【完結】恋した君は別の誰かが好きだから

海月 ぴけ

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俺から見た君は

新しい日常

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「おはよ、!」

朝、教室に入ると、夏樹が笑顔で駆け寄ってきた。

珍しいものを見るようなクラスメイトの反応に少し戸惑ったが、俺は意を決して足を進める。

「おはよう、。」

昨日、色々と2人で話し合って、仮で少しの期間付き合うことになった。

そこではじめに夏樹が提案したのがこれだ。

まずはお互い下の名前で呼び合うこと。
できるだけ一緒に行動すること。

夏樹 海なつき かい。夏生まれだからと両親がつけたらしい。中身もだが、名前までかっこいいとは。

少し気恥ずかしいけれど、夏樹が意外とノリノリで演技するものだから俺もつられて弱愛系恋人を演じる。

今この教室には付き合いたて甘々カップルの空気が漂っているだろう。

「昨日はちゃんと帰れた?」

「うん‥ありがとうね。」

俺は夏樹の頭を撫でる。
少し照れたように微笑む夏樹。わざとらしくて面白い。
なんだか2人でおかしくなって、小さく笑い合った。


ドア前、口をあんぐりと開けた鈴鹿が勢いよく近づいてくる。


「いやいや、え?なにこの甘い雰囲気‥」

「あ、おはよ、鈴鹿」

「えへへ‥おはよう」

「えへへ‥じゃないやん!絶対なんかあったやん昨日!?どういうこと?!」

ぐわんぐわんと夏樹の肩を揺らす鈴鹿。

「すず、か!目が回っちゃうよ!き、昨日はごめんね‥その、俺少し気が立ってたみたいで‥。みんなに迷惑かけちゃって。」

「っ!ええよええよー!人間そんな日もあるよな~!気にしやんとって!」

「‥うん‥ありがと鈴鹿。スナも八谷もごめんね。」

夏樹が申し訳なさそうに机で気まずそうにしていた2人に向き合う。適当に流しておけばいいのに。夏樹のこういうところ本当に尊敬するな。

「‥あぁ」

「ッ!‥俺も急にその‥参加したいなんて言って悪かったよ‥。でも!昨日スナが言ってくれたように、皆んなで行ってもよかったんじゃないかって‥思う‥。」

うん、最悪の空気。

「‥そう、だよね。ごめん。」

夏樹の手が震えていて、俺はその手を自然にぎゅっと握りしめる。パッと俺を見た夏樹がおかしそうにだんだん笑顔になって、そのまま堂々と八谷を見つめ返した。

「もう、仲直りで大丈夫だよね?」

「ッ、おう‥」

八谷は一瞬目を見開いたが、一言呟くとバツが悪そうに視線を逸らす。

穏やかな表情で八谷に睨っ、、微笑み続ける夏樹はなんだか男前だ。
夏樹ニキかっけえっす。

気まずい雰囲気の夏樹と八谷を横目に、
チラリと俺を見るスナ。俺にも謝れと言いたげだな。

俺はむかついてわざと視線を外し、空気の読めないやつに転職する。
誰が謝るかバーカバーか!俺は夏樹ほどかっこよくも大人でもないんでね!

「海、その‥今日さ、一緒に夜飯食べに行かない?昨日結局海が奢ってくれたし、今度は俺に奢らせて?」

「!ふふ、気にしなくていいのに。でも俺もまた風太と行きたいな?」

俺のデートのお誘いに照れたように口元に手を当てて花のように笑う美少年。

首をコテンと傾げる動作は、世の老若男女をメロメロにするだろう。俺もメロメロだわ。

「じゃあ決まり。何が食べたい?」

「そうだな‥」

あえて2人だけの世界に持っていく。鈴鹿は何か察知したように空気を読んで、スナと八谷に話をふる。お互い別の話題で話し始めると、次第に盛り上がって重かった空気が少しマシになった、

と思う。1人を除いては。

それでも俺を睨み続けるスナに冷や汗をかく。

喧嘩した時のスナは粘着質でしつこいのは知っているけど、ここまでくるとまるで自分が相当なことをやらかしたみたいな気になるんだよな‥。あと、普通に美形の睨みとか怖い‥。

俺は夏樹との会話でそれに気づかないふりをしながら、チャイムが鳴るまで耐えた。
席に座ると幸運なことに今日は席替えとのこと。

助かった‥あぁ、これで‥スナの前の席は終わりか。

1ヶ月、なんだかんだで長かったな‥入学したての頃はスナの前の席であんなに喜んでいたのに‥その頃の自分に、期待するなよと伝えてやりたい。

背中突き刺さる眼光を無視し、回ってきた席替え用ボックスから紙を1枚引く。

7番‥黒板に書かれた座席表だと‥今度は廊下側の真ん中辺りか。

机の中のものを片付けて、席を移ろうと立ち上がった俺は、背後から腕をがしりと掴まれて転げそうになった。

俺はその主の方に恐る恐る振り返る。

「おい‥」

「‥なに?スナ」

「‥、」

言葉を詰まらせるスナは珍しい。
そして、切なげな顔もーー。

どうしてそんな顔をしてるのスナ?何か悲しいことがあったの?大丈夫だよ、俺がずっと側にーー。


「風太!隣だぁ!すごいすごい!」

ハッとする。
俺はすぐにスナの腕を振り払い、廊下の窓際付近で俺の名前を呼ぶ夏樹の方へと向かった。

「‥、まじで?!すげぇ嬉しい!」

笑顔のまま触れられた腕に触れる。まだジンジンと熱を持っていて、温かくなる心と、とてつもなく虚しくなる感情に頭がぐちゃぐちゃだ。何度も切なげな彼の表情が頭を巡り振り向きたくなって、どうしようもない自分に嫌気がさした。

この想いはどこに捨てればいい?どこに‥
跳ねる心臓を無視して、俺は夏樹の元へと足を進めた。決して後ろを振り返らないように。


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