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俺から見た君は
喧嘩
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◇
放課後になり、俺は帰宅準備をすると一直線に夏樹の席へと向かう。
「それじゃ、行こうか夏樹。」
「あ‥うん!」
先手必勝。文句言われる前にさっさと離れちまおう。
「ええっと‥ほんなら、俺らも行く?」
気まずそうな鈴鹿が、両方に視線を行き来させて、苦笑いしながらそう言った。助かるよ鈴鹿。悪いな。
「‥」
「そ、そうだね‥!」
必死で笑顔を作る八谷に一瞬視線を向けて、何事もなかったかのようにニコリと夏樹に笑いかけた。
夏樹は俺の顔を見て少し安心したのか、頼りないながらに微笑む。
全部が全部気が晴れることはないだろうけど、せめて夏樹が楽しめたらいいな。
「映画館って3駅先のモールのとこだよな?」
「うん、最近できたとこだから、綺麗らしいよ。」
2人で教室を出ようとしたところで、背後からガツガツと足音が聞こえて、がしりと腕を掴まれた。
しつこいなもう‥
俺はその主に目をやる。
「待てよ‥早川」
「なに?スナどうしたの?」
「どうしたじゃねえだろ。雰囲気悪りぃんだよ‥わざわざ別れる必要あんのか?一緒に行けばいいだろうが」
そんなの、片思い中の俺らからしたら地獄なんだって。好きな人と自覚した相手の馴れ初めなんて見たくないし。
「ごめんね。今日は夏樹と2人で行きたいんだ。」
「‥は?だからなんで」
「なんでって‥人間そういう気分の時もあんじゃん?別にスナにとって特別な日じゃないんだろ?ならよくね?」
俺はなんでもないように答えられているだろうか。さっきからうまく笑顔が作れない。
「それは‥ッ‥つうか、俺らはダチ同士だし、行きてえ奴いんなら1人や2人変わらねえだろ‥」
どの口が言ってるんだが。誰かさんのことを友達以上に意識してるくせに。
これが本当に友達思いの奴の発言なら俺だってここまでしないさ。
「そっか。」
「あぁ‥だから、さっさと全員で行くぞ。」
「はぁ‥話聞けよ。俺はお前の都合のいい召使いか。」
「は!?てめえ今何つった!?」
カッと目を見開いたスナが、俺の胸ぐらを掴む。
「ちょっとちょっと!やめてよ今から遊びに行く雰囲気ちゃうって‥どうしたん2人とも‥」
「‥少しこのまぬけにイラついただけだよ。離して?制服シワになっちゃうじゃん」
「ッ、くそ、もういい‥勝手にしろ」
「あーもう!スナくん待って!はぁ‥早川くんって‥そんな話し方やっけ‥なんか今日別人みたいやで‥」
スナが苛立った様子で俺の首元を離す。制服を整えながら、鈴鹿の言葉でスナの親友としての演技が解けていたことに気づき苦笑いを浮かべた。
「そう‥?これが普通なんだけどな‥夏樹、時間指定あるんでしょ?そろそろ行こう。」
「う、うん」
俺は怯える表情の夏樹の手を引いて教室を出る。背後でスナの舌打ちが聞こえたけど気にしない。後で八谷にでも慰めて貰えばいい。
「ごめんね夏樹。本当はスナと行きたかったよね」
「ううん。大丈夫だよ早川。ありがとう‥助かった。俺ね、気づいちゃったから、早川がいなかったら、最低な事言っちゃうところだった‥。」
廊下を歩きながらシュンと俯く夏樹を見つめる。感謝なんてしなくていい。俺のせいだ。知っていたのに、夏樹を使って邪魔をしようとしたから。
「‥」
あーあ、スナに嫌われたかな俺。まあ、それはそれで諦めがつくのかな。
「スナは‥優しくて、俺が困ってるといつも助けてくれたんだ。だから、ちょっと勘違いしちゃってた‥馬鹿みたいだよね‥」
それめっちゃ分かるわ~。俺も自分のこと好きなんじゃないかって恥ずかしい勘違いしてたよ。
「そっか」
「‥うん」
なんだか泣きそうな夏樹の頭に手を伸ばす。大丈夫だ。夏樹は勇気があってちゃんとスナを誘って頑張ってた。凄い奴だよ。
「なら!今日は嫌な事吹っ飛ぶぐらい、2人でめいいっぱい楽しもうぜ!」
俺はテンションを上げて、夏樹にグータッチの手を伸ばす。
「ッ!ふふ、そうだね。よーし!今日は楽しむぞ!」
「おう!」
コツンっと夏樹が拳を合わせてきて、あまりの勢いに少し痛くてお互い笑い合った。
放課後になり、俺は帰宅準備をすると一直線に夏樹の席へと向かう。
「それじゃ、行こうか夏樹。」
「あ‥うん!」
先手必勝。文句言われる前にさっさと離れちまおう。
「ええっと‥ほんなら、俺らも行く?」
気まずそうな鈴鹿が、両方に視線を行き来させて、苦笑いしながらそう言った。助かるよ鈴鹿。悪いな。
「‥」
「そ、そうだね‥!」
必死で笑顔を作る八谷に一瞬視線を向けて、何事もなかったかのようにニコリと夏樹に笑いかけた。
夏樹は俺の顔を見て少し安心したのか、頼りないながらに微笑む。
全部が全部気が晴れることはないだろうけど、せめて夏樹が楽しめたらいいな。
「映画館って3駅先のモールのとこだよな?」
「うん、最近できたとこだから、綺麗らしいよ。」
2人で教室を出ようとしたところで、背後からガツガツと足音が聞こえて、がしりと腕を掴まれた。
しつこいなもう‥
俺はその主に目をやる。
「待てよ‥早川」
「なに?スナどうしたの?」
「どうしたじゃねえだろ。雰囲気悪りぃんだよ‥わざわざ別れる必要あんのか?一緒に行けばいいだろうが」
そんなの、片思い中の俺らからしたら地獄なんだって。好きな人と自覚した相手の馴れ初めなんて見たくないし。
「ごめんね。今日は夏樹と2人で行きたいんだ。」
「‥は?だからなんで」
「なんでって‥人間そういう気分の時もあんじゃん?別にスナにとって特別な日じゃないんだろ?ならよくね?」
俺はなんでもないように答えられているだろうか。さっきからうまく笑顔が作れない。
「それは‥ッ‥つうか、俺らはダチ同士だし、行きてえ奴いんなら1人や2人変わらねえだろ‥」
どの口が言ってるんだが。誰かさんのことを友達以上に意識してるくせに。
これが本当に友達思いの奴の発言なら俺だってここまでしないさ。
「そっか。」
「あぁ‥だから、さっさと全員で行くぞ。」
「はぁ‥話聞けよ。俺はお前の都合のいい召使いか。」
「は!?てめえ今何つった!?」
カッと目を見開いたスナが、俺の胸ぐらを掴む。
「ちょっとちょっと!やめてよ今から遊びに行く雰囲気ちゃうって‥どうしたん2人とも‥」
「‥少しこのまぬけにイラついただけだよ。離して?制服シワになっちゃうじゃん」
「ッ、くそ、もういい‥勝手にしろ」
「あーもう!スナくん待って!はぁ‥早川くんって‥そんな話し方やっけ‥なんか今日別人みたいやで‥」
スナが苛立った様子で俺の首元を離す。制服を整えながら、鈴鹿の言葉でスナの親友としての演技が解けていたことに気づき苦笑いを浮かべた。
「そう‥?これが普通なんだけどな‥夏樹、時間指定あるんでしょ?そろそろ行こう。」
「う、うん」
俺は怯える表情の夏樹の手を引いて教室を出る。背後でスナの舌打ちが聞こえたけど気にしない。後で八谷にでも慰めて貰えばいい。
「ごめんね夏樹。本当はスナと行きたかったよね」
「ううん。大丈夫だよ早川。ありがとう‥助かった。俺ね、気づいちゃったから、早川がいなかったら、最低な事言っちゃうところだった‥。」
廊下を歩きながらシュンと俯く夏樹を見つめる。感謝なんてしなくていい。俺のせいだ。知っていたのに、夏樹を使って邪魔をしようとしたから。
「‥」
あーあ、スナに嫌われたかな俺。まあ、それはそれで諦めがつくのかな。
「スナは‥優しくて、俺が困ってるといつも助けてくれたんだ。だから、ちょっと勘違いしちゃってた‥馬鹿みたいだよね‥」
それめっちゃ分かるわ~。俺も自分のこと好きなんじゃないかって恥ずかしい勘違いしてたよ。
「そっか」
「‥うん」
なんだか泣きそうな夏樹の頭に手を伸ばす。大丈夫だ。夏樹は勇気があってちゃんとスナを誘って頑張ってた。凄い奴だよ。
「なら!今日は嫌な事吹っ飛ぶぐらい、2人でめいいっぱい楽しもうぜ!」
俺はテンションを上げて、夏樹にグータッチの手を伸ばす。
「ッ!ふふ、そうだね。よーし!今日は楽しむぞ!」
「おう!」
コツンっと夏樹が拳を合わせてきて、あまりの勢いに少し痛くてお互い笑い合った。
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