3 / 5
Side:王太子
しおりを挟む
災害が止まらない。
あの忌々しい婚約者候補、卑しい闇属性の魔女が突如として出奔し居なくなったことに喜んでいたのも束の間、王国には未曾有の大災害が次々と起こっていた。
旱魃が起こり、今年の収穫は危機的状況であるという報告が来たかと思えば、今度はやれ土砂崩れが起きた、竜巻で作物がやられた。地震で辺境伯家の屋敷が倒壊したと多量の報告が上がってくる。
一体全体何が起こっているのか、まるでわからない。
「殿下! 殿下! 大変です。魔術師団より、睡眠による魔力の回復が起こらなくなったと報告が!」
「なんだと!? どういうことだ!」
「今までは一晩眠れば全快していた魔力が、眠っても元に戻らなくなったというのです! 食事からの魔力回復は維持されているようですが、そのような方法では全回復まで5日ほどかかるとのことで」
「なんだと! それでは土砂崩れの修繕はどうするのだ!」
「遅々として進んでいない状況です」
ただでさえ国中が混乱の只中にあるというのに、その上魔術師が使い物にならないとなれば、もはや災害を復興する術すらも失われることになる。
一体何が起きているのか。宰相があちらこちらの学者に問い合わせたところ、新たなる報告が上がってきた。
「国中の精霊が居なくなっている、だと!?」
「はい。光の精霊と話ができる加護持ちによりますと、闇の精霊の愛し子を苦しめたことで闇精霊に見放され、光の精霊以外の他の精霊たちも尊重されないことから、この国を出ていったと」
「闇精霊の愛し子……まさか!」
あの闇属性の卑しい魔女のことか?
たかが舞踏会の席で、結婚するつもりはないと宣言しただけで苦しめた扱いだと?
冗談じゃない! そのようなことで国に災害を起こされてたまるか!
「今すぐネロリアを探し出して連れ戻せ!」
「ですが、どこにいるかもわからず。それに闇精霊の愛し子を連れ戻すというのは、本人の意思で出奔したのならば難しいのでは……」
「やかましい! 国の一大事なのだぞ!」
「ですが……」
「いいからネロリアを連れ戻せ!」
あの忌々しい魔女め。どれだけ私に迷惑をかけたら気が済むのだ。
私はあまりの苛立ちに、執務室の机を叩いた。
国を挙げてネロリアを探していたところ、リュクス王国でネロリアを見かけたという報告が入ってきた。
父上は私に直々に迎えに行けと仰る。公爵家にとって扱いあぐねる存在であったネロリアを王家で引き取れば、公爵家の後ろ盾が手に入ると期待して散々私とあの魔女を結婚させようと目論んでいた父だ。
闇精霊の愛し子とやらであり、今回の災害を引き起こした原因であるネロリアを連れ戻さなければならないとなった以上、父上は以前にもまして私たちの政略結婚を推していくつもりだろう。
なぜ闇属性なんかの愛し子を尊重しなければ全ての精霊から見限られてしまうのか。あまりに理不尽な話に嫌気が差すが、国のためにそうせざるを得ないなら仕方がない。
ネロリアは、私が側室でも娶るのは嫌だと言ったから拗ねて出ていったのだろう。結婚してやると言えば戻ってくるに違いない。
闇属性の魔女など嫌でしょうがないが、ネロリアをお飾りの妻として、正式な妻は側室に置けばよいか。
さあ、国のため、ネロリアを迎えにリュクス王国へ出立しよう。
あの忌々しい婚約者候補、卑しい闇属性の魔女が突如として出奔し居なくなったことに喜んでいたのも束の間、王国には未曾有の大災害が次々と起こっていた。
旱魃が起こり、今年の収穫は危機的状況であるという報告が来たかと思えば、今度はやれ土砂崩れが起きた、竜巻で作物がやられた。地震で辺境伯家の屋敷が倒壊したと多量の報告が上がってくる。
一体全体何が起こっているのか、まるでわからない。
「殿下! 殿下! 大変です。魔術師団より、睡眠による魔力の回復が起こらなくなったと報告が!」
「なんだと!? どういうことだ!」
「今までは一晩眠れば全快していた魔力が、眠っても元に戻らなくなったというのです! 食事からの魔力回復は維持されているようですが、そのような方法では全回復まで5日ほどかかるとのことで」
「なんだと! それでは土砂崩れの修繕はどうするのだ!」
「遅々として進んでいない状況です」
ただでさえ国中が混乱の只中にあるというのに、その上魔術師が使い物にならないとなれば、もはや災害を復興する術すらも失われることになる。
一体何が起きているのか。宰相があちらこちらの学者に問い合わせたところ、新たなる報告が上がってきた。
「国中の精霊が居なくなっている、だと!?」
「はい。光の精霊と話ができる加護持ちによりますと、闇の精霊の愛し子を苦しめたことで闇精霊に見放され、光の精霊以外の他の精霊たちも尊重されないことから、この国を出ていったと」
「闇精霊の愛し子……まさか!」
あの闇属性の卑しい魔女のことか?
たかが舞踏会の席で、結婚するつもりはないと宣言しただけで苦しめた扱いだと?
冗談じゃない! そのようなことで国に災害を起こされてたまるか!
「今すぐネロリアを探し出して連れ戻せ!」
「ですが、どこにいるかもわからず。それに闇精霊の愛し子を連れ戻すというのは、本人の意思で出奔したのならば難しいのでは……」
「やかましい! 国の一大事なのだぞ!」
「ですが……」
「いいからネロリアを連れ戻せ!」
あの忌々しい魔女め。どれだけ私に迷惑をかけたら気が済むのだ。
私はあまりの苛立ちに、執務室の机を叩いた。
国を挙げてネロリアを探していたところ、リュクス王国でネロリアを見かけたという報告が入ってきた。
父上は私に直々に迎えに行けと仰る。公爵家にとって扱いあぐねる存在であったネロリアを王家で引き取れば、公爵家の後ろ盾が手に入ると期待して散々私とあの魔女を結婚させようと目論んでいた父だ。
闇精霊の愛し子とやらであり、今回の災害を引き起こした原因であるネロリアを連れ戻さなければならないとなった以上、父上は以前にもまして私たちの政略結婚を推していくつもりだろう。
なぜ闇属性なんかの愛し子を尊重しなければ全ての精霊から見限られてしまうのか。あまりに理不尽な話に嫌気が差すが、国のためにそうせざるを得ないなら仕方がない。
ネロリアは、私が側室でも娶るのは嫌だと言ったから拗ねて出ていったのだろう。結婚してやると言えば戻ってくるに違いない。
闇属性の魔女など嫌でしょうがないが、ネロリアをお飾りの妻として、正式な妻は側室に置けばよいか。
さあ、国のため、ネロリアを迎えにリュクス王国へ出立しよう。
669
あなたにおすすめの小説
結婚前夜、花嫁は静かに笑う
矢野りと
恋愛
番との愛は神聖なもの。何人たりともそれを侵すことなど許されない。
――美しくも尊い、永遠の愛。
番との愛を優先するのは暗黙の了解。幼子さえ知っている、その不文律を破ろうとする愚か者はいない。
――というのなら、その愛に従って幸せになってもらいましょう。
※明るい話ではありませんので、苦手な方はお気をつけください(._.)
なんでも私のせいにする姉に婚約者を奪われました。分かり合えることはなさそうなので、姉妹の関係を終わらせようと思います。
冬吹せいら
恋愛
侯爵家令嬢のミゼス・ワグナーは、何かあるとすぐに妹のリズのせいにして八つ当たりをした。
ある日ミゼスは、リズの態度に腹を立て、婚約者を奪おうとする。
リズはこれまで黙って耐えていた分、全てやり返すことにした……。
〖完結〗親友だと思っていた彼女が、私の婚約者を奪おうとしたのですが……
藍川みいな
恋愛
大好きな親友のマギーは、私のことを親友だなんて思っていなかった。私は引き立て役だと言い、私の婚約者を奪ったと告げた。
婚約者と親友をいっぺんに失い、失意のどん底だった私に、婚約者の彼から贈り物と共に手紙が届く。
その手紙を読んだ私は、婚約発表が行われる会場へと急ぐ。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
前編後編の、二話で完結になります。
小説家になろう様にも投稿しています。
〖完結〗愛しているから、あなたを愛していないフリをします。
藍川みいな
恋愛
ずっと大好きだった幼なじみの侯爵令息、ウォルシュ様。そんなウォルシュ様から、結婚をして欲しいと言われました。
但し、条件付きで。
「子を産めれば誰でもよかったのだが、やっぱり俺の事を分かってくれている君に頼みたい。愛のない結婚をしてくれ。」
彼は、私の気持ちを知りません。もしも、私が彼を愛している事を知られてしまったら捨てられてしまう。
だから、私は全力であなたを愛していないフリをします。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全7話で完結になります。
婚約破棄をされるのですね、そのお相手は誰ですの?
綴
恋愛
フリュー王国で公爵の地位を授かるノースン家の次女であるハルメノア・ノースン公爵令嬢が開いていた茶会に乗り込み突如婚約破棄を申し出たフリュー王国第二王子エザーノ・フリューに戸惑うハルメノア公爵令嬢
この婚約破棄はどうなる?
ザッ思いつき作品
恋愛要素は薄めです、ごめんなさい。
〖完結〗旦那様はどうしようもないですね。
藍川みいな
恋愛
愛人を作り、メイドにまで手を出す旦那様。
我慢の限界を迎えた時、旦那様から離婚だ! 出て行け! と言われました。
この邸はお父様のものですが?
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全3話で完結になります。
婚約破棄ですか……。……あの、契約書類は読みましたか?
冬吹せいら
恋愛
伯爵家の令息――ローイ・ランドルフは、侯爵家の令嬢――アリア・テスタロトと婚約を結んだ。
しかし、この婚約の本当の目的は、伯爵家による侯爵家の乗っ取りである。
侯爵家の領地に、ズカズカと進行し、我がもの顔で建物の建設を始める伯爵家。
ある程度領地を蝕んだところで、ローイはアリアとの婚約を破棄しようとした。
「おかしいと思いませんか? 自らの領地を荒されているのに、何も言わないなんて――」
アリアが、ローイに対して、不気味に語り掛ける。
侯爵家は、最初から気が付いていたのだ。
「契約書類は、ちゃんと読みましたか?」
伯爵家の没落が、今、始まろうとしている――。
ムカつく悪役令嬢の姉を無視していたら、いつの間にか私が聖女になっていました。
冬吹せいら
恋愛
侯爵令嬢のリリナ・アルシアルには、二歳上の姉、ルルエがいた。
ルルエはことあるごとに妹のリリナにちょっかいをかけている。しかし、ルルエが十歳、リリナが八歳になったある日、ルルエの罠により、酷い怪我を負わされたリリナは、ルルエのことを完全に無視することにした。
そして迎えた、リリナの十四歳の誕生日。
長女でありながら、最低級の適性を授かった、姉のルルエとは違い、聖女を授かったリリナは……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる