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運~金塊で鬱治療
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妹を連れて部屋に戻った未知は、まだ興奮している美衣を座らせてホットミルクを出した。
「見て。面白いものを買ったの」
物欲のない姉が珍しく楽しそうに言うので、さすがの美衣も興味を持った。
未知はダイニングから続く真っ暗なリビングの照明をつけて空間全体を明るくする。
テーブルの上に金の延べ棒が乱雑に置かれていた。
「わあ……」
まばゆい光が美衣の瞳に反射する。
「ストレス解消に買っちゃった」
がんばったご褒美にブランドバックを買ったというのと同じノリで金の延べ棒を買うとは、姉もぶっ飛んでいる。
「無駄使いじゃないですよ。金の価値はまあまあ安定しているし食べられなくなったらこれを売って食いつなぐわ」
本物の金を前に、美衣が圧倒されている。
「持ってみる?」
ソファに座って両手に延べ棒を持っている未知が、ぼうっと立っている美衣に声をかけた。
「う、うん…」
恐る恐る近づいて、未知が差し出す金を両手で包むように持ってみる。
「!…重た…」
「これで頭でも殴ったら木っ端微塵かな。鈍器のような重みだわ」
その輝いている瞳は金が放つ光のせいなのか、それとも子どものような残酷な好奇心からくるのか美衣にはわからない。
「これどうやって保管するの?」
「保管?」
「だって、強盗とか入ってきたら」
「これをあげて命乞いするわ。でもこの重さでどれだけ運べるかしら。持ち運びに不便だから紙幣になったのにね」
これを全部他人にあげる?
うちにはどれだけお金があるの?
「とりあえずそこ」
未知が指差す方向に本棚があり金が本を支えていた。
絶対使い方間違ってる。呆れてゆがんだ笑みを浮かべて、さっきまで絶望感に溺れていたことを忘れて笑った。
「美衣もいくつか持ってなさい」
「え、重いし…」
「じゃ、ここで預かっておくね」
そう言って未知は油性ペンのふたを開けた。
「やめてやめて書かないで恥ずかしい」
金の延べ棒に名前を書かれそうになったのを、姉の腕を掴んで止めた。
いつも真顔な姉なので、本気なのか冗談なのかわからない。ただどちらにしても名前を書かれるのは困る。
一生遊んで暮らせるお金があるのに見えない何かに不安で、いつも死にたいと思っている不安定な妹に、非現実的な環境を作って、退屈しないように、日常をテーマパークにするように。もちろんゆっくり休養もさせて。
それしか今の未知には思いつかなかった。
薄暗い部屋で美加がスマホを置く。
絶望しかないという顔をしていた美衣から電話がかかってきた。
姉の部屋でおもしろい事でもあったのか、彼女は明るい声で笑っていた。
なぜ未知に出来ることが自分にできないのだろう。
妹ひとりのために、どんな魔法を使ったのやら。
その魔法はどうやったら手に入るの?
美衣よりはましだと妹を下に見ていたから自分の感情は安定していた。
それがいなくなったら今度は自分が姉への劣等感で情緒不安定になる。
むしゃくしゃする。
飲みにでも行ってストレス発散しようと思って、ふと足を止めた。
『金子』の一族。
厄介者と思われていることを知った今、外に出るのをためらう。
そして未知からもらったはずの金の入った封筒が見当たらなくて美加は血の気が引いた。
「見て。面白いものを買ったの」
物欲のない姉が珍しく楽しそうに言うので、さすがの美衣も興味を持った。
未知はダイニングから続く真っ暗なリビングの照明をつけて空間全体を明るくする。
テーブルの上に金の延べ棒が乱雑に置かれていた。
「わあ……」
まばゆい光が美衣の瞳に反射する。
「ストレス解消に買っちゃった」
がんばったご褒美にブランドバックを買ったというのと同じノリで金の延べ棒を買うとは、姉もぶっ飛んでいる。
「無駄使いじゃないですよ。金の価値はまあまあ安定しているし食べられなくなったらこれを売って食いつなぐわ」
本物の金を前に、美衣が圧倒されている。
「持ってみる?」
ソファに座って両手に延べ棒を持っている未知が、ぼうっと立っている美衣に声をかけた。
「う、うん…」
恐る恐る近づいて、未知が差し出す金を両手で包むように持ってみる。
「!…重た…」
「これで頭でも殴ったら木っ端微塵かな。鈍器のような重みだわ」
その輝いている瞳は金が放つ光のせいなのか、それとも子どものような残酷な好奇心からくるのか美衣にはわからない。
「これどうやって保管するの?」
「保管?」
「だって、強盗とか入ってきたら」
「これをあげて命乞いするわ。でもこの重さでどれだけ運べるかしら。持ち運びに不便だから紙幣になったのにね」
これを全部他人にあげる?
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「美衣もいくつか持ってなさい」
「え、重いし…」
「じゃ、ここで預かっておくね」
そう言って未知は油性ペンのふたを開けた。
「やめてやめて書かないで恥ずかしい」
金の延べ棒に名前を書かれそうになったのを、姉の腕を掴んで止めた。
いつも真顔な姉なので、本気なのか冗談なのかわからない。ただどちらにしても名前を書かれるのは困る。
一生遊んで暮らせるお金があるのに見えない何かに不安で、いつも死にたいと思っている不安定な妹に、非現実的な環境を作って、退屈しないように、日常をテーマパークにするように。もちろんゆっくり休養もさせて。
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むしゃくしゃする。
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