【完結】恋した君は別の誰かが好きだから

海月 ぴけ

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俺から見たお前

知らない話①

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まるで、現実を突きつけられているみたいだった。

夏樹に連れられて、庭園のような場所にたどり着く。夏樹が立ち止まり、真っ直ぐに俺を見据えた。

「風太、今スナの家にいるんでしょ?」

低く告げられた言葉に、胸がざわつく。
なぜ知ってるのか。考えるまでもなかった。

ーー俺には返事をよこさないのに、夏樹にはすぐに報告するんだな。


「‥あぁ、それが何‥」

強がって言い返すと、夏樹が一歩、距離を詰めてくる。

「俺、風太の恋人だよ。この状況が変だってことくらいはわかるよね?」

「‥恋人なのに、なんで別の男と会わせてたんだ。体調悪いの気づかなかったのか。」

言った瞬間、夏樹の眉がひきついた。
夏樹の表情が滲むのを見て、俺は少し胸がすく。

「あのねぇ‥スナにだけは言われたくないんだけど‥」

苛立ちを押し殺した声。
だけど、俺も譲る気はなかった。

「正直、お前に早川をやりたくねえ。別れろ。」

自分でも驚くほど直球的な言葉が出る。それは心から感じた言葉で、本には決して書かれていないだろうものだった。

自分が少しずつ変わってきているのが分かる。

「な、わがままっ、。‥

はぁ、もう俺たち付き合ってるんだし、他人にとやかく言われる筋合いないと思うんだけど。俺達に何があってどこまで進んでたとしても、スナには関係ないし。てか、知らないでしょ?風太言わなさそうだもんね。」

「っ、」

言葉が喉に引っかかる。
夏樹の言葉の意味を想像すればするほど胸がざわめき、吐き気さえ覚えた。

俺に大丈夫だと言ってくれる早川。俺に好きなようにすればいいとそう微笑んでくれた早川。早川がまた‥別のやつに触れる。

嫌だーー。

拳をぎゅっと握り締める。爪が掌に食い込んで血が滲んだ。

誰にも触れるなよ。

俺だけを見てろよ‥。

早川は俺の‥


「‥そんな顔するんだ。」

不思議そうに俺を見つめる夏樹を睨みつける。

「‥あいつに触んな‥」

「はぁ‥風太は俺の彼氏なんだけど‥」

「、そんなもの‥」

簡単に‥壊れるだろ‥。
愛とか恋とか一時の感情に流されて、結局は心が離れるんじゃないのか。

満たされるのだって一時的で、全部自分のためで‥

それなら、早川が俺に向けてくれる優しさの方がよっぽど‥


「スナ、そんなものなんかじゃない。スナは軽く考えてるんだろうけど、恋人って特別なんだ。その人といるだけで胸がドキドキして温かくなる。その人が困ってると何がなんでも助けてあげたくなる。その人とずっと一緒にいたくて、その人のことを考えると嬉しくなって‥俺、本気だよ。ーー風太が好き‥」

「‥、」

穏やかに微笑む夏樹に、俺は情けなく顔を歪めた。
返す言葉が見つからなかった。胸の奥をひどくかき乱される。

「スナはさ、風太の優しさに気づくの遅過ぎたんじゃない?」

突き刺された言葉は率直で。
俺は絶え間ない絶望感で体が震えた。


「だから、なんで、そんな顔するの‥スナの風太に対してのその気持ちっていったいなんなの。」

庭園の空気が、重く張りつめる。
夏樹の視線は、まるで俺を試すみたいに突き刺さっていた。

俺の気持ち。俺は早川のなんなんだろうか。

親友、友人、

側にいたい人、大切な人。笑っててほしい人。

俺をいつも助けてくれる。

俺にいつも笑いかけてくれる。


穏やかな目が俺だけを映して、スナーーとそう呼ぶんだ。




「頼むから‥


俺から早川を奪わないでくれーー」

やっと吐き出した言葉は、情けなく掠れていた。悔しいのに、目頭が熱くなる。
夏樹の瞳がわずかに揺れた。

「っ、」

夏樹が黙って、何か考えるような素振りをした。
俺は悔しくてやるせなくて、その隙を見計らうように背を向ける。

「‥もう行く。早川が‥待ってるから‥」

まるで負け犬の遠吠え。
子供のような自分に呆れるが、それほどまでに夏樹に何もかも勝てない自分にムカついたのだ。

「ちょ!言ったそばから!ッ~、もう!あんな顔して‥ッずるいってば‥」


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