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14話 初めての共同作業、という名のモンスター退治
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魔獣の森が近付くと、馬車を降りて徒歩で進む。
私は支援魔法のアース・バリア――結界効果がある――を発動させて、モンスターが近付かないようにしておいた。
「素晴らしい効力ですね。森に生息するモンスターは地属性。通常、同属性魔法は効きにくい筈なのですが……エリカ殿の魔法は例外のようですね。効果は抜群です」
「これも聖女の力なんでしょうか?」
「そうですね……聖女の力とは、本来は信仰の体系に属するものです。祈りで傷や病を癒し、奇跡を起こす。魔法とは異なるものです」
「じゃあ魔法は?」
「魔法とは六大精霊の加護を受ける者が発動させられる力です」
「六大精霊?」
「地、水、火、風、光、闇の六元素を司る精霊です。たとえば俺は風の精霊の加護を受けているので、風魔法が使用できます」
「私は女神の加護を受けているから、聖女だと認定されたんですよね。他の精霊の加護は受けていないのに、どうして地属性魔法が使えるんでしょう?」
「女神様は精霊の上位存在です。女神の加護を受けている以上、眷属である精霊の魔法が使えたとしても不思議ではありませんよ」
「そういうものなんだ」
ちなみに精霊は今でこそ女神の眷属だけど、昔は異教の神様だったんだとか。
だから女神の力とは体系が異なる、“魔”の名が冠されているんだとか。
歩きながらフレイさんが教えてくれた。
「成長速度と効力に関しては、上位存在である女神の加護が効いているのでしょう。同じ魔法でも、術者の技量や素質によって威力が変動しますからね」
「やっぱりそうなんだ」
それじゃあ聖女は、奇跡と魔法を使いこなせるハイブリットってことか。
……うん、確かに驚異的な存在だ。魔王が危険視するのも少し納得する。だからって、大人しく殺されるつもりはないけどね。
魔法に守られていても警戒を怠らず、私たちは森の中を歩む。
奥地へと進んでいくと、だんだん周囲が薄暗くなってきた。さらに地響きのような音が聞こえてきた。
「来ますよ、エリカ殿!」
「は、はいっ!」
フレイさんは鞘から剣を抜く。光り輝く剣――ブルトガングという名の聖剣だと、前に教えてもらった。剣の軌跡はまるで見えなかったけど、刃が何かを切り裂く音は聞こえてきた。
次の瞬間、フレイさんの足元には、切り刻まれ動かなくなった木の根が転がっていた。
「す、すごいですっ! あっという間に倒しちゃった!」
「ここはもう安全です。しかし、この先もモンスターが出てくるでしょう。俺から離れないでくださいね」
「もちろんです」
振り向いたフレイさんは、私を安心させるように微笑む。その言葉に頷いて先へと進むと、暗闇に赤い目が浮かび上がった。
5メートルは余裕で超えていそうな巨大な樹。根や枝を触手のように蠢かせる。その先には3人の人間がぶら下がっている。
「う……うぅ……」
「あれは冒険者たちですか!? 良かった、生きていますね!」
「今すぐ救出してエリカ殿が治療すれば、きっと助かるでしょう」
フレイさんは結界の外に出て、光る剣を振る。木の枝が切断され、捕まっていた人たちが落ちた。
フレイさんは彼らを抱き留めると、アース・バリアの中に入れる。
「アース・ヒーリング!」
私は怪我人を回復魔法で治療する。その間もフレイさんは、鮮やかな動きでトレントを切り裂いていった。
「ウゴオオオオオ!!」
「――はッ!」
枝や根を失ったトレントは、大きく口を開いて魔法を放とうとする。フレイさんはそれすら許さず、手を翳すと魔法を発動させた。
「エア・インパクト!」
すさまじい風の衝撃波がトレントの葉を散らし、固い幹を剥ぎ取った。
もはやただの丸太と化したトレントは沈黙する。辺りの瘴気が薄らいだのが、私にも分かった。
「他愛もない。エリカ殿、怪我人の容態は如何ですか?」
「こっちも皆さんの治療が終わりました! 全員無事ですよ!」
「ああ……ありがとうございます おかげで助かりました!!」
中にはちょっと危なかった人もいたけど、どうにか治療できた。
四肢の欠損もなければ、後遺症もない。多少の精神的ショックは残っているかもしれないけど。
「それは良かった。ところでステータスカードはどうなりましたか?」
「え? あ、レベル7になっています! 回復魔法もレベルアップしてますよ!」
最新のステータスは、こんな感じだ。
――――――
名前:エリカ=ハザマ
レベル:7
クラス:聖女
魔力属性:大地
使用魔法:地属性支援魔法Lv3、地属性攻撃魔法Lv1、地属性回復魔法Lv5
スキル:無
加護:女神スフィアの加護
――――――
「やはり実践で得られる経験値は貴重ですね。さあエリカ殿、トレントを仕留めてください」
「え?」
「トレントのHPは1残してあります。最後はエリカ殿の魔法で仕留めてください」
「ええっと、フレイさんの手柄を横取りするような真似は、ちょっと……」
「何を言うのですか。敵にトドメを刺した者へ、多くの経験値が入ります。駆け出しの冒険者は敵を仕留める機会を仲間から貰い、中級以上の冒険者は初心者の仲間に経験を積ませる。この世界では当たり前ですよ」
「そ、そうなんですか?」
冒険者たちは頷いた。そういうものなんだ、この世界って……。
「エリカ殿は強くなることをお望みでしたよね。エリカ殿の望みは俺の望みでもあります。今までは攻撃手段がなかったようですが、先日攻撃魔法を習得したそうではないですか。さあ、最後の一撃をお願いします!」
「分かりましたよ、もう……ロック・アロー!」
覚えたばかりの攻撃魔法を発動させる。
空中に出現した石礫が、トレントに向かって飛んでいった。その勢いは、まさに矢のようだ。
硬い皮を剥がれた体を貫かれ、トレントは絶命した。
「お見事です、エリカ殿。レベルが一気に3も上がりましたね。レベル10おめでとうございます! B級モンスターを討伐したこともあって、攻撃魔法も一気にLv3まで上がっていますね。攻撃・回復・支援、すべて新しい魔法を習得しています。重ね重ね、おめでとうございます!」
「おめでとうございます! 何だかよく分からねえけど!」
「とにかく俺たちゃ助かったんだ! 感謝しますぜ!!」
「なんだかなあ……」
フレイさんに会わせるように、冒険者の皆さんも私を讃えた。
その後、冒険者たちをウェルスの街まで送り届ける。冒険者たちが全員無事に、それも無傷の状態で帰ってきたことで、街は大騒ぎになった。
「おいおい、お前たち! あの状態でよく無事だったな!?」
「それが聞いてくれよ! パーシヴァル様が颯爽とトレントを倒し、婚約者のエリカ様が俺たちの傷をあっという間に癒してくれたんだ! いやあ、お前たちにも見せたかったぜ! お二方がいなければ、俺たちゃ今頃バラバラ死体さ!」
「なんと……! エリカ様の回復魔法は俺たちも昼間目の当たりにしたが……それほどまでとは!」
「お二方がいらっしゃる限り、パーシヴァル伯爵領は安泰ですわね!」
「違いないな! はっはっはっはっは!!」
もうほんと、大盛り上がりだった。街の皆さんは、今夜は祝宴を開くからぜひ参加してくれと言ってきた。
「せっかくの誘いだが、明日は早い。朝から人と会う約束があるので、今夜は遅くなるわけにいかないのだ」
「そうっすか……残念だなあ」
「おいお前、あんま無理言うなよ! パーシヴァル様は領主様だからお忙しいんだぞ!」
祝宴に参加できないのはちょっと残念だけど……実際フレイさんは激務の日々を送っているから、無理をさせられない。
もう空は暗くなりかけていた。お屋敷に戻るなら、そろそろ出発しないと。
「また遊びに来ますから、その時に誘ってくださいね」
「かしこまりィ!!」
今日の出来事で、私は名実ともにウェルスの人々に認められたみたいだった。
「ウェルスの街っていいところですね。食事も美味しいし、街の人たちは優しいし……また行きたいです」
「ええ、ぜひまた参りましょう」
「はい!」
帰りの馬車に揺られながら、フレイさんは誇らしげな微笑みを浮かべ、私の様子を眺めていた。
私は支援魔法のアース・バリア――結界効果がある――を発動させて、モンスターが近付かないようにしておいた。
「素晴らしい効力ですね。森に生息するモンスターは地属性。通常、同属性魔法は効きにくい筈なのですが……エリカ殿の魔法は例外のようですね。効果は抜群です」
「これも聖女の力なんでしょうか?」
「そうですね……聖女の力とは、本来は信仰の体系に属するものです。祈りで傷や病を癒し、奇跡を起こす。魔法とは異なるものです」
「じゃあ魔法は?」
「魔法とは六大精霊の加護を受ける者が発動させられる力です」
「六大精霊?」
「地、水、火、風、光、闇の六元素を司る精霊です。たとえば俺は風の精霊の加護を受けているので、風魔法が使用できます」
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「女神様は精霊の上位存在です。女神の加護を受けている以上、眷属である精霊の魔法が使えたとしても不思議ではありませんよ」
「そういうものなんだ」
ちなみに精霊は今でこそ女神の眷属だけど、昔は異教の神様だったんだとか。
だから女神の力とは体系が異なる、“魔”の名が冠されているんだとか。
歩きながらフレイさんが教えてくれた。
「成長速度と効力に関しては、上位存在である女神の加護が効いているのでしょう。同じ魔法でも、術者の技量や素質によって威力が変動しますからね」
「やっぱりそうなんだ」
それじゃあ聖女は、奇跡と魔法を使いこなせるハイブリットってことか。
……うん、確かに驚異的な存在だ。魔王が危険視するのも少し納得する。だからって、大人しく殺されるつもりはないけどね。
魔法に守られていても警戒を怠らず、私たちは森の中を歩む。
奥地へと進んでいくと、だんだん周囲が薄暗くなってきた。さらに地響きのような音が聞こえてきた。
「来ますよ、エリカ殿!」
「は、はいっ!」
フレイさんは鞘から剣を抜く。光り輝く剣――ブルトガングという名の聖剣だと、前に教えてもらった。剣の軌跡はまるで見えなかったけど、刃が何かを切り裂く音は聞こえてきた。
次の瞬間、フレイさんの足元には、切り刻まれ動かなくなった木の根が転がっていた。
「す、すごいですっ! あっという間に倒しちゃった!」
「ここはもう安全です。しかし、この先もモンスターが出てくるでしょう。俺から離れないでくださいね」
「もちろんです」
振り向いたフレイさんは、私を安心させるように微笑む。その言葉に頷いて先へと進むと、暗闇に赤い目が浮かび上がった。
5メートルは余裕で超えていそうな巨大な樹。根や枝を触手のように蠢かせる。その先には3人の人間がぶら下がっている。
「う……うぅ……」
「あれは冒険者たちですか!? 良かった、生きていますね!」
「今すぐ救出してエリカ殿が治療すれば、きっと助かるでしょう」
フレイさんは結界の外に出て、光る剣を振る。木の枝が切断され、捕まっていた人たちが落ちた。
フレイさんは彼らを抱き留めると、アース・バリアの中に入れる。
「アース・ヒーリング!」
私は怪我人を回復魔法で治療する。その間もフレイさんは、鮮やかな動きでトレントを切り裂いていった。
「ウゴオオオオオ!!」
「――はッ!」
枝や根を失ったトレントは、大きく口を開いて魔法を放とうとする。フレイさんはそれすら許さず、手を翳すと魔法を発動させた。
「エア・インパクト!」
すさまじい風の衝撃波がトレントの葉を散らし、固い幹を剥ぎ取った。
もはやただの丸太と化したトレントは沈黙する。辺りの瘴気が薄らいだのが、私にも分かった。
「他愛もない。エリカ殿、怪我人の容態は如何ですか?」
「こっちも皆さんの治療が終わりました! 全員無事ですよ!」
「ああ……ありがとうございます おかげで助かりました!!」
中にはちょっと危なかった人もいたけど、どうにか治療できた。
四肢の欠損もなければ、後遺症もない。多少の精神的ショックは残っているかもしれないけど。
「それは良かった。ところでステータスカードはどうなりましたか?」
「え? あ、レベル7になっています! 回復魔法もレベルアップしてますよ!」
最新のステータスは、こんな感じだ。
――――――
名前:エリカ=ハザマ
レベル:7
クラス:聖女
魔力属性:大地
使用魔法:地属性支援魔法Lv3、地属性攻撃魔法Lv1、地属性回復魔法Lv5
スキル:無
加護:女神スフィアの加護
――――――
「やはり実践で得られる経験値は貴重ですね。さあエリカ殿、トレントを仕留めてください」
「え?」
「トレントのHPは1残してあります。最後はエリカ殿の魔法で仕留めてください」
「ええっと、フレイさんの手柄を横取りするような真似は、ちょっと……」
「何を言うのですか。敵にトドメを刺した者へ、多くの経験値が入ります。駆け出しの冒険者は敵を仕留める機会を仲間から貰い、中級以上の冒険者は初心者の仲間に経験を積ませる。この世界では当たり前ですよ」
「そ、そうなんですか?」
冒険者たちは頷いた。そういうものなんだ、この世界って……。
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「分かりましたよ、もう……ロック・アロー!」
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「せっかくの誘いだが、明日は早い。朝から人と会う約束があるので、今夜は遅くなるわけにいかないのだ」
「そうっすか……残念だなあ」
「おいお前、あんま無理言うなよ! パーシヴァル様は領主様だからお忙しいんだぞ!」
祝宴に参加できないのはちょっと残念だけど……実際フレイさんは激務の日々を送っているから、無理をさせられない。
もう空は暗くなりかけていた。お屋敷に戻るなら、そろそろ出発しないと。
「また遊びに来ますから、その時に誘ってくださいね」
「かしこまりィ!!」
今日の出来事で、私は名実ともにウェルスの人々に認められたみたいだった。
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