没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友

文字の大きさ
42 / 60
1章

第42話 フィーネの要望

しおりを挟む
 わたくしたちは夕食を食べ終え、ララは食器を洗ってくれていた。
 ティエラは軽い運動をしてくると言って外に出て行き、マーレはぐったりと転がっている。

 わたくしはフィーネのすぐそば、角っこあたりにイスを動かして座った。

「それでは、フィーネのお部屋の間取りについて話していきましょうか!」
「うん。美味しいご飯を食べてすぐに自分だけの部屋考えるって最高」
「ふふ、確かに自分だけの部屋というのは素敵ですわね」
「そ、エルフの国にいた時もすでにあった部屋だったし、自分だけの部屋……これはデザインをする上でとっても気を付けないと」

 そう言って口元に手を当てて真剣に考え始める。

 なので、わたくしはそれをそっと止めた。

「フィーネ。デザインを大事にし過ぎるより、使いやすさを大事にした方がいいですわ。私室は自分の部屋。もっとも長くいる場所と言っても過言ではないですわ。だから、使いやすさ。過ごしやすさ。これを最優先で考えるべきですわ」
「そっか……ありがとう。確かにそうよね」
「という訳なんですが、まずは部屋の広さはどれくらいにしたいですか?」
「部屋の広さ……」
「想像よりも少し広めがいいですわ。棚やベッドを置いたら手狭に感じることがあるでしょうから」
「そっか……それなら……」

 彼女は立ち上がってベッドの辺り指で指す。

「このくらいがいいかな?」
「ふむ、10畳くらいですね。倍でもかまいませんよ?」
「使い勝手いいのがいいんでしょ? それに、高い所に作るのに、あんまり大きいのも悪いしね」
「ああ、そういえば、何ⅿくらいですか? やっぱり100ⅿは越えたいですか?」
「高すぎでしょ? 登るのにどんだけかかるか分かってる?」
「フィーネならいけるかなって」
「そんな運動神経発揮したことないでしょ……」

 と言って、フィーネは席に戻ってくる。

 わたくしは話を元に戻す。

「では、高さはどれくらいですか?」
「そうね……5ⅿくらいは欲しいわ」
「え? フィーネ悪いもの食べました? そんな遠慮するなんて」
「あたしだってするわよ。っていうか、家に住ませてもらって部屋まで作ってもらうんだから」
「もう、気にしなくてもいいですのに」

 3人で住むより、5人で住む方が楽しいはずだ。
 だから一緒に住んでくれて嬉しいくらい。

「そういう訳にも行かないわよ。っていうか、さっきあんたが言ったでしょ、使いやすさが大事だって、登りやすさもやっぱり大事かなって」
「なるほど、それはそれですわね。では、他に要望はありますか? 窓は何個欲しいとか、風通しは良くして欲しいとか」
「あー。窓は4方向に欲しいかも。カーテンとか4種類用意して、好きな時に見れるようにしたいかも」
「なるほどなるほど」

 わたくしは彼女の言葉を聞きながら、倉庫にしまっていた紙と鉛筆をとりだして、要望を書いていく。

「それから、風通しはいい感じにして欲しいかも。やっぱり風があった方がエルフとしては嬉しい。冬はちょっと寒くてもいいから」
「他には?」
「そうね。登りやすいようにはして欲しいけど、安全性もしっかりと欲しいかしら」
「安全性?」
「そう。高い所に作るっていうことは、誰かが登って来るかもしれないってことでしょ? そうなると、入られないようにしたいなって」
「なるほど、部屋に入る時のことをどうするか……ですか……」

 わたくしはその要望を紙に書き、どうしたらいいのかについて頭を抱える。

 高いところにあるのに入られにくい部屋……。
 入り口を部屋の真下につけるとか? それとも、部屋を開けるにはギミックが必要とか? ああ、でも、窓があるから、そこから入られるか。
 ならいっそのこと登ることを難しくして、どうやって登るんだこれ? っていうようなはしごにするとか……。

「あー難しいならいいわよ? 魔道具とか用意しておくし」
「いえ、その辺りも考えて行きますわ。というか、どういうのが登りやすいのですか?」
「そうね。普通のはしご的なのが一番かな」
「わかりましたわ。ちなみに、他にはありますか?」
「んーとりあえずはそれでいいかな」
「では、とりあえず部屋の感じを作ったので、それを見ていただけますか?」
「早くない? 一緒に設計をしていたはずだよね?」

 わたくしは立ち上がって外に出る。

 外はすでに日が落ちて暗い。
 ただ、空には大きな月と絨毯のような星々が煌めていて、灯りなどなくても明るかった。

 後ろからフィーネがついてきていることを気配で察知して、わたくしはスキルを使う。

「【設計】」

 とりあえずの設計をして、作ろうとしている物をスキルで作る。

 それから、上に続くはしご等の土台を消して、部屋だけにした。

「ではこれから……仮組をして」

 ということで、木の板は沢山あるので、それを10畳くらいにしていく。

「これくらいの広さになりますが、よろしいですか?」
「すごーい。結構広いのね」
「ええ、ここに家具を入れていき、自分だけの部屋を作るのですわ」
「なるほど、じゃあ……このままでいいかしら?」
「ええ、すぐに作ってみせますわ」
「急がなくていいよ」
「いいえ、わたくしが早く一緒に住みたいのですわ」
「……」

 彼女は何も言わずに、わたくしの頭をそっと撫でる。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

公爵閣下のご息女は、華麗に変身する

下菊みこと
ファンタジー
公爵家に突然引き取られた少女が幸せになるだけ。ただのほのぼの。 ニノンは孤児院の前に捨てられていた孤児。服にニノンと刺繍が施されていたので、ニノンと呼ばれ育てられる。そんな彼女の前に突然父が現れて…。 小説家になろう様でも投稿しています。

スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~

白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」 マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。 そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。 だが、この世には例外というものがある。 ストロング家の次女であるアールマティだ。 実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。 そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】 戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。 「仰せのままに」 父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。 「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」 脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。 アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃 ストロング領は大飢饉となっていた。 農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。 主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。 短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。

『しろくま通りのピノ屋さん 〜転生モブは今日もお菓子を焼く〜』

miigumi
ファンタジー
前世では病弱で、病室の窓から空を見上げることしかできなかった私。 そんな私が転生したのは、魔法と剣があるファンタジーの世界。 ……とはいえ、勇者でも聖女でもなく、物語に出てこない“モブキャラ”でした。 貴族の家に生まれるも馴染めず、破門されて放り出された私は、街の片隅―― 「しろくま通り」で、小さなお菓子屋さんを開くことにしました。 相棒は、拾ったまんまるのペンギンの魔物“ピノ”。 季節の果物を使って、前世の記憶を頼りに焼いたお菓子は、 気づけばちょっぴり評判に。 できれば平和に暮らしたいのに、 なぜか最近よく現れるやさしげな騎士さん―― ……って、もしかして勇者パーティーの人なんじゃ?! 静かに暮らしたい元病弱転生モブと、 彼女の焼き菓子に癒される人々の、ちょっと甘くて、ほんのり騒がしい日々の物語。

美味しい料理で村を再建!アリシャ宿屋はじめます

今野綾
ファンタジー
住んでいた村が襲われ家族も住む場所も失ったアリシャ。助けてくれた村に住むことに決めた。 アリシャはいつの間にか宿っていた力に次第に気づいて…… 表紙 チルヲさん 出てくる料理は架空のものです 造語もあります11/9 参考にしている本 中世ヨーロッパの農村の生活 中世ヨーロッパを生きる 中世ヨーロッパの都市の生活 中世ヨーロッパの暮らし 中世ヨーロッパのレシピ wikipediaなど

至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます

下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。

役立たずと追放された聖女は、第二の人生で薬師として静かに輝く

腐ったバナナ
ファンタジー
「お前は役立たずだ」 ――そう言われ、聖女カリナは宮廷から追放された。 癒やしの力は弱く、誰からも冷遇され続けた日々。 居場所を失った彼女は、静かな田舎の村へ向かう。 しかしそこで出会ったのは、病に苦しむ人々、薬草を必要とする生活、そして彼女をまっすぐ信じてくれる村人たちだった。 小さな治療を重ねるうちに、カリナは“ただの役立たず”ではなく「薬師」としての価値を見いだしていく。

処理中です...