「聖女は2人もいらない」と追放された聖女、王国最強のイケメン騎士と偽装結婚して溺愛される

沙寺絃

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21話 新たなスキルと焦燥感

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 私が異世界に召喚され、パーシヴァル邸に来てから、もう1ヶ月以上の時が過ぎた。
 日中は魔法を勉強する傍らモンスター退治で経験値を稼いだり、植物成長で品種改良しつつスキルレベルをアップさせたり、怪我人や病人が出た時には回復魔法で治療に当たったりしている。
 おかげで今の私のステータスは、こんな感じになっていた。

――――――
名前:エリカ=ハザマ
レベル:19
クラス:聖女
魔力属性:大地
使用魔法:攻撃魔法(地)Lv14、回復魔法(地)Lv16、支援魔法(地)Lv17
スキル:植物成長Lv11
加護:女神スフィアの加護
――――――

 今日も今日とて、クレイトンさんと魔獣の森までモンスター退治に来ている。

「“ダスト・ブレード”!」

 砂嵐の魔法が毒殺人蜂ポイズン・キラービーの群れを包み込む。砂嵐が刃のように、捕らえられた敵を攻撃する魔法だ。
 砂嵐が消えると、その場には無数のキラービーの死骸だけが残った。

「ふう、これでウェルスやグリンヒルの人たちを悩ませていたキラービーを掃討できましたね」
「お見事ですな、エリカ様。もはや私の出番などありませんな」
「討伐ランクの低いモンスターだったからですよ。ポイズン・キラービーって、討伐ランクDじゃないですか」
「低級モンスターだけに繁殖力が高く、近隣住人を困らせておりました。しかし低級ゆえに冒険者たちは、討伐クエストを受けたがらない。得られる報酬も経験値も低いですからな。地味で冒険者たちが嫌がるクエストを、エリカ様は率先して受けていらっしゃいます。おかげで領民からのエリカ様に対する評価は、非常に高まっているではありませんか」
「自分のやりたいことをやっているだけですよ」

 でも、褒められれば嬉しい。それに今の討伐で、私のレベルはさらにアップしたみたいだ。

「……っ!」

 体の奥が熱くなり、心臓が跳ねる。
 この感覚は前にも経験した覚えがある。あの時はスキル【植物成長】を習得したっけ。ということは……。

「……クレイトンさん、また新しいスキルを覚えたみたいです!」
「どれどれ、失礼。……ほう、アイテムクリエイトとは珍しいスキルですな!」
「どんなスキルか分かります?」
「その名の通り、アイテムを作り出すスキルです。レシピを覚え、必要な素材を集め、魔力を注げば魔法道具が錬成できますぞ。試してみましょう。ちょうどここは魔獣の森、素材集めには困りません」

 ということで、クレイトンさんがちゃちゃっと素材を集めてくれた。
 【木の枝】と【人食い蜘蛛の糸】。これで初歩的な弓が作れるらしい。教わるがままに地面に素材を置き、弓をイメージして魔力を注ぐ。
 素材が光に包まれる。光が消えると、そこには立派な弓が残されていた。
 ついでに【鳥の羽】【木の枝】【キラービーの牙】で、矢も作ってみる。こっちもすぐに完成した。

「試射をしてみましょう。――おおっ、これは!」

 近くの樹木に浮かぶ木目を狙って、試射するクレイトンさん。矢は木目の中央に刺さり、しかも貫通した。

「これは素晴らしい威力です! 威力だけではありません! 狙いを補正する効果もあるようですな! 今は弓矢でしたが、剣や魔法杖、武器も作れるでしょう! 防具や回復薬も作れるかもしれませんな! エリカ様、屋敷に戻りましたら、ぜひ試していただきたい!」
「あはははは……はい」

 クレイトンさんの読んだ通り、私のアイテムクリエイトスキルは、他の武器や防具にも転用できた。
 というわけで、その日から私の仕事の一つには、武器・防具類の作成および素材採取が加わった。
 もちろんこれだって、武器・防具作りを生業にしている鍛冶師の仕事を奪いかねない。
 だから量産は慎重に行わないといけない。聖女の力は技術を継承できない上に、既存製品の価値を暴落させかねない代物だからね。
 でも高い威力を発揮する武器や防具を作れば、使用者の死傷率は劇的に低下する。
 そこで私はパーシヴァル家に使える私兵団、パーシヴァル騎士団の支給品として武器・防具・アイテム類を作ることにした。

***

 この世界に私が召喚された理由。魔族の囮。餌。生贄の聖女。
 フレイさんが保護してくれたから、こうして生き延びている。けれど私を仕留められていない以上、いずれ魔族が襲ってくるだろう。
 フレイさんは私を守ると言ってくれた。その為に魔族の動向を調査したり、日々の訓練や練兵を欠かさなかったり、とにかく余念がない。
 私の為に、パーシヴァル伯爵領の人々が殺されるのは嫌だ。だから自分でもやれることは、最大限やる。
 私が作る武器や防具で死傷率を下げられるなら、喜んで作る。回復薬ポーションも作っておく。
 いざという時は自分でも戦えるように訓練もする。モンスターを退治して魔法をレベルアップさせ、効果を高める。

「はあぁ……君、毎日よくやるねえ。そんなに頑張って、疲れないの?」

 お屋敷に用がありやって来たハロルドさんが、私の暮らしぶりを見て感嘆の――あるいは呆れたような溜息を漏らした。

「私にできることは限られているけど、やれることは全部やっておいたいの。でないと不安で……」
「君って聖女なんでしょ? まあ聖女ってのは大っぴらにできないにしても、フレイさんの婚約者なんだからさぁ。そんなに頑張らなくてもいいんじゃない? 誰も責めやしないよ」
「そういう意味じゃないんです」
「じゃあ、どういう意味?」
「うまく言えないけど……余裕がある時に頑張っておかないと、とんでもない後悔をする……そんな気がするんです」
「ふーん?」

 私は今、目の前にある生活が愛しい。
 フレイさんやお屋敷の人々、伯爵領の人々が好きだ。彼らと過ごす何気ない日常こそが、今の私にとって幸せなんだと感じている。
 ……だからこそ、守らないと。
 この日常は、人々の平安は、さまざまな条件の上に成り立っている。ボタンを掛け違えれば、あっという間に崩れてしまう脆いものだ。
 そうさせない為にも、聖女として選ばれた私は、出来うるすべてのことをやっておきたい。
 魔法を鍛える。最低限の護身を学ぶ。アイテムを作る。武器を作る。防具を作る。
 それでも足りない。まだまだ足りない。焦燥に駆られる私を見て、ハロルドさんは何度目かの溜息をついた。

***

 パーシヴァル伯爵領に来てから、2ヶ月が経過した。私のレベルは23になり、使える魔法の種類もだいぶ増えた。
 そんな折、ついに調査隊から大峡谷の魔族に動きがあったと報せが入った。
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