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15章 聖王国 前編
230、遠征
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──2日後の早朝。
レッドは水や食料を詰めたリュックを背負う。
地図を広げ、ジャガラームまでの道を指でなぞれば、徒歩でざっと3、4日と言ったところか。遠いが戦いの時まで猶予はある。
久々の旅で気合を入れていると声をかけられた。
「あ、レッドさーん。こっちですよこっちー」
レッドは肩透かしを喰らったようにガクッと倒れそうになる。
「あ、ああ、そっち?」
見ていた方向が違うことに恥ずかしくなりながらティオとリディア、そしてシルニカと合流する。
「大きい荷物~。気合十分ですね!」
「当然。私のも入れてるから」
身軽なシルニカに苦笑いするティオとリディア。
「俺は大丈夫ですよ。なんだったらみんなの持ちますし」
「いや、その必要はない」
レッドは力持ちアピールをするが、グルガンが否定する。急に現れたが、もう慣れたもので誰も驚かない。
「エイブラハムから魔動車を譲り受けたのだ。廃車寸前のオンボロらしいが、昔使っていた名残から捨てられずに倉庫に仕舞われていたらしい。昨日修理したので走れるぞ。あれだったら乗り捨ててしまっても構わんそうだ」
「ええ! 高級品を乗り捨てるだなんてそんなこと……!」
「大丈夫だ。もうとっくに新品に買い替えてる。気にせずに使うが良い」
レッドやシルニカは大喜びで魔動車に飛びつく。しかしティオとリディアは乗り気ではない。
「……リディアは運転出来たっけ?」
「私は……ちょっと……」
「私も前にぶつけてから運転は二度とするなってキツく言われてるんだよね~。これ以上あんまり人を増やしたくはないけどしょうがない。運転手も連れて行かなきゃダメかぁ……」
聖王国には運転手を斡旋してくれる業者が居る。そこに頼めば暇なのを連れてこれるだろうが、運転手の賃金とは別に仲介料金が発生する。さらに遠出のための追加費用や数日間拘束するので食事代や宿泊費まで発生するのでかなりの額になる。痛い出費だ。
ローディウスに請求すれば後でお金は返ってくるだろうが、問題は現状用意出来るかである。聖王国はレッドの大陸と違って物価が高いらしく、アクセサリーもまともに買えなかったと聞く。
ここに来てまたお金の問題が発生するのかと考えると同時に、戦艦でぬくぬくしているヴォジャノーイの顔が頭に浮かんできた。
「何言ってんのよ。これは私が運転するの」
シルニカはふんっと鼻を鳴らしてドヤ顔を披露する。
「昨日慣らしで運転してみたし、わけないわ! 大船に乗った気でいなさいっ!」
レッドたちは「お~っ!!」と歓声を上げた。
「道中は砂漠地帯だ。巻き上がる砂が中枢核に入れば故障の原因になる。あまり飛ばさない方が身のためだぞ」
「どうせオンボロだもん。好きに使わせてもらうし」
レッドたちは荷物を魔動車に詰め込み、いつでも出られるように準備を済ませる。レッドは出発する前にグルガンに話しかけた。
「こんな時にどうかと思うのですが、ライトさんたちって今どうしているでしょうか?」
「ルイベリアが魔道具『無色の水晶』を渡していたように思うが、そういえば特に音沙汰はないな。上手く隠れていると思うが……」
「あ、そうですか……まぁ、2人は強いので大丈夫だとは思うんですけど」
「我が一度帝国に様子を見に行ってみよう。何か掴んでいるかもしれない。任せておいてくれ」
懸念がなくなったレッドはシルニカたちと共にまだ薄暗い中、魔動車で走り出す。
ジャガラームにあるという『凄まじい戦力』。聖王国ではその噂を知らないものがいないのではないかと思われるほどの伝説の何か。
無機物であるのか、生き物であるのか定かではないが、とにかくダンジョンにあるらしい。
冒険者として、魔神を仕留める武器として、ダンジョン攻略にひた走る。
レッドは水や食料を詰めたリュックを背負う。
地図を広げ、ジャガラームまでの道を指でなぞれば、徒歩でざっと3、4日と言ったところか。遠いが戦いの時まで猶予はある。
久々の旅で気合を入れていると声をかけられた。
「あ、レッドさーん。こっちですよこっちー」
レッドは肩透かしを喰らったようにガクッと倒れそうになる。
「あ、ああ、そっち?」
見ていた方向が違うことに恥ずかしくなりながらティオとリディア、そしてシルニカと合流する。
「大きい荷物~。気合十分ですね!」
「当然。私のも入れてるから」
身軽なシルニカに苦笑いするティオとリディア。
「俺は大丈夫ですよ。なんだったらみんなの持ちますし」
「いや、その必要はない」
レッドは力持ちアピールをするが、グルガンが否定する。急に現れたが、もう慣れたもので誰も驚かない。
「エイブラハムから魔動車を譲り受けたのだ。廃車寸前のオンボロらしいが、昔使っていた名残から捨てられずに倉庫に仕舞われていたらしい。昨日修理したので走れるぞ。あれだったら乗り捨ててしまっても構わんそうだ」
「ええ! 高級品を乗り捨てるだなんてそんなこと……!」
「大丈夫だ。もうとっくに新品に買い替えてる。気にせずに使うが良い」
レッドやシルニカは大喜びで魔動車に飛びつく。しかしティオとリディアは乗り気ではない。
「……リディアは運転出来たっけ?」
「私は……ちょっと……」
「私も前にぶつけてから運転は二度とするなってキツく言われてるんだよね~。これ以上あんまり人を増やしたくはないけどしょうがない。運転手も連れて行かなきゃダメかぁ……」
聖王国には運転手を斡旋してくれる業者が居る。そこに頼めば暇なのを連れてこれるだろうが、運転手の賃金とは別に仲介料金が発生する。さらに遠出のための追加費用や数日間拘束するので食事代や宿泊費まで発生するのでかなりの額になる。痛い出費だ。
ローディウスに請求すれば後でお金は返ってくるだろうが、問題は現状用意出来るかである。聖王国はレッドの大陸と違って物価が高いらしく、アクセサリーもまともに買えなかったと聞く。
ここに来てまたお金の問題が発生するのかと考えると同時に、戦艦でぬくぬくしているヴォジャノーイの顔が頭に浮かんできた。
「何言ってんのよ。これは私が運転するの」
シルニカはふんっと鼻を鳴らしてドヤ顔を披露する。
「昨日慣らしで運転してみたし、わけないわ! 大船に乗った気でいなさいっ!」
レッドたちは「お~っ!!」と歓声を上げた。
「道中は砂漠地帯だ。巻き上がる砂が中枢核に入れば故障の原因になる。あまり飛ばさない方が身のためだぞ」
「どうせオンボロだもん。好きに使わせてもらうし」
レッドたちは荷物を魔動車に詰め込み、いつでも出られるように準備を済ませる。レッドは出発する前にグルガンに話しかけた。
「こんな時にどうかと思うのですが、ライトさんたちって今どうしているでしょうか?」
「ルイベリアが魔道具『無色の水晶』を渡していたように思うが、そういえば特に音沙汰はないな。上手く隠れていると思うが……」
「あ、そうですか……まぁ、2人は強いので大丈夫だとは思うんですけど」
「我が一度帝国に様子を見に行ってみよう。何か掴んでいるかもしれない。任せておいてくれ」
懸念がなくなったレッドはシルニカたちと共にまだ薄暗い中、魔動車で走り出す。
ジャガラームにあるという『凄まじい戦力』。聖王国ではその噂を知らないものがいないのではないかと思われるほどの伝説の何か。
無機物であるのか、生き物であるのか定かではないが、とにかくダンジョンにあるらしい。
冒険者として、魔神を仕留める武器として、ダンジョン攻略にひた走る。
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