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俺から見た君は
心の平穏
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◇
あれから数週間経って、俺たちは順調に新しい日常を過ごしている。
2人で行動するようになり必然的にスナや八谷から距離を置けた。
鈴鹿は俺の片思いの相手が夏樹だと勘違いしているようで、叶わぬ恋が実ったとやけに協力的だ。
最初の内は八谷が積極的に俺たちを輪の中に入れようとしていたが、「あとは若いお二人さんだけで‥」と、鈴鹿がふたりきりになるように何かと気を利かせてくれた。たまにニマニマ眺めてくること以外は、物凄く助かっている。
スナと八谷は変わらずに一緒に帰っているようだ。いつも俺に声をかけてくるスナが、もう俺の名前を呼ばなくなって、
冷めた気持ちになるのと同時に、これ以上彼らを見なくて済むのだとどこかホッとしている自分がいた。
時折、感じる鋭い視線を無視すれば、
平穏だ。
「ね、風太、これ見て?」
休み時間、椅子を後ろ向きにして、俺の席でスマホをいじっていた夏樹がその画面を見せてくる。
「ッ~!?か、可愛いっ‥!!」
ふわ~真っ白でふわふわな猫。可愛すぎる‥持って帰りたい‥顔を埋めて吸いたい‥
「でしょ。うちの猫なんだ」
「え!?海の家に行きたい!!‥あ‥」
俺は勢いよく身を乗り出して、大きな声でそう告げる。
ハッとして気づいた時には遅くて、教室中の視線が俺たちに集まっていた。
「おいおい、真昼間からいちゃつくなよ~」
「暑苦しいから他所でやれ!!早川のスケベ野郎!羨ましいな!」
教室の連中から野次が飛んできて、俺は顔が真っ赤になる。
俺と夏樹が付き合い出した、と、ここ数週間でクラスの全員が知ってるというか勘づいているというか‥鈴鹿の手回しというか。計画通りなのだが、すごく恥ずかしい。
「っぷは!風太のえっち」
夏樹がわざとらしく上目遣いで微笑むから俺はまた恥ずかしくなって、片手で顔を隠しながら弁解する。
「な!ちが!そういうことじゃなくて!俺は猫が見たくてそれで!」
「わかってるってば‥ふふ、」
「ッ!っ、もう‥」
一緒にいるとお互いのことをよく知るようになってくる。夏樹はどうやら俺をいじるのが好きみたいだ。あわあわする姿が、好きな海外のキャラクターに似てるんだとか。褒められているのかなんなのか‥。
夏樹がまたスマホを手に取り、俺に見せる動画を探している。
ふと見えた流行りの猫型スマホリング。
そういえば放課後にスナと八谷がお揃いで買っていたな、なんてぼーっと考える。
俺はあの時、一緒のものを買おうとスナに進める八谷がすごく羨ましかった。何もできずただ見つめるだけの自分が嫌になって、まるで自分だけ切り離された別世界にいるようで、すごく惨めだったのを覚えてる。今考えればただの醜い嫉妬だ。
自然と目線が動く。刹那、視線の先の人物とバチリと目が合って、俺は背筋が凍るのを感じた。
慌てて視線を逸らし俯く。
「ッ!?」
「‥?どうしたの風太?」
「な、なんでもない‥」
俺の形相に首を傾げる夏樹。
俺は学ばない。体に染み付いた癖はなかなか治らなくて、思わずスナを目で追った自分を殴りたくなった。
ギュッと痛む心臓を押さえつける。
「‥なんだかしつこいよね」
「え‥?」
「ふふ、で、風太はいつ俺の家に来てくれるの?」
「ッ!海!もうその話は」
「いいよ、風太なら。」
「ッ、海‥?」
そっと手を重ねられて、俺はびくりと肩を揺らす。スマホを置いて代わりに机のノートを掴んだ夏樹は、俺たちの間を隠すようにノートを立てる。
なんだか妙な雰囲気だ。
だんだんと近づく夏樹の顔。俺は固まったまま、状況が分からずにただ戸惑っていた。
「、か、い‥?」
「‥そういえば、前にしてたよね。」
何の話だ?
重ねた手を頬に添えられて、俺はまさかと目を見開く。
いやいや、まって。分かんないから。ここ、教室だよ夏樹。てか、俺たちそういうことする仲じゃないよな?いや、仮にでも付き合っているのならそうなのか?でもだからって急すぎるッそういうのは事前に!
頭がパンクしそうになる俺を横目に
あと数ミリで唇が触れそうな距離になって、
俺は思わずギュッと目を瞑る。
「ぷはっ」
「‥へ?」
「キス、されると思った?」
耳元で夏樹がそう告げる。俺はきっと情けない顔をしていただろう。
謀ったな‥夏樹、本気でびびった‥。
あれから数週間経って、俺たちは順調に新しい日常を過ごしている。
2人で行動するようになり必然的にスナや八谷から距離を置けた。
鈴鹿は俺の片思いの相手が夏樹だと勘違いしているようで、叶わぬ恋が実ったとやけに協力的だ。
最初の内は八谷が積極的に俺たちを輪の中に入れようとしていたが、「あとは若いお二人さんだけで‥」と、鈴鹿がふたりきりになるように何かと気を利かせてくれた。たまにニマニマ眺めてくること以外は、物凄く助かっている。
スナと八谷は変わらずに一緒に帰っているようだ。いつも俺に声をかけてくるスナが、もう俺の名前を呼ばなくなって、
冷めた気持ちになるのと同時に、これ以上彼らを見なくて済むのだとどこかホッとしている自分がいた。
時折、感じる鋭い視線を無視すれば、
平穏だ。
「ね、風太、これ見て?」
休み時間、椅子を後ろ向きにして、俺の席でスマホをいじっていた夏樹がその画面を見せてくる。
「ッ~!?か、可愛いっ‥!!」
ふわ~真っ白でふわふわな猫。可愛すぎる‥持って帰りたい‥顔を埋めて吸いたい‥
「でしょ。うちの猫なんだ」
「え!?海の家に行きたい!!‥あ‥」
俺は勢いよく身を乗り出して、大きな声でそう告げる。
ハッとして気づいた時には遅くて、教室中の視線が俺たちに集まっていた。
「おいおい、真昼間からいちゃつくなよ~」
「暑苦しいから他所でやれ!!早川のスケベ野郎!羨ましいな!」
教室の連中から野次が飛んできて、俺は顔が真っ赤になる。
俺と夏樹が付き合い出した、と、ここ数週間でクラスの全員が知ってるというか勘づいているというか‥鈴鹿の手回しというか。計画通りなのだが、すごく恥ずかしい。
「っぷは!風太のえっち」
夏樹がわざとらしく上目遣いで微笑むから俺はまた恥ずかしくなって、片手で顔を隠しながら弁解する。
「な!ちが!そういうことじゃなくて!俺は猫が見たくてそれで!」
「わかってるってば‥ふふ、」
「ッ!っ、もう‥」
一緒にいるとお互いのことをよく知るようになってくる。夏樹はどうやら俺をいじるのが好きみたいだ。あわあわする姿が、好きな海外のキャラクターに似てるんだとか。褒められているのかなんなのか‥。
夏樹がまたスマホを手に取り、俺に見せる動画を探している。
ふと見えた流行りの猫型スマホリング。
そういえば放課後にスナと八谷がお揃いで買っていたな、なんてぼーっと考える。
俺はあの時、一緒のものを買おうとスナに進める八谷がすごく羨ましかった。何もできずただ見つめるだけの自分が嫌になって、まるで自分だけ切り離された別世界にいるようで、すごく惨めだったのを覚えてる。今考えればただの醜い嫉妬だ。
自然と目線が動く。刹那、視線の先の人物とバチリと目が合って、俺は背筋が凍るのを感じた。
慌てて視線を逸らし俯く。
「ッ!?」
「‥?どうしたの風太?」
「な、なんでもない‥」
俺の形相に首を傾げる夏樹。
俺は学ばない。体に染み付いた癖はなかなか治らなくて、思わずスナを目で追った自分を殴りたくなった。
ギュッと痛む心臓を押さえつける。
「‥なんだかしつこいよね」
「え‥?」
「ふふ、で、風太はいつ俺の家に来てくれるの?」
「ッ!海!もうその話は」
「いいよ、風太なら。」
「ッ、海‥?」
そっと手を重ねられて、俺はびくりと肩を揺らす。スマホを置いて代わりに机のノートを掴んだ夏樹は、俺たちの間を隠すようにノートを立てる。
なんだか妙な雰囲気だ。
だんだんと近づく夏樹の顔。俺は固まったまま、状況が分からずにただ戸惑っていた。
「、か、い‥?」
「‥そういえば、前にしてたよね。」
何の話だ?
重ねた手を頬に添えられて、俺はまさかと目を見開く。
いやいや、まって。分かんないから。ここ、教室だよ夏樹。てか、俺たちそういうことする仲じゃないよな?いや、仮にでも付き合っているのならそうなのか?でもだからって急すぎるッそういうのは事前に!
頭がパンクしそうになる俺を横目に
あと数ミリで唇が触れそうな距離になって、
俺は思わずギュッと目を瞑る。
「ぷはっ」
「‥へ?」
「キス、されると思った?」
耳元で夏樹がそう告げる。俺はきっと情けない顔をしていただろう。
謀ったな‥夏樹、本気でびびった‥。
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