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パドマリアの章
清廉の弓
しおりを挟むパドマリアで義賊ロビンが反乱を起こした。それを征討将軍である蓮也は捉え、解放した。ロビンは城に立て篭り徹底交戦の構えを見せる。しかし、蓮也が王者の風格を見せることで、ロビン陣内からも、この戦いの無意味さに気づく者が出てくる。
蓮也
「あのロビンという者も、その部下もなかなか手強いな」
アルベルト
「一気に潰しましょう。次は、相手の攻撃が来ても我が隊は退かずに突撃しますので」
蓮也
「いや待て、今回は対外的な戦争ではない。だから、できれば死者は一人も出したくない。それと、力攻めで屈服させても、また次の反乱を招く可能性がある」
「それに退去勧告をし、三日の猶予を与えている。しばらく待て」
アルベルト
「ははっ!」
蓮也もどちらかと言えばアグレッシブに仕掛けるタイプであるが、猪突猛進のアルベルトに対して抑え気味でバランスをとっている。これもリーダーに必要な要素である。このパドマリア征討は、蓮也をリーダーとして成長させる戦いであった。
三日が過ぎたが、パドマリア城を占拠するロビンからは何も返事はない。再びアルベルトは城攻めを進言し、蓮也はそれを受け入れた。
蓮也
「一度、相手はこちらを崩して勝ったと思っている。だから次も崩れたと見せかけ、その後に相手は総大将である私を見れば、チャンスだと思って出てくる可能性がある。この兵力差からすると、相手は篭城し続けるか私を倒すしかないからな」
アルベルト
「蓮也様、それは危険過ぎます!どうかお考え直しを!」
蓮也
「いや、これで行く。これは命令だ、アルベルトよ」
アルベルト部隊が敵の魔弾の射程に入ったら防御を優先し、相手の騎馬突撃に合わせて崩れて見せ左右に分かれる。そのすぐ後に蓮也は本陣を置き、敵を誘引するという作戦である。そしてその本陣の後ろにヒーラー部隊を置き、蓮也本隊にプロテクションをかけ、蓮也がディフェンダー部隊となるのである。
作戦はすぐに開始された。
まずアルベルトは敵の射程内に前陣を敷こうと前進する。すると、やはり、それを妨害するかのように、リチャードの騎馬突撃とブランドの魔弾が飛んでくる。その後にロビンの弓の連射も来る。これに対してアルベルトのディフェンダー部隊は崩れたように見せかけ、左右に分かれる。更にアルベルト隊は、左右の森や茂みに入ることで魔弾や弓を躱そうと見せかける。そして、そのすぐ先に敵は蓮也本体を確認する。
ロビン
「よし、チャンスだ!敵の本体は手薄だ!敵の大将を狙えば我が軍の勝利だぞ~!」
ロビンに鼓舞されて、ロビン軍は蓮也率いる蓮薔薇騎士団に襲い掛かる。蓮也自身もプロテクションをかけ、剣をとって相手の攻撃を受ける。また、蓮也の諸刃剣の片方は刀引き(かたなびき、刀の刃を潰している)なので、刀引き側で相手を殺さずに、払い倒していく。
やがて、敵の隊列が縦に長く伸びるのを確認し、蓮也は剣を空に向け、火魔法を放つ。伏兵に側面攻撃を行う合図である。
この合図を確認したゼイソン魔法部隊が側面から魔法攻撃を開始する。狙いは敵の総大将ロビンである。
ゼイソン
「魔法部隊よ、敵の総大将目掛け、雷属性スタンを放て!」
ロビンを確認したゼイソンは、ロビン目掛け雷属性スタンを指示する。それが命中し、ロビンは麻痺する。ロビンは部下に抱えられながら退却しようとする。
ゼイソン
「次、氷結魔法にて相手の足を狙い凍結せよ!」
今度はロビンの足が氷結魔法で凍結したため、完全に自由を失った。そこへ崩れたように見せかけたアルベルト隊が一気に動き出し、ロビンを捕らえる。大将が捕らえられたことを知ると敵は戦意を喪失し、混乱する者、城へ逃げ帰る者、降伏する者、様々であった。
ロビン
「くっそー!殺せー!殺せー!」
蓮也
「安心しろ、殺しはせぬ。当初に勧告した通り、城を明け渡せばそれでよい」
ロビン
「うるせー!コノヤロー!完全に篭城していたら絶対に負けなかったぜ!」
「んでなぁ、俺のところまで来て、弓の勝負をするならオメーなんかにゼッテー負けねー!」
アルベルト
「おい、静かにしろ!」
ロビン
「いってー!くっそー!また頭を殴りやがってー!」
再び蓮也はロビンとその部下の縄を解いた。今度は、ロビンは何も言わずにすごすごと帰って行った。その様子を見たロビンの配下たちは、蓮也に崇高なオーラを感じた。その中にシベリウスナイトのリチャードもいた。
アルベルト
「二回も・・・。よろしいのですか・・・」
蓮也
「ああ」
城に帰ったロビンは、さすがに少し落ち込んでいた。
ウェンディ
「二回も捕まえられて、二回とも解放してくれるなんて、相手の王子様は悪い人じゃないわ」
リチャード
「あのような崇高で美しいオーラは生まれてはじめてみました」
今度は、ロビンは何も言わずに、自室としている王の間に入って行った。
それからすぐに蓮也は軍議を開いた。
アルベルト
「相手は、今度は完全に籠城状態になりますので、さすがにこちらも多少の犠牲は覚悟せねばなりません」
蓮也
「犠牲は出さぬ。俺に考えがある」
アルベルト
「考えと言いますと?」
蓮也
「今夜、俺が城に一人で侵入し、ロビンを捕らえる」
アルベルト
「蓮也様単独で侵入ですと?おやめください、危険です!」
蓮也
「安心しろ。パドマリアへは以前から入ったことあるからよくわかる」
アルベルト
「そうであっても無茶です!」
蓮也
「これは命令だ」
「俺がいない間はゼイソンに指揮を任せる」
パトマリア城には王族のみが知る隠し通路があり、それを蓮也は兄の舞也から出兵前に聞いていた。通路の階段は奇数段を踏むと魔法にて仕掛けがしてあり、通路が崩れ落ちるようになっている。それを踏まえて、蓮也は隠し通路を進んでいく。そして、その通路の階段は王の間につながっている。
ロビン
「なんだお前は!どこから入って来やがった!」
蓮也
「約束通り、籠城はさせてやった。そして、今から弓の勝負をしてやる」
「さあ、どう勝負するのだ?」
と言って蓮也は弓の準備をする。
ロビン
「ちょっとまて。条件を揃える。オイラと同じ弓を使え」
蓮也
「それだと慣れている分、お前の方が有利だと思うが、まあ、いいだろう」
ロビンは自分の持っている同じ弓矢を用意し、蓮也に渡す。
この清廉の弓は先祖代々からの弓で二組あり、神聖魔法がかけられているため、心が清らかな者でないと引くことができないとされている。
ロビン
「この部屋の端にいけ。そして、床に弓矢を置く。俺がコインを投げるから床に落ちたら弓矢を取り、矢を放つ。いいか?」
蓮也
「いいだろう」
王の間は端から端まで70メートルとかなりあるため、狙いを定めないとお互いの矢は当たらないが、射撃の名手ロビンには簡単なことであった。
そして、程なくコインの音した。
両者はすぐに弓矢を取り、弓を放った。
ロビン
(よし、オイラの方が早い!)
蓮也
「エンチャント・ウインド!」
「疾風射!」
風属性エンチャントによって蓮也の放った矢は加速し、ロビンの矢を弾きながら、矢はロビンの肩に命中した。蓮也の弓の技量はそこまで高くないのだが、風魔法によるコントロールによって、ロビンとの技量差を補ったのである。
ロビン
「くそ!魔法を使うのは卑怯だぞ!も、もう一回だ!」
そこへ、ウェンディが扉から入ってくる。
ウェンディ
「ロビン、もうやめて!あなたの負けよ!」
「この人は何度もあなたを解放し、今度はあなたの条件通りにしてくれて、それでも、あなたは負けたのよ!」
「あなたはいつも大人は汚いって言ってるけど、今のあなたは言い訳ばかりしてセコい子供だわ!」
「さあ、シャーウッドの森へ帰るわよ!」
ロビン
「・・・わかったよ!」
「けど完全に負けたわけじゃないからな!森の中なら負けなかった!だから、また今度は森で一騎討ちだ!」
ウェンディ
「もう、何言ってんの!負け惜しみなんて男らしくない!帰るわよ!」
と言ってロビンはウェンディに引っ張られ、ウェンディは仲間を連れてシャーウッドの森へと帰って行った。
ロビン
(あの弓が引けるってことは、もしかして、アイツ、いい奴なのかな・・・)
清廉の弓は、心の清らかなものでしか引くことはできない。その弓を蓮也は見事に引き、ロビンに弓の勝負で勝った。そのことがロビンにとって予想外であった。
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