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家族旅行(9)
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そう。そこにいたのは、会いたかったけど、会いたくなかった隼人だった。
「「あっ。」」
お互い気まずく、上手く言葉が出てこない。
しかし、このままにする訳にもいかず、勇気を持って話しかけることにした。
「隼人も京都に来ていたんですね。偶然ですね。」
「本当に・・・。怪我したって聞いたけど大丈夫なのか?」
「もう問題ないと思います。」
「そっか。よかった。1人で何してるんだ?」
「あー。迷子になっちゃって、どうしようかと思っているところでした。」
「・・・。はぁー。家族で来てんの?それなら、聖也さんに連絡とったら?」
とても呆れた顔をされてしまった。私だって迷子になりたくてなった訳じゃないのに、面倒くさそうにしなくても良いのに。
「携帯の充電が切れてしまったんです。」
「・・・。」
「メイドの充電器を借りようと思っていたんですが、そのメイド共離れてしまったので・・・。」
隼人はもう一度ため息をつき何処かに電話をし出した。
「もしもし。天音 隼人です。はい。偶然出会いまして。どこに連れて行けば良いですか?大分離れてしまっているので、その近くのカフェででも休んでもらっていれば大丈夫です。はい。では。」
ブッチ、と電話が切れる音がした。隼人が手を出してくる。
つかまっても良いのだろうか。彼女がいるのであれば、他の女性と手を繋いでいるところを見られたら大変なんじゃないだろうか。いや。隼人にとって私は友達以上の存在にはなれないから、そんな些細なことを気にしていないのかもしれない。
「んっ。ほら行くぞ。」
と、強引に私の手を握り歩き出す。しかし、隼人はぶつかった時に急いでいると言っていなかっただろうか?これ以上迷惑をかけて呆れられたくないと思った。
「隼人急いでたんじゃないですか?私なら大丈夫なので、そちらに行ってもらって大丈夫です。」
隼人はこっちを見てギロッと睨み、
「馬鹿。用事はなんとかなるんだよ。それより有紗の方が大切だろ。ごちゃごちゃ言ってないで足を動かせ。」
と軽く頭をはたかれた。隼人は向き直り、歩みを進める。
無言で歩いている為最初は気まずさがまさっていたものの、慣れてくれば落ち着いてきた。
後ろ姿の隼人を見て、もうすっかり男の人みたいだと思った。なんだかんだと無愛想で、身内以外には興味が無いし優しくもない隼人だが、一度内側に入れた人にはとても尽くしてくれる。
そう思うと今の私よりも、ゲームの中の私の方が先見の明があったのだと思う。確かに、こんなに良い男になるのであれば、手放したくないし自分の隣にずっといて欲しいと思ってしまうのも仕方のないことだったのかもしれない。
私はゲームの中の私の失敗があるからなんとか断罪エンドから逃れられそうだと思っている。今油断して好きになってしまっては今までの努力も、ゲームの中の私の人生をも無駄にしてしまうことになってしまうと思う。
隼人に彼女が出来たのであれば、私は喜んで応援しなくてはいけない。そう自分に言い聞かせた。
待ち合わせの場所の近くにまで来たようだ。隼人は本当に急いでいるらしく、お兄様には合わずに行ってしまうそうだ。
「そういえば、有紗って亮さんと仲良いの?」
亮さん??亮さんとは会ったのは3回だけだが、メッセージをやり取りする中だ。そう思うと、友達の少ない私としては、わりと仲が良い方だと思うので、そのまま返事した。
「わりと仲良い方だと思います。」
「そっか。」
と意味ありげな、少し悲しげな顔をして隼人は立ち去って行った。
私は看板の見えている集合場所の喫茶店まで歩いて行き、無事にお兄様と歌恋と合流することができた。気付かなかったことの謝罪をされた後、集合場所から動かないこと、もう少し自分が方向音痴であることを自覚しなさいと怒られたのであった。
そんなこんなで私たちの家族旅行は無事に?終了したのであった。
「「あっ。」」
お互い気まずく、上手く言葉が出てこない。
しかし、このままにする訳にもいかず、勇気を持って話しかけることにした。
「隼人も京都に来ていたんですね。偶然ですね。」
「本当に・・・。怪我したって聞いたけど大丈夫なのか?」
「もう問題ないと思います。」
「そっか。よかった。1人で何してるんだ?」
「あー。迷子になっちゃって、どうしようかと思っているところでした。」
「・・・。はぁー。家族で来てんの?それなら、聖也さんに連絡とったら?」
とても呆れた顔をされてしまった。私だって迷子になりたくてなった訳じゃないのに、面倒くさそうにしなくても良いのに。
「携帯の充電が切れてしまったんです。」
「・・・。」
「メイドの充電器を借りようと思っていたんですが、そのメイド共離れてしまったので・・・。」
隼人はもう一度ため息をつき何処かに電話をし出した。
「もしもし。天音 隼人です。はい。偶然出会いまして。どこに連れて行けば良いですか?大分離れてしまっているので、その近くのカフェででも休んでもらっていれば大丈夫です。はい。では。」
ブッチ、と電話が切れる音がした。隼人が手を出してくる。
つかまっても良いのだろうか。彼女がいるのであれば、他の女性と手を繋いでいるところを見られたら大変なんじゃないだろうか。いや。隼人にとって私は友達以上の存在にはなれないから、そんな些細なことを気にしていないのかもしれない。
「んっ。ほら行くぞ。」
と、強引に私の手を握り歩き出す。しかし、隼人はぶつかった時に急いでいると言っていなかっただろうか?これ以上迷惑をかけて呆れられたくないと思った。
「隼人急いでたんじゃないですか?私なら大丈夫なので、そちらに行ってもらって大丈夫です。」
隼人はこっちを見てギロッと睨み、
「馬鹿。用事はなんとかなるんだよ。それより有紗の方が大切だろ。ごちゃごちゃ言ってないで足を動かせ。」
と軽く頭をはたかれた。隼人は向き直り、歩みを進める。
無言で歩いている為最初は気まずさがまさっていたものの、慣れてくれば落ち着いてきた。
後ろ姿の隼人を見て、もうすっかり男の人みたいだと思った。なんだかんだと無愛想で、身内以外には興味が無いし優しくもない隼人だが、一度内側に入れた人にはとても尽くしてくれる。
そう思うと今の私よりも、ゲームの中の私の方が先見の明があったのだと思う。確かに、こんなに良い男になるのであれば、手放したくないし自分の隣にずっといて欲しいと思ってしまうのも仕方のないことだったのかもしれない。
私はゲームの中の私の失敗があるからなんとか断罪エンドから逃れられそうだと思っている。今油断して好きになってしまっては今までの努力も、ゲームの中の私の人生をも無駄にしてしまうことになってしまうと思う。
隼人に彼女が出来たのであれば、私は喜んで応援しなくてはいけない。そう自分に言い聞かせた。
待ち合わせの場所の近くにまで来たようだ。隼人は本当に急いでいるらしく、お兄様には合わずに行ってしまうそうだ。
「そういえば、有紗って亮さんと仲良いの?」
亮さん??亮さんとは会ったのは3回だけだが、メッセージをやり取りする中だ。そう思うと、友達の少ない私としては、わりと仲が良い方だと思うので、そのまま返事した。
「わりと仲良い方だと思います。」
「そっか。」
と意味ありげな、少し悲しげな顔をして隼人は立ち去って行った。
私は看板の見えている集合場所の喫茶店まで歩いて行き、無事にお兄様と歌恋と合流することができた。気付かなかったことの謝罪をされた後、集合場所から動かないこと、もう少し自分が方向音痴であることを自覚しなさいと怒られたのであった。
そんなこんなで私たちの家族旅行は無事に?終了したのであった。
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