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こやつ、できる
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「ほらほら!アンタらちんたらしてないで、さっさと手動かしなっ!」
建物の奥から、デカい刃物を担いだ女性を先頭に、エプロン姿の女性陣が現れた。
各々色んなサイズの刃物を持ち、ぴたーんぴたーんと手に打ち付ける様は、どこかに出入りに行く人達のようだ。
目つきとオーラが半端ねぇ、歴戦を潜り抜けたベテランのそれだ。
浮かれていた隊員たちも、女性軍団の登場にピィと変な声を出し、先ほどの事はなかったかのようにキビキビ動き出す。
「あの人達は?」
「隊員たちのお世話をしてくれる人達です~。先頭にいるのがマールさんで、料理長の奥さんです~。あの人の料理も、とっても美味しいですよ~」
─────ほほう、実質的なここの支配者と見た!→美味しいものにありつく為には、この人にこびへつらわねばっ!
「─────おや、見ない顔だね?」
自分の名前が聞こえたのか、肩にデカい刃物を担いだまま、マールさんがこちらへやってくる。
「マールさん。こちら隊長たちのお客さんで、リオさんです~。こっちはシロ君です」
「リオです」「わふっ」
シロ君も何かを感じているのか、キリリと姿勢を正してお座りしている。あれ、私にそんな態度しないよね? 態度違くね?シロ君も長い物には巻かれるの?いつの間にか大型犬サイズだし。
「あたしはマールだ。この子達の世話をしてる者だよ。それで?コレやったのアンタかい?」
くいっと親指でビックボアをさす。
別にやましい事は何もないので、そうだと答えると。「そうかい」と頷きながら、ぽいっとこちらにエプロンが飛んできた。
「背中にしょってんのは飾りじゃないんだろ?こんなにデカいんだ。いくら人手があって足らないよ!」
「あ~やっぱり~」
そんな気はしてました~~。同性ながら?の阿吽の呼吸みたいなものを感じておりましたとも。
使えるものは、客でも使うプロフェッショナル精神。働かざる者食うべからず。
ズリズリと引っ張っていかれるリオを見ながら、白陽はちょっとだけ姿勢を崩した。
あの人には何か、逆らってはいけないオーラを感じとったのであった。
「リオさん連れてかれちゃったねぇ。シロ君、僕たちも行こうか」
─────すっと雑用係の少年は、後ろ手に隠していた籠を前に持ち直した。いつの間にか籠には布をかけて中身が見えないようになっている。
「女の人達に見つかっちゃったら、一瞬でなくなっちゃうからね」
シーと人差し指を口に当てて、悪戯っぽく笑う。
─────こやつ、できるな。
変な感心をしつつ、「おやつあげるよ」という少年に、白陽は尻尾ふりふりしながら喜んで後をついていった。
「おや、リオさんはどうしました?」
三人が集まる書斎に、お茶セットと白陽のおやつを持ってきた少年に、フリートは訊ねた。
少年と共に現れると思っていたが、フェンリルはいるが当人はいない。
「マールさんに捕まっちゃいました~」
仕方ないですよね~。と笑いながらお茶を入れる少年。
「マジか」
慌てて窓から下を眺めると、砦内の誰もが逆らえない女性を前に、件の人物も隊員達に交じり、こき使われているのが見えた。
─────何やってんだい!もっと腰入れなっ!
─────切りすぎだよっ!だれが地面まで掘れっていったんだいっ!
─────調節ムズイよ~~
─────口動かす暇あるなら、手うごかしなっ!
─────わ~ん
「‥‥‥‥仕方ないな」
─────とてもあの場にはいけない。
ふっと表情を消して、アルヴァスはソファに座った。
長椅子に座ろうとしたラングは、フェンリルが大型犬サイズでだらりと占拠しているのを見て、違うソファした。
「お前、結構図々しいよな」
「わふっ」
─────なんか、文句ある?
‥‥‥‥そう言っている気がした。
建物の奥から、デカい刃物を担いだ女性を先頭に、エプロン姿の女性陣が現れた。
各々色んなサイズの刃物を持ち、ぴたーんぴたーんと手に打ち付ける様は、どこかに出入りに行く人達のようだ。
目つきとオーラが半端ねぇ、歴戦を潜り抜けたベテランのそれだ。
浮かれていた隊員たちも、女性軍団の登場にピィと変な声を出し、先ほどの事はなかったかのようにキビキビ動き出す。
「あの人達は?」
「隊員たちのお世話をしてくれる人達です~。先頭にいるのがマールさんで、料理長の奥さんです~。あの人の料理も、とっても美味しいですよ~」
─────ほほう、実質的なここの支配者と見た!→美味しいものにありつく為には、この人にこびへつらわねばっ!
「─────おや、見ない顔だね?」
自分の名前が聞こえたのか、肩にデカい刃物を担いだまま、マールさんがこちらへやってくる。
「マールさん。こちら隊長たちのお客さんで、リオさんです~。こっちはシロ君です」
「リオです」「わふっ」
シロ君も何かを感じているのか、キリリと姿勢を正してお座りしている。あれ、私にそんな態度しないよね? 態度違くね?シロ君も長い物には巻かれるの?いつの間にか大型犬サイズだし。
「あたしはマールだ。この子達の世話をしてる者だよ。それで?コレやったのアンタかい?」
くいっと親指でビックボアをさす。
別にやましい事は何もないので、そうだと答えると。「そうかい」と頷きながら、ぽいっとこちらにエプロンが飛んできた。
「背中にしょってんのは飾りじゃないんだろ?こんなにデカいんだ。いくら人手があって足らないよ!」
「あ~やっぱり~」
そんな気はしてました~~。同性ながら?の阿吽の呼吸みたいなものを感じておりましたとも。
使えるものは、客でも使うプロフェッショナル精神。働かざる者食うべからず。
ズリズリと引っ張っていかれるリオを見ながら、白陽はちょっとだけ姿勢を崩した。
あの人には何か、逆らってはいけないオーラを感じとったのであった。
「リオさん連れてかれちゃったねぇ。シロ君、僕たちも行こうか」
─────すっと雑用係の少年は、後ろ手に隠していた籠を前に持ち直した。いつの間にか籠には布をかけて中身が見えないようになっている。
「女の人達に見つかっちゃったら、一瞬でなくなっちゃうからね」
シーと人差し指を口に当てて、悪戯っぽく笑う。
─────こやつ、できるな。
変な感心をしつつ、「おやつあげるよ」という少年に、白陽は尻尾ふりふりしながら喜んで後をついていった。
「おや、リオさんはどうしました?」
三人が集まる書斎に、お茶セットと白陽のおやつを持ってきた少年に、フリートは訊ねた。
少年と共に現れると思っていたが、フェンリルはいるが当人はいない。
「マールさんに捕まっちゃいました~」
仕方ないですよね~。と笑いながらお茶を入れる少年。
「マジか」
慌てて窓から下を眺めると、砦内の誰もが逆らえない女性を前に、件の人物も隊員達に交じり、こき使われているのが見えた。
─────何やってんだい!もっと腰入れなっ!
─────切りすぎだよっ!だれが地面まで掘れっていったんだいっ!
─────調節ムズイよ~~
─────口動かす暇あるなら、手うごかしなっ!
─────わ~ん
「‥‥‥‥仕方ないな」
─────とてもあの場にはいけない。
ふっと表情を消して、アルヴァスはソファに座った。
長椅子に座ろうとしたラングは、フェンリルが大型犬サイズでだらりと占拠しているのを見て、違うソファした。
「お前、結構図々しいよな」
「わふっ」
─────なんか、文句ある?
‥‥‥‥そう言っている気がした。
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