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13話 聖女の回復魔法は抜群でした
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食事が終わり、お店を出る頃には、私もすっかり調子を取り戻していた。
「美味しかったですね。私は根っからの庶民だから、ああいうお店の雰囲気が好きなんです」
「満足していただけたようで何よりです。俺も好きな店ですよ」
「フレイさんも?」
「騎士を目指していた頃、騎士として過ごしていた頃は、今のような暮らしをしていませんでしたからね。馴染が深いのです」
「そっか……あ、ちなみに、庶民的な雰囲気が好きだからいって、お屋敷での生活に不満があるわけじゃないですからね」
「もちろん分かっていますよ」
「なら良かった」
レストランを出た私たちは街を歩く。その間も私の手はフレイさんに掴まれていた。
まるでデートだ。もうこれ完全にデート以外の何物でもない。
現代日本での私は恋愛とは縁遠い生活を送っていたから、これが初デートだ。
私はフレイさんを見上げる。銀糸のように美しい髪は、太陽の光を受けて輝いている。
ああ、やっぱり美形だ。これほどの美形を見たことがない。こんな美形が初デートの相手だなんて、恵まれすぎじゃない?
私の視線に気付くと、アメジスト色の瞳がすっと細められた。
「エリカ殿?」
「えっと、その――あっ! あそこを見てください、フレイさん! 人だかりができていますよ! 何かあったんでしょうか!?」
「本当ですね。確認しましょう」
苦し紛れに指さした先は、見覚えのある冒険者ギルドの前だった。
近付いた私たちの目に、負傷した冒険者たちの姿が飛び込んでくる。
私を発見した顔馴染の受付嬢――私のギルドカードを発行してくれた人だ――が、血相を変えて駆けつけてきた。
「ああ、聖……じゃなかった、エリカさん! 大変なんです、助けてください!」
「え、え?」
「何があった?」
「こ、これは領主様! それが、実は――」
ウェルスの街を出てしばらく行ったところにある【魔獣の森】。
モンスター討伐クエストに出向いた冒険者が、モンスターに襲われて負傷したらしい。
受付嬢は、冒険者たちから聞き出した情報を手短に教えてくれた。
「ふむ……特徴を聞く限り、出没したモンスターはトレントのようだな」
「知っているんですか、フレイさん?」
「人面樹とも呼ばれる樹木のモンスターです。根を駆使して歩き回り、枝を鞭のようにしならせて相手を攻撃します。その力は強く、岩をも砕く強さを持っています。体は固い木の幹に覆われており、攻撃力の弱い物理攻撃や、毒などは一切効きません。その性質上、討伐ランクはBに分類されています」
「そうなんですの! 魔獣の森はCランクに分類されるダンジョンです! まさかBランク以上のモンスターが出るなんて……負傷した方々もCランク冒険者の方々ばかりで……」
「誰か! 回復術師はいませんか!?」
他のギルド受付嬢が叫ぶ。あいにく今この場に、回復術師はいないようだ。
「あのっ! 私、習得したばかりですが回復魔法が使えます! 少しは役に立つかもしれません!」
「エリカ殿」
「はい、ぜひお願いします! エリカさんの……その、特別な力であれば皆さんを助けられるかもしれませんわ!」
「分かりました!」
私は負傷した冒険者たちの傍らに跪くと、手を翳す。
「――“アース・ヒーリング”」
目を閉じて、習得したばかりの魔法を発動させる。
本来、Lv1の回復魔法は簡単な擦り傷や切り傷、打ち身を癒すだけだと聞いている。
目の前の人たちはそれどころじゃない。開放骨折や複雑骨折。ぱっくり裂けた傷口から鮮血が溢れ続けている人もいる。
私の回復魔法なんて気休めにしかならない。それでもやらないよりはマシだ。そう考えていた。
でも効果は予想以上だった。黄金色の光が冒険者たちを包み込むと、傷がみるみるうちに癒されていく。
――数分後。私が治療した冒険者たちは、みんな元気になっていた。
「す、すげぇ……!」
「どういうことだ!? 本当に回復魔法Lv1なのか!?」
「本当ですよ。……あ、今ので回復魔法Lvが3まで上がったみたいです」
ステータスカードを確認すると、情報が更新されていた。
「信じられん……最低レベルの回復魔法でこの効力とは……!」
「さすがはエリカさんですわ! 私が見込んだ通りでしたわね!」
唖然とする冒険者たち。私の正体を知るギルド受付嬢は、えっへんと胸を張った。
「エリカ殿は特別なお方ですからね」
「フレイさん」
「それもそうか。領主様の婚約者ともなれば、常人離れしていても不思議ではありませんね!」
「当たり前ですわ! なんといってもエリカさんは聖――げふんげふんっ!」
「セイ? セイなんだって?」
「いやあのその……清楚! 清楚可憐な人ですわよね!」
「? まあ確かにそうだな。領主様に選ばれたぐらいだから、この辺りじゃ見かけないタイプの綺麗な人だな。だが、この場に何の関係があるんだ?」
「もういいじゃありませんの! エリカさん、冒険者ギルドを代表してお礼を言わせていただきますわ! ありがとうございました!!」
「あ、いえ、そんな」
これも聖女の力なのかな。私の魔法はたとえ下位魔法であっても、この世界の常識では考えられない効果を発揮するみたいだ。
「ご迷惑を承知でもう一つお願いがあります! 実は、魔獣の森に3人の冒険者が取り残されているのです! エリカさん、領主様、どうかお助けいただけないでしょうか!? ただいまBランク以上の冒険者たちは、モンスター繁殖期の討伐クエストで他の土地に出向いています! 他に頼れる方がいないのです!」
「それは看過できない事態だな。承知した、引き受けよう」
「フレイさん、私も連れて行ってください!」
「エリカ殿?」
「私も魔法が使えます! 今の効力を見ると多少の戦力にはなれると思うんです。だから――」
「はい、構いません。共に参りましょう。ただしエリカ殿は俺の背後にいてください。決して前へ出すぎないようお願いします」
「分かっています。足手まといにはなりません」
「では、参りましょう」
「はいっ!」
私たちは馬車に飛び乗ると、目的地である魔獣の森を目指して出発した。
「美味しかったですね。私は根っからの庶民だから、ああいうお店の雰囲気が好きなんです」
「満足していただけたようで何よりです。俺も好きな店ですよ」
「フレイさんも?」
「騎士を目指していた頃、騎士として過ごしていた頃は、今のような暮らしをしていませんでしたからね。馴染が深いのです」
「そっか……あ、ちなみに、庶民的な雰囲気が好きだからいって、お屋敷での生活に不満があるわけじゃないですからね」
「もちろん分かっていますよ」
「なら良かった」
レストランを出た私たちは街を歩く。その間も私の手はフレイさんに掴まれていた。
まるでデートだ。もうこれ完全にデート以外の何物でもない。
現代日本での私は恋愛とは縁遠い生活を送っていたから、これが初デートだ。
私はフレイさんを見上げる。銀糸のように美しい髪は、太陽の光を受けて輝いている。
ああ、やっぱり美形だ。これほどの美形を見たことがない。こんな美形が初デートの相手だなんて、恵まれすぎじゃない?
私の視線に気付くと、アメジスト色の瞳がすっと細められた。
「エリカ殿?」
「えっと、その――あっ! あそこを見てください、フレイさん! 人だかりができていますよ! 何かあったんでしょうか!?」
「本当ですね。確認しましょう」
苦し紛れに指さした先は、見覚えのある冒険者ギルドの前だった。
近付いた私たちの目に、負傷した冒険者たちの姿が飛び込んでくる。
私を発見した顔馴染の受付嬢――私のギルドカードを発行してくれた人だ――が、血相を変えて駆けつけてきた。
「ああ、聖……じゃなかった、エリカさん! 大変なんです、助けてください!」
「え、え?」
「何があった?」
「こ、これは領主様! それが、実は――」
ウェルスの街を出てしばらく行ったところにある【魔獣の森】。
モンスター討伐クエストに出向いた冒険者が、モンスターに襲われて負傷したらしい。
受付嬢は、冒険者たちから聞き出した情報を手短に教えてくれた。
「ふむ……特徴を聞く限り、出没したモンスターはトレントのようだな」
「知っているんですか、フレイさん?」
「人面樹とも呼ばれる樹木のモンスターです。根を駆使して歩き回り、枝を鞭のようにしならせて相手を攻撃します。その力は強く、岩をも砕く強さを持っています。体は固い木の幹に覆われており、攻撃力の弱い物理攻撃や、毒などは一切効きません。その性質上、討伐ランクはBに分類されています」
「そうなんですの! 魔獣の森はCランクに分類されるダンジョンです! まさかBランク以上のモンスターが出るなんて……負傷した方々もCランク冒険者の方々ばかりで……」
「誰か! 回復術師はいませんか!?」
他のギルド受付嬢が叫ぶ。あいにく今この場に、回復術師はいないようだ。
「あのっ! 私、習得したばかりですが回復魔法が使えます! 少しは役に立つかもしれません!」
「エリカ殿」
「はい、ぜひお願いします! エリカさんの……その、特別な力であれば皆さんを助けられるかもしれませんわ!」
「分かりました!」
私は負傷した冒険者たちの傍らに跪くと、手を翳す。
「――“アース・ヒーリング”」
目を閉じて、習得したばかりの魔法を発動させる。
本来、Lv1の回復魔法は簡単な擦り傷や切り傷、打ち身を癒すだけだと聞いている。
目の前の人たちはそれどころじゃない。開放骨折や複雑骨折。ぱっくり裂けた傷口から鮮血が溢れ続けている人もいる。
私の回復魔法なんて気休めにしかならない。それでもやらないよりはマシだ。そう考えていた。
でも効果は予想以上だった。黄金色の光が冒険者たちを包み込むと、傷がみるみるうちに癒されていく。
――数分後。私が治療した冒険者たちは、みんな元気になっていた。
「す、すげぇ……!」
「どういうことだ!? 本当に回復魔法Lv1なのか!?」
「本当ですよ。……あ、今ので回復魔法Lvが3まで上がったみたいです」
ステータスカードを確認すると、情報が更新されていた。
「信じられん……最低レベルの回復魔法でこの効力とは……!」
「さすがはエリカさんですわ! 私が見込んだ通りでしたわね!」
唖然とする冒険者たち。私の正体を知るギルド受付嬢は、えっへんと胸を張った。
「エリカ殿は特別なお方ですからね」
「フレイさん」
「それもそうか。領主様の婚約者ともなれば、常人離れしていても不思議ではありませんね!」
「当たり前ですわ! なんといってもエリカさんは聖――げふんげふんっ!」
「セイ? セイなんだって?」
「いやあのその……清楚! 清楚可憐な人ですわよね!」
「? まあ確かにそうだな。領主様に選ばれたぐらいだから、この辺りじゃ見かけないタイプの綺麗な人だな。だが、この場に何の関係があるんだ?」
「もういいじゃありませんの! エリカさん、冒険者ギルドを代表してお礼を言わせていただきますわ! ありがとうございました!!」
「あ、いえ、そんな」
これも聖女の力なのかな。私の魔法はたとえ下位魔法であっても、この世界の常識では考えられない効果を発揮するみたいだ。
「ご迷惑を承知でもう一つお願いがあります! 実は、魔獣の森に3人の冒険者が取り残されているのです! エリカさん、領主様、どうかお助けいただけないでしょうか!? ただいまBランク以上の冒険者たちは、モンスター繁殖期の討伐クエストで他の土地に出向いています! 他に頼れる方がいないのです!」
「それは看過できない事態だな。承知した、引き受けよう」
「フレイさん、私も連れて行ってください!」
「エリカ殿?」
「私も魔法が使えます! 今の効力を見ると多少の戦力にはなれると思うんです。だから――」
「はい、構いません。共に参りましょう。ただしエリカ殿は俺の背後にいてください。決して前へ出すぎないようお願いします」
「分かっています。足手まといにはなりません」
「では、参りましょう」
「はいっ!」
私たちは馬車に飛び乗ると、目的地である魔獣の森を目指して出発した。
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