【完結】恋した君は別の誰かが好きだから

海月 ぴけ

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俺から見た君は

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春。桜が散って緑の葉をつけはじめた季節。一月ほど前に男子校に入学した俺は、最近どうにも思うことがある。

「なあなあ、お前らはさ、友人同士でどこまでできる?」

一番後ろの窓際の席のやつが、前の席の男にそう問いかけた。空いた窓から温かい風が舞い込んで、ノートのページをめくる。
俺は春風を感じながら、こんなことを考えてた。

モテる男の友人ポジションってのは、まじで最悪だってこと。

「また、馬鹿みたいなこと考えてんのかハチ。」

アニメから出てきたようなイケボが背後から聞こえてきて、俺はスマホをいじりながら会話の内容を盗み聴きする。

「例えば‥手を繋いだり、ハグしたり、‥チューとか‥なあ、実際どこまでできると思う?」

ハーレム1、八谷。
漫画とかで出てくるクラスの愛されおバカキャラ。誰からでも好かれるお人好しくん。ヒーローの幼馴染ポジでもあり、鈍感で自覚がないのがたまに傷。

「な!ハチ何言ってんだよ‥ち、ちゅーって、そんなの‥。」

ハーレム2、夏樹。
純情なツンデレくん。いつも八谷の唐突な提案にぷりぷり怒っている。入学当初ヤンキーに絡まれていたところを助けられて気になる恋愛対象に。

「ナツキはウブだね~!可愛い~、そうだ、スナと早川は中学から一緒やんね?実際どうなん、そこんとこ」

ハーレム3 、鈴鹿。
美人な顔した関西訛りの男狐くん。こいつは何考えてるのか腹の内が読めないタイプ。だけど、好意だけは一番積極的。学内でビッチしてたところ愛を語られ落ちる。

「はあ‥お前ら飢えすぎなんじゃねえの?馬鹿なこと言ってる暇あんなら他校と合コンでもとりつけろっての。」

そして俺、早川 風太は、スマホを見るふりをしながら横目にそう答えた。俺は平凡なただのどこにでもいる男子高校生。後ろの席にはラッキーなことに気心知れる友人が座っている。ただ、そいつが老若男女に異常にモテるってこと以外はなんなく平凡だ。

「あー、早川とは手を繋いだりはしないかなー。ハグはノリでたまに?キスは試したことないな?」

「ぷは!またバカやってんのか!やっちまえ砂道!」
「早川の唇奪ってひいひい言わせてやれモテ男!」

「ふう、そんなに言われちゃ、試してみるか‥」

仲のいい同級生の外野に煽られ、キリッとした表情で近づいてくるこの銀髪の男こそ、俺の異常にモテる中学からの友人、砂道 みことだ。

染めてるとは思えない傷みのないサラサラの銀髪。顔だけでいうと国宝級だろう。性格は生真面目に見せかけて意外にノリがいいから、話しかけやすいと全学年の生徒先生から人気だ。もちろん、その半数以上が恋愛感情を持ち合わせていたりする。

「おいおいおい!近づいてくんじゃねえスナ!やめろ!ぎいやああ!」

砂道に鷲掴みにされた頭と、
ぶちゅうと音がする放課後の教室。柔らかい感覚と、彫刻のような顔と長いまつ毛に俺は一瞬たじろいだが、急いで正気を取り戻し抵抗する。モブ共の爆笑する声と、反対に冷ややかな視線を感じて、涙目になった俺が窓ガラスに反射した。

「‥ん‥うーん、微妙?」

「ッく、おま、、ゔゔ、最悪だ‥俺のファーストキスがあああ!もうお嫁に行けねえよおおお」

俺はわざと大きな声で騒いで、教室を飛び出す。

「どんまい早川‥なんかふってすまんな」

「か、簡単に好きでもない人とキスするなんて馬鹿じゃないの!?」

「ふーん、スナくんってそういうノリでもいけるんやね‥次俺とやってみる?」

「な!鈴鹿はだめ!」

「えー?なんで~?早川はよくてなんで俺はダメなん?教えてーやハチくん?」

「っ!?だめなもんは駄目なんですー?!もうやめだやめー!こんなアホらしいことは終了だ!」

「もう‥八谷がはじめたんでしょ‥早川泣いてたけど、大丈夫かな?」

「1番の被害者やで~、ま、早川くんなら大丈夫でしょ?ね、スナくん?」

「まあ、甘いもんでもやったら機嫌なおんだろ。」


出て行く途中で聞こえたハーレム達の争い。そして友人スナの一言に、俺は心底うんざりした。痛む胸は苦しくて、悲しくて。

もしその友人ってのが、自分の想い人だとしたら?
尚更このポジションが嫌になってくるってものだ。

「くそ‥普通ノリであんなことするか!?バカじゃねえの‥つか、微妙ってなんなんだよクソ野郎‥。これからどうやって顔合わせりゃいいんだよもう‥

俺、スナとキスしちゃった‥」


授業の鐘が鳴る。屋上へと続く人気のない廊下に座り込んだ俺は、真っ赤に熱った顔を両手で隠して、胸の高鳴りを必死で落ち着かせた。

ノリでできる恋人同士の行為。でもその先には何にも続いていなくて、何の感情もなくて‥。ライバル達からはライバルとすら認知されていないし、振り返られるほどの容姿もなければ、成績だって人並み。スナとは親友でもなく幼馴染というほど長くないたかだか中学3年間の付き合い。友人ポジションというのは、一番近くて一番遠い最悪のポジションだ。

でも、それでも俺は

スナの1番になりたかった。


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