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32話 バフォメット城攻略戦①
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バフォメット城は、パーシヴァル領を北東に抜けた先、ロウエン都市同盟量の山岳地帯の奥深くに聳え立っている。
大峡谷を背に構える形で聳え立つこの城は、魔王軍にとって人間界への侵攻をかける上で重要な拠点らしい。
逆に言うと、ここを押さえられれば大峡谷侵攻の要所になる。つまりアモンに協力するのは、人間側にとってもメリットがあるということだ。
「オオオオオオ!!」
戦いの火蓋が切って落とされる。私はフレイさんと別れ、今回もクレイトンさんと共に後方支援にあたる。
「見積によると、レオナール軍の軍勢は6,000程度。こちらは約10,000です。数の上では有利ですが、問題は統率が上手くとれるかという点でしょうな」
ホーンズ城塞や領地の守備もある。こんなに人員を割いて大丈夫かと最初は思ったけど、都市同盟側からの援兵も混じっている。
一応バフォメット城は都市同盟の領地にある。いくら都市同盟が弱体化しているといっても、自国内の問題をすべて他国に解決してもらうのは体裁が悪い。
ということで、あくまで「共同の魔族退治」という名目で、援兵を受けることになった。
これによりフレイ軍(暫定)は、パーシヴァル騎士団、冒険者義勇兵、アモン軍、都市同盟兵という4つの勢力が入り乱れることになった。
数の上では有利だけど、こうなるとクレイトンさんの指摘の通り、統率面が心配になる。
「統率が取れず各々好き勝手な動きをしていては、数の利点を活かせません。それどころか脆い部分を突かれれば、一気に突破され形勢が逆転する恐れもあります。——が、杞憂だったようですな」
「そうですね」
パーシヴァル騎士団と冒険者義勇兵の足並みがそろっているのは、前回のホーンズ平原での戦いで実証されている。
「うらアァァァッ! そこだアァァアッ!! おイ、そっち! あんまし逸んじゃねえゾ!! 俺様たちの目的ハ、“人間連中と足並みを揃えた上での突破”ダ! そうしねえことには聖女の野郎ガ、俺様の魔力を全部還しやがらねぇからナ!!」
「へい、お頭ァッ!!」
アモンには魔力を一部還したけど、全部は還していない。つまりアモンは私のコントロール下にある。
今のアモンは子犬姿ではなく、人間に違い姿形となっている。初めて戦った時のような姿だ。
……ただし違う点は、魔力を一部しか還していないから、150cmぐらいの子供の姿になっていることだけど。それでも十分に活躍し、爪や炎で敵を薙ぎ払っている。
「あっちは――」
一番の懸念事項は、都市同盟からの援兵だ。
こちらは合流して日が浅いし、都市同盟の面子から功を焦り、突出しかねない。そこを崩されたらまずいと、フレイさんは読んでいた。
だけど、それもまた杞憂に終わった。というよりも、確かに最初はその兆候があった。都市同盟援兵はフレイ軍と足並みが揃わず、突出した結果魔族に囲まれてしまった。
けれどフレイさんが即座に救援へ入り、聖剣ブルトガングを振るって、魔族包囲網を突破。都市同盟援兵を救助した。
その一件で、都市同盟兵たちはフレイさんを認めたみたいだ。
幸い指揮官は冷静になれば有能な人だったので、すぐに体勢を立て直すとフレイ軍と足並みを揃え始めた。
「フレイさん、すごい!」
「すごい、などと言うものではありません。あれは神業です。通常の将官では真似できませぬ。あれはあの方だからこそ――王国最高峰の騎士と呼ばれたフレイ=パーシヴァル様だからこそ可能な行いです」
改めて、フレイさんはとんでもない人だと思い知らされた。
その後は危なげもなく、数の利を活かしてフレイ軍はレオナール軍を駆逐していく。右翼を担うアモンと配下たちが敵の左翼を突き崩す。
フレイさんが指揮する中央でも、敵側の陣形が流れ始めていた。こちらの左翼――都市同盟兵たちが担うエリアも、よく持ちこたえてくれている。
「戦の対局はほぼ決しましたな。ここから覆される可能性があるとすれば――」
「あるとすれば?」
「敵の大将の登場ですな」
まるでタイミングを読んでいたかのように。
クレイトンさんが言葉を発した直後、バフォメット城から黒い煙が立ち昇り、上空で形を作る。
側頭部から2本の長い山羊のツノが生えた、黒髪の男だ。頬がこけて目が落ちくぼみ、濃い隈が浮かび上がっている。体長は2メートルほど。顎には山羊のような髭をたくわえて、憂鬱そうな眼差しで眼下を見やる。
この世界に召喚された夜、遭遇した悪魔バフォメットに似た特徴を持った男。違う点といえば、人間の姿に近いというところか。
「あれは――」
「……レオナールゥゥゥ!! てンめェェェェェェェ!!」
アモンが吠える。その絶叫は空気を振動させ、戦場中に響き渡った。
「おやおや……これはこれは。裏切り者のアモン様ではありませんか」
「あァ!? 最初に裏切ったのはてめぇだろうガ!! てめぇが俺様の部下を惨殺したんだろうガ!! バフォメットの次はサマエルに取り入りやがっテ! そんなに俺様たちが気に入らねぇのカ!?」
「ええ、まったく。……バフォメット様の後継としてこの城の主となったはいいものの、初戦で大敗。挙句、敵に与して魔王軍に牙を剥くとは……これだから混血種は。混血種は劣等種である。目的の為に使い潰し、最も過酷な戦場に送り込み、根絶やしにせよ……ククク、サマエル様は良いことをおっしゃられる」
「……サマエルの野郎が言ったのカ? おイ、レオナール!! 今のは確かにサマエルの野郎が言ったんだナ!?」
今の私とアモンは、魔力のバイパスで繋がっている。そのおかげで離れていても声が聞こえる。レオナールの挑発に、アモンの声は完全に切れていた。
「殺ス、ブッ殺してやル、サマエルの野郎ッ!!」
「ッククク、その姿で――ですか!? 聖女に魔力を吸われたと話には聞いていましたが、そこまで可愛らしくなられるとは!」
「クソ野郎ガアァッ!!」
「はン――!」
宙を駆け、レオナールに向かい突進するアモン。レオナールはわずかな動作で攻撃を躱すと、アモンの腕を掴んだ。
「全力のあなたであれば別ですが――今のあなたに負ける私では、ありません」
「なッ――!?」
「はン!!」
レオナールは攻撃を躱すとアモンの腕を掴み、攻撃の力を利用して地面へと放り投げた。
大峡谷を背に構える形で聳え立つこの城は、魔王軍にとって人間界への侵攻をかける上で重要な拠点らしい。
逆に言うと、ここを押さえられれば大峡谷侵攻の要所になる。つまりアモンに協力するのは、人間側にとってもメリットがあるということだ。
「オオオオオオ!!」
戦いの火蓋が切って落とされる。私はフレイさんと別れ、今回もクレイトンさんと共に後方支援にあたる。
「見積によると、レオナール軍の軍勢は6,000程度。こちらは約10,000です。数の上では有利ですが、問題は統率が上手くとれるかという点でしょうな」
ホーンズ城塞や領地の守備もある。こんなに人員を割いて大丈夫かと最初は思ったけど、都市同盟側からの援兵も混じっている。
一応バフォメット城は都市同盟の領地にある。いくら都市同盟が弱体化しているといっても、自国内の問題をすべて他国に解決してもらうのは体裁が悪い。
ということで、あくまで「共同の魔族退治」という名目で、援兵を受けることになった。
これによりフレイ軍(暫定)は、パーシヴァル騎士団、冒険者義勇兵、アモン軍、都市同盟兵という4つの勢力が入り乱れることになった。
数の上では有利だけど、こうなるとクレイトンさんの指摘の通り、統率面が心配になる。
「統率が取れず各々好き勝手な動きをしていては、数の利点を活かせません。それどころか脆い部分を突かれれば、一気に突破され形勢が逆転する恐れもあります。——が、杞憂だったようですな」
「そうですね」
パーシヴァル騎士団と冒険者義勇兵の足並みがそろっているのは、前回のホーンズ平原での戦いで実証されている。
「うらアァァァッ! そこだアァァアッ!! おイ、そっち! あんまし逸んじゃねえゾ!! 俺様たちの目的ハ、“人間連中と足並みを揃えた上での突破”ダ! そうしねえことには聖女の野郎ガ、俺様の魔力を全部還しやがらねぇからナ!!」
「へい、お頭ァッ!!」
アモンには魔力を一部還したけど、全部は還していない。つまりアモンは私のコントロール下にある。
今のアモンは子犬姿ではなく、人間に違い姿形となっている。初めて戦った時のような姿だ。
……ただし違う点は、魔力を一部しか還していないから、150cmぐらいの子供の姿になっていることだけど。それでも十分に活躍し、爪や炎で敵を薙ぎ払っている。
「あっちは――」
一番の懸念事項は、都市同盟からの援兵だ。
こちらは合流して日が浅いし、都市同盟の面子から功を焦り、突出しかねない。そこを崩されたらまずいと、フレイさんは読んでいた。
だけど、それもまた杞憂に終わった。というよりも、確かに最初はその兆候があった。都市同盟援兵はフレイ軍と足並みが揃わず、突出した結果魔族に囲まれてしまった。
けれどフレイさんが即座に救援へ入り、聖剣ブルトガングを振るって、魔族包囲網を突破。都市同盟援兵を救助した。
その一件で、都市同盟兵たちはフレイさんを認めたみたいだ。
幸い指揮官は冷静になれば有能な人だったので、すぐに体勢を立て直すとフレイ軍と足並みを揃え始めた。
「フレイさん、すごい!」
「すごい、などと言うものではありません。あれは神業です。通常の将官では真似できませぬ。あれはあの方だからこそ――王国最高峰の騎士と呼ばれたフレイ=パーシヴァル様だからこそ可能な行いです」
改めて、フレイさんはとんでもない人だと思い知らされた。
その後は危なげもなく、数の利を活かしてフレイ軍はレオナール軍を駆逐していく。右翼を担うアモンと配下たちが敵の左翼を突き崩す。
フレイさんが指揮する中央でも、敵側の陣形が流れ始めていた。こちらの左翼――都市同盟兵たちが担うエリアも、よく持ちこたえてくれている。
「戦の対局はほぼ決しましたな。ここから覆される可能性があるとすれば――」
「あるとすれば?」
「敵の大将の登場ですな」
まるでタイミングを読んでいたかのように。
クレイトンさんが言葉を発した直後、バフォメット城から黒い煙が立ち昇り、上空で形を作る。
側頭部から2本の長い山羊のツノが生えた、黒髪の男だ。頬がこけて目が落ちくぼみ、濃い隈が浮かび上がっている。体長は2メートルほど。顎には山羊のような髭をたくわえて、憂鬱そうな眼差しで眼下を見やる。
この世界に召喚された夜、遭遇した悪魔バフォメットに似た特徴を持った男。違う点といえば、人間の姿に近いというところか。
「あれは――」
「……レオナールゥゥゥ!! てンめェェェェェェェ!!」
アモンが吠える。その絶叫は空気を振動させ、戦場中に響き渡った。
「おやおや……これはこれは。裏切り者のアモン様ではありませんか」
「あァ!? 最初に裏切ったのはてめぇだろうガ!! てめぇが俺様の部下を惨殺したんだろうガ!! バフォメットの次はサマエルに取り入りやがっテ! そんなに俺様たちが気に入らねぇのカ!?」
「ええ、まったく。……バフォメット様の後継としてこの城の主となったはいいものの、初戦で大敗。挙句、敵に与して魔王軍に牙を剥くとは……これだから混血種は。混血種は劣等種である。目的の為に使い潰し、最も過酷な戦場に送り込み、根絶やしにせよ……ククク、サマエル様は良いことをおっしゃられる」
「……サマエルの野郎が言ったのカ? おイ、レオナール!! 今のは確かにサマエルの野郎が言ったんだナ!?」
今の私とアモンは、魔力のバイパスで繋がっている。そのおかげで離れていても声が聞こえる。レオナールの挑発に、アモンの声は完全に切れていた。
「殺ス、ブッ殺してやル、サマエルの野郎ッ!!」
「ッククク、その姿で――ですか!? 聖女に魔力を吸われたと話には聞いていましたが、そこまで可愛らしくなられるとは!」
「クソ野郎ガアァッ!!」
「はン――!」
宙を駆け、レオナールに向かい突進するアモン。レオナールはわずかな動作で攻撃を躱すと、アモンの腕を掴んだ。
「全力のあなたであれば別ですが――今のあなたに負ける私では、ありません」
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