され、従順なものだけが生き残る。私とあなたとの関係は正に生存を賭けた戦いなのです。……さぁ話は終わりです。始めましょうか? この世界を賭けた戦いを……」
アナンシはギラギラと目を輝かせてグルガンに殺意を向ける。
「ほぅ?……貴公から野心を感じる。その気配、怠惰を気取るほどに億劫ではない。それが本来の貴公の姿なのだろう。惜しいが敵となるならばもう容赦はしない」
「……おやおや、そういう見透かした言い方は気に入りませんね。それに戦いに手を抜いていたかのような言い草。そういう態度が癪に障るのですよっ!」
バッと手をかざすアナンシ。何度も避けられた攻撃魔法だが、今ならば当たる。グルガンが余裕でいられたのもすべては絶対に攻撃を避けられる自信があったからだ。今はその余裕が命取りとなる。転移を阻害した今ならば。
「焼き切れろっ!!──ライトニング……!!」
「いや、もういい」
──チュドッ
光がアナンシの手に収束すると同時に弾け飛んだ。
「うっ!? これはさっきの……!!」
グルガンは真紅の牙の能力を利用して空間を爆破し、アナンシの攻撃を発動前に阻止する。
「この程度で……!!」
固有結界内では自分の手に直接魔力を貯めなくても魔法を展開出来る。アナンシは周りの暗雲から雷を呼び寄せ、グルガンに向けて周りから一斉掃射しようと企んだ。
多脚を用いて雷を操るも、体勢を立て直したと同時にグルガンを見失っていた。ほんの瞬きの間である。
──ゴガンッ
視界が揺れる。
グルガンは瞬時にアナンシの背後に回り込んで延髄蹴りを放ったのだ。後頭部に食らった一撃がメキメキと首の筋肉を痛めつける。
転移魔法を使えなくしたというのに視界から消える動きを見せたグルガンにアナンシは驚愕を隠せない。
それ以上に自分ばかりが傷つけられる事態に苛立ちを覚える。アナンシは反撃するために振り返ろうとするが、その隙を狙ったグルガンの大木のような足がアナンシの左側頭部に追い打ちをかける。
ゴンッ
凄まじい威力で蹴り飛ばされ、アナンシはフラつきながら宙に惑う。
グルガンは2本目の剣を取り出し、回転しながらアナンシに斬り掛かった。
シュバッ
アナンシの両肩を切り離し、両腕が吹き飛ぶ。
「はっ……がっ……!?」
──ビシッ
グルガンの猛攻の末、アナンシの固有結界にヒビが入った。
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