転生先の説明書を見るとどうやら俺はモブキャラらしい

夢見望

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第20話 可愛い女の子と可愛い子犬のコンボは最強である

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「先生、こいつと契約したいと思っているんですけど、どうしたら良いんですか?」
 召喚魔法でシルバーウルフの子供を召喚したのは良いが、契約の仕方が分からない。
「簡単よ。その子に名前を付けてあげるの」
「名前を付けるだけで良いんですか?」
「ええ、名前を付けて相手がその名前を気に入ったら契約成立よ」
「き、気に入ったらですか・・・」
 正直、名前を考えるのはあまり得意ではない。
 ルビーの名前を考えたときはアルファに「ドラゴンの名前にしては威厳が足りないのでは」と言われた。
 ルビーは、名前を付けて貰って喜んでいたので良かったが、今回もそうなるとは限らない。
 両手で抱きかかえた目の前にいる小さなモンスターは、白くてフワフワした犬にしか見えない。
「悪い。名前を考えるのは苦手なんだ」
「くぅ~ん?」
 名前を考えて変な顔でもしていただろうか? 不思議そうな顔でこちらを見て来る。
 あまり悩んでも仕方が無い。
 後で、またアルファに何か言われるかもしれないが、パッと頭に浮かんだ言葉を口に出した。
「お前の名前は『シロ』だ! どうだ?」
「わんっ!!」
 白い毛並みを持っているから『シロ』。
 安直な名前だとは思うが、気に入ってくれたのか大きな声で返事をしてくれた。
 すると、シロの体が光り輝きだした。
「し、シロ!? 大丈夫か!?」
「わんっ!!」
 光はすぐに消え、シロは元気に尻尾を振っていた。
「シュトラウド君が考えた名前が気に入ったみたいね」
「せ、先生、今のは?」
「契約が成立すると名前を付けた相手はさっきみたいに一瞬だけ光輝くの。契約者として認めて貰えた証ね」
「そ、そうだったんですか、良かった~~。ビックリさせんなよな?」
 俺は、シロを頭の上まで持ち上げて、感謝を伝えた。
「俺と契約してくれて、ありがとなシロ! これからよろしく!」
「わんっ!!」
 大きな声で返事をしたシロの尻尾は、ちぎれてしまいそうほどに揺れていた。

「しょ、召喚成功おめでとうございます!レインさん!」
「ありがとう! ミリアーデさん!」
 念の為に離れた場所で俺が召喚しているのを見ていたリーゼは、グラン先生に「もう大丈夫」と言われ近くに戻って来ていた。
「先生が言うには、モンスターのランクは低いらしいからあまり凄くはないかもしれないけどね」
「そ、そんなことないです! 1回で成功させるレインさんは凄いです!!」
 必死に俺を褒めてくれるリーゼ。
 褒めて貰えるのは嬉しいが、可愛い顔も近づかせてくるので心臓の鼓動が滅茶苦茶早くなってしまう。
 早く離れたいが、ここで離れるのも不自然だと思い離れることが出来ない。
 困っていたら
「わん」
 と小さく鳴く声が聞こえた。
「あっ、ご、ごめんなさい!」
 鳴き声を聞いて、リーゼは少し距離を取った。
 どうやら、リーゼが近づいたことでシロが俺とリーゼに挟まれてしまっていたらしい。
「ごめんなさい、苦しかったですよね?」
「わんっ!!」
 心配そうな顔で見て来るリーゼに対して、シロは気にするなと言わんばかりの大きな声と笑顔で返していた。
「この子がレインさんが召喚した子ですか? 可愛いですね~ えっと、お名前は?」
「シロだよ。毛が白いから『シロ』。安直だろ?」
「そうですね。でも、この子は喜んでいるみたいですよ? ねぇ、シロちゃん」
「わんっ!」
「あ、あの、レインさん」
「うん? 何?」
「その、シロちゃんに触ってみても良いですか?」
「どうぞ、何なら抱っこしてみる?」
「い、良いんですか?」
「俺は良いよ。シロはどう?」
「わんっ」
「良いってさ」
「そ、それじゃあ、お言葉に甘えて」
 俺の腕の中にいたシロは、ゆっくりとリーゼの腕へと移っていった。
「うわ~、フワフワで気持ちいいです~」
「わふ~~」
 リーゼは、シロのことを優しく撫でたり、顔を近づけて頬ずりもしている。
 シロもリーゼに優しくして貰って嬉しそうだ。
 可愛い女の子と可愛い動物が触れあう空間。
 俺は、はっ!と思い、すぐにアルファに頼み事をした。
『アルファ!今すぐ、目の前の尊い空間を写真に取るんだ!』
『お断りします』
『何でだ!! お前のレンズは何のためにあるんだ!!』
『マスターの失態を取るためですよ』
『そんなもの、どうせいつも撮ってるだろう!! 俺の写真なんぞいらん!! 頼むからリーゼとシロを取ってくれ!!』
『ご自分でカメラをご用意すればよろしいではないですか』
『昔、お前が自分で「写真なら私がいればいくらでも取れます。カメラなど買う必要はありません」って言ったんじゃないか』
『確かに言いましたが、私の言うことなど無視して買っても良いのですよ?』
『買ったらお前壊すじゃん』
『当たり前です。私より劣っているものをマスターの近くに置いておく意味がありません』
『だから、自分でカメラ用意出来ないんじゃねぇか!!』
『私より優れているものを持ってくれば、使用して貰っても構いませんよ? 不可能だとは思いますが』
『凄い自信だな。てか、頼むよ、目の前の尊い空間を撮ってくれよ。写真でも動画でも良いから』
 アルファにどうにか写真を撮るように頼んでいたら
「レインさん、シロちゃんを触らせてくれてありがとうございました」
「あ、も、もう良いのか?」
「はい! とっても癒やされました!」
「そ、そっか、それは良かった」
『残念でしてねマスター。私に頼み事などせず、その目に焼き付けておけば良かったのに』
『うるせえ!! お前が素直に言うこと聞いていれば良かったんだよ!』
 アルファに怒りのツッコミを入れて、シロを受け取らずにいたら
「レインさん?」
「わふ?」
 リーゼとシロが同じ方向に首をかしげて、俺の方を見ていた。
 あまりの可愛さに我慢が出来ず
「・・・かわいい」
 と声が漏れてしまった。
(しまった!)
 と思ったが、リーゼから返ってきた言葉は
「はい! シロちゃん可愛いですよね!」
 だった。
「だ、だよな! シロ可愛いよな!」
「はい!」
 可愛いのはシロだけじゃないが、リーゼがシロに対して言った言葉だと思っているみたいなのでそれに乗っかることにした。
『何と、情けないマスターでしょう』
『黙れよ』
 リーゼからシロを受け取ると、ドッと疲れが出てきた。
「ははは、召喚魔法使って少し疲れたかも」
 疲れた理由は別なんだが。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫、大丈夫、その辺に座って休んでたらすぐに回復するよ」
「そうですか。それなら良かったです」
「次は、ミリアーデさんの番だね。俺が成功したんだから、ミリアーデさんもきっと成功するよ」
「はいっ! 頑張ります!」
 不安がなくなった訳じゃないみたいだけれど、少しは前向きになれたみたいだ。
「見ていて下さいね。レインさん」
「うん、少し離れたところで見る事になると思うけど、ちゃんとミリアーデさんが成功するところ見てるよ」
「ありがとうございます! ・・・あ、あのレインさん」
「どうかした?」
「・・・いえ、何でもないです」
「そっか、それじゃあ俺はあっちに行くね」
 リーゼに背中を向けて、シロを抱っこしながら歩き出す。
 さっきリーゼが何か言おうとしていたようだが、今はリーゼが無事に召喚魔法を成功することを願った。
 そう、本当にそれだけを考えていた。
 だから、リーゼの頬がいつもより赤くなっていることに気付かなかった。

「・・・さっきの言葉は、私に言ったわけじゃないですよね?」

 
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