「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸

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15章 聖王国 前編

224、策

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 ローディウスはティオたちの話とグルガンたちの話、そしてアリーシャの感じた最悪の幻視ヴィジョンを統合し、現状どれほど切迫しているかを確認した。

「猊下が既に術中か。それに独立記念日……聖王国の歴史上未曾有の危機に直面している。しかし作戦を立て、実行に移す期間はそれなりにあるのは重畳。国民を避難させ、戦力を削ぎ、ヴァイザーを孤立無援に追いやればどれだけ強かろうとも勝てる見込みはあるだろう。歴史的建造物である猊下の居城は……諦めざるを得まい」

 ローディウスの見解。これは会合に参加した全員の総意と見て良い。

「問題は如何に気づかせずにこれを為すか……ですな」

 エイブラハムの言葉にローディウスは深く頷く。

「万が一にも避難中の国民が襲われるようなことになれば面倒なことになる。最悪国民を巻き込んだ首都決戦となってしまう。それだけは避けねばならぬ」
「不可能だ。国民を人質に取られた時、こちら側が不利となる。ある程度の犠牲は考慮するべきだ」

 グルガンの答えにハワードは大きく頷いたが、犠牲を出したくないローディウスとエイブラハム、そしてティオとリディアが反発する。

「非戦闘員だぞっ! 国は国民と共にあるっ! 貴殿ほどの者が分からぬわけではあるまいっ!」
「そうですよっ! きっと何か方法があるはずですっ!」

 国単位の人間を迅速かつ安全に避難場所に移す方法など今の段階では存在しない。首都の中央に鎮座する城に忌まわしき悪が在住しているのだ。すぐに気づいて攻撃を仕掛けてくるのは火を見るよりも明らか。避難中に襲われたら後手に回らざるを得ない。

 しかし諦めたくない。国民の安全を第一に動くのは正義に根差した行動だからだ。多数を助けるために少数を切るのは国の理念に反している。

 だからだろうか。ティオたちが反発しているのをアリーシャは黙って様子を伺う。理想論を掲げるでもなく、ただ黙って成り行きを見守る。
 しかし顔は強張り、グルガンの仕方がないという言葉には難色を示している。その表情の変化にいち早く気付いたフィアゼスはグルガンに敵意を向けつつ尋ねた。

「おやおや、これは異なことを仰いますね。あなたの魔剣であれば、あっという間に国民の非難が完了するでしょうに……」
「魔剣の力が無限であると考えているのか? 貴公も魔剣を使用しているのだからそんなことは不可能であると分かっているだろう?」
「今問題なのは、ここに集まる私たちの意思はどちらかというと犠牲を出さないことに傾いているのです。あなたの知能ならそれくらいのことは分かるでしょう?」
「国民を動かすことよりもヴァイザーを動かすことに注目するべきだ。ヴァイザーを別の場所に誘い出さない限り、犠牲無く事を済ませるなど到底不可能。それが出来ないなら首都決戦は避けられない。我の言っている意味が理解出来るか? フィアゼス」
「なっ……!? キサマ……っ!!」

 ガタッと中腰になるフィアゼスにハワードはすぐに「座れ」と命令した。渋々座るのを見計らい、グルガンに目を向ける。

「ヴァイザーを動かすのに必要な手順が不明なための話し合いだ。詮索すればこちらの作戦が筒抜けになろう。周知させないよう黙って実行すべき案件。国民の犠牲はこの際仕方がないというのは私も同意見だがね」
「それは正教側の信徒だからだろう?! もし諸教派の信徒なら貴殿も納得などせんはずだっ!!」
「その通りだよローディウス卿。私は常に領地の民のことをおもんばかっている。だがそれとこれとは話が別だ。この魔族が提唱する通り、ヴァイザーを動かすことが犠牲無く済む唯一の方法。エデン正教の切り札たる七元徳イノセントがどれだけ頑張ろうとも、攻撃を防ぎきることなど出来まい。いや、どこの誰とて物理的に不可能だ」

 ハワードの意見はもっともだが、倫理的な観点から容認出来ない。何とか出来ないか頭を捻る。
 エイブラハムはとりあえず思いついたことを口にする。

「……魔物の群れが襲ってきたと触れ回るのは?」
「いつもなら七元徳イノセントが派遣されるだけだろうが、仮に猊下からヴァイザーにお願いすれば動くかもしれんな」
「!……つまりは教皇を手玉に取れば行ける話ではないか?」
「確定ではないし、力を示すのに障壁を突破出来ない小物では荷が重い。その程度の問題を片付けられないと見限られ、もっと優秀な人材をと猊下を挿げ替える可能性がある。規定通りに従えば私を含めた枢機卿から出てくるが、既得権益にしか興味のない4人の内の誰かが座に着けば益々厄介なことになりそうな予感がする。エデン正教では解決出来ない面倒な問題を持ってくればどうにかなりそうではあるが……」

 悩ましい会議室に沈黙が訪れる。しかしグルガンの呟きによってこの会議の行く末が決定する。

「……神選五党」

 その名前にエイブラハムとハワード、そしてローディウスがハッとする。

「貴公らが昔破談になったという元凶。どんな連中なのかは知らんが、これを使うのはどうだ?」
「なるほどっ! その手があったかっ!!」

 レッドは一瞬なんのことだか分からなかったが、すぐに思い出す。

「……あ、さっき邪教とか言ってたあれか。喧嘩別れして潰すことが出来なかったっていう奴……」
「そうだレッドくん! 聖王国の最南端に常駐しているのだが、奴らは自分たちが暮らす集落付近に罠を仕掛けていて近寄ることが困難となっている。度々北上して来ては街の治安を脅かす不届きな連中だよ。逃げ足が速く、卑怯で姑息な邪教徒ども。こいつらならヴァイザーも動きざるを得まいっ!」

 災転じて福となす。邪教問題をずるずると先延ばしにしていたのがここに来て生きてくるとは思いもよらない。

「あの集団が考えそうな犯罪をリストアップし、邪教徒に成り済ましてサンクトモーゼに嫌がらせをすれば、間接的に我々が猊下にして欲しいことが伝わりヴァイザーが動き出すだろう」
「良い案だ。決行日を3日ほど前に設定し、独立記念日間近に邪教徒の邪魔が入るのではないかと思わせ、片付けるよう仕向けさせる。そこを狙って横合いから思いっきり殴りつける」
「だが本人が来るとは限らんぞ?」
「それまでに出来るだけ教皇以外の信徒たちをこちら側に引き入れて手駒を減らす。もしヴァイザーが面倒くさがって浮遊要塞から手下を出したとしても道中で全滅させる。痺れを切らしたヴァイザーが出てくればこちらの思惑通りだ」
「ならば七元徳イノセントには早い内に話をつけねば。フラムベルク嬢とハルバート嬢の2人に話を通せたのは幸運だった。残り5人。近い内にまた移動をお願いする」
「良いだろう」

 グルガンの呟きから大きく進展するヴァイザー討伐の策。ガブリエル教皇がヴァイザーに気を利かせたおかげで時が稼げたことが余裕を生んだ。
 そしてローディウスの中で確かな覚悟が生まれていた。

(苦境に立たされた聖王国をこの手で取り戻す。ヴァイザー……貴様に我が国の独立記念日を汚させたりはしない)

 ローディウスは先日獣王国で見た魔神ドラグロスとの戦いを思い出しながらチラリとレッドを見て決意を固めた。
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