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第1章 始まりの街『グリィト』
第24話 魔眼の新魔法!
しおりを挟むモッフィからもたらされた驚愕の情報。
「わたしの魔眼って、炎魔法と水魔法意外にも使える魔法があるの……!?」
そっと自分の目に手をやった。
モッフィが言ってきた情報は初耳なんだけど、たしかにわたしが持つこの『虹の魔眼』についてはあまり詳しく知っているわけじゃない。
わたしが知っていることといったら、炎魔法と水魔法が使えるっていうこと。
それから、感情が高ぶると魔眼の魔法が暴発するってことだけだ。
『虹の魔眼』についてより詳細な情報を得るには……魔眼に集中してみたら何か分かるかな?
確証はないけど、やってみよう。
わたしは目を閉じて、意識を魔眼に集中してみる。
(魔眼に集中……魔眼に集中……――っ! なにか、じわじわと頭の中にイメージが沸いてくる……!?)
抽象画のように滲み出してくるイメージ。
それは到底はっきりと言語化できるようなものじゃなく、ともすれば簡単に見失ってしまいそうなくらい儚くて朧気な情報の輪郭。
だけど、感覚的に理解できた。
わたしの両目――『虹の魔眼』に宿る、属性魔法の存在を!
(よく考えてみれば、『虹』は七色から構成されるものだもんね)
わたしがこの幼女――セリエーヌちゃんの肉体に転生して目覚めた時は、すでに赤と青の瞳を持つオッドアイだった。
そして、赤色が炎魔法、青色が水魔法、というように、瞳の色ごとにそれぞれの魔法属性が対応している。
と、いうことは。
「『虹』を構成する七色の内、『赤色』と『青色』を除いた五色……これが、まだわたしが知らない魔眼の魔法っ!」
何も知らないはずなのに、徐々に理解ってきた。
『虹の魔眼』が有する七色のバリエーションは、わたしのイメージする虹と同じ配色で存在している。
赤・橙・黄・緑・青・藍・紫――――この七色だ!!
(この中で現状、炎魔法と水魔法を除いて攻撃能力が優れていて、スティンガービー討伐に相性が良さそうな魔眼の『色』は――……)
わたしの脳裏に、一つの色が浮かび上がった。
「――『緑色』っ! これだ!」
魔眼の『色』は掴めた。
後は、この『緑色』の魔眼の魔法を使う方法。
潜水の要領でどんどん内なる魔眼の情報に潜っていくと、さらに直感を得る。
「わたしの魔眼――瞳の色を変えられるのか!」
現在のわたしと瞳は、右目が赤、左目が青という、左右で異なるオッドアイ。
無意識に瞳の色は『固定』だと思い込んでいたけれど、自分の意思で瞳の色を変えることができるの!?
「そういうことか! だったら――!」
わたしは左目に魔力を這わせ、魔眼の属性を切り替えるイメージをしてみた。
それはさながら、リボルバーを回転させるように。
ガチャン! とレバーが切り替わるような感覚があった。
わたしは必殺技のように宣言した。
「――――魔眼チェンジ!!」
左目の視界が、一瞬だけ淡い緑色に染まる。
モッフィが、ほうっ、と感嘆の声を漏らした。
「なるほどのぅ。それがアイリの魔眼の力か。青色の瞳から、緑色の瞳に切り替わった。アイリの魔眼がまとう魔力の質もまるっきり変わったようじゃのう」
「やっぱり、そうなんだ! わたしの『虹の魔眼』は、瞳の色を変えて異なる属性の魔法を放つことができるんだ!」
赤色なら炎魔法。
青色なら水魔法。
では、『緑色』ならば?
わたしは脳裏に浮かんだ緑色の魔眼の魔法属性をイメージして、頭上のスティンガービーたちを見上げた。
「緑色の魔眼は……これだっ! 切り刻まれろ――風魔法ーーっ!!」
緑色の左目が煌めく。
目の周囲にふわりと優しい風が吹いたかと思うと、凄まじい数の風の刃が洞窟の天井に解き放たれた。
「「「ギシシャァアアアアッ!!」」」
ズバズバと無数の斬撃のように殺到する風の刃に、スティンガービーたちは対応できず刻まれていく。
回避の隙なんて与えない!
下手な鉄砲も数撃ちゃなんとやら、ってやつだ!
「「「ギシ、ャァ…………ッ!!」」」
ズタズタに切り裂かれたスティンガービーたちは、気味の悪い体液を撒き散らしながらボトボトと落下していく。
「やった! スティンガービーの群れを倒したよ!」
「やるではないか。天晴じゃ」
わーい! と喜んでいると、どんよりとした疲労感が襲ってきた。
「うぐっ……でも、なんかちょっぴり倦怠感があるような。これって……」
「魔力を消耗したからではないか? いくら特殊な魔眼を宿しておるユニーク人間とはいえ、無限の魔力を有してはおるまい。それにアイリの魔法は大振りであるがゆえ、そもそもの魔力消費量も大きかろう」
「そ、そうなんだ。これが魔力切れの感覚かぁ」
「とはいえ、アイリの保有魔力量は神獣の我の目から見ても異常じゃがのぅ。到底、人の身とは思えぬほどの膨大な魔力を秘めておるわ」
そうなのかな?
この世界の魔力相場が分からないけど、まあ『虹の魔眼』なんてものを持っているくらいだから、並外れた能力があってもおかしくはないか。
「でも、これでマンドラゴラに呼び寄せられた魔物たちは全部倒せたよね!」
「――……いや、どうやら最後の大物が残っているようじゃ」
モッフィは険しい顔つきで洞窟の入口を見た。
そこにはわたしの魔法で討伐済みの魔物たちの死体が倒れているけど、その奥――薄い暗闇の中で、巨体のシルエットが揺れた。
ズシン、ズシン、とゆっくりとした足音が徐々に大きくなってくる。
「モ、モッフィ! あれって――!」
「どうやら、マンドラゴラに呼び寄せられた近場の魔物ではないようじゃのぅ。奴はただ、自らの巣穴に帰ってきただけのようじゃ」
それって、この洞窟を寝ぐらにしているっていう、肉食魔物!
視界の端に横たわる動物の骨の残骸が、この洞窟の主の恐怖を駆り立てる。
そして、ついに『洞窟の主』が姿を現した。
わたしは、ハッと息を飲む。
「あ、あの姿は、まさか……ヒグマッ!?」
黒と赤の毛並みが目立つ、四足歩行の巨体。
顔は凶悪に歪んでいて、死亡した擬態イタチを大きな口で咥えている。
あの擬態イタチは、わたしが洞窟の入口前で倒したものだ。
「――――ガオォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
巨大ヒグマが、大口を開けて吠えた。
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