一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

文字の大きさ
242 / 718
第七章 誕生

第十話 黒雲

しおりを挟む
 アスロンは脇を抱えられて何も出来ないまま、城内を連れ回されていた。目の前で仲間を惨殺された男の目は虚ろだった。大きな扉を潜ると両肩をデーモンに押さえられたまま、王の玉座の前に跪かされた。

「……こやつは?」

 俯いて何も見ようとしなかったアスロンに掛けられた声は、しゃがれた老人の声。目だけを動かして見た魔族は玉座に腰掛け、魔王である事を教えている。逆らえぬほど凄まじいオーラと威厳に満ち溢れている、見るからに化け物だった。
 銀髪の髪は幾重にも重なった様に盛り上がり、歌舞伎のかつらの様にもっさりしている。白目の部分が真紅に染まり、金色の瞳に縦長の瞳孔。肌は浅黒く、額からニョキっと伸びた角が髪を貫いて、その存在を強調する。犬歯は異常に発達していて唇に収まらない。その顔は般若そのもの。腕は確認出来るだけで合計四本生えている。どの腕も筋肉で膨れ上がり、その凶悪さを見せつける。錫杖の様な杖を持って玉座に深く座った姿は神々しさすらある。

(これが……黒雲……?)

 誰も見た事のない容姿に戦慄する。黒雲と思われる魔族は玉座の肘掛けに置いた一本の右手を挙げて、何かを誘導する様に二回手を振った。そこに出てきたのはエレノアに首筋を掴まれたブレイブ。装備などは特に回収されていないが、いつでも殺せるといった雰囲気に装備など無意味だと思わせる。

「……ブレイブ……?」

「アスロン!」

 ブレイブは首筋の手を払いのけようとするが、その瞬間エレノアに右膝を背後から蹴られて、膝カックンの要領で跪かされた。そのままブレイブの額を床に叩きつけた。ゴンッと痛々しい音が響く。この瞬間にアスロンは確信した。自分達がエレノアに騙されていた事を。

「エ、エレノア……そなた……」

「エレノア様だ。口を慎め下等種族が」

 どこからともなく聞こえた声の発生源を探し、アスロンは部屋を見渡した。誰が発声したのかはすぐに分かった。いつからそこにいたのか黒い人影がアスロンの真横に現れ、立っていたのだ。上級魔族”シャドーアイ”その名も"黒影"。黒雲の誇る敏腕執事である。
 人型の影をそのまま立体的に立たせた様な存在に恐怖を感じざるを得ない。影という曖昧な存在であるが故、自身の形を変化させたり、分裂できたり、影の中に潜ったりする事も可能な万能魔族だ。

「良い、黒影」

 黒雲の言葉に黒影は一切逆らう事なく、頭を下げながら一歩下がった。

「……人族とは何と愚かな生き物よ……たった四人で敵陣に上陸し、一体何が出来ると思うておったのか……甚だ疑問だな」

 その通りだ。ブレイブ達も無謀である事は承知の上でやってきていたものの、作戦遂行の為と目を瞑っていた。しかし改めて、しかも敵から指摘されるとぐぅの音も出ない。アスロンは言われるがまま俯いた。

「はっ!何が……出来るって?」

 エレノアの力を押し返す様にブレイブが頭を上げた。骨と筋肉が悲鳴を上げる様なミシミシという音が微かに鳴っている。床に打ち付けた額から血が滲み、鼻筋から顎にかけて一筋の血の雫が垂れた。

「出来る出来ねぇで生きちゃいねぇんだよ。やるかやらねぇかだ!お前なんかには一生分からねぇさ……俺達ヒューマンの意地はよぉ……!!」

 黒雲はブレイブの言葉を聞いて「ククク……」と笑った。口が耳元まで裂けて、シワが顔を区分けする程ついている様は、ひび割れの様に見える。

「吼えるではないか雑魚が……頭が潰れても同じ事が言えるか見ものよな……」

「……へっ……やれよ」

 黒雲は錫杖を持ち上げて、ブレイブの頭に狙いを定める。しかし、その攻撃がブレイブに振り下ろされる事はなかった。エレノアがブレイブをアスロンの方に投げ飛ばしたのだ。ほとんど垂直に飛んだブレイブは、アスロンを押さえつけていたデーモンにぶつかって床に転がる。ぶつかったデーモンはその勢いからアスロンの手を離してしまった。

「?……何のつもりだ、エレノア」

「……父様こそどういうつもりです?相手はたかがヒューマン。その上押さえつけた状態の無防備なヒューマンを狙うなんて、とても正気だと思えません」

「ほう?」

 黒雲は錫杖を床につき、驚いた顔でエレノアに質問する。

「となれば……どうすれば正解だというのか、我に提示してみせよ」

 エレノアは何が起こっているのか分からないといった顔の二人を一瞥した後、視線を黒雲に戻す。

「……戦うのです……一対一で」

「ふはっ!!」

 聞いた瞬間に笑いがこみ上げた。

「一対一だと?おぬしこそ正気かエレノア?……それは敵に手を貸してるも同じ行為。我の体に傷を付けられる機会を与えているのだからな」

「至って正気です。彼らは歴史上、一度として踏み入れた事の無いヲルトに、たった四人で上陸を果たしました。それは父様の言う通り疑問に思える程、無謀極まる愚行。しかし、無謀な程に戦力差のある人族が、こうして死に物狂いでやってきたのです。それは父様のせいであると指摘します」

「ふむ……」

 顎に手を当てて撫で上げる。黒雲は特に何を言う事もなく、エレノアの答えを待つ。

「……人族に対して父様を秘匿してきた結果、脅威すら忘れられてしまっているのです。この者達は人族でも頂点の戦士達。とするならこの者達を完膚なきまでに叩きのめし、父様のお姿を死体と共に曝け出しましょう。さすればもう二度とヲルトの地を踏もうなどと考える輩も居なくなりましょう……」

 黒雲は椅子の背もたれに体を預ける。

「……なるほど、一理ある。特に我の存在を秘匿してきた弊害が出た事に関しては認めよう。しかし、それとこれとは別では無いかな?我が存在の証明はこやつらを直々に殺さずとも出来ると思うが、如何に?」

「……ははっ!」

 エレノアとの親子の会話に突如乱入する不快な笑い声。目だけをギョロリと動かしてブレイブを見た。

「そうかそうか……第一魔王"黒雲"様ともあろう者が俺達ヒューマンが怖いらしい。雑魚だ何だと罵るのは、そんな見た目をしながら臆病だという事を隠す為のカモフラージュってわけだ。まぁ俺が這いつくばってなきゃ手を出せないんだし当然だな」

 黒雲の顔が見る見る内に怒りに歪んでいく。正に図星をついた形だ。

「貴様っ!?黒雲様に向かって……!!」

 黒影はいきり立ち、攻撃しようと腕を刃に変化させた。

「……待て」

 黒雲は黒影の攻撃を止める。錫杖に体重を預けながら2m30cmを越す体を立たせた。

「……ブレイブだったな。我に勝つつもりでいるのか?」

 ブレイブも腰に佩た武器を鞘ごと抜いて、それを基点に立ち上がる。その武器はただの剣では無い。銃床の付いた柄に巨大な幅の刃。通常振るうには難しそうなこの武器は、つい半年前に公爵から内々に渡された魔道具ガンブレイド。その名を”デッドオアアライブ”。ブレイブはニヤリと笑って言い放つ。

「……もちろん」

 エレノアのこだわりにより組まれた”黒雲”対”ブレイブ”の一騎打ち。話を聞いていてアスロンが感じたのは、戦いの理由はエレノアだけではなく、黒雲の立場によるものだろうと気付く。力により恐怖を与えるはずの魔王がヒューマンを前に怖気付いたなど、部下に見せるわけにはいかないからだ。
 エレノアの指摘が上手く作用し、状況を大きく変えた。後、単純に煽り散らしたブレイブが許せなかったと思われる。何はともあれ戦いの場は整った。

「……ククク……喜ぶが良い。おぬしは千年以上もの間、触れる事すら許されなかった我と戦う機会を得たのだ。その対価は……おぬしの命だ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

【完結】異世界転移で、俺だけ魔法が使えない!

林檎茶
ファンタジー
 俺だけ魔法が使えないとか、なんの冗談だ?  俺、相沢ワタルは平凡で一般的な高校二年生である。  成績は中の下。友達も少なく、誇れるような特技も趣味もこれといってない。  そんなつまらない日常は突如として幕を閉じた。  ようやく終わった担任の長話。喧騒に満ちた教室、いつもより浮き足立った放課後。  明日から待ちに待った春休みだというのに突然教室内が不気味な紅色の魔法陣で満ちたかと思えば、俺は十人のクラスメイトたちと共に異世界に転移してしまったのだ。  俺たちを召喚したのはリオーネと名乗る怪しい男。  そいつから魔法の存在を知らされたクラスメイトたちは次々に魔法の根源となる『紋章』を顕現させるが、俺の紋章だけは何故か魔法を使えない紋章、通称『死人の紋章』だった。  魔法という超常的な力に歓喜し興奮するクラスメイトたち。そいつらを見て嫉妬の感情をひた隠す俺。  そんな中クラスメイトの一人が使える魔法が『転移魔法』だと知るや否やリオーネの態度は急変した。  リオーネから危険を感じた俺たちは転移魔法を使っての逃亡を試みたが、不運にも俺はただ一人迷宮の最下層へと転移してしまう。  その先で邂逅した存在に、俺がこの異世界でやらなければならないことを突きつけられる。  挫折し、絶望し、苦悩した挙句、俺はなんとしてでも──『魔王』を倒すと決意する。

最弱Sランク冒険者は引退したい~仲間が強すぎるせいでなぜか僕が陰の実力者だと勘違いされているんだが?

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
冒険者のノエルはSランクパーティーの荷物もちだった。 ノエル自体に戦闘能力はなく、自分のことを足手まといだとすら思っていた。 そして、Sランクになったことで、戦うモンスターはより強力になっていった。 荷物持ちであるノエルは戦闘に参加しないものの、戦場は危険でいっぱいだ。 このままじゃいずれ自分はモンスターに殺されてしまうと考えたノエルは、パーティーから引退したいと思うようになる。 ノエルはパーティーメンバーに引退を切り出すが、パーティーメンバーはみな、ノエルのことが大好きだった。それどころか、ノエルの実力を過大評価していた。 ノエルがいないとパーティーは崩壊してしまうと言われ、ノエルは引退するにできない状況に……。 ノエルは引退するために自分の評判を落とそうとするのだが、周りは勘違いして、ノエルが最強だという噂が広まってしまう。 さらにノエルの評判はうなぎのぼりで、ますます引退できなくなるノエルなのだった。 他サイトにも掲載

固有スキルガチャで最底辺からの大逆転だモ~モンスターのスキルを使えるようになった俺のお気楽ダンジョンライフ~

うみ
ファンタジー
 恵まれない固有スキルを持って生まれたクラウディオだったが、一人、ダンジョンの一階層で宝箱を漁ることで生計を立てていた。  いつものように一階層を探索していたところ、弱い癖に探索者を続けている彼の態度が気に入らない探索者によって深層に飛ばされてしまう。  モンスターに襲われ絶体絶命のピンチに機転を利かせて切り抜けるも、ただの雑魚モンスター一匹を倒したに過ぎなかった。  そこで、クラウディオは固有スキルを入れ替えるアイテムを手に入れ、大逆転。  モンスターの力を吸収できるようになった彼は深層から無事帰還することができた。  その後、彼と同じように深層に転移した探索者の手助けをしたり、彼を深層に飛ばした探索者にお灸をすえたり、と彼の生活が一変する。  稼いだ金で郊外で隠居生活を送ることを目標に今日もまたダンジョンに挑むクラウディオなのであった。 『箱を開けるモ』 「餌は待てと言ってるだろうに」  とあるイベントでくっついてくることになった生意気なマーモットと共に。

処理中です...