一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

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第二章 旅立ち

第二十一話 意地

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アルパザ陣営は劣勢を強いられた。

相手は魔鳥人。
中級魔族の上位に位置する彼らは、カサブリア王国キングダムでも一、二を争う強さをもった種族である。

強さこそ全ての魔族にとって、種族はステータスだ。持って生まれた身体能力と魔力の総量。特異な能力の数々。その全てに恵まれた時、その個体は上級、いや、魔王にも成り得る。

そんな強者の上、更に鍛え上げられたエリートが集められた”稲妻”は数々の栄誉を賜る屈指の部隊。

強さの役満である。

言ってみれば人間ヒューマンを相手にすることは弱いものいじめに他ならない。だが、敵であるからこそ、あえていじめを敢行する。

ラルフが町を出ていってすぐの事、その場に辛うじて立っている人間は、守衛のリーダーと団長の二人だけだった。

魔鳥人が取り囲んで、一人が氷の飛礫に殺られてからが早かった。ざっと二十羽くらいの魔鳥人が一斉に遠距離攻撃で制圧にかかったのだ。
無論、攻撃を回避できるほど強いのは今立っている二人。

団長は攻撃を完璧に防ぎきったが、リーダーは致命傷は避けられても、ダメージを負ってしまった。

傷ついた腕を抱きながら、魔鳥人を睨み付けるが、
そんなものはただの格好でしかなく、敵の体に影響がない上、心にも響かない。

本人も全くの無駄だと理解しているが、理でなく怒りから、感情でこの行動に出ている。

何故なら魔鳥人にとって、リーダーなど眼中にない。

相手方は前任の”銀爪”の仇である団長のみに恨みを抱き、制圧の為に攻撃を仕掛けるが、その悉くを全て回避してのける。
その強き力と、部下がやられてしまったというのに
揺るがぬ精神に感心すらしていた。第七魔王を一騎討ちで倒しただけはある。

「白の騎士団…か。忌々しい奴らだ」

シザーは団長を高見で眺めて吐き捨てる。

「…その言葉、そっくり返すぞ」

おもてに出すことはないが、団長は苛立っていた。部下たちの倒れ伏した後の血溜まりが足を包み、少し動けば血を吸った地面の泥に変わった水気のある音が鳴る。

長年一緒に戦い抜いた猛者たちが、群がる鳥共に無惨に殺されたのだ。仲間を殺されて黙っていられる薄情ではない。

「降りてこい、鳥の怪人。サシでやろう…」

「その手は食わんぞ?貴殿の魔剣の威力はあの戦争で…この目で見たのだからな!」

団長は魔鳥人のシザーという警戒心の強い敵に行き詰ってしまう。間合いであれば斬れるが、寄ってこなければ斬るのは難しい。

「なぁ…どうしたらいいんだよ?このままじゃどうしようもねぇ…」

リーダーは腕から血を流しながら、弱音を吐く。団長は目もくれず、声を出す。

「…まだ生きているなら、隙をついて逃げるんだな。このままじゃ全滅だぞ?私も自分だけで精一杯なんだ」

「隙…ねぇ…」

魔鳥人は目算で空中に2、3m浮いて牽制している。地上にいるなら、逃げるための策や誤魔化し方も見いだせただろうが、自分よりはるかに強い制空権を持った敵と戦った経験がない為、逃げ方が分からない。遮るものがないので、動くとすぐにバレる。

自分より後ろを盗み見る。部下や騎士たちが死にゆく中にラルフの姿はない。

「…野郎…戦わせるだけ戦わせてトンずらかよ…」

ラルフという人間ヒューマンを性格諸々、知っていたつもりだったが、まさかここまで薄情だとは思いも寄らなかった。自分も殺害の対象だと知るや否や、逃げ出したに違いない。

(結局、アルパザの崩壊は防げなかったわけだ)

リーダーは自嘲気味に笑う。と同時に覚悟を決める。腕に残りの回復材を振りかけ、戦斧を握り、リーダーは団長の横に立つ。

「団長さん…もう俺たちだけだ。即席のチームだが力を合わせよう」

目の端に移ったリーダーにまたも視線を一瞬でも移すことなく話す。

「悪いが援護は期待するなよ?私は一人の方が強いし、君はこの町では強いが期待はしていない。足は引っ張るな」

「ハッキリ言うねぇ…だが、期待なんていらねぇよ。このままじゃあんただって手が届かないだろ?援護や壁はタンクの役目だ。俺が空中から引きずり下ろす。あんたは落ちた敵を潰す。それが作戦だ」

ニヤリという擬音が聞こえてきそうなほど自信を持った言葉に、頼もしいという反面どうやって?という疑問が浮かぶ。

「見せてやるよ…戦士の底力を!」

戦斧を振り上げ、肩に担いでそのまま敵めがけて放り投げた。でかく、かなりの重量のある斧が放物線を描いて飛んでいく。「な!?」団長はその不可解な行動に思わず声が出た。

「? 何故武器を放る?」

その行動がシザーも理解できない。あまり速くもないので軌道を読み、最小の動きで斧を避ける。

傷をつけることも、接触する事さえなく下に落ちていく様子を眺めていると、そこに人間ヒューマンが走り込んで来た。

投げると同時に走り出し、放物線を描く様に気持ち上目に投げる事で、落ちてくる速度を調整した。その上で、間合いを詰めた。人狼ワーウルフが自分の斧を軽々と放った様子を見ていたからこそ思いついた戦法。

それを地面すれすれでキャッチし、回転しながらそのまま攻撃に移る。

「どぅおりゃあああっ!!!」

無防備な魔鳥人の部隊めがけて地面を抉りながら石の飛礫を散弾銃の弾のように飛ばす。

先の斧とは比べ物にならないスピードで放たれる石に、目がついていかず防御に専念する。

「ぐわっ!」

「うおっ!!」

この攻撃にはシザーすら防御に回らざる負えない。

完全に意表を突かれた攻撃、ダメージこそ少量だが、石だけでなく砂塵が上がり、目を潰す効果があった。口にも砂が入り煩わしい陰湿な攻撃だ。

「ぎゃあああっ!!」

そこに魔鳥人の中から大きな悲鳴が木霊する。目潰しを食らった為、薄っすらとしか見れなかったが羽が切れて、地に落ちる部下の姿が見えた。

「ぬっ!?」

シザーは間一髪の所で、飛んでくる斧を避け
もう少し上空に上昇した。「があああっ」「ひいいいっ」という悲鳴が次々に聞こえ、地上に落ちていく。完全に油断していた。

魔鳥人は遠距離攻撃を持ち、制空権を取って安全な位置から狩りを行う。つまり同じように飛ぶことが出来なければ攻撃が当たらないと言う事だ。
だからこそ、団長から距離を取って、魔力で削り殺そうとしていた。

ここで危険なのは団長のみのはずだった。人間ヒューマンは二人を除いて、全滅だし、最大戦力を抜けば取るに足らぬ雑魚と侮った。
本来ならここまで低空で戦わないが、第二魔王に視認されないようにと、人間ヒューマンにやられる事はないと調子に乗っていた為だ。

体は頑強でも、羽は繊細なものでそこまでの耐久力はない。目を潰されたわずかの間に五羽ほど落とされた。あの程度の戦斧でもこの様だ。

「何という見上げた戦士だ。私はあなたの力を軽んじた…謝罪させてほしい…」

団長は先のセリフを恥じた。リーダーは自分にできる精一杯で、最高の働きを見せた。

魔鳥人たちが第二魔王との恐怖心や能力の落差に心がついていかなかったせいでもある。単なる言い訳に過ぎないが、リーダーの策略は全てが合致したために上手くいったのだ。

「はぁっ!!」

団長はこの期を見逃さない。魔剣の力で、地上に落ちた魔鳥人たちの胴と頭をすぐさま泣き別れにする。抵抗もできずに分断され、崩れ落ちる魔鳥人たち。

「馬鹿な!!こんな事あり得ない!!」

シザーは心の底からの悔しさをにじませる。その時、ドンッという空気が揺れる音と共に遠くの空に光が瞬いた。その光は”みなごろし”の攻撃に相違ない。ビクッとなってそちらを見てしまう。

「ふんっ、やはり生きていたか…。あの魔王がこの程度の連中に殺されるはずはないと思っていたが、案の定だな」

剣を肩に担ぎ、肩の上で弾ませる。トントンと小気味いい音が鳴りそうなリズムで跳ねさせる様子は、余裕が出てきた証拠だ。その剣をシザーに指し、挑発する。

「諦めろ。これが現実だ」

めるな!!人間ヒューマンごときがぁ!!」

吠えるシザー。しかしその高度は下げない。
警戒心の強い魔鳥人たちは団長とリーダーの攻撃範囲を考えて、かなり多めに距離を取る。その様子は恐怖を抱え、近寄れないがプライドだけが先行する、負け犬の遠吠えだった。

想定外の事態には弱い事がうかがえる。

ほまれあるカサブリアの部隊だと?聞いて呆れる。戦士として兵士として誇りを重んじるなら、その名に恥じぬ戦いをするんだな」

団長はリーダーを見て、少し頷く。その目には謝罪と感謝と憧憬があった。それを見て照れると同時に誇らしくなった。

「俺は一線を退いた半端者だが、まだ若い奴に教えられるだけの矜持はあったみたいだぜ…」

戦斧を握り締め、団長と肩を並べる。
実力は遠く及ばないかもしれない。
しかし、そこには確かに人間ヒューマン同士の熱い信念が合った。
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