「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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13章 新たなる大陸へ

173、上陸準備

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「……アノルテラブル大陸ってどんな場所なんだろうか……?」

 レッドは魔導戦艦ルイベーの食堂で呟く。
 海の上を移動中、暇すぎて自室から出たレッドは食堂の椅子に座って上の空だった。
 ボケーっと天井を見つめていながら呟いた言葉は誰に向けられたものでもない空中に霧散されるようなものだったのだが、一拍の間を置いて返答が返ってきた。

「そうだな。最新の文献によれば俺たちの大陸のおよそ4倍以上の広さを持つ大陸だ。」
「うわつ!!えっ!? あっ!?……そ、そうなんですね。」

 椅子に体重を預け、4脚中2脚でバランスを取りながらゆりかごをしていたレッドは、すぐさま元の4脚に戻していつのまにか座っていたライトの顔を見る。

「ん? どうした慌てふためいて。」
「い、いや。何でも無いです。」

 心臓が飛び出すかと思うくらいの衝撃に一瞬自室に閉じこもりたくなるくらいの恥じらいが生まれたが、ぐっと我慢して一回深呼吸を挟んだ。

「椅子で遊んだら危ないでしょ? まったく。そういう時はロッキングチェアっていういい物があるからそれに座った方が良いわよ?」

 これまたいつの間に座っていたのかライトの対面にはシルニカが座っている。そしてレッドの正面にはスロウが机の上に突っ伏し、とろけるように眠っていた。

「何が文献だよ。つーかなんでそんなことが分かったんだ? 大陸のデカさなんざどうでも良いことだろうによ。」
「ま、そりゃディロンには関係ないよね。野生動物みたいなもんだし?」
「おっとそいつはどういう意味だラド? 褒めてねぇことだけは確かだなコラァ。」

 レッドの背後にはディロンとウルラドリスが座り、ライトの背後のテーブルには元ラッキーセブンのメンバーが座っている。
 ずっと背景のようにほっとかれて生活していたのが板についていたからか、ふとした拍子に輪の真ん中に入れられている今の状況が少し落ち着かない。

「大陸の大きさを知ることは領土をどれくらい確保出来るかの指標になる。それに合わせて地形を知れば万が一他の国と領土争いになった時に有利だ。『地の利』という言葉があるくらいだからな。」
「へぇ~。そうなんですね。」
「さすがライト!ライトなら将軍にもなれちゃうんじゃない?」
「からかうなよコニ。」
「ケッ!何が地の利だよ。んなもん足場ごとひっくり返しちまえば良いじゃねぇか。」
「そんなことが出来るのはドラゴンくらいなのよ。筋肉バカ。」
「筋肉バカだぁ? 腕力は全部を解決すんだよ。なぁレッド。」
「え? 俺ですか?」
「オメーはその最たる物だろうが。」

 ディロンのツッコミにみんな頷く。
 レッドは一人わざとらしく驚いていたが、みんなそれをスルーする。
 元ラッキーセブンのメンバーは戦艦を作る過程でディロン並に物資を運ぶライトに驚愕していたが、それ以上にレッドに驚愕させられた。
 見た目はライトよりも少し小さく見えるのに何故そんなに無茶をするのか、気になった一介の冒険者が恐る恐る尋ねたら「俺は魔法が使えないから……」と苦笑いで返答されたそうだ。
 女神ミルレースを倒したと噂される男の一言は、その後酒場で吟遊詩人バードの飯の種になっていたのを思い出した。

「地の利の件は置いておいても情報は必要だ。」

 そこにいつの間にそこにいたのか、スロウの背後に立つような形でグルガンも参加する。

「あ、グルガンさん。」
「相手が何を持ち、何をしてくるか分かればそれを封殺し、終始有利に戦うことが出来る。相手が格上となるならば最も大事なことだと認識してほしい。」
「まぁ……オメーがそう言うなら、そういうもんか?」
「いや、しかし7つの国全ての情報を集めるとなると時間が掛かりすぎるだろう? 当てはあるのか?」
「無い。正直我も海を渡ることは生涯あるまいと高を括っていた。なのでアノルテラブル大陸の知識量は貴君らとさして変わらない。」

 グルガンの言葉に悩みが増えた。特に会話に参加する気のなかった女性陣も口を開く。

「ってことは一つの国ごとに潜伏する必要があるってこと?」
「えぇ~? でもそれって凄く危険なことじゃない? 密入国ってなったらどのくらいの罪になるの?」
「ただ入っただけなら相当量の罰金と多少の体罰と強制退国。密偵行為がバレたら場合によっては処刑でしょうね。」

 ハル、フィーナ、エイナは声を潜めることもなく不安を吐露した。

「当然普段なら罪に問われることだろうが、今は異常事態。デザイア軍の襲来に恐怖し、藁にも縋りたい気持ちであるだろう。もし我々の常識では測れないほどの強者があの大陸にいるのなら話は別かもしれんが、それこそ希望的観測だろうからな。とにかく原住民の知識を大いに活用させてもらう。オリーやルイベリアにも何か気になることや見つけたものがあったら知らせるようには言ってある。貴君らもそのつもりで……。」

 グルガンは柔らかい表情から一転、急に険しい顔になり、左の獣耳をピクリと動かした。
 よく見ると何か黒い物が耳に入っている。左手でそれに触れると虚空を見つめて聴覚に集中する。

「……どうした?……ん? 分かった今行く。」

 今一度左耳の黒いのを触り、少し考えたような仕草を見せる。それに対してライトが声をかけた。

「なんだそれは?」
「ああ、これは小型の通信機だ。範囲は狭いが必要な時に会話が可能だ。」
「そ、そんな物が……。」
「それで? 何つってたんだよ?」
「大陸を肉眼で捉えたようだが、どうも岸壁に妙な紋章が見えると報告が入った。何らかの防衛魔術が敷かれている可能性が高い。」
「上陸が出来なかったら何も出来ないじゃない。確認に行きましょうよ」

 ウルラドリスの提案でみんなで艦橋に急ぐ。
 艦橋に移動する間、各々で紋章についての予想をし合うも、結局は防衛魔術に落ち着きながら険しい顔で虚空を睨みつけるルイベリアに元に到着した。
 ルイベリアの見ている場所に目を向けると、ガラスのように透明な魔鉱石に映し出された大陸の岸壁が眼に飛び込んできた。

「……んっ!? これは……?!」
「お、到着したね。これが何か分かるかい? 僕も魔法陣には多少知識があるんだが、これは見たこともなくてさぁ。」

 映し出された岸壁に描かれていたのは、複雑な形をしていながらも左右対照で権威ある紋章に見えた。

「うむ。知らずとも無理からぬこと。これは魔法陣ではない。これは間違いなく皇魔貴族の家紋の一つ。それもかなり由緒ある物と似通っている。」
「あ、そうなの? そりゃ、分かるわけもないわ。」

 カラカラと笑うルイベリア。真剣に頭の中の引き出しから記憶や知識を探り出していた無駄な時間を笑い飛ばしていた。

「いや、しかし……似通ってはいるが、かなり曖昧だ。こんなところに何故家紋があるのか、いつからこの大陸に居たのか……? アノルテラブル大陸にまで支配領域を拡大していた皇魔貴族など知らないぞ?」
「知識欲の塊とも言えるグルガン殿も謎の皇魔貴族でおじゃるか……。何かこう……独自の支配体形が出来ていそうで関わりたくないでおじゃる。」
「いや、好都合だ。大陸の入り口ともいうべき場所で直接情報を拾えるのは僥倖ぎょうこうという他ない。我とヴォジャノーイの2人でこの家紋の主に会いに行くとしよう。」
「ええっ!? 朕は嫌でおじゃるっ!!」

 ヴォジャノーイは巨体のくせに機敏な体を駆使してレッドの背後に回り込んだ。
 ヴォジャノーイの中でもう頼れるのがレッドくらいなのだろう。隠れ切れていない体をブルブルと震わせながら恐怖している。
 それでも魔王かと一喝したいところだが、心を折ってしまったら自室に閉じこもってしまうことも有り得る。

「……仕方ない。我1人で行ってくるとしよう。」
「そんなこと言わないでくださいよグルガンさん。俺も行きますよ。」

 そのレッドの一言で我も我もと声を上げたが、いきなり攻撃を仕掛けず、理性的で、何をされても対処出来、生きて帰ってこられるであろうレッドとライト、各種精霊たちがグルガンに同行することになった。

「なんで俺じゃねぇんだよっ!」
「野蛮人だからよ。」

 ディロンはウルラドリスに指摘されながら渋々と自室に戻っていった。
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