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16章 聖王国 後編
231、砂漠の王国ジャガラーム
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「あ~もうっ!! 何なのよこれぇっ!!」
魔動車を蹴り飛ばし、真っ白なとんがり帽子を振り乱しながら苛立ちを発散させるシルニカ。
レッドたちはシルニカの運転で聖王国から砂漠の王国ジャガラームに向けて魔動車を走らせていた。魔動車の中は温度が一定に保たれ、歩くこともなく快適な旅であったが、シルニカの粗い運転と廃車寸前のおんぼろ魔動車ということもあって途中で止まってしまった。
さらに最悪なことに魔動車はどんどん砂に埋もれていく。止まった場所が悪かったのか流砂にはまったようだ。怒りを発散させるシルニカをティオとリディアで引っ張って流砂から避難する。
レッドはゆっくりと砂に飲み込まれる魔動車を名残惜しそうに見ている。
「あぁ……せっかくの魔動車が……」
「もう動いてないんだからどうでもいいわよ。どうせ廃棄しちゃうってんだから手間が省けたでしょ。そんなことよりもジャガラームってのはどこにあるの?」
シルニカが機嫌悪そうに質問するとティオはスッと指を差した。
「あ、もうその先ですね。ほら、見えてますよ」
魔動車に意識が向いていたので気づかなかったが、ジャガラームは既に見えていた。
熱帯地域に生える植物がオアシスを中心に鬱蒼と生い茂る。植物から顔を出すように建てられた建物は宮殿のようなたたずまいをしている。
「あ、ふ~ん。ちゃんと仕事はしたわね。やるじゃんオンボロのくせに」
チラッと見ると魔動車の屋根の部分が見える。全てのみ込まれるのを見送ってレッドたちは歩き出す。
レッドは全員分の荷物を背負いこみ、ティオたちについて行く。見かねたリディアが申し訳なさそうに質問を投げた。
「あの~。重たくないですか?」
「え? ああ、全然平気です。俺はこういうの慣れてますから」
「えぇ? それはどういう……」
リディアはチラチラとシルニカを見る。何が言いたいのか分かったシルニカは慌てて否定した。
「違う違うっ! 誤解しないでよ?! こいつと私は今回組むのが初めてで毎回荷物持ちなんてやらせてないから!」
「あっ……そ、そうなんですね。なんだてっきり……」
リディアは恥ずかしそうに俯くが、ティオは意地悪そうな含みある笑顔をシルニカに向ける。
「でも荷物を持たせるのは手慣れてる感じ? 最初からレッドさんに荷物預けてたし」
「う……まぁそうだけども……」
「シルニカさんって世渡り上手な感じがするもん。なんでも上手く利用しているっていうか」
「ま、まぁねっ! 私の美貌ならこのくらい当たり前だし?」
シルニカは貧相な胸を張る。こうしてみるとティオよりも年下に見えるが実際は2つ3つ年上である。
「いや、その……俺が言ってるのはダンジョンで薬草とかを大量に拾ってくる時とか、運よく未開封の宝箱を見つけた時のことを差してるんです。誰かが悪戯に持たせようとしたとかじゃないんで」
「ん? でもそれっておかしくないですか? 結局持たされてるっていうか……チームのみんなで分担すべきことじゃ……?」
ティオが首を傾げてレッドに尋ねると、白目を剥いて乾いた笑いが出た。ハッとして気付いた時にはもう遅い。失礼なことを言ったとすぐに「ごめんなさいっ!」と勢いよく頭を下げて謝る。レッドは精一杯の笑顔で気にしてないことを告げたが、その表情は硬かった。
他愛ないやり取りの末、オアシスの入り口に足を踏み入れる。しばらく鬱蒼とした木々のトンネルを進むと、石造りの街が姿を現した。神殿のような美しい景観と聳え立つ宮殿がジャガラームの持つ富と力を見せつける。
その頃にはレッドとシルニカの機嫌は元に戻り、目を輝かせて新たな街への期待感を膨らませていた。ティオとリディアが「まずはピラミッドへの侵入許可が必要」と伝えられ、宮殿に向けて街中を歩く。
レッドやシルニカがキョロキョロと街を見渡す仕草は田舎者のおのぼりさんだが、ジャガラームの民たちはこの仕草をする者たちの末路を知っていた。
「……何故懲りせずに来るんだ?」
「……一発逆転を狙ってるんだよ。死んだら意味ないのに……」
「……どうせなら何か買ってってくれないかしら……」
「……最近不景気だし全財産置いて行っても罰は当たらないぜ?」
ヒソヒソと話し声が聞こえる。中には少し大きめの愚痴があったりするが、ティオとリディアは気にしないように無視を決め込む。
「あっ! 見て見てレッド! 珍しいのがある!」
はしゃぐシルニカが指を差して露店に直行する。ティオは止めようとしたが、それよりも早くに走り出していたため仕方なく露店に行く。
「お~っ! お嬢ちゃんお目が高いねぇ。これはねぇジャガラームの特産品なんだよぉ。ココンナッツといって中の果汁はとろけるほどの甘さだよっ! ささっ買った買った!」
ターバンを巻いた褐色肌で小太りの露店の店主は自慢げに果物見せびらかし、シルニカに購入を促す。シルニカもその気になって財布を取り出したが、それを見て優しそうだった店主が急に厳めしくなった。
「待ちなお嬢ちゃん。そいつはいったいなんだ?」
「何って金貨だけど?」
「はぁ……この国の通貨はね、宝石なんだよ。金貨を取り扱ってるとこもあるけどね、うちじゃお断りしているんだ」
「は? じゃぁなに? 買えないってこと?」
「そう言っているだろう」
「じゃこれはどう?」
シルニカは身に纏った腕輪やネックレスを見せつける。
「そいつは魔鉱石だろ? うちは魔鉱石で取引しないから、そこの角の中古品取扱所で買い取ってもらいな。さぁ、帰った帰った」
「売ったりするわけないでしょケチッ!!」
さっきまでの態度が一変し、しっしっと手を振って追い払われる。シルニカは怒ったが、レッドは国ごとに違う貨幣制度に感心していた。
(なるほど。物価が高いところもあれば、そもそも金貨を取り扱っていないところもあるのか。換金場所とかってあるのかな? あ、そういえば……)
レッドは首から下げていたネックレスを思い出す。生まれ故郷から飛び立つ際に冒険者チーム『風花の翡翠』のリーダー、ルーシー=エイプリルからお守り代わりにもらったものだ。
せっかくレッドのためにと作ってくれたものなので使ったりしないが、これは通貨として使えたりするのかと疑問に思う。ネックレスになっているし、もし使用するとしたら取り外して使うのだろうかと好奇心が沸き上がった。
「何よここ、不便なところねぇ。ティオたちは知ってたの? 宝石のこと」
「うん。知ってたよ」
「言ってよ先にっ!」
「ごめんごめん。当たり前すぎて伝え忘れちゃってたよ。ここで個人的に売り買いしたことないしさ。ていうか結構人を見て判断するところなんだねぇ。私驚いちゃった」
ティオが苦笑気味に謝罪するが、リディアは心配そうにしている。
「……大丈夫かなぁ。この調子だと王様も対価を求めてきたりするかもしれないよ?」
「あー……何も持ち合わせがないや。魔動車も壊れちゃったしどうしよう……」
不安がる2人にシルニカは鼻を鳴らす。
「ふんっ! そんなのこっそり入ったら良いのよ。街から少し離れたあの三角形の建造物がそうでしょ? 楽勝だし」
「えぇ!?……冒険者さんってそういうのありなんですか? 制度とかルールとかって大丈夫なんですか?」
「そりゃあるよ。組合とかの関係でね。でもあくまで推奨だから。何があっても自己責任ってやつ」
「で、でも……」
チラッとレッドを見るリディア。
「あ、はい。シルニカさんの言う通りです。チームで行くことを推奨されててもこっそり行ったらバレないものですよ?」
レッドの言葉にハッとする。これ以上深堀するのは不味いと考えて「そ、そうなんですね」としか返せなかった。
一行はそこから止まることなく宮殿に行き、門番にイアン=ローディウスから託された書状を手渡すと同時に王への謁見を申し出た。
魔動車を蹴り飛ばし、真っ白なとんがり帽子を振り乱しながら苛立ちを発散させるシルニカ。
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さらに最悪なことに魔動車はどんどん砂に埋もれていく。止まった場所が悪かったのか流砂にはまったようだ。怒りを発散させるシルニカをティオとリディアで引っ張って流砂から避難する。
レッドはゆっくりと砂に飲み込まれる魔動車を名残惜しそうに見ている。
「あぁ……せっかくの魔動車が……」
「もう動いてないんだからどうでもいいわよ。どうせ廃棄しちゃうってんだから手間が省けたでしょ。そんなことよりもジャガラームってのはどこにあるの?」
シルニカが機嫌悪そうに質問するとティオはスッと指を差した。
「あ、もうその先ですね。ほら、見えてますよ」
魔動車に意識が向いていたので気づかなかったが、ジャガラームは既に見えていた。
熱帯地域に生える植物がオアシスを中心に鬱蒼と生い茂る。植物から顔を出すように建てられた建物は宮殿のようなたたずまいをしている。
「あ、ふ~ん。ちゃんと仕事はしたわね。やるじゃんオンボロのくせに」
チラッと見ると魔動車の屋根の部分が見える。全てのみ込まれるのを見送ってレッドたちは歩き出す。
レッドは全員分の荷物を背負いこみ、ティオたちについて行く。見かねたリディアが申し訳なさそうに質問を投げた。
「あの~。重たくないですか?」
「え? ああ、全然平気です。俺はこういうの慣れてますから」
「えぇ? それはどういう……」
リディアはチラチラとシルニカを見る。何が言いたいのか分かったシルニカは慌てて否定した。
「違う違うっ! 誤解しないでよ?! こいつと私は今回組むのが初めてで毎回荷物持ちなんてやらせてないから!」
「あっ……そ、そうなんですね。なんだてっきり……」
リディアは恥ずかしそうに俯くが、ティオは意地悪そうな含みある笑顔をシルニカに向ける。
「でも荷物を持たせるのは手慣れてる感じ? 最初からレッドさんに荷物預けてたし」
「う……まぁそうだけども……」
「シルニカさんって世渡り上手な感じがするもん。なんでも上手く利用しているっていうか」
「ま、まぁねっ! 私の美貌ならこのくらい当たり前だし?」
シルニカは貧相な胸を張る。こうしてみるとティオよりも年下に見えるが実際は2つ3つ年上である。
「いや、その……俺が言ってるのはダンジョンで薬草とかを大量に拾ってくる時とか、運よく未開封の宝箱を見つけた時のことを差してるんです。誰かが悪戯に持たせようとしたとかじゃないんで」
「ん? でもそれっておかしくないですか? 結局持たされてるっていうか……チームのみんなで分担すべきことじゃ……?」
ティオが首を傾げてレッドに尋ねると、白目を剥いて乾いた笑いが出た。ハッとして気付いた時にはもう遅い。失礼なことを言ったとすぐに「ごめんなさいっ!」と勢いよく頭を下げて謝る。レッドは精一杯の笑顔で気にしてないことを告げたが、その表情は硬かった。
他愛ないやり取りの末、オアシスの入り口に足を踏み入れる。しばらく鬱蒼とした木々のトンネルを進むと、石造りの街が姿を現した。神殿のような美しい景観と聳え立つ宮殿がジャガラームの持つ富と力を見せつける。
その頃にはレッドとシルニカの機嫌は元に戻り、目を輝かせて新たな街への期待感を膨らませていた。ティオとリディアが「まずはピラミッドへの侵入許可が必要」と伝えられ、宮殿に向けて街中を歩く。
レッドやシルニカがキョロキョロと街を見渡す仕草は田舎者のおのぼりさんだが、ジャガラームの民たちはこの仕草をする者たちの末路を知っていた。
「……何故懲りせずに来るんだ?」
「……一発逆転を狙ってるんだよ。死んだら意味ないのに……」
「……どうせなら何か買ってってくれないかしら……」
「……最近不景気だし全財産置いて行っても罰は当たらないぜ?」
ヒソヒソと話し声が聞こえる。中には少し大きめの愚痴があったりするが、ティオとリディアは気にしないように無視を決め込む。
「あっ! 見て見てレッド! 珍しいのがある!」
はしゃぐシルニカが指を差して露店に直行する。ティオは止めようとしたが、それよりも早くに走り出していたため仕方なく露店に行く。
「お~っ! お嬢ちゃんお目が高いねぇ。これはねぇジャガラームの特産品なんだよぉ。ココンナッツといって中の果汁はとろけるほどの甘さだよっ! ささっ買った買った!」
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「で、でも……」
チラッとレッドを見るリディア。
「あ、はい。シルニカさんの言う通りです。チームで行くことを推奨されててもこっそり行ったらバレないものですよ?」
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