36 / 59
俺から見たお前
昔の話②
しおりを挟む俺は首を傾げる。
その日、家に帰ると、ずっと早川のことが頭に浮かんでいた。
母のことも気持ち悪かった気分も驚くほど全て忘れていて、そういえばと母がいないことを数時間してからやっと気づいた。
また本を読んで、映画やドラマを観て、それが親友という存在なのかもしれないと思った。
「もう‥スナ‥近けえから‥くっつくなよ‥」
早川は、俺が近づくとよく顔を赤くする。
「ん?どうしたのスナ?」
早川は、俺が呼ぶとすぐに振り返る。
「スナ、大丈夫か?寒い?」
早川は、よく俺のことを見てる。
「ははっ、なにしてんのスナ」
早川は‥笑うと目が垂れ目になって、その中に俺だけを映すーー。
まるで俺だけの、ーー。
「すげえ‥綺麗」
夜景を見て早川が微笑む。
俺はその横顔をじっと見つめていた。
友人との遊び方なんて分からなくて、ハチと一度遊んだ場所に連れて行ってみたら、早川があまりにも嬉しそうに笑うから、俺は心の底がまた満たされるのを感じた。
それからは何度もハチと過ごした場所に早川を連れて行ってる。
きっとハチが選んだ場所なら、こいつは楽しくて笑う。目をキラキラさせながら、俺だけをその目に映して笑うんだ。
それは恋とかそんなものよりもよっぽど満たされる。なら、
「早川、絶対にお前は俺を好きにならないでくれよーーーー、」
このままでいい。ずっと、永遠に親友としてーー側にーー。
「砂道!キスしろよ!」
「ん」
人に好かれるにはある程度、ノリが良くなくてはならない。”人に好かれる人間”の第3章にそう書いてあったし、ハチにも昔そう言われたからそれが正しいのだろう。
同級生に煽られて、俺は早川に近づく。
本にはない行為。だけどハチが考えたノリなら、間違いないはずだ。俺は一度、ミスがないかハチや周りに目線をやって確かめてから、早川に口付ける。柔らかい唇。フィットするって言えば変かもしれないけど、まるで俺を安心させるために作られたみたいだ。
ドキドキと高鳴る鼓動。穏やかな目がとろんと下がって俺を見つめている。早川の熱い息遣いに体が熱くなって、親指を滑らせては早川の唇に触れた。
もっとほしいなこれ。一度唇を離してから、なんだかぽーっとして、適当に外野に返事を返す。その間も俺は早川の唇ばかりを見つめていた。海外じゃ親しい者同士は普通にするんだよな?なら‥もう一回‥
「ッ~!!ーーもうお嫁に行けねえよぉ‥っ」
手を伸ばしかけて、それから思いっきり逃げられた。俺は残念に思う心に首を傾げる。
なんでそう思うんだろう?早川の唇が柔らかかったから?きっとそんな単純な理由だろう。
俺は考えるのをやめる。
数日後、俺は早川と喧嘩をした。召使いなんて言いやがるから、感情が昂まって抑えられなかった。
お前は俺の親友だ。絶対にそれは変わらない。
はじめての感情はうまくコントロールできなくて、少し焦った。と、思う。でも、
早川のことだ。申し訳そうに謝ってくるだろうと俺はたかを括っていた。
次の日、夏樹が謝ってきたからやはりなと早川を見つめる。さぁ、早くしろと目で訴えかけると、早川はなぜか俺から視線を外した。
は?
最悪なタイミングで、席替えになった。
早川が俺を視界に入れずに、知らん顔で背中を向ける。
どくどくと胸が嫌な音を立てて、俺は感じたことのない不安に襲われた。
無意識に伸ばした腕。早川がやっと俺を見るから、安堵と何か言わないとと思う焦りで、俺は固まる。
あれ、なんで言葉が
でてこないんだ?ーー。
黙っているうちに、早川がまた俺に背を向けて離れていく。
まてっ、早川、いく、なーー。
心の中でそう叫んでも、声は出なくて。口は閉ざしたままで、俺は喉が詰まったような息苦しさを感じた。
これって言っていい言葉だったか‥?
分からない。何が正解なんだ?
わからない
何日経っただろうか。
早川が俺を見ることは無くなった。
俺は早川に視線を送り続ける。こうしてれば、たまに視線が合うから。
こうしてれば、きっといつか早川は戻ってくる。
だって、あの時‥俺を助けるとそう言ったから。
離れるわけがない。これは友人同士の喧嘩で‥仲直りとかいうものをすればすぐにまた元に戻る。だから心を乱されることなんてない。
216
あなたにおすすめの小説
『聖クロノア学院恋愛譚 』記憶を失ったベータと王族アルファ、封印された過去が愛を試すまで
るみ乃。
BL
聖クロノア学院で、記憶と感情が静かに交差する。
「君の中の、まだ知らない“俺”に、触れたかった」
記憶を失ったベータの少年・ユリス。
彼の前に現れたのは、王族の血を引くアルファ・レオンだった。
封じられた記憶。
拭いきれない心の傷。
噛み合わない言葉と、すれ違う想い。
謎に包まれた聖クロノア学院のなかで、
ふたりの距離は、近づいては揺れ、また離れていく。
触れたいのに、触れられない。
心を開けば、過去が崩れてしまう。
それでも彼らは、確かめずにはいられなかった。
――やがて、学院の奥底に眠る真実が、静かに目を覚ます。
過去と向き合い、誰かと繋がることでしか見えない未来がある。
許し、選びなおし、そしてささやかな祈り。
孤独だった少年たちは、いつしか「願い」を知っていく。
これは、ふたりの愛の物語であると同時に、
誰かの傷が、誰かの救いへと変わっていく物語。
運命に抗うのは、誰か。
未来を選ぶのは、誰なのか。
優しさと痛みが交差する場所で、物語は紡がれる。
素直になれなくて、ごめんね
舞々
BL
――こんなのただの罰ゲームだ。だから、好きになったほうが負け。
友人との、くだらない賭けに負けた俺が受けた罰ゲームは……大嫌いな転校生、武内章人に告白すること。
上手くいくはずなんてないと思っていたのに、「付き合うからには大切にする」とOKをもらってしまった。
罰ゲームと知らない章人は、俺をとても大切にしてくれる。
……でも、本当のことなんて言えない。
俺は優しい章人にどんどん惹かれていった。
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
息の仕方を教えてよ。
15
BL
コポコポ、コポコポ。
海の中から空を見上げる。
ああ、やっと終わるんだと思っていた。
人間は酸素がないと生きていけないのに、どうしてか僕はこの海の中にいる方が苦しくない。
そうか、もしかしたら僕は人魚だったのかもしれない。
いや、人魚なんて大それたものではなくただの魚?
そんなことを沈みながら考えていた。
そしてそのまま目を閉じる。
次に目が覚めた時、そこはふわふわのベッドの上だった。
話自体は書き終えています。
12日まで一日一話短いですが更新されます。
ぎゅっと詰め込んでしまったので駆け足です。
幸せのかたち
すずかけあおい
BL
家にいづらいときに藍斗が逃げる場所は、隣家に住む幼馴染の春海のところ。でも藍斗の友人の詠心は、それを良く思っていない。遊び人の春海のそばにいることで藍斗が影響を受けないか心配しているらしい。
〔攻め〕荻 詠心
〔受け〕千種 藍斗
*三角関係ではありません。
*外部サイトでも同作品を投稿しています。
○○過敏症な小鳥遊君
渡辺 佐倉
BL
オメガバース設定の様な何かです。
短い話が書きたかったのでサクッと終わります。
受けは多分アホの子よりです。
アルファで美形の小鳥遊君はオメガのフェロモンの匂いを過剰に感じてしまう病気になってしまったらしく、毎日眼鏡とマスクをしている。
大変だなあと思っていただけだったけど……。
あなたに捧ぐ愛の花
とうこ
BL
余命宣告を受けた青年はある日、風変わりな花屋に迷い込む。
そこにあったのは「心残りの種」から芽吹き咲いたという見たこともない花々。店主は言う。
「心残りの種を育てて下さい」
遺していく恋人への、彼の最後の希いとは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる