【本編完結】美女と魔獣〜筋肉大好き令嬢がマッチョ騎士と婚約? ついでに国も救ってみます〜

松浦どれみ

文字の大きさ
51 / 230
第二章 王都にお引越し! クラスメイトは王子様

52、オリビアVSレオン2

しおりを挟む
「そう。この古代魔法研究クラブなんだけど、もちろん今はメンバーが一人もいない。クラブとして認められるためには加入生徒が三名以上必要だから君たち二人の名前を貸してほしくて。僕の護衛たちは生徒じゃないから……」

 レオンが少し困ったような表情でオリビアの顔を覗き込んだ。
 彼に関わるのは良くないが、クラブに名前だけ貸すなら他のクラブからの勧誘も断りやすいし煩わしい思いをしなくていい。
 さらには彼に恩を売ることができるのではないかと、頭の中でデメリットよりメリットが勝った。

「名前だけということでしたら構いません。ジョージもいいわね?」

「はい。お嬢様がいいならいいですよ」

「オリビア嬢、ヘマタイト君、ありがとう!」

 オリビアとジョージの返事に、レオンは満面の笑みで喜びを表現していた。
 そして「早速だけどこれに記入してね」と入部届を差し出した。オリビアはジョージと入部届にサインし、レオンに返す。

「これで入部決定だね。オリバー、急いで職員室に持って行って」

 レオンが入部届を護衛のオリバーに渡すと「かしこまりました」と言って彼は外へ向かった。その背中を見送り、今度はオリビアに視線を移して微笑み、金色の簡素なつくりの鍵を手渡した。

「さあ、これで僕たち三人は古代魔法研究クラブのメンバーだ。あ、まずはこれ教室の鍵だから好きな時に使ってね。名前貸しの君たちは週に一回の会議の時だけ集まってくれればいいよ。これからよろしくね!」

「え? 週に一回?」

 聞き捨てならない言葉にオリビアは思わず眉を顰めた。

 クラブによっては毎日のところもあるが、ほとんどが週に二回程度のところがほとんどだった。これではあまり他のクラブと変わらない上に、毎週放課後に彼に質問攻めにされる可能性もあり不安だ。

 そんなことを考えていると、レオンが何かを見透かすように小さく息を漏らして微笑する。

「来てくれるだけでいいから。仕事があるならこの部屋でしてくれて構わないよ。もちろん、お礼も考えているよ」

「お礼ですか?」

 途端にオリビアの目が輝いた。商売をしているせいか損得勘定が働きやすく、得になりそうな話には食いついてしまう癖があった。貴族の令嬢としてはいささか恥ずかしい癖である。

「そう。オリビア嬢は王都でも店を経営したいんだよね? 王都での出店は貴族院の担当者が許可しないといけないんだけど、場所や出店内容によっては他の後ろ盾も必要になるんだ。けどアレキサンドライト家の後ろ盾は正式に結婚するまでは難しい。だから僕が友人としてその後ろ盾になるよ。それなら君の変わった趣向の飲食店なんかも王都のどこにでも出店できるはずだよ。どうかな?」

 オリビアは大きなため息を吐いた。
 お礼などと言いながらも、後ろ盾がないと執事喫茶などの奇抜な店舗は出店できないと脅されているのだ。

 これで強制的にクラブ活動に参加するしかなくなった。彼の「お願い」はそのための罠だったのだ。

「わかりました。週に一回は参加いたします」

 返事をするオリビアの唇は小さく震えていた。レオンは「よろしくね」と言って笑みを深めた。その余裕さえもオリビアには悔しくてしょうがない。

 五歳年上の兄と対等の立場で店を経営し、領地の制度の見直しもして、部下の雇用についても様々な改革を行ってきた。その結果領地が観光地としても注目され始めた。自分も一人の商売人として、大人とでも充分に渡り合っていけると思っていた。

 しかし今、王子とはいえ同級生に完全に負かされたのだ。この駆け引きにおいて、彼の方が一枚も二枚も上手だったことが本当に悔しかった。

>>続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は反省しない!

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢リディス・アマリア・フォンテーヌは18歳の時に婚約者である王太子に婚約破棄を告げられる。その後馬車が事故に遭い、気づいたら神様を名乗る少年に16歳まで時を戻されていた。 性格を変えてまで王太子に気に入られようとは思わない。同じことを繰り返すのも馬鹿らしい。それならいっそ魔界で頂点に君臨し全ての国を支配下に置くというのが、良いかもしれない。リディスは決意する。魔界の皇子を私の美貌で虜にしてやろうと。

田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜

侑子
恋愛
「リーシャ。僕がどれだけ君に会いたかったかわかる? 一人前と認められるまで魔塔から出られないのは知っていたけど、まさか七年もかかるなんて思っていなくて、リーシャに会いたくて死ぬかと思ったよ」  十五歳の時、父が作った借金のために、いつ魔力暴走を起こすかわからない危険な第二王子のお世話係をしていたリーシャ。  弟と同じ四つ年下の彼は、とても賢くて優しく、可愛らしい王子様だった。  お世話をする内に仲良くなれたと思っていたのに、彼はある日突然、世界最高の魔法使いたちが集うという魔塔へと旅立ってしまう。  七年後、二十二歳になったリーシャの前に現れたのは、成長し、十八歳になって成人した彼だった!  以前とは全く違う姿に戸惑うリーシャ。  その上、七年も音沙汰がなかったのに、彼は昔のことを忘れていないどころか、とんでもなく甘々な態度で接してくる。  一方、自分の息子ではない第二王子を疎んで幽閉状態に追い込んでいた王妃は、戻ってきた彼のことが気に入らないようで……。

転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました

空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。 結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。 転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。 しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……! 「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」 農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。 「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」 ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

【完結】後宮の片隅にいた王女を拾いましたが、才女すぎて妃にしたくなりました

藤原遊
恋愛
【溺愛・成長・政略・糖度高め】 ※ヒーロー目線で進んでいきます。 王位継承権を放棄し、外交を司る第六王子ユーリ・サファイア・アレスト。 ある日、後宮の片隅でひっそりと暮らす少女――カティア・アゲート・アレストに出会う。 不遇の生まれながらも聡明で健気な少女を、ユーリは自らの正妃候補として引き取る決断を下す。 才能を開花させ成長していくカティア。 そして、次第に彼女を「妹」としてではなく「たった一人の妃」として深く愛していくユーリ。 立場も政略も超えた二人の絆が、やがて王宮の静かな波紋を生んでいく──。 「私はもう一人ではありませんわ、ユーリ」 「これからも、私の隣には君がいる」 甘く静かな後宮成長溺愛物語、ここに開幕。

見た目は子供、頭脳は大人。 公爵令嬢セリカ

しおしお
恋愛
四歳で婚約破棄された“天才幼女”―― 今や、彼女を妻にしたいと王子が三人。 そして隣国の国王まで参戦!? 史上最大の婿取り争奪戦が始まる。 リュミエール王国の公爵令嬢セリカ・ディオールは、幼い頃に王家から婚約破棄された。 理由はただひとつ。 > 「幼すぎて才能がない」 ――だが、それは歴史に残る大失策となる。 成長したセリカは、領地を空前の繁栄へ導いた“天才”として王国中から称賛される存在に。 灌漑改革、交易路の再建、魔物被害の根絶…… 彼女の功績は、王族すら遠く及ばないほど。 その名声を聞きつけ、王家はざわついた。 「セリカに婿を取らせる」 父であるディオール公爵がそう発表した瞬間―― なんと、三人の王子が同時に立候補。 ・冷静沈着な第一王子アコード ・誠実温和な第二王子セドリック ・策略家で負けず嫌いの第三王子シビック 王宮は“セリカ争奪戦”の様相を呈し、 王子たちは互いの足を引っ張り合う始末。 しかし、混乱は国内だけでは終わらなかった。 セリカの名声は国境を越え、 ついには隣国の―― 国王まで本人と結婚したいと求婚してくる。 「天才で可愛くて領地ごと嫁げる?  そんな逸材、逃す手はない!」 国家の威信を賭けた婿争奪戦は、ついに“国VS国”の大騒動へ。 当の本人であるセリカはというと―― 「わたし、お嫁に行くより……お昼寝のほうが好きなんですの」 王家が焦り、隣国がざわめき、世界が動く。 しかしセリカだけはマイペースにスイーツを作り、お昼寝し、領地を救い続ける。 これは―― 婚約破棄された天才令嬢が、 王国どころか国家間の争奪戦を巻き起こしながら 自由奔放に世界を変えてしまう物語。

キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる

藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。 将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。 入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。 セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。 家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。 得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。

処理中です...