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俺から見た君は
見たくないこと
しおりを挟む「えっと‥どうしたんだよ2人とも」
涙を急いで拭って、2人の方を向く。
俺は当たり障りない面を作って、首を傾げた。
「スナが屋上に行きたいって‥だから俺達‥ごめん、また邪魔しちゃった?」
気まずそうな八谷にため息をつきそうになるのを我慢する。
邪魔なのは俺の方だろ。
「いいや、今知り合いに電話かけて終わったとこ」
「そっか、よかった!スナ、昼飯食べよ!俺お弁当作ってきたんだ!」
スマホをぷらぷらと目の前で揺らしてそう言うと安心したように笑い、スナの方に向き直る八谷。まるで俺は透明人間扱いだ。
3人で一緒にいた時は感じなかったけれど、八谷はきっと自分に害をなすものには容赦しないタイプなのかもしれない。今二人きりを邪魔する俺は害でしかなくて、空気を読めとでもいうような目配せに圧を感じ俺は立ち上がる。
「そんじゃ‥俺戻るわ」
「おう!」
にこにこと笑う八谷が今じゃ恐ろしい。前までは気さくに話せていたのに。鈴鹿もなにか近しいことを言っていたけれど、人は恋をすると変わると言うのは本当のようだ。
二人の横を通りかかったところで、グッと後ろに引っ張られて、俺はよろける。
「っ、‥なに‥放してスナ」
スナが俺の制服の袖を掴んだ。
「昼飯、まだなんだろ。」
「あー‥夏樹と食うわ。」
「なんで?」
「‥」
「え?」
俺は言葉に詰まる。代わりに八谷が疑問の声を上げた。
「早川も一緒でいいだろ?」
「え、う、うん!もちろん!」
そりゃそんな反応になるよな。今までライバルとすら認識してなかった人間が、しゃしゃり出てきたんだから。
「そうだ、早川、前言ってたマチアプ?どう?いい人いた?ってまって、夏樹と付き合ってるなら、ダメなんじゃ‥」
スナに引かれて無理やり座らされる。俺は仕方なくいそいそと購買で買ったメロンパンを開けた。大きな弁当を広げながら、俺に話を振る八谷。なんだか、わざとらしい攻撃というか‥俺なんて小者どうせ相手にもならないのだから、そんなに焦らなくてもいいだろうに。
「あー‥うん、内緒な。」
「‥」
「なんか‥早川って思ってたよりも軽いっていうか‥」
八谷ってこんなことを言う奴だっただろうか。
どうでもいいだろ俺の事なんて。スナと話せばいいのに‥言葉の節々にストレスが溜まる。俺だって必死なんだよ。
それよりスナの心配をしたらどうだ。体調は大丈夫なのか。もう、平気なのか?とか‥色々あるだろ‥。
あぁ、俺が聞けばいいのに、二人の前じゃそれすらも憚られる。
どうして俺が気を遣わなければいけないんだろう。
「人それぞれだしいいんじゃね‥?気持ちよければどうでも‥」
嘘、そんなはずない。俺は一番に心が欲しい。
「っ、」
「なに、スナ‥近え‥」
隣に座るスナに急に肩を掴まれて至近距離で見つめられる。睨まれているのだろうか、驚いたような怒っているようなよくわからない表情だ。
「えっと‥どうしたのスナ?なんか早川とあったの?さっきから‥
ずっと早川の服掴んでるけど‥」
笑っているけど目が笑っていない。
八谷が疑惑の目を向けてくる。
「気持ちいいならいいのか、誰でも」
「‥さぁ‥どうだろうな?」
「み、ミステリアスっていうか‥意外だね。早川は一途なタイプかと思ってた‥でも、恋人は大切にな‥」
「あぁ‥」
ぴんと線が張ったような空気の中、ピコンという音が鳴り響く。
この音はゲイアプリの通知音だな‥
「誰」
「‥まぁ、知り合いだよ‥」
「‥」
機嫌が悪そうに俺を睨みつけるスナ。
購買で買ったパンの味がしない。
胃がキリキリしてきた。だめだ、吐きそう。
「‥そんじゃ、俺飯食ったから行くわ」
「う、うん!」
俺はパンを半分食べて、それを隠すように袋に入れると、すかさず立ち上がる。
少しトイレに寄ろう‥胃が気持ち悪い‥
「早川‥」
「はぁ‥スナ‥」
また掴まれた腕に、いい加減にしろよ。そう言おうとしたところで、口を噤む。八谷の顔が笑っていない。
「‥あの!その‥早川さ、最近俺たちのこと‥避けてるけど‥なにか‥気に触るようなことしたかな‥」
急な問いかけにぴくりと体を震わす。
は?
「俺もスナも、早川の友達として辛いっていうか‥そんなに嫌なら俺達も距離置くようにするし‥」
申し訳なさそうに傷ついたような表情を作る八谷。沸々と怒りが湧くのを感じた。
俺にそれを言うのか。
スナに近づくなって?これ以上関わるなって牽制のつもりか?
ずっと気持ちを殺して、演じて守ってきたのに。それすらもお前は簡単に取り上げられるって‥?
俺の方がっ、先だったのにーー。どうしてお前なんかにそんなことッ
「っ、俺は」
ダメだ、落ち着け抑えろ。
目元が熱くなって、苛立ちでどうにかなりそうだ。冷たい腕が今じゃうっとおしくてたまらない。
「ッーーいい加減放せよ!」
「、」
振り払った腕は宙を舞って、やってしまったと事が起きてから後悔する。
傷ついた顔をするスナを見て、胸がズキリと痛んだ。
スナを拒絶した。不安定なスナを。傷ついたスナを。俺はなんて酷いことを。
「‥早川、やっぱりそうなんだな‥」
「っ、ごめん‥俺行くわ」
八谷の冷たい声にハッとして、俺は急いで屋上を出た。
最悪だ。
俺って最悪だ。気持ち悪い醜い‥
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